220手目 卒倒する少女
菅原先輩は、長考からようやく顔を上げた。
「難しいな……読み切れねえ……」
局面は既に終盤の入り口。
四天王と五分で切り合いに持ち込めるなら、御の字だ。
「適当な受けがないから、攻めるぜ。2九飛成」
本命きた。
私は30秒ほど読み直してから4四龍。
菅原先輩は4九龍と、金を取り合う。
そして、私は5九香と受けた。
ほとんど入れ違いに、菅原先輩は5八歩と叩いた。
「5三歩ッ!」
私は叩き返す。
同金、5四桂、同金。うッ、指し手が速い。
私が読み間違えてる? ……いや、そうは思えない。桂金交換だ。
「同龍」
「5二金」
「5八龍」
私は歩を払った。当然の同龍に、同香、5三歩。
ここまでは読み筋通りだ。
私の攻めに、菅原先輩の受け。駒割りは金香と角の交換。
まったく悪くない。
攻めを継続するなら、飛車打ちだと思うけど……どこに打つか……とりあえず、2二飛、3三角みたいに、角を打ち返される場所はNG。打つなら、3二か1二……3二か1二……あんまり変わらない……こともないか。3二なら、3七歩成に同飛成とできる。受けも考えると、3二の方が良さそうだ。
ただ……3二飛打自体は、痛くもなんともない。逆に6五角とか見えて、危ないかも。この切り返しがあるなら、やっぱり1二に打って……いや、もっと厳しく、5四歩と味付けしたい気がする。5四歩、同歩、3二飛。これで6五角の筋を防ぎつつ、次に4三金とゴリ押しするくらいで、後手陣は崩壊しそう。例えば、ムリヤリ6五角としてきたら、4三金、4七角成、5二金、同銀、5一銀、同玉、4二金以下、先手勝ち。4七角成は疑問だから、4三金に4二桂も考えられるけど、それは5二金、同玉(同銀は4二飛成で桂得)と引っぱり出す順があるから、3二飛の時点で4二桂と受けるはず。
要するに、現局面から5四歩、同歩、3二飛、4二桂まで見える。
私は持ち時間を確認する。私が7分、菅原先輩が9分。
ひとまず、必然的なところまで進めますか。5四歩。
「同歩」
以下、3二飛、4二桂と進んだ。ふむふむ、読み筋は噛み合ってるわね。ここで、どうするかなんだけど……ちらっと思いついたのは、4四金の置き物。
(※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)
一見ぼんやりしてるけど、4三金打と重ねていけば、さっきと同じになる。同金、同金、5二金、同金、同玉とか。これは先手がいい。
「4四金」
私は一回空打ちしてから、4四に金を貼った。
菅原先輩は、眉間に指を当てる。
「ん、そいつは……」
なんですか、「それ悪手だろ」みたいな反応は。やめてください。
菅原先輩は爪先で床を小突いて、それから長考に入った。
い、嫌な予感がする。見落としてた?
私も読みを再開した。
……………………
……………………
…………………
………………
別に見落としてないと思うけど。
「6五角」
え? 受けなかった?
私は反射的に、持ち駒の金へと指を伸ばした。
人差し指と中指でそれに触れつつ、もう一度読み直す。
4三金打、4七角成、5二金、同玉、5三金打……これは勝ちだ。でも、4七角成とできないなら、6五角と打った意味がないような……。
「……ん」
私は目を細めて、少し前のめりになる。
7六角打と重ねたら……8八銀、6五桂……あ、7七に打つ金がない。そっか。金を手放すと、8七の地点を1回しか受けれないんだわ。これは私の負け。
危ない。ほんとに見落としてた。き、軌道修正可能?
菅原先輩の表情は、さっきより軽くなっていた。私は焦る。
……攻撃を一旦中止するしかないか。
「3六飛成」
「もう少しじっくり考えるかと思ったが……」
そうする時間がない。3六飛成で一発KOはないはず。
「4九飛だ」
菅原先輩は、飛車を力強く打ち込んだ。
これも厳しい。けど、4七角成、同龍、同龍には、5六角の返しがある。以下、4九龍と入り直すのは、8三角成が詰めろ(6一金まで)。7四角と消す暇がない。
とりま、7六角打を防がないといけないから……。
「7六銀」
私は、7六の地点を銀で埋めた。
当初の構想からどんどんかけ離れてるけど、仕方がない。
「ここで中盤に戻るのか、キツいな」
菅原先輩は、チェスクロを確認した。
残り時間は、お互いに3分。
「こうなったら銀を目標にするしかないだろ」
菅原先輩は、3五歩と打ってきた。
これは同龍とできないから、6六龍。
以下、4七角成、5九金(これを入れないと8八角、同玉、6九龍がある)、1九飛成、4三歩と進んだ。
「7四桂ッ!」
これも強い返しだ。さっきから捻り合いになっている。
7七龍、1一角。
ぐッ! 強烈ッ!
