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こちら、駒桜高校将棋部  作者: 稲葉孝太郎
第34局 そわそわ文化祭編(2014年10月5日日曜)
242/295

213手目 真っ二つな少女

「フフフ、どうしますか?」

 (つか)さんは、指先で薔薇の刺を撫でた。

 私はそれどころじゃない。なにか指さないと。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「4二銀ッ!」

 私は銀を引いた。

 とにかく6五歩と取らせる。以下、同飛、8六歩なら、今度は塚さんの角筋が止まって、8四歩と打てるようになる。さあ、来なさい。

「6五の桂馬は取りませんよ。1八香」

「2四歩ッ!」


挿絵(By みてみん)


 こうなったら、桂香交換を強制よ。

裏見(うらみ)さんって、結構せっかちですね……1三桂成」

 同銀、6五歩。

 ここで同飛……とできないのか。2三桂がある。

 私は3三金と寄って、ひとまず陣形を立て直した。

「6六香……取り切りです」

 ぐぅ。当初の構想が、完全に崩れてしまっていた。

 8四歩は、やっぱり9五香から殺到されてしまう。

「……8三飛」

 しょうがないから、飛車で取りに行く。

「ボクの飛車も、そろそろ舞台にあがります。5五歩」

 同歩、同飛、5三歩と収めれば……あ、6四歩があるか。これはダメ。

 桂馬を拾って、5四歩に5二歩と謝りましょう。

「8五飛」

「さすがに引っかかりませんよね。5四歩」

 私は5二に歩を打とうとして、手を止めた。

 ……5五歩の方がいい? 同飛、7三角、5九飛、5五歩みたいな。

 私はちょっと迷いつつ、5五歩を選択した。

「Schall we dance……8六角」


挿絵(By みてみん)


 ぐはッ! この手があったか……。

 飛車角交換はさすがにできないけど、放置は5三歩成。先に6二角と防いでも、6四角と出られて万事休す。この子、強い。低く見積もっても、内木(うちき)さんと同レベル。

「これはハマってるんじゃないか?」

 不破(ふわ)さんは、片方の眉毛を吊り上げて、口の端に笑みをこぼした。

「そうだね、ハマってるね」

 えーい、勝手に決めるなッ! 7五歩ッ!

 同歩、6二角、7四歩、7五歩と止めるわ。

「ここで、どうするかなんだけど……」

 塚さんは、少しだけ悩んだ。口で言ってるほど楽観視していないようだ。

「……飛車のサイドステップで」


挿絵(By みてみん)


 1九飛か……端攻めの補強ね。とはいえ、すぐに1四香とは突っ込めない。

 それは同銀、同飛、1三香の串刺しがある。

 どうやら、少しだけ余裕が生まれたようだ。

「6二角」

 とにかく、5筋を受ける。さらに、4五歩から2六角の飛び出しも視野に。5六桂と絡めれば、反撃ののろしを上げられそうだ。

「これも面倒です……3七金」

 くッ、先回りされたか。5六桂と4五歩〜2六角を同時に防いだ手だ。

 とまれ、1四香とされないうちに攻めるしかない。

「4五歩」

「ムリヤリ来るんですね。同歩」

「3五歩」

 さらに畳み掛ける。ここを突くのは怖いけど、しょうがない。

 同歩に2三桂。


挿絵(By みてみん)


「へえ……」

 塚さんは、口元に邪悪な影を浮かべた。

「それはムリ攻めだと思います。太陽を目指して堕ちた、イカロスの嘆きのように」

 さっきから比喩が意味不明。中二病と診ました。

「6八角」

 塚さんは、3筋を角で支えた。

 3五桂が見えるけど、4六銀〜3六歩と殺されそう。

「……7六歩」

「3六銀」

 マズい……また指す手がなくなってきた。

 こんなの右玉と同じで、すぐ崩壊するはずなのに。

 攻められないなら、受けたい……でも、適当な受けがない……。

 局面全体が、漠然とし過ぎていた。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 私は8三飛と引いた。

「5三歩成」

 ん? 利かせたところに捨ててきた? なんで?

