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第一話
田代少年が十三歳になったある日、事件は起きた。
その日は、両親が早く帰宅したため珍しく三人で食卓を囲んでいた。
ふと、窓の外で物音がした。
不思議に思った竜造は窓を開け、外を見回した。
だが、特に異変はなくそこには静かな夜があるだけだった。
安心した竜造は振り向き、家族のいるところに向かって歩き出した。
その時、窓の外で何が光った。
キラキラと美しく光るそれは、包丁だった。
その包丁はまっすぐに竜造のわき腹へむかい、深々と刺さった。
竜造は、田代少年の目の前に倒れこんだ。
だが、少年の目に映っていたものは、倒れた父親ではなく
それが作った赤い池だった。
少年は、そこから目が離せなくなっていた。
息子の目線の先に目をやった松子は、悲鳴をあげた。
包丁の持ち主は、竜造に刺さった包丁を抜くと、
腰が抜けて動けなくなっている松子に向けて振り上げ、近づいてきた。
その時、近くでパトカーのサイレンが聞こえた。松子の悲鳴を聞いて近所の人が通報したのだろう。
「ちっ。」
そう言って犯人は窓から逃げて行った。