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後輩の値踏み

※このお話は、冴島さえじまさん視点です。

 うわさの新人と対局した翌日、オレは食堂で駒込こまごめとばったり会った。

 カツ丼を食べていたら、いきなり声をかけられた。

「まどかちゃん、となりいい?」

「いいぜ……っていうか、ふだんは許可取らないだろ」

 こういうときはなんかあるんだよなあ。

 駒込は椅子を引いて座った。お盆には月見うどん。

 駒込はそれに手をつけず、

「対局した印象として、どう?」

 とたずねてきた。

 なるほどね、その件だったか。

 オレはあのあと、応援団の練習で抜けてしまった。

 感想戦もなにもしていない。

「一局じゃなんとも言えないが……戦力にはなるだろ」

 ひかえめなコメントにしておく。

 正直、そこそこ強いと思った。だけど錯覚という可能性もあるもんな。

 駒込はうなずいて、

「たしかに棋力はありそうなのよね。大会で力が出せるかどうかが問題」

 と返した。

 駒込の言いたいことはわかる。

 チェスクロも知らなかったし、持ち時間の使い方もおかしかった。

 純粋に慣れてないんだろうな。

 オレはお茶を飲み、それからつまようじを手にした。

「どのみち傍目はためは出ないんだろ。不戦敗にするくらいなら埋めとけよ」

 傍目っていうのは、うちの部の部員だ。

 観る将だから大会には出ないと言い張っている。

 ふん縛って対局させるという手もあるんだが、幹事に怒られそうだ。

 駒込はようやく箸を手にした。ひとくちすする。そしてこう言った。

「もう一回呼び出す口実が欲しいのよね。昨日はなんだかんだで断られちゃった」

「それなら心配ないんじゃないか」

「どういうこと?」

「終局の態度、見ただろ。ありゃ相当な負けず嫌いだぞ。部室の場所さえ教えとけば、自分から来ると思うね」

「……そう?」

 こういう心理を読むのはヘタなんだな。

 駒込は納得していないのか、ぼんやりしながらうどんをつついた。

 その拍子に卵の黄身が割れて、中身があふれだす。

 オレは椅子にもたれかかって、歯の掃除。

 あしたの昼飯を賭けてもいい。あいつは来る。絶対に、ね。

 リベンジを申し込まれたときのために、また準備しとくか。

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