デート
pv、ブクマありがとうございます。
第9話です。
「なぁナリス、もういいんじゃねぇか?」
「いや僕はご主人様より強くなるまで忠誠を誓わなくてはならない。」
今俺は宿に戻っている。そして俺の部屋の中にはもう一人が床に膝をついていた。
ナリスだ。こいつは今日俺との戦闘が終わってからずっとこの調子だ。まぁ人の上に立つのは嫌いじゃないけど、一日中となると正直疲れていた。
しかも俺はナリスに専用の部屋を与えようとしたのだが、するとナリスが頑なに拒んだので、仕方なく今俺の部屋にいる。
ヘブンの部屋に入れるという話もあったのだが、
「僕のご主人様はセイン様だけです。」
なんてナリスが言うもんだから、ヘブンは怒り部屋にこもってしまっていた。
「あいつ本当子供だよなぁ」
俺が呟いているとナリスが首を傾げていた。
正直、獣人というものを初めて見たが、俺の感想はなんかエロいだった。
頭から生えている大きな可愛い耳、豊満な胸そして服からはみ出してる尻尾だ。
俺はこの尻尾が触りたくて仕方がなかった。
そして俺は決心する。
「なぁナリス…尻尾触ってもいいか?」
何故かナリスが顔を赤くするが、聞かれた質問には即答する。
「はい。どうぞ好きなだけ僕の尻尾を触ってくださいご主人様。」
そう言うと俺にお尻を向け尻尾を出す。
「じゃあ触るからな。」
俺はナリスの尻尾を触る。なんだこれは!と言いたくなる様な柔らかい感触が手に伝わってくる。
「あの!ご主人様…はぁ!…いつま…で触っているんですか!?」
ナリスが呼吸を荒くして顔を真っ赤にして聞いてくる。
俺はしんどいのかなと思い、いつまでも触っていたい感触から手を離す。
「ありがとう。最高の感触だったわ」
「はい。僕の尻尾ぐらいだったらいつでも言ってください。ただいまは心の準備が…」
「あぁ、それじゃまた今度な」
心の準備?と一瞬おもったが、聞かなかった事にした。
後から知った情報だったんだが、獣人の尻尾は、獣人にとって性感帯の様なものだったらしい。この世界では常識だそうだった。
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次の日俺が起きると、ナリスが床で大の字で寝ていた。本当に床で寝たのかよ…など思うが、俺はナリスを起こし食堂に向かう。
食堂に行くと既にヘブンがちょこんと座っていた。こいつは何時に起きてんだよ。ヘブンは俺に気づきいつも通りの台詞を言う。
「セイン様、今日はどちらへ?」
「あぁ、今日はユリとの約束の日だ。まぁ…デートだな」
「へぇデートですか…じゃ私もついていきますね。」
「何言ってんだよ!?そんなこと…」
「ついていきますね。」
同じ言葉を同じ笑顔で冷静に言うヘブン。
俺が言うのもだが、ヘブン怖い。
その後俺とヘブンは言い合いになり、結局ついてこないということで決着がついた。
ナリスは奴隷だからついて行くと行っていたが、俺が残れと命令すると了承してくれた。
ちなみに反抗すると死ぬからではない。奴隷の首輪はナリスを買った日に既に破壊していた。
「そろそろ時間だな」
俺は朝食を食べ、待ち合わせ場所に行くために宿を出た。
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俺が待ち合わせ場所に行くと、既にユリが待っていた。
いつもの作業服とは違う私服ののユリだ。
花柄のワンピースはシンプルだが、着ている元が良いためすごく映える。正直めちゃくちゃ可愛い。
ボーッと眺めていた俺にユリが気付くと、笑顔で走って寄ってきた。
「もうセイン!気づいてたんなら話しかけてよ!」
「悪い悪い、私服のユリが珍しくてついな」
「え?ほんと?どう似合ってる?」
俺は即答する。
「ああ似合ってる、俺がもうちょい若かったら即落ちだったな。」
俺がちょっと意地悪するとユリが頬を膨らまして怒っていた。
