第二章 骨董品たちは語る
第二章 骨董品たちは語る
「全く、マスターには困ったものですわ」
中国茶器がそうこぼした。
「あれだけのいい男がすぐそばにいるというのに……」
「全く気付いていませんものね」
「というか、素通り?」
そこにティーポットが加わってきた。
「あの方は、殿方との恋愛感情に不器用というか……不感症というか……」
「同感!」
「同感!」
「鈍いですわよね」
骨董品たちは、自分たちのマスターである庚をこき下ろしていた。
「まあ、それが面白いところでもあるではないですか」
そう蓄音器が言う。
「見える部分と見えない部分。あなた方は見える部分に目が行きがちですわ」
これを言ったのは、安土桃山時代の小物入れ。
「見えない部分の機敏というものを感じ取る奥ゆかしさが欲しいですわね。……これだから大陸育ちは……」
ふっと、溜息をもらす。
「それは差別だ―」
「差別反対!」
茶器がブーブー文句を言いだす。
日本刀に関しては、これまたいつものごとく無言を通している。
「マスターは女らしさに興味はないから」
そう言ったのは十七世紀のイヤリング。
「私をつけて着飾ってくれると嬉しいのですが」
ふんふんと鼻歌が出そうだ。
これには茶器たちがゲーっとした声を出した。
「自分をつけろっていう? 普通?」
「何か自己主張しているみたい」
「自分は綺麗だっていうアピール?」
「気持ちわりぃー」
様々な茶器の意見を、イヤリングはどこ吹く風と、ことごとく無視していた。
「でも、私たちは人に付けてもらうことが花」
そういうのはネックレス。
「人の美しさを引き立たせるものですもの。マスターだったら、その資格がありますわ」
「よく言った、ネックレス」
ツンとしてイヤリングが言う。
「この茶器たちは、我々の存在価値というものを分かっておらん」
「茶器だって、使われる人の機敏というものを感じているわ」
「そうだそうだ」
「恋の現場にだって居合わせたのよ」
「何も知らないで、偉そうに言うな!」
茶器たちは一斉に反論した。
それを収めたのはこの一言。
「まあ、それはともかくとして、マスターの自覚を心待ちにしようではないかの?」
安土桃山時代の小物入れが凛と言い、この場は静かに収まった。
……さて、今後どうなることやら。




