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こちら、駒桜高校将棋部  作者: 稲葉孝太郎
第7局 どたばた幹事会編(2013年7月23日火曜〜8月3日土曜)
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35手目 エントリーする少女

挿絵(By みてみん)


 攻めてダメなら、受けるわけだけど、パッと見6三金かしら?

 6三金に6五桂は、6四歩で終わり。だから、先手が6四歩と先に打つ。同金、6五香、同金、同桂、7六桂が進行例ね。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 もちろん、6四歩に7三金と逃げる手も考えられるけど、それは6五香がありそう。6五香、7六桂、6三歩成、8八桂成、同玉、9七歩成、同香、同香成、同玉、7五角。前回と違って、これは後ろに引くしかないわね。8八玉、9一香、7三と、同桂、6二香成、9七角成、7八玉……うッ、詰まない。それどころか、詰めろがかからない。

 ということは、6三金、6四歩には、同金ね。7三金は先手有利と見たわ。

 私は、6三金と寄った。

「あれ? 先に逃げるんだ?」

 マスターは、ちょっとびっくりしたみたい。7六桂馬と予想してたのかしら? まあ、第一感はそっちかもしれないけど。

 私はコーヒーを飲みながら、ちらりと店内に視線を走らせた。知ってる人は誰も……いたッ! 隅っこにいるの、姫野(ひめの)さんじゃない? なにしてるのかしら? 本を読んでるみたいだけど……どうせまた将棋の本なんでしょうね。

 私がそんなことを考えていると、盤面でパチリと音がした。

 振り返ると、予想通りの6四歩。私は同金と取る。マスターは10秒ほど考えて、さらに6五香車と走った。同金、同桂馬。ここまで進めて、私は再度読みを入れる。

 攻めるなら、7六桂でしょうね。あるいは、7三香車みたいな手もあるかも。

 両方読んでみましょうか。まずは、7六桂から。先手は7三歩、同桂、同桂成、同角、6三金、8八桂成、同玉、9七歩成、同香、同香成、同玉。そこで、9六歩か7五角か。

 9六歩には、単純に9八玉や8八玉とかもありそうなのよねえ。同玉でも、9五香、8五玉で全く詰みそうにないし……だから、9六歩は却下しましょう。7五角かしら。ただこれも、8八玉と引かれたら、継続手が難しい。でもでも、後手玉もすぐには詰まない。だから、9一香と打って、7三金、同玉と金を入手するのもありね。


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)


 さて、次は7六桂に代えて、6三香の展開ね。今度は、7筋に歩が残ってるから、7三歩の打ち込みがない。先手は桂馬を受けて、6六歩かしら? それとも、6六銀? 6六歩なら、今度こそ7六桂。7三歩、同桂、同桂成、同角のとき、6三金と打てないのがミソ。香車が攻守一体になってて、いい感じよ。


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 オッケー。どうやら、6三香の方がいいみたいね。そう指しましょう。6三香。

 この手を見たマスターは、6六歩じゃなくて、6六銀を選んだ。これは問題なし。私は7六桂と跳ねる。7三歩、同桂、同桂成、同角、6五桂。わお、攻めますね、マスター。

 この順は読んでなかった。6五桂が角当たり。

 とりあえず、8八桂成とするわよね。同玉、9七歩成、同香、同香成、同玉。ここで6四角が成立しないかしら? 7五歩とムリヤリ止められたら、7九角と勝負する。9八玉なら2六龍と銀を補充して、9七銀からの詰めろ。9六玉なら……8八角成としてみる? とぼけてる感じだけど、7四歩なら9七角成、8五玉、8四歩、7六玉(同玉は6六馬)、8七馬寄、6七玉、6五香、7三歩成、同玉。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 これは、さすがに後手勝ちでしょう。そう読んだ私は、8八桂成と飛び込んだ。

 同玉、9七歩成、同香、同玉、6四角ッ!