4二歩成、同銀、3四金打とムリヤリ受ける。攻守が逆転してしまった。
「攻め駒が足りねえ……」
菅原先輩は、ニット帽の端を引っ張った。
「これなら5八馬と切った方が良かったか……いや……」
独り言を呟きながら、菅原先輩は盤面全体を見回す。
私の陣地に綻びはないはず。ゆっくり攻めてくるなら3六歩〜3七歩成だ。それは5四香と走って、5三歩、4三歩、5一銀、5三香成、同金、同金、同玉、6五桂、同馬、同銀、7七角成、同桂みたいな展開になりそう。勝ち確定とは言えないけど、勝算はある(こっちの王様は半分棺桶なのが難点)。
とは言ったものの、菅原先輩の棋風的に、そっちじゃない気がするのよね。もっと過激に攻めてくるような……。
ピッ。残り1分。
「やべえ、時間がねえ」
菅原先輩は秒読みに入るのを避けて、3二香と打った。
やっぱり過激だ。私も、貴重な残り時間を投入する。
……これも5四香が効きそう? 5四香、5三歩、4三歩、5一銀、5三香成、同金、同金、同玉、6五桂……ん? ダメかしら? 3四香が残ってるようじゃ勝てないかも。そもそも、4三歩に3四香、4二歩成、4四角、5二と、同玉でもダメなような……なにか他にうまい手は……。
ピッ。私も残り時間が1分を切った。考えがまとまらない。5四香のあとで4三歩の路線は、どうにもならなそうだ。だとしたら……。
「5四香」
残り40秒のところで、私は香車を走った。
菅原先輩はノータイムで5三歩と打つ。
ここで3三歩があるんじゃないかしら? 3三歩、同香、5三香成、同銀に、3三金左と交換を回避して、香車を取り切る。
(※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)
4二銀とトリッキーな受けを見せてきても、同金とせずに(同金は7七角成があるから危険)、5四桂、5三玉、4二桂成、同金、同金、同玉。これはさすがにいい。
ピッ。秒読みに突入した。私は残りの筋も読む。3三歩に同銀なら、5三香成、同金、同金、同玉、4三金打、6二玉と下がらせて、3三金直、同香、5三銀、7二玉。これで5筋は一段落する。相手も棺桶状態になるから、なんとかなりそう。
ピッ。56秒のアラームが鳴ったところで、私は3三歩と打った。
「チッ、気付いたか」
舌打ち禁止。
「同銀」
「5三香成」
私は香車を成り込む。同金、同金、同玉、4三金打。
「トライするって手もあるんだが……」
菅原先輩は、入玉を匂わせた。おそらく5四玉のことだろう。
でもそれは、3三金直、同香、4四銀と縛る手が効きそう。以下、4六歩、5七桂と上部を塞げば、菅原先輩の王様は立ち往生で討ち取られてしまうはず。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
引いたッ! ここは3三金直……ん、待ってよ。5四香の切り返しが気になるかも。3二金直、5九香成は勝てないし、5八歩と打つのも、同香成、同金、同馬で危ない。さらに、3三金直に同角という手もある。同金となっては、攻めが続かない虞も。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!
「5四桂ッ!」
私は王手をかけた。
菅原先輩はノータイムで7二玉と深く入る。
王手は追う手になってなければいいけど……3三金直。銀を補充。
「……同香」
同角じゃないんだ。なにか嫌な筋があった?
いずれにせよ、これで一手稼げる。5三金。
次に6二銀からのガジガジな攻めを見せる。
「6一香」
ぐッ……ちょっと攻めが単純過ぎた……。
けど、これで5五香の筋も消えたわ。
「6六歩」
私は力強く、龍の横利きを通した。
「くそ、めんどくせぇことになったな」
菅原先輩は59秒ギリギリまで考えて、2五馬と引いた。守備の方針だ。
5二歩と打たれないうちに、私は4二桂成と成っておく。
「6九金」
ご、ごり押しきた。
同金、同馬。ここで8八……ん、8八玉に6六桂だと……?
同龍、7八金、9八玉、8八金打……詰んでるッ! しまったッ!
