1日目 ①
がちゃり
鈍い音とともに重く、古そうな扉が開く。
扉の割に、中は近未来的だ。
ロイズが何やら画面をタップし、乃杏の基本情報を入力してくようだ。
「名前は?」
「NOVAで」
「職業はどうするー?」
「何がありますか?」
「色々あるよ。魔法使い、騎士、発明家、盗賊、精霊使いなどなど。」
乃杏はいつもネットゲームなどでは、魔法使いを選んでいた。
「じゃあ、魔法使いで。」
「OK。基本情報は終わりだよ。転生しよっか。」
「まって、ここの私はどうなるの…?」
乃杏の本体は、今ここにある。もし転生すれば、ここにある本体はどうなるのか、乃杏は気になっていた。
ロイズはさらっといった。
「え?死ぬよ?心臓麻痺かなんかでね。」
「ーっ!」
乃杏は言葉を失った。死?私が?
ロイズはさらに続けた。
「でもね、あっちの世界に転生、生まれ変わるから大丈夫!記憶は持っていくから!」
ここまできたら、引き下がれない。乃杏は承諾した。
「ーわかった。いくわ。」
「じゃ、行くよ!
One,Two,Three!!!!」
ごおおおおおおっと轟音が響く。
自分が死んだ瞬間がわかった。ふっと息が抜けた。すぐさま、新しい体に移ったのも、わかった。
落ちる。落ちる。下に落ちる。
ここは、地球じゃないどこかだ。乃杏は生まれ変わった。
ゲームの世界で使っていた名前で
NOVAに。
すとんっ。
地面に着地。乃杏は自分の服装を確認した。
魔法使いらしい、大きな帽子にひらっとした茶色の半袖シャツ。トップスと同じような色の、ショートパンツとニーハイソックス。手には、長いあなあき手袋とでも言えばいいのか、はめられていた。
「この格好かわいいね。」
「でしょ!僕提案だよ!」
ロイズと乃杏はたわいのない話をしていた。メニューの開き方とか。
その途中、ちらちらと人目が気になった。乃杏はロイズに聞いた。
「ね、なんでこんなに見られてるの?おかしくない?」
ロイズは申し訳なさそうに、口を開いた。
「あー…魔法使いって職業の中で弱い?部類なんだよねぇ…。まぁ、レベル上げて、魔法習得してけばどうってことはないけど、それまで長くて…。」
「はぁ!?うっそ、超不利な職業じゃない!」
「で、でも!NOVAはゲーム界で強いから、すぐカンストできると思っ…て…」
まぁ、ロイズのいうことにも一理ある。乃杏は、ゲームの天才と言われているほどなのだから、カンストは容易だろう。
その時だった。
どおおおおおんっ
「emergency emergency ウェルカム広場に爆撃。enemy襲来。戦い専門の職業は集合してください。
もう一度繰り返します…」
緊急放送が流れてくる。頬に鈍い痛み。先ほどの爆撃で、何かの破片が飛んできたのだろう。
人々の叫び声。逃げ惑う足音。どうすればいいかわからない、乃杏。
(考えろ考えろ考えろ!足動け動け動け!enemyって敵?だよね?敵って戦い?)
「NOVA!!!」
ロイズの叫び声が頭に響いた。
enemy…敵が向かってきていた。
(もう、ゲームオーバー?)
ばしゅっ
ぐわあああ
長い長い、金色の髪の毛。
美しい横顔。
優しい声が聞こえた。
「だいじょうぶ?」
乃杏は崩れ落ちた。
そして、口を開いた。
「こんなの鬼畜ゲーじゃない!あはは!」
「けが、してる。」
金髪少女が心配そうに言う。そして何かつぶやいている。
みるみる傷がふさがっていった。
「わ、すごい!」
少女はにっこり笑った。
「わたしは、エリーゼ・トワルフ。せいれいつかいだよ。」