森の主
第6話です。
俺とヘブンはラ・ミラージュの門を抜け、ブナー草原へと向かっていた。
もちろん馬車など買う金も無いので徒歩だ。
徒歩での移動は危険だとは思ったが、この辺のモンスターが弱い事は知っていたしこの辺の冒険者の実力もサーシャから聞いていたので、俺なら大丈夫だと確信していた。
「てかヘブンって戦えんのか?森の中では俺がずっと戦ってたし、お前はレベルあげて無いよな?まず妖精にレベルっいう概念あんのか?」
「大丈夫です。私は神の御加護を受けていますので、基本的にはダメージを受けません。まぁでも簡単な治癒魔法位なら使えますね。」
ヘブンは神からの加護が嬉しいのか機嫌が良いみたいだ。
「ふーん、じゃあ基本的には俺が前衛で戦ってヘブンが後方支援って感じだな」
「まぁしょうがないですし、回復ぐらいしてあげます。」
「調子乗んな!まぁ俺がダメージ受けなきゃ良い話か。」
そんな他愛の無い話をしていると、またテンプレのようなタイミングで恐らく盗賊であろう集団が待ち構えていた。
数は10ぐらいだった。正確には木に隠れている奴を合わすと12人ってところだった。
盗賊たちは、これまたテンプレの様な気持ちの悪い笑い声をあげながら道を塞ぎセイン達を挑発してきた。
「今持ってる装備と金を全部置いていきな!抵抗しなかったら命だけは助けてやる」
恐らく盗賊のリーダーでおろう男が付け加えた。
「でも、そのかわい子ちゃんは俺たちが可愛がってやるから、イケメン君はさっさと失せな!」
ヘブンはゴミを見る様な目をしていた。
正直、俺も引いた。
「気持ち悪いですね。」
ヘブンそう呟くと俺も続いて盗賊達に返した。
「まさに雑魚が言うような台詞を次から次えと…まぁいい楽にしてやるからかかってこいよ盗賊さん」
俺が挑発すると盗賊達は、頭に血が上ったのかリーダーが叫んだ後一斉にかかってきた。
「この世界の雑魚はみんな短気なんだな。」
俺は呟くと、暗黒異空間からデスライズを取り出し、初めに斬りかかってきた男の剣をかわし腹を切り裂いた。
つもりだったがデスライズの切れ味が良すぎたのか、男の腰から上が下半身から離れ地面に鈍い音を立て落ちた。
「あ!悪い悪い手加減すんの忘れてたわぁ」
セインが謝るが男は既に死んでいた。
それを見た盗賊達は動きを止め、セインを警戒して近づこうとしない。
「おいおい!さっきの威勢はどうしたんだ?まさかビビってんのか?だめだぞお前らは俺の実験材料なんだからな。」
「ひぃ!」
セインが笑みを浮かべそう言うと盗賊の1人が逃げたしたが、セインはわかりきっていたように魔法を唱える。
「暗黒部屋!」
するとセインと盗賊達を包むように真っ黒な結界が出来上がった。
そんな事構わずに男逃げるが、結界から出ようと結界に触れた瞬間、男が悲鳴をあげて倒れた。
男の身体は結界から出ていた部分だけが消失していた。血も出ず。ただ男は死んでいた。
暗黒部屋はセインが開発した新しい黒魔法である。
使用用途は今の様な相手を逃さ無いためや、自分の身を守るためである。結界の大きさは伸縮自在であり、自分の周りだけに張ることも出来るのだ。
男が死んだのは結界に触れた瞬間に発動する、暗黒部屋の追加効果である。この効果は結界に触れた者の生命エネルギーを奪っていくものだ。
だがセインの魔法は男とは格が違いすぎたため男は即死したのだった。
「ありえねぇ…」
盗賊の1人が呟いた。
すると盗賊達は次々に命乞いを始めた。
「助けてくれ!何でもするから!頼む命だけは!」
セインはニヤリと笑ったが盗賊達には悪魔にしか見えなかった。
「確かこうだな、今持ってる装備と金を置いていきな!抵抗しなかったら命だけは助けてやる。…だったか?」
盗賊達はセインの言葉を聞くとすぐに装備を外し硬貨や金目の物を置いていった。
「これで全部だ!約束は守った勘弁してくれ!」
盗賊達はこれで自分の命が失われずに済むと思い安心していたが、次のセインの言葉で絶望した。
「はぁ!?何言ってんだ?助ける訳ねーだろ、お前らのお仲間さんが既に抵抗してたろが!そもそもお前らは俺の実験材料だから元々生かす気ねーよ…死ね。」
セインはそう言うと暗黒異空間からデスライズを取り出し刃先を指でなぞる。すると刀から黒いオーラの霧が刀を覆っていた。
セインはその黒いオーラの纏ったデスライズを一振りすると
「ブシュっ!」
と何か弾ける音がしたかと思うと、
その場にいた盗賊達全員の首が飛んでいた。
「これは中々いいな、これは使えるな」
セインが暗黒部屋を解除し余韻に浸っていると、結界の外で待っていたヘブンは盗賊達の亡骸を見ると居心地が悪そうな顔をしていた。
「ここまでする必要はなかったんじゃないんですか?」
「まぁこんな奴らでも俺の役にたったんだし、いい死に方だったと思うけどな。」
セインは何かを確信した様に続ける。
「それに神の呪いの理由なく人を傷つけられ無いってのが、どの程度の理由まで有効か試す必要があったからな。」
ヘブンはすこし焦るがすぐに冷静になりセインに問いかける。
「それでどうでしたか?結果は?