4二桂成が緩手だった。
私は後悔する暇もなく、6七玉と上がった。
1七龍、5七歩、5八金。張り付かれる。
「こ、これは詰めろ……?」
私は必死に読む。詰めろ……じゃないはず。
ただ、一手スキなのは間違いない。次に4六金で詰めろがかかるからだ。
菅原先輩の王様に詰めろは……かかるわけないか。でも、5二成桂は二手スキ……なんだけど、なにかの拍子に5七龍〜5三龍と抜く手順が発生するかもしれない。そうなったら終わりだ。
ピッ。5二成桂。結局、5三の金に紐をつけた。
菅原先輩は、4六金と詰めろをかけてくる。
「5六金」
この受けに賭ける。
「なんだそれ……受けになってるのか……?」
菅原先輩は意表を突かれたのか、思わず眉をひそめた。
「5五歩、4六金、同歩、6一成桂、4七歩成……ヌルいか……?」
それも厳しい。ほとんど菅原先輩に下駄を預けた状態だ。
5五歩なら4六金、同歩、6一成桂として、一手稼げる。6一成桂は一手スキのはずだから……ん? 一手スキかしら? この形、振り飛車でよくみるような……。
「あッ!」
私は慌てて口元を押さえた。6一成桂は一手スキじゃないッ! 詰めろよッ! 7一成桂と入って、8二玉、7二成桂、同玉、6一銀、8二玉、7一銀、同玉、7二金まで。7一成桂に同玉は、6二銀、7二玉、6一銀打、8二玉、7一銀不成、同玉、7二金。どう対処しても詰んでる。勘違いしてた。
「……素直にいくぜ。5五歩」
4六金、同歩、8五銀。
私は王様の脱出口を作った。放置だと5七金、同銀、5六金で詰んじゃう。
4七歩成、6一成桂。
そこで、菅原先輩の指が止まった。
「しまった……歩成りは手拍子だったか……?」
可能性はある。5七金、同銀、5六金の方が怖かったから。
「一回受けるッ! 6一玉だッ!」
私は5二銀と打って、7二玉に6三金と追っかける。
8二玉。うぅ、さすがに詰めろが続かない。
「6一銀成」
私は一手スキで我慢した。
これで詰んでるのなら、仕方がない。
菅原先輩は身じろぎもせず、盤面を見つめている。
「……まじい、読み切れねえ」
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
菅原先輩は、6八馬と入った。私はノータイムで7六玉。
「くそッ! 入玉が見えるじゃねぇかッ! 5四銀ッ!」
菅原先輩は、上部を封鎖しにかかった。
私は6四金と引く。
「そいつは捕まえた感があるぜ」
菅原先輩の指が、持ち駒から6三の地点に伸びた。
え? 重くない?
7一成銀、同玉、5四金、同金、6三銀が詰めろ……だけど、6七銀があるのか。同龍、同馬、同玉、5七金、7七玉……詰ま……詰むッ! 7八飛、同玉、1八龍、7七玉、6八龍、7六玉、6六龍までだわッ!
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
私は6三同金と取った。同銀に再び考える。6二金は一手スキだけど、6四銀と立たれるのが先に詰めろになってしまう。ひとまず受けないといけない。
「6五香」
私は6四銀の防止で、香車を打った。
王様は窮屈になるけど仕方がない。
「6三香成が詰めろか……6四桂」
桂馬で受けた? 歩じゃないの?
同香……いや、同香は同銀で藪蛇になる。むしろ7五玉と上がって……7七馬、同桂、6七飛、7六金……うぐ、これは受けになってない。桂馬と取られちゃう。や、やっぱり同香で、同銀、7五金……ううん、違う、6六に利かせる意味でも6五金だ。同銀なら同玉でダイブ。
「同香」
「ん、取るのか?」
取りますが、なにか?
「この手順違いを見落としてるぜ。7七馬だ」
先に龍取り……?
同桂、6八飛(詰めろ)、6五金(詰めろ回避)、6四銀……あ……れ……。
6四銀が詰めろですってぇッ!?
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!
「同桂ッ!」
即座に6八飛が下ろされる。
6五金、6四銀。ここで同金は6六飛成の即詰み。
私は7五金打と重ねた。6五銀、同金以下、千日手を目指す。
「千日手にはさせねぇ……1六龍」
諦めないッ! 5六桂ッ!