「そんな手があるのか……」

 マスターは溜め息を吐く。そして、王様を8八に引いた。

 あらら、これは粘りが利かなくなった気がするわよ。もう一回7六桂と打ちましょう。

 私が二度目の両取りをかけると、マスターは即座に7八玉と寄った。ノータイムで6八桂成としかけた私は、そこで指を止める。

 ……6八桂成、同玉は、すぐには寄らないかも。もちろん後手優勢だけど、もっといい手があるかもしれないわね。例えば、9七角成とか……。放置して7三歩なら、8九角が痛打よ。6九玉は、6八桂成、同金(同玉は7九馬、7七玉、7八角成、7六玉に8七馬として同玉、8六金、9八玉、9七香まで)、8七馬、7八香。

 ん、ダメだわ。これは寄ってなさそう。後手は7二歩成、同金、同龍で詰んじゃう。

 うーん、ということは、9七角成があまりよくないのかも。

 素直に6八桂成? 同玉になにを指すかが問題だ。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 ここで4六角が決まるとかっこいいんだけど……5七香くらいでダメかしら。6五香、8四桂、6六香、6七歩……なんとも言えない。後手も悪くなさそうだけど、とにかく龍の横利きがうざいわ。

 むむむ……これは難しくしてしまったかも。手拍子で7六桂が疑問だったかしら。

 ……いや、そうじゃないわね。多分、こっちが攻め急ぎ過ぎなんだわ。よく考えたら、私の玉は詰まないわけだし、詰めろの連続どころか一手スキの連続でもオッケーなはず。だから、やっぱり9七角成として、7三歩に8九角、6九玉、6五香、7二歩成、同金、6三金(9二金なら8三玉と立つ)から6八桂成として、同玉なら7九馬、7七玉、7八角成、7六玉、8七馬、同玉、8六金からの詰み。6八桂成に同玉じゃなくて同金なら、6六香車と銀を払いましょう。これで詰まなければ、私の勝ちのはず。

 7二龍、9三玉、9五香、8四玉、8三龍、9五玉、9三龍、9四歩、8四銀、9六玉、9四龍、8七玉……うん、詰まなさそう。9五香に代えて7三龍なら、9四玉、7四龍、9五玉、8四銀、9六玉……あッ! そこで7六龍があるか……8六銀は、9五金で詰んじゃう。

 だけど、8六馬なら受かってない? 9五金、9七玉、8六歩、6八香成、同玉、3八龍とすれば、ギリギリ詰んでるかも。


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)


 ただ、途中でもっと変化があったような?

 9五金の代わりに、9九香かもしれない。その前でも、竜の動きが多様だ。

「マスター、手伝いお願いしますぅ」

 アルバイトの悲鳴。どうやら、考え過ぎてしまったらしい。

「ごめん、ちょっと離席するよ」

 そう言ってマスターは、カウンタの奥に引っ込んだ。

 なんだか申し訳ない気持ちになってくる。昔は、もっとポンポン指してた気がする。長考癖がついたのは、大会の30分60秒に合わせてるからかしら? 部室でも、時間制限なしの対局はやっていない。

 私は大きく背伸びをする。そして、店の隅っこに視線を走らせた。姫野さんは相変わらずの澄まし顔で、本を読んでいる。私に気付いていないのか、対局に興味がないのか……大会の様子を見る限り、観戦が嫌いってわけじゃなさそう。むしろ好きそう。

 私がチラ見しているにもかかわらず、姫野さんはこっちを向かなかった。それとも、気付いてて無視してるのかしら? カウンタで将棋指してるから、結構目立ってると思うんだけど。

「ごめんごめん、お待たせ」

 マスターが戻って来た。私も椅子に座り直す。

 そして、9七角成を指した。


挿絵(By みてみん)


「ほお、6八桂成じゃないんだね」

「それはちょっと足りないかな、と……」

 私の返答に、マスターは曖昧に頷き返した。

 どこまでが読み筋なのか、イマイチ分からないのよね。

 そんなことを考えてる私の前で、マスターは持ち駒の金に手を伸ばした。

 金?

 

挿絵(By みてみん)


 そこに金を打つ順は読んでなかった……。

 これって詰めろ? 6五香、9四桂、9一玉……詰みはしないか。

 ただ、9一玉に9三金が、必至に近いような……まず8一に駒を打つのはダメ。7一金は7二龍の切りで終わり。7三角とかも、同じように龍を切って終了。だから、9三金は必至だと思う。先手玉を詰ますしかないわけだ。

 ……先手詰む? 8九角、6九玉、6八桂成は既定路線。そこで同玉か同金。同玉なら、一応6六香か6九馬が継続手段になる。感触がいいのは、6九馬なのよね。5七に逃げられるのを防いでるから。同玉とできないから、7七玉の一手。7八角成、7六玉として……あ、なんだ。例の筋じゃない。8七馬、同玉、8六金で詰み……ん? 8七馬に8五玉だと、どうなるの? ……8四歩、7四玉なら、7三金、7五玉、9七馬引までか。駒の連携が素晴らしいわね。問題は、8四歩に同玉だけど……7三金、9五玉、8三桂? 同金、同金として、後手玉が安全になるんじゃないかしら。先手は8四金打の一手詰み。

 よし、8四金は読みから抜けてたけど、こっちが勝てそうね。6五香ッ!