「あぁ大体の自由は効くみたいだな。これで俺の好きな様にできる!」
ヘブンはため息をついていた。
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それから俺達は特に襲われる事もなく、難なくブナー草原の奥の森の中に来ていた。
そして仕事の内容である薬草も言われていた数は採取し暇を持て余していた。
「強いモンスターがいねぇな…弱すぎる」
この森のモンスターの討伐ランクはF〜級Eだ。既にA級以上のステータスのセインからすれば退屈な相手だった。
それにこの森に来てからかなりの数のモンスターを討伐し、もう周りにモンスターがいないのだ。
勿論倒したモンスターの証になる物は既に暗黒異空間に収納済みだ。
セインが次のモンスターを探していると森の更に奥の方から、この辺のモンスターとは比べ物になら無い気配を感じたのだ。
「ヘブン気づいたか?これは大物だな!森の主か?金になるかもな」
嬉しそうに話すセインにヘブンは冷たく返す
「ええ、気づきました。後セイン様の笑顔が気持ち悪いです。」
無視してセインは気配のする方へ走る。
ヘブンも黙ってついてくる。
気配のある場所に着くとそこには、体長4メートルはあるであろう、ゴーレムと呼ばれるモンスターがまるで門番の様に立っていた。
ゴーレムのこの世界の討伐ランクはB級相当だ。熟練と呼ばれる数々の死線を乗り越えてきた冒険者でも手こずるモンスターなのだ。
だがこのゴーレムは一般的に知られるゴーレムとは違っていた。
まず体長4メートルもあるゴーレムはいない。いたとしてもせいぜい3メートルだ。
そして1番違うであろう所は、このゴーレムの色が金色だったのだ。
一般のゴーレムは灰色や木の色の様な地味な色なんだが、このゴーレムの体の表面は金色に輝いている。
セイン達がある一定の距離に近づくと金色の
ゴーレムは直立不動の状態から急に姿勢を変え、一直線にこちらに突進してきた。
「まぢかよ!やべっ!」
ゴーレムの頭上から振り下ろす腕をスレスレで避ける。
そしてセインは腰にかけていたデスライズを抜き、《武器改造》でデスライズに施していた効果を発動させる。
「付加黒魔法」
そして直ぐにゴーレムの背後の裏を取りまたもや黒いオーラを纏っているデスライズで、ゴーレムの背中を切り裂いた。
「ゔおぉぉぉ!」
悲鳴をあげるゴーレムだが、その後急に立ち止まり動かなくなってしまった。
それこそ、付加黒魔法の効果だった。
付加黒魔法を発動した状態のデスライズで斬られた者は、一定時間の幻覚を見せるという効果だ。
更に斬れば斬るほど幻覚は濃く深くなっていき、その間完全に動きが止まるので、楽だなと思いデスライズに追加していた。
セインはゴーレムが止まっている間に、ゆっくりと歩いて近づくと先ほど盗賊達を殺ったのと同じ効果をデスライズに発動させ、刀を盗賊達に振るったのとは比べ物になら無い速さで一振りした…。
ゴーレムの首は地面に落ちた。
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