「意外と寄らねぇな……」
菅原先輩は、三たび舌打ち。
「6七金だ」
6四金左、6六金、7五玉、6五金、同金、6三香、6四歩、6六金。
超乱打戦になる。
「6三歩成ッ!」
私は自玉が詰まない方に賭けた。
「ぐッ……」
菅原先輩の顔色が変わった。
「くっそ、どっかで間違えたな……6五金」
「同桂」
「1四龍」
うぐッ! 7三と、同桂、同桂成、同玉、7四銀の筋を消されたッ!
ご、後手玉は詰まないの? かなり危ないように見えるんだけど……。
例えば7二金、9二玉、8二金打、同銀、同玉……き、金がないッ!?
いや、でも、こんだけあれば詰み筋がどこかに……。
私は全身の神経を集中させる。
……………………
……………………
…………………
………………
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! 見えたッ!
「7二金ッ!」
私は周囲の駒が弾けるくらいのスピードで、金を打ち込んだ。
菅原先輩は、バラバラになった駒も直さずに、9二玉と寄る。
8二金打、同銀、同金、同玉。
「7三と」
菅原先輩は、一瞬きょとんとした。
「バラして8四銀打、同歩、同銀か……?」
違います。
菅原先輩は、私の持ち駒に視線を伸ばした。
そして、ハッとなる。
「か、角があると詰み形じゃねぇか……」
正解。私の王様を寄せるのに夢中で、自玉がおろそかになりましたね。
菅原先輩は、がっくりと項垂れた。
「……俺の負けだ」
「ありがとうございました」
私は大きく息を吐く。四天王の一角を仕留めたわ。金星。
投了図以下は、同桂、7一角、9二玉、8一銀、同玉、8二銀、9二玉、9三銀成、8一玉、8二角成までの詰み。私の王様も詰めろだから、まさに一手違いだ。
「どこで間違えちまったかな」
菅原先輩は9一の香車を空打ちして、それから首を捻った。
「4七歩成がヌルいんじゃないですか?」
「あぁ……そのへんか……」
私たちは、局面を戻した。
「5七金、7六玉、6八馬だったか?」
「そっちの方が本命だと思いましたけど、なんかあったんですか?」
「今振り返ってみると、なんにもねぇな。6一成桂なら6七銀から詰み、7八金打なら6四銀が詰めろ。6八龍と取っても同金で詰めろ継続だ。完全に読み違えてたぜ」
あらら、ポカですか。
「これがあるなら、私の敗勢ですね。4二成桂がヌル過ぎましたか?」
「そうか? 最終的に詰めろで間に合ってるなら、いいと思うぞ?」
うーん……どうなのかしら……。
「でも先に詰めろを掛けれたのは、菅原先輩ですよね?」
「まあ、そうだが……」
私たちは、問題の局面まで戻した。
「5八歩でしたか?」
「6九金が厳しいなら、そうだろうな。けど、そこまで厳しいか?」
本譜を見る限りは、厳しいんじゃないかしら。
「仮に5八歩と打ったら、後手はどうします?」
「5二歩と打つぜ」
これは手堅い……4二金とそっぽに逃げるしかない。
「これがあるなら、5八歩は全然ダメそうです」
「俺が思ったのは、6六歩と突かずに、さっさと5八歩だったんじゃないか?」
「6六歩が疑問でしたか?」
「2五で自陣に利かせられたからな。2五に馬さえいなけりゃ、5八歩に5二歩と打てないぜ。同金でノープロブレムだ。以下、3四香、6六歩とかだな」
5八歩、3四香、6六歩、2五龍、5二銀……完全に手順前後だったか……。
「6二玉のところで、5四玉は入玉できねえのか?」
「それは……4三金って打ったところですか?」
菅原先輩は、軽く頷いた。再び局面を戻す。
「とりあえず、3三金直ですよね?」
「そこで同香とするか同角とするかなんだが……」
「同香なら、4四銀の予定でした」
「そうなんだよな。4四銀は、5五歩、6四玉、6六歩の詰めろ馬取りがある」
ということは、3三同角かもしれない。
対局中はどっちもありそうだったけど、3三同香は明確になさそうだ。
「同角なら同金です」
「同香……6六歩か?」
そこで突くんだ。まあ、入玉阻止なら、龍の横利きは通しておきたいところよね。
「4六馬、6五角、4四玉、3二角成みたいな展開ですか?」
「そのあたりは、なんとも言えねぇな。本線で読まなかった」
私も、この入玉模様の順は、本線で読んでいない。
これはこれで大変そう。
「終盤は、もうちょっといろいろあったと思うんですよね」
4六金に対する5六金の受けとか。
「そうだな。俺の方も、あんなに危なくする必要はなかったぜ」
むむむ、それは勝勢宣言ですか。
「こっちが勝つ順は、なかったですか?」
「4六金以下で、速度が逆転するところあったか?」
質問を質問で返された私は、しばらく悩んだ。
「ないかもしれないですね……」
「5六金に5五歩も詰めろだったしな」
そうなのよね。6一成桂と詰めろをかけても、5七金引、同銀、同金、同金、5六銀で、簡単に詰んでしまう。
私たちが検討を続けていると、隣から捨神くんが現れた。
「先輩、どうでした?」
「わりぃ、負けた」
「あ、じゃあ引き分けですね」
……え?
