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第4話 観覧車に監禁された男

「命が惜しければ早く逃げろ」

 白髪の老人が言う。

「ここはあんたらみたいなのが来る場所じゃねえ。いいか、裏野ドリームランドには悪魔が住んでいやがる。おそろしい残忍な悪魔だ。やつらに見つかったら最後、生きて帰れねえぜ。

 おれみたいな老いぼれはどのみち先は長くねえ。だがあんたらは若い。早くここから出た方がいい。悪いことは言わねえ。裏野ドリームランドにゃあ、二度と近づくんじゃねえぞ」


 先ほど、老人のさるぐつわを取ると、口が動き、「水をくれ」と言っているのがわずかに聞き取れた。

 わたしはペットボトルの飲み残しのアイスティーを咄嗟に老人の口にあてがった。水を飲むと少し元気が出てきたようだった。

 わたしとサトシは老人の手足をしばっているロープをほどいた。全裸の老人は立ち上がり、自動販売機の隣のゴミ箱から新聞紙を漁り、申し訳程度に腰に巻いて下腹部を隠し、ベンチに腰かけた。

 わたしとサトシもその隣に座った。

 老人の話によると、彼はホームレスで、拾得物専門の廃品回収業者とのこと。

 公園のゴミ箱などを漁り、まだ使える物を見つけると、ジャンク品やバッタ品専門の質屋に売る。結構な収益になるという。

 昨日、老人は裏野ドリームランド内に侵入し、ゴミ箱を漁っていると、二本足で歩く人間ともワニともつかない数匹の怪物に拉致された。彼らはみな流暢(りゅうちょう)な日本語をしゃべった。

 怪物たちは人間の肉を食す。だが彼らのうち、グルメ通は子供の肉を好み、大人の肉を嫌う。大人の肉はアクが強すぎるからだ。

 そこで大人の肉を食うときは、一晩、アルコール漬けにしてアクを抜いてから食う。

 老人は裸にされてゴンドラに乗せられた。ゴンドラにはウイスキーと酢を混ぜた液体で満たした。ただ老人が呼吸ができるように、首から上くらいは液体を入れず、空気を残しておいた。

 殺さずにアルコール漬けにするのも、その方が人肉がうまくなるという、彼らのグルメ事情からきていた。

 怪物たちはこうしたことを老人に詳しく日本語で説明したという。

 

「やつらはおれたちのことを食用動物としか思っちゃいない。気をつけろ。やつらはおれたちより知能が発達した種族なんじゃ」

「そいつらはレプティリアンじゃないでしょうか」

 サトシが訊く。

「レプ......確かそんなような音だったなあ」

「ここの運営会社の経営陣は、みんなレプティリアンなんでしょうか」

「さあな......」

「ところで、『ウラノバーガー』ってご存知だと思いますけど、あれはここで殺した子供たちの人肉を材料にしたハンバーガーじゃないでしょうか」

「よく覚えてないが、なんかそんなようなことも言ってた気がする。ともかく、家畜の牛や豚を管理するのと同じ感覚で、やつらはおれたちの社会の一切合財を管理していやがるのさ。世の中のお偉いさんは、みんな、あいつらの部下なんだとよ。それに......」

 老人はふと無口になる。

 唇の端から一筋の血が流れている。

 気がつくとこめかみに一本の矢が刺さっている。

 老人の全身はベンチから転げ落ちる。

「おじいさん......」

 わたしは老人に駆け寄りながらも、矢が飛んできた方を見る。

 十メートルほど向こうに、ホッケーマスクの男が佇んでいる。

 両手でこちらにボーガンを構え、オレンジのつなぎ服の背中には矢のつまった矢筒を背負っている。

 鱗のある尻尾が蛇のように身をくねらせながら伸びてきて、矢筒から三本の矢を器用に抜くと、ボーガンにあてがう。

「危ない」

 サトシがわたしを地面に突き飛ばし、上に覆いかぶさる。

 三本の矢が近くの地面に同時に刺さる。

「逃げるんだ」

 サトシは立ち上がり、わたしの手を引いて走る。

 わたしはサトシに連れられて、全力疾走する。途中、一回だけ後ろを振り返ってみると、ホッケーマスクの男がわたしたちを走って追いかけているのが見えた。

 先ほどはわたしたちが追いかけ、あの男が逃げていた。でも今は逆だ。わたしたちが逃げ、あの男が追いかけている。

「もっと速く走るんだ。殺されるぞ」

 サトシがわたしの手を痛いくらい強く引く。 

 

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