 同飛……6四歩? 次に6三歩成とされたら、終了。

 飛車角を同時に動かすことはできないから、どっちかを先に……例えば、8四角と出て、6三歩成、5四飛と縦に逃げるか、あるいは、4三飛と逃げて……あ、待ってよ。8四角自体は意味がないから、6五歩と叩いて、同香、8四角は、どうかしら。

 これなら、5六桂が相当厳しいような……ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「同飛ッ!」

「6四歩」


挿絵(By みてみん)


 私はさっきの続きを読む。

 6五歩、同香、8四角、6三歩成、5四飛と縦に逃げるか、あるいは4三飛と寄って、5二と、5六桂、同銀、同歩、4二と、同飛みたいな感じ。これは攻めが続きそう。

「6五歩」

 塚さんは両手を組んで、その上に顎を乗せた。

「裏見さん、強いですね」

 個人戦優勝者を舐めてもらっちゃ、困るわよ。

「同香です」

 8四角、6三歩成、4三飛。

 ここで5二と……。

「6六歩」

 じゃないッ!?


挿絵(By みてみん)


 て、手堅い。

 一手攻めを遅らせる代わりに、5六桂を阻止してきた。

 でも、手番は私。

「3四歩ッ!」

 私は、右玉形の急所に攻めかかる。

「同歩は攻めが加速しますから……5二と」

 3五歩、4七銀と下がらせてかーらーのーッ!

「5四桂」

 私は、5六じゃなくて5四に桂馬を打った。

 放置は4六歩、5八銀右、6六桂、同銀、同角の強襲だ。

「これは困ったな……さすがは個人戦優勝者……」

 塚さんは、前髪の一房をねじる。

 さあさあ、うまい手があるなら返してみなさい。

「4四桂は、その瞬間がヌルいか……4六桂」


挿絵(By みてみん)


 ん? わざわざ4六に打った? 6六桂が怖くないの?

 6六桂、同銀、同角、4二と、同飛、3四歩、3二金引……難しいか。

 ただ、9九角成〜5六歩と伸ばせれば、こっちが鉄壁になる。

「6六桂」

「7九金」

 その粘りがあったか。

 ちょっと路線変更ね。4五飛〜4二飛〜4五歩としましょう。

 私は4五飛と走った。その瞬間、塚さんの口元が綻ぶ。

「4二と」

 今のダークスマイルは、なに?

 4二とは、読み筋通りだ。

「同飛」

「5四桂」


挿絵(By みてみん)


「そっち?」

 私は思わず、声を出してしまった。

 てっきり3四歩の一手だと思っていた。

 まあ、5四桂は飛車当たりだから、おかしくはない。

 4一飛は4二歩よね。4三飛かしら。あるいは7二飛と回って、6三香成、7四飛。これは桂取りと7七歩成が同時に見えてグッド。ただ、7二飛の段階で7八歩と打たれると、次の手が難しいような気がする。

 ……ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「4三飛ッ!」

「8六角」


挿絵(By みてみん)


「……あッ」

「金取りですよ? どう受けます?」

 し、しまった。この出が痛過ぎる。

 2二金、4二桂成、4四飛、5三角成、7四飛、7八歩は、こっちが悪い。

「よ、4二歩」

 私はガッチリ受ける順を選んだ。

「さすがです。大崩れしないんですね」

 年季が違うのよ、年季が。

 塚さんは29秒まで考えて、6二香成。これも手堅い。

 ぐずぐずしてると、5二成香〜4二成香で終わっちゃう。

「7三飛」


挿絵(By みてみん)


 この反撃に賭ける。

 6四角が怖いけど、それは7七歩成、7三角成、同角で勝負。

「4二桂成、7七歩成、3一成桂、6七と……」

 塚さんは、台本を読み上げるみたいに、符号を並べた。

「これはボクが勝ってる気がするけど……」

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 塚さんは、4二桂成とした。

 私はノータイムで2二金と逃げる。

「ま、逃げますよね」

 塚さんは軽く頷いて、7八歩と受けた。

「同桂成ッ!」

 私は桂馬を捨てた。

 塚さんは、「ああ」と間延びした声を上げて、首をうしろに仰け反らす。

「ムリヤリ馬作りですか。同金です」

 5七角成、3一銀(厳しぃ!)、7七歩成。

「同金は8五歩ですね。同角です」


挿絵(By みてみん)