「もう!からかわないでよ!素直に似合ってるって言えば良いのよ!」
そんな話をしながら俺たちは街を回り、互いの服の選びあいっこや、劇団を見に行ったりと普通のデートを楽しんでいた。
二つの視線に気づくまでは…
俺はユリと歩きながら路地の方に目をやる。
すると誰かが隠れるのが見えた。
「セインどうしたの?」
「いや…何でもない。それより次はどこに行くんだ?」
「そうねぇ私の店以外の武器屋を見に行かない?魔導具とかも売ってるかもね」
「そうだな!行くか。」
そう言いセイン達が武器屋に向かってる時に路地から綺麗な黒髪ロングが姿を見せた。
「私は監視役ですから仕方が無いのですよ。うふふ」
ヘブンだった。そして後ろにもう一人、
「僕はまだ反対です。命令無視なんてしたくありません。」
「宿から出た時点で命令無視ですよナリス、貴方はもう私の共犯です♪」
「はぁご主人様に怒られる。」
落ち込むナリスにヘブンは声を掛ける。
「見つかっては無いとおもいますけど…さっき一瞬見られた様な気もするんですよね。」
考え出すヘブンだったがセイン達を見失うと思い、そそくさと追って行った。
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俺はユリと武器屋に着くと初めて見る魔導具や武器を見ながら談笑していたが、店の中にいる二人の客が気になって仕方なかった。
二人とも顔を隠しており顔は見え無いが、見たことある黒髪と、これまた見たことある尻尾があったからだ。
「まぁ…あいつらか。」
俺はそう呟くとその客に近づいていった。
「おい!お前ら何してんだ!?」
「え?セイン何言ってんの!?って…ん?ヘブンちゃん?」
ユリが気づいたのを確認した俺はどうしてやろうか考えるが罰を思い付き笑う。
「お前ら二人とも今日は飯抜きな!あ、あとナリスは尻尾撫で放題の刑な。」
「ご飯抜きなんて!セイン様、それは神に対する冒涜です!」
「まだ心の準備が…」
ヘブンとナリスがそれぞれ何か言ってるが、それをユリが遮った。
「セインそれはやりすぎじゃない!ってかその獣人の娘は誰?…尻尾を撫でるって…!」
ユリは急に顔を紅くし、そして俺はビンタされた。なんでだぁー!?
「最っ低!セインはそんな男じゃ無いと思ってたのに!女の奴隷を買っていやらしいことするなんてっ!」
俺は何の事かさっぱりだったが頭をフル回転させ、尻尾、最低、いやらしい、と単語を並べ考えると一つの答えが導き出された。
ユリは泣きながら黙っていた。
「ユリ、ゆっくりで良いから聞いてくれ!まずお前がいま言った事は誤解だ。俺は獣人を昨日生まれて初めて見たし特性とかも知らなかったんだ。」
そして俺は続ける。
「だから今言われて初めて気づいたんだ。悪かった。それに奴隷の事だけど俺は買うつもりなかったんだが、こいつが奴隷にしてくれってうるさくてな。」
すると、
「ほんと?」
ユリが聞いてくれたみたいだ。
俺は真面目にミスらないように答える。
「ほんとだほんと!ユリとデートしてんのにそんな事するわけねーだろ。」
我ながら完璧だ、演技とはいえ人に優しくするのはちょっと嫌だな。ユリにはまだ装備を作ってもらわなくては困るからな。
「じゃあ…グス…許すわ!あたしこそ疑ってごめんなさい。」
そして俺はユリと仲直りし、ナリスをユリに紹介させユリとは別れ三人で帰っていた。
「ご主人様、ご主人様は演技も上手いんですね。」
「そうですね。騙されてるユリさんがかわいそうです。」
ヘブンとナリスが真逆の意見を言ってくる。
「うっせぇ!お前らまぢで今日は飯抜きだからな!」
そう言って俺は宿に帰り飯食って寝た。
ヘブンは本気で怒っていたが、当然の報いなので無視して寝た。
明日は王国からの招待の日だった。
お読みいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。