おねむな日々
ふわぁ、こんばんは。
来島遊子だよ。
今日は角代ちゃんのおうちに、パジャマパーティーお呼ばれしちゃった。ゲームして、将棋して、お食事して、おしゃべりして、お風呂入って……あ、それから裁縫も教えてもらったよ。角代ちゃん、やっぱりうまいなぁ。
夜も更けて、角代ちゃんのお部屋で雑談。
デザインの本が主体だけど、将棋の本も一杯あるんだね。
特製イーブイパジャマに包まれて、私はもう眠気マックス。
でもね……。
「それじゃ、第1回、『どうすればカンナちゃんが捨神くんにモテるか会議』を開催するっス。意見のある人は、挙手するっス」
はぁい。
「遊子ちゃん、どうぞっス」
「告白すればいいと思うよ?」
これで解決だね。おやすみ。
「それができたら苦労しない……」
カンナちゃんは、ネガティブ過ぎるよ。
「でも、いつかはしないといけませんことよ?」
そうそう、エリーちゃんの言うとおり。
「捨神くんの方からしてくるとか……ないかな……?」
ないと思うよ。
「Hmm……ちょっとよろしいですかしら?」
「いいっスよ」
「あまり言いたくないのですが……Herrステガミは、同性愛者だと思いますの」
これには、カンナちゃんも顔面蒼白。
「えぇ……どういうことなの……?」
「たっちゃんと九十九ちゃんの間には、確かに恋愛要素があるっスね」
どうして、そうなるかな。
捨神くんがどうかは知らないけど、辰吉くんは違うもん。
「箕辺くんは、女の子に興味があると思うよ?」
「しかし、Herrステガミと仲が良過ぎるのではありませんこと?」
別に、同性と仲がいい=恋愛関係じゃないと思うんだけどなあ。
あんまり突っ込んで勘ぐられるのもやだし、退散するよ。
「とにかく、告白は必要っス。練習するっス」
「えーと……飛瀬カンナ……34歳……出身はN72星雲シャートフ星……宇宙畜産学校を並の成績で卒業後、宇宙探査局に配属……現在、テラ系第三惑星の駐在調査員……趣味はボードゲーム……日本語に堪能……生殖経験はなし……以上です」
会社の面接かな?
「宇宙人設定で練習するんっスか? ……まあ、いいっスけど」
「もう少し、アピールポイントを考えた方が、よろしいかと」
「アピールポイント……」
カンナちゃんのアピールポイントって、なんだろうね。
学年で成績が一番とか、手品がうまいとか、いろいろありそうだけど、恋愛とは関係ないんだよね、これ。
「宇宙探査局員は公務員なので、収入が安定しています……」
「お料理とかは、どうなんっスか?」
お弁当を作ってあげると、好感度アップするかも。
「宇宙船は全自動キッチンだから……ちょっと……」
「噂では、九十九ちゃん、女の子をことごとくふってるらしいんっスよねぇ」
「そうなると、sehr schwierigですわ」
ふらずに全部付き合ってたら、それはそれで問題があると思うよ?
「根本的な問題として、地球人との間に子供ができるかどうか分からない……」
えーと、遠回りにエッチしたいって言ってるのかな?
「そういうのは、あとで考えるっス」
「閃きましたわ。ラブレターを書けばよろしいのです」
難易度が上がってる気がするよ。
「さあ、カンナちゃん、ペンと紙を貸すっスから、ラブレターに挑戦っス」
それじゃ、私たちは別のことして遊んでようか。
……………………
……………………
…………………
………………
「できた……」
じゃあ、将棋は中断ね。
もうこれ、私の敗勢だよ。角代ちゃんとエリーちゃん、強過ぎ。
「見せて欲しいっス」
「朗読するね……『拝啓、時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。さて、私、飛瀬カンナは、母星の遺伝子解析センターにおいて、捨神様との相性を確認したところ、98という非常に高い数値を得ることができました。つきましては、将来的に子孫を残す前提で、お付き合いさせていただきたく存じます。敬具』」
そろそろ、寝ていいかな?
「それじゃビジネスメールっス」
「私の星だと、一般的な書式なんだけど……パートナー捜しの……」
「『子孫を残す』とか、言ってることがストレート過ぎますわ」
「なんで……それが目的なのに……地球人は嘘吐き……」
「とにかく、もっと乙女チックに書くっス」
「乙女チック……? どんなふうに……?」
「ポエムっスよ、ポエム」
……………………
……………………
…………………
………………
「できた……」
「朗読するっス」
好き好き、大好き、捨神くん
あなたの瞳にガンマ線バースト
この気持ちブラックホール
あなたと一緒に スペースクラフト
金星のスーパーローテーションで
恋の風に吹かれていたい
火星のハビタブルゾーンで
夢のマイホーム
ふたりの愛は 赤方偏移
宇宙の神秘 紡いでる
「誰も歌詞を作れとは言ってないっス!」
だめだこりゃ。おやすみ。