 ぶふぅ……罠を見破られてしまった……。

 そのためのノータイム指しだったのに。

 私は7七飛成と切って、同金に4五歩。上部を圧迫していく。

「3四歩」

 いたたた……急所……。

 3二金引と交換を迫るのは、同成桂、同金、5二飛で終了。

 私は、しぶしぶ同金とした。

 2二銀成、同銀、3二成桂。穴熊に張り付かれてしまった。

「勝負あったんじゃねえか」

 不破さんは、飴玉のスティックをくるりと回した。

 悔しいけど正論だ。

「……3六銀」

 私は形作りの銀打ち。

 塚さんは、眉毛にかかった髪を整える。

「詰んでるかな……2二成桂」

 同玉、4二飛、3二桂。

「1一銀」


挿絵(By みてみん)


 ……詰んでるわね。

 同玉、1四香、1三歩、同香不成、同桂、同飛成、1二合駒、2二金まで。

「負けました」

「ありがとうございました」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 何が悪かったのかも分からない。初見過ぎる。

「どこで勝ってると思った?」

「ボクの方は薄いんで、あんまり予断はできないんですが……3一銀です」

 銀を引っ掛けたところか。

 確かに、あそこから逆転の芽はないように思う。

「6六桂が酷かったわ」

 全然働いてないんだもの。むしろ、角筋の邪魔になってしまった。

「4五飛と出る前に、6四歩って叩けば良かったんじゃないか?」

 不破さんが、いきなり口を開いた。

「それって……桂頭に飛車を走ったところ?」

「そうそう」

 なんかタメ口なのが気になるけど、ま、いっか。

 私たちは、局面を戻した。


挿絵(By みてみん)


 これは……。

「8六角の防止?」

「同香、4五飛、4二と、同飛。そこで8六角がないから、6三香成」

「後手は、攻め手がないと思いますけど?」

 塚さんは、あんまり納得していない様子。

「4五歩なんて、どうだ?」

「5四桂で?」

「4四飛、8六角、2二金、3一銀……」

 不破さんの読み筋に、塚さんは割り込む。

「あ、待ってください。8六角の前に、1二歩、同玉を入れます」

「ああ、その方がいいかもな。じゃあ、4四飛、1二歩、同玉、8六角、2二金、3一銀、2五歩と突く」

「2五歩? 同歩で?」

「2六歩と垂らす。同金なら4六歩で崩壊するぜ」

 私はふたりの会話を追いながら、頭の中で棋譜を並べた。


【参考図】

挿絵(By みてみん)


 この局面か……確かに、後手も頑張れそう。

「だったら、2五歩は取らないですね。5三角成とします」

「ん、そりゃ7七歩成で……いや、さすがに逃げるか。3四飛」

「4二桂成で、こっちが勝ちじゃないですか?」

 塚さんの問いに、不破さんは両腕を組んだ。

「後手は駒がないんだよな……銀1枚ありゃ、勝ちまであるのに……」

「6七に落ちてるわよ」

 私は、6七の銀を指差す。

「間に合うかね……7七歩成、4三成桂、6七と、3三成桂……」

「その展開は、同飛で意外と難しいかもしれないです」

 塚さんは、形勢判断をちょっと変えた。

 2六の歩が拠点になって、後手もかなりいい感じだ。

 私たちがさらに検討していると、白髪少年がやって来た。

「それ、塚さんの勝ちだよ」

 捨神(すてがみ)くんの指摘に、私たちは顔を上げた。

「勝ってますか?」

「同飛以下、1四香、同銀、同飛、1三合駒と進めて、2二銀成、同玉、3一銀、同飛、同馬、同玉、4二金、同玉、5二飛、3三玉、3四金まで。合駒の種類は関係ないよ。1四香に同飛としないで、1八歩〜1七歩〜1六歩〜1五歩の連打を狙うのは、1八歩を無視して1三香成、同玉、1四歩、同玉、2二銀不成、1九歩成に2四金と捨てて勝ち」


【参考図】

挿絵(By みてみん)


「同玉、2五歩、同玉、2六金打、2四玉、2五銀までだよ。2五歩に1四玉と逃げても、1五歩、同玉、2六銀、1四玉、2四金まで」

 は、速い。もっとゆっくり解説してくださいな。

「……ああ、そうか、金銀の数が足りてんのか」

 不破さんは、真っ先に納得した。

 私は喫茶店バイトの疲れで、ちょっと頭が回らない。

「さすがは捨神の兄貴です」

「アハハ、岡目八目だよ」

 いくら観客席で時間があるとはいえ、この詰み筋を発見してるのは凄い。

 松平(まつだいら)の優勝は、かなりの偉業だと再認識させられた。

「ってことは、5四桂〜6六桂がよくないんだろうな」

 不破さんの指摘に合わせて、私たちも局面を戻す。


挿絵(By みてみん)