私たちは、顔を見合わせる。
「引き分けたのか?」
「1番席が千日手2回で引き分けです」
「他は?」
「僕と湯川くんが勝ってます」
むむむ、来島さん、負けちゃったか。
それに、松平も負けたようだ。
「危ねぇ、2−3だと戦犯だからな」
「湯川くんを七将にしといて良かったですね。押井くんと逆なら負けてました」
そんな話をしていると、飛瀬さんも姿を現した。
「裏見先輩……どうでしたか……?」
「なんとか勝ったわ」
「引き分けですね……」
飛瀬さんは、勝ってもあんまり表情が変わらない。
もう少しハキハキしなさい、ハキハキと。
そこへ、捨神くんが口を挟む。
「飛瀬さん、勝ったんだよね?」
こくりと頷く飛瀬さん。
「可愛い上に将棋が強いって、最高だね」
「※◎△$@#*ッ!?」
と、飛瀬さんが倒れたーッ!
場所:2014年度秋期団体戦 1回戦
先手:裏見 香子
後手:菅原 道真
戦型:超速vsゴキゲン中飛車
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲3六歩 △4二銀
▲3七銀 △4四歩 ▲7八玉 △4三銀 ▲3五歩 △同 歩
▲4六銀 △3六歩 ▲2六飛 △5六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲2四歩 △同 歩 ▲3五銀 △7六飛 ▲7七角 △4五歩
▲6八銀 △7四飛 ▲2四銀 △同 角 ▲5四歩 △同 飛
▲1一角成 △6二玉 ▲2一馬 △5二金左 ▲6六桂 △8四飛
▲2四飛 △同 飛 ▲3五角 △4四飛打 ▲4三馬 △同 金
▲4四角 △同 金 ▲4二飛 △5二歩 ▲5三歩 △5一銀
▲5二歩成 △同 金 ▲4一飛成 △2九飛成 ▲4四龍 △4九龍
▲5九香 △5八歩 ▲5三歩 △同 金 ▲5四桂 △同 金
▲同 龍 △5二金 ▲5八龍 △同 龍 ▲同 香 △5三歩
▲5四歩 △同 歩 ▲3二飛 △4二桂 ▲4四金 △6五角
▲3六飛成 △4九飛 ▲7六銀 △3五歩 ▲6六龍 △4七角成
▲5九金 △1九飛成 ▲4三歩 △7四桂 ▲7七龍 △1一角
▲4二歩成 △同 銀 ▲3四金打 △3二香 ▲5四香 △5三歩
▲3三歩 △同 銀 ▲5三香成 △同 金 ▲同 金 △同 玉
▲4三金打 △6二玉 ▲5四桂 △7二玉 ▲3三金上 △同 香
▲5三金 △6一香 ▲6六歩 △2五馬 ▲4二桂成 △6九金
▲同 金 △同 馬 ▲6七玉 △1七龍 ▲5七歩 △5八金
▲5二成桂 △4六金 ▲5六金 △5五歩 ▲4六金 △同 歩
▲8五銀 △4七歩成 ▲6一成桂 △同 玉 ▲5二銀 △7二玉
▲6三金 △8二玉 ▲6一銀成 △6八馬 ▲7六玉 △5四銀
▲6四金 △6三金 ▲同 金 △同 銀 ▲6五香 △6四桂
▲同 香 △7七馬 ▲同 桂 △6八飛 ▲6五金 △6四銀
▲7五金打 △1六龍 ▲5六桂 △6七金 ▲6四金左 △6六金
▲7五玉 △6五金 ▲同 金 △6三香 ▲6四歩 △6六金
▲6三歩成 △6五金 ▲同 桂 △1四龍 ▲7二金 △9二玉
▲8二金打 △同 銀 ▲同 金 △同 玉 ▲7三と
まで173手で裏見の勝ち