「拠点の桂馬を取られちゃったか……」

 マスターはそう言いながら、9四桂と打ってきた。私は9一玉と引く。

 お次は9三金、かと思いきや、別の手が指された。

 

挿絵(By みてみん)


 ふむ、8九角を防ぎましたか。

 でも、これならもっと楽に手を作れそうね。後手は詰めろになってないし。

 私は10秒ほど考えて、6六香車と銀を取った。

「いやー、きついねえ」

 マスターは嘆息混じりに6七歩。私は用意していた決め手を放つ。

 

挿絵(By みてみん)


 9五角。6六歩なら、6八桂成、同金、同角成、同玉、3八龍。そこで5八香は7八金、同玉、5八龍、6八金、7五香、7七歩、7九金まで。

 最初の6六歩に代えて7七歩なら、8四角と金を取って詰めろ。

 私は盤面から顔を上げ、軽く息を吐いた。マスターは観念したみたいに6六歩。以下、6八桂成、同金、同角成、同玉、3八龍としたところで、マスターが軽く頭を下げた。

「負けました」

「ありがとうございました」

 私は冷えたコーヒーを飲み干し、こきりと首を鳴らす。

 よくよく考えたら、休憩しに来たはずなんだけど……疲れちゃった。

「いやあ、香子ちゃん強いねえ」

「いえ……それほどでも……」

 これは本音。だって、店内に姫野さんがいるから。

 ここで天狗になったら、彼女に鼻で笑われちゃいそうだもの。

「昔はもっと早指しだった気がするけど?」

「最近は大会とかあるんで、じっくり考えてますね」

 私は正直に答えた。それを聞いたマスターは、思い出したようにポンと手を叩く。

「そうそう、香子ちゃん、駒桜(こまざくら)名人戦出ない?」

「名人戦ですか……」

 店内の壁には、駒桜名人戦のポスターが貼られていた。毎年恒例の行事だ。もっとも、私は参加したことがない。一度だけ、おじいちゃんと観に行ったくらいね。

 噂では、かなりレベルの高い大会みたいだけど……全員参加だし……。

「香子ちゃんなら、結構いいところまで行けると思うけどね」

「でも、エントリーの仕方とか、分からないですし……」

 私がお茶を濁すと、マスターは笑みを浮かべた。

「ああ、そんなの簡単だよ。何なら、代わりに登録しといてあげようか?」

 ……他人がしていいの? 替え玉とか……ないか。狭い世界だし、顔バレするわよね。

「開催日初日は8月4日、参加費は学生1500円だよ」

 ぐッ、1500円は微妙に痛い……けど、案外部費から出たりしないかしら?

 後で部長に聞いてみましょう。

 ……ん? なぜか殺気を感じる。

「少しよろしいでしょうか?」

「うわッ」

 振り返ると、姫野さんが少しきょとんとした顔で、後ろに立っていた。

「……お邪魔でしたかしら?」

「い、いえ、お邪魔じゃないです」

 私はよく分からないことを口走りつつ、両手を振った。

 そうこうしているうちに、姫野さんは隣に腰を下ろす。

裏見(うらみ)さんには、ぜひ名人戦に出ていただきたいですわね」

「へ?」

 私は、はしたない声を上げてしまう。

 まさか、姫野さんに出場を催促されるとは思わなかったから。

「でも、私は今まで一度も出てないですし……」

「それは気になさらずとも結構です。社会人になってから初参加という方もいますし、年齢や棋歴を気にする必要はありませんことよ」

 ありませんことよ……か。姫野さんが言うと、結構微妙に聞こえるのよね。彼女は上位の面子だし、他人にはそう言い易いんでしょうけど。

「それに、香子ちゃんなら、1回戦くらいは突破できるよ」

 マスターのコメントに、私は顔を上げた。

「そんなものですか?」

「別にアマ強豪がごろごろしてるわけじゃないから」

「2回戦は?」

 私の質問に、マスターは肩をすくめてみせる。

「そこから先は何とも言えないね」

 これは、暗に勝てないと言ってるのかしら? それとも籤運の話?