「これ、本譜の5四桂くらいしかないと思いますけど」

 塚さんはそう言って、私に怪し気な目配せをしてきた。

 えーい、同性に変な色気を使うなと言うに。

 冴島(さえじま)先輩は、応援団の関係で学ランを着てるだけ(多分)。でも、この子の男装には、プラスαがあるような気がする。私は身震いした。

「待て待て、ちょっとは考えようぜ。ああして、こうして……」

 私も一緒に考える。

 だけど、うまい手が思いつかない。

「……確かに、5四桂くらいしかねえな」

「5四桂、4六桂までは必然で、同桂、同銀は、もっと勝てないですよ」

 それは、対局中も読んだ。6六桂の跳ね違いしかないのだ。

「途中からしか観てないですけど、もっと前から悪いと思います」

 捨神くんはヘラヘラ笑いで、手厳しいことを言った。

 ショック。

「指したい手が多くなったのは、6六香と打ったところですね」

 塚さんは、中盤の仕掛けのあたりまで戻った。

「えーと……3三金寄ってしたところだっけ?」

「そうです」


挿絵(By みてみん)


 私は口元に手を当てて、少し考える。

「……もしかして、2三桂は放置した方が良かった?」

「それもあるかな、と思いました。6五飛、2三桂、2二玉、3一桂成、同銀か、あるいは6五飛、6六香、8五飛、8六歩、8一飛と左辺を収めてから2三桂くらいで」

 うーん、こっちの方が良かったかなあ……でも6一香成があるし……。

「金桂交換ですけど、本譜が相当悪いから、これもありそうですね」

 と捨神くん。

「端の攻防が先手に有利過ぎて、ちょっと……」

 私は、9五歩以下の筋を振り返った。

「指し慣れてますから」

 塚さんは、そう言ってニヤリと笑った。

 えぇ……ってことは、風車がメイン戦法なの……? どんだけぇ。

「よっしゃ、今度はあたしと……」

 不破さんが腰を上げたところで、教室から歓声があがった。

 びっくりして振り返ると、部屋の中央に円陣ができていた。

「何かしら?」

佐伯(さえき)くんの手品だと思います」

 捨神くんの言う通り、どうやらマジックショーが行われているようだ。

 私はヨッシーを捕まえて尋ねる。

「これ、余興?」

「うん……ポーンさんのアイデアで……」

 なんだ、そういうことか。

 どうりでタキシード着てたわけだわ。

「面白そうじゃねえか」

 不破さんは子供みたいな顔で席を立つと、人混みの中に加わった。

 っていうか、割り込んだ。

「僕たちも観ませんか?」

 捨神くんに誘われて、私と塚さんも席を立つ。

 うしろから覗き込むと、椅子を並べて作った即席ベッドの上に、ポーンさんが横たわっていた。両手を胸元で組んで、お祈りしてるみたいに目を閉じている。そしてその横に、佐伯くんが立っていた。

「それでは、この少女を宙に浮かせます」

 佐伯くんはステッキを振ると、なにやら外国語で呪文を唱え始めた。

 私が半信半疑で観ていると、周囲からざわめきが起こる。

「お、マジで浮いてるぞ」

 なんと、ポーンさんの背中が椅子から離れて、宙に浮き始めた。

 どうなってるの、これ?