 判断し兼ねるわね……1回戦突破に1500円か……。

「出場料は、部費から出るはずですわ。公式戦ですから」

 うッ、金欠を読まれましたか。姫野さん、なかなか勘が鋭いじゃない。

 これで断る理由もなくなった。後で志保(しほ)部長に請求すればいいわけだし。

「エントリーは、どうすればいいんですか?」

「それは私がやってあげるよ。うちは窓口のひとつだし」

 あ、そうなんだ。

「というか、姫野さんもそれで来たんじゃないの?」

 マスターの問い掛けに、姫野さんはおしとやかに頷き返す。

「はい、申込用紙をいただきに」

「じゃあ2枚だね。記入だけしてくれれば、私が事務局にファックスしとくから」

 なーるほど。姫野さんのいる理由が分からなかったけど、そういうことなんだ。

 息抜きってわけじゃなかったのね。

 マスターは申込用紙を取りに、2階へ上がって行った。

 私と姫野さんだけが残される。何となく気まずい。

 話題もないので黙っていると、姫野さんの方から話し掛けてきた。

「今日の幹事会は、いかがでしたか?」

 ん? 私が出たの知ってるんだ。猿渡(さわたり)さんあたりのリークかしら。

「話し合っただけで、なにも……」

「そうですか……」

 その話題は、それっきり。私から、なにか聞き出すつもりだった?

 っていうか、姫野さんが来てなかったの、なんで? 主将なのよね?

 忙しいのかと思ったけど、ここにいるってことは、暇なように見える。

「ところで大川(おおかわ)さんから、合宿の話はお聞きですか?」

「合宿?」

「はい、合同合宿の話ですが、なにも?」

 ……そんなの、なにも聞いてないわよ。私は首を左右に振った。

 すると姫野さんは、ほっそりとした指でくちびるを撫でた。

「そうですか……でしたら、夏合宿は無理ということですね……」

「毎年やってるんですか?」

「いえ……男女混合を見据えて、少し鍛錬せねばと思ったのですが……」

 ふーん……何か、ピンと来ないのよね。

 男女の違いって、そんなに重要なのかしら? 姫野さんたち、やたら拘ってるわよね。

 私は、おじいちゃんとばっかり指してたから、感覚が違うのかも。

 再び会話が途切れ、私は手持ち無沙汰にカップの底を見つめた。

 マスターが2階から戻って来たのは、それから1分後のことだった。

場所:喫茶店『八一』

先手:喫茶店のマスター

後手:裏見 香子

戦型:棒銀vs四間飛車


▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲5六歩 △4二飛

▲4八銀 △3二銀 ▲2五歩 △3三角 ▲6八玉 △6二玉

▲7八玉 △7二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲5八金右 △8二玉

▲3六歩 △7二銀 ▲6八銀 △4三銀 ▲5七銀左 △5二金左

▲3七銀 △5四歩 ▲2六銀 △3二飛 ▲4六歩 △1二香

▲6八金上 △5一角 ▲1六歩 △1四歩 ▲3八飛 △6二角

▲3五歩 △4二金 ▲9七角 △5三金 ▲6六歩 △6四歩

▲8六角 △8四歩 ▲6五歩 △同 歩 ▲7七桂 △8五歩

▲9七角 △9五歩 ▲同 歩 △9六歩 ▲8八角 △9五香

▲3四歩 △同 飛 ▲同 飛 △同 銀 ▲3一飛 △3九飛

▲2一飛成 △7四歩 ▲1二龍 △2九飛成 ▲6七香 △8四桂

▲5九桂 △6三金 ▲6四歩 △同 金 ▲6五香 △同 金

▲同 桂 △6三香 ▲6六銀 △7六桂 ▲7三歩 △同 桂

▲同桂成 △同 角 ▲6五桂 △8八桂成 ▲同 玉 △9七歩成

▲同 香 △同香成 ▲同 玉 △6四角 ▲8八玉 △7六桂

▲7八玉 △9七角成 ▲8四金 △6五香 ▲9四桂 △9一玉

▲8九香 △6六香 ▲6七歩 △9五角 ▲6六歩 △6八桂成

▲同 金 △同角成 ▲同 玉 △3八龍


まで106手で裏見の勝ち

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