 ポカーンとする私の前で、ポーンさんは椅子から30センチも浮かび上がった。

「上に糸は張られていません」

 佐伯くんはステッキをポーンさんの上にかざして、仕掛けがないことを確認する。

 拍手ぅ。

 佐伯くんが合図をすると、ポーンさんはそのまま椅子の上に着地した。

 起き上がって、佐伯くんのそばに歩み寄る。

「オーッホッホ、息がぴったり合ってましてよ」

 べたべた。

 佐伯くんとペア組みたかっただけですか、ポーンさんは。

「では、もうひとりマジシャンがいるので、その人にバトンタッチします」

 佐伯くんは、飛瀬(とびせ)さんに向き直る。

「え……私……?」

 全然打ち合わせていなかったようだ。

「いつもみたいに、何か見せてくれないかな?」

「うーん……じゃあ、タネ無し手品をひとつ……」

 飛瀬さんはそう言うと、教室を出て行った。

「どこ行った?」

「逃げたんじゃね?」

 そんな会話が繰り広げられる中で、飛瀬さんはすぐに戻って来た。

 手にチェンソーを持って。

「これから人体切断をします……」

 出たーッ。手品の定番。人体切断マジック。

 でも、このネタなら私も知ってるわよ。

「これって、箱の中にふたり入ってるんじゃなかったか?」

「そんな気がするねぇ」

 隣で箕辺(みのべ)くんが、葛城(かつらぎ)くんと会話していた。

 そうそう、体を折り曲げた人がふたり入ってて、外から見たら切断されたように見せかけるのよ。テレビで見たのか本で読んだのかは忘れたけど、結構有名なはず。

「では、アシスタントを……」

 飛瀬さんは、私に目配せした。

「裏見先輩……お願いします……」

「え? 私?」

 周囲の視線が、私に集まる。恥ずかしい。

「別にアブダクションしたりしないんで……よろしく……」

 どうも、断れない雰囲気だ。

 私は、不承不承前に出る。

「この椅子の上に寝てください……」

 飛瀬さんは、さっきまでポーンさんが寝ていた椅子を指差した。

 私は顔を近付けて、彼女の耳元で囁く。

「打ち合わせしてないけど、大丈夫なんでしょうね?」

「大丈夫です……ばっちこい……」

 私は椅子の上に寝た。

 もうひとりは、どこにいるの?

「では、これから裏見先輩を真っ二つにします……」

 飛瀬さんが紐を引くと、チェンソーが唸りを立てた。

 どうやら本物のようだ。こ、怖い。

「ちょっと痛いけど、我慢してください……」

「え?」

「私の星の医療水準をご覧にいれます……切断して蘇生……」

 回転する刃が、私のお腹目がけて近付いてくる。

 ひーとーごーろーしーッ!

場所:藤花女学園文化祭(2014年度)

先手:塚 夏希

後手:裏見 香子

戦型:風車


▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀

▲6七銀 △4二玉 ▲5六歩 △3二玉 ▲5八飛 △5四歩

▲4八玉 △5三銀 ▲3八玉 △5二金右 ▲4八銀 △3三角

▲4六歩 △8五歩 ▲7七角 △2二玉 ▲3六歩 △1二香

▲4七銀 △1一玉 ▲1六歩 △2二銀 ▲7八金 △3一金

▲5九飛 △4四歩 ▲1五歩 △4三金 ▲4八金 △6四歩

▲2六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7四歩 ▲6八角 △6二飛

▲7七桂 △7三桂 ▲3七桂 △6五歩 ▲同 歩 △同 桂

▲8五桂 △6三飛 ▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 香

▲6六歩 △5一角 ▲9五歩 △同 歩 ▲2五桂 △4二銀

▲1八香 △2四歩 ▲1三桂成 △同 銀 ▲6五歩 △3三金

▲6六香 △8三飛 ▲5五歩 △8五飛 ▲5四歩 △5五歩

▲8六角 △7五歩 ▲1九飛 △6二角 ▲3七金 △4五歩

▲同 歩 △3五歩 ▲同 歩 △2三桂 ▲6八角 △7六歩

▲3六銀 △8三飛 ▲5三歩成 △同 飛 ▲6四歩 △6五歩

▲同 香 △8四角 ▲6三歩成 △4三飛 ▲6六歩 △3四歩

▲5二と △3五歩 ▲4七銀 △5四桂 ▲4六桂 △6六桂

▲7九金 △4五飛 ▲4二と △同 飛 ▲5四桂 △4三飛

▲8六角 △4二歩 ▲6二香成 △7三飛 ▲4二桂成 △2二金

▲7八歩 △同桂成 ▲同 金 △5七角成 ▲3一銀 △7七歩成

▲同 角 △同飛成 ▲同 金 △4五歩 ▲3四歩 △同 金

▲2二銀成 △同 銀 ▲3二成桂 △3六銀 ▲2二成桂 △同 玉

▲4二飛 △3二桂 ▲1一銀


まで135手で塚の勝ち

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