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こちら、駒桜高校将棋部  作者: 稲葉孝太郎
第29局 ぶかぷか夏合宿編(2014年8月7日木曜)
208/295

184手目 ニヤつく少女

桐野  駒込○  大場○

吉備  ポーン○ 鞘谷○

神崎  裏見○  飛瀬○

鞘谷  来島○  吉備●

飛瀬  横溝○  神崎●

大場  甘田○  桐野●

駒込  桐野●  ポーン○

甘田  大場●  来島○

裏見  神崎●  横溝○

横溝  飛瀬●  裏見●

来島  鞘谷●  甘田●

ポーン 吉備●  駒込●

「大丈夫?」

 飛瀬(とびせ)さんは、頭にコールドシートを貼っていた。

「ちょっと能力を使い過ぎただけなので……」

 のぼせたって正直に言いなさい。

「目隠し将棋で卒倒とは、なかなかのレアケースですね」

 吉備(きび)さんは、じと目でこちらを見つめた。

 申し訳ございません。

「無事で良かったのですぅ。天国へ行くのは、まだ早いのですぅ」

 桐野(きりの)さんは、心配しているのやらしていないのやら、よく分からない。

「えー、それでは第3局を始めます。組み合わせは、桐野さんvs吉備さん、神崎さんvs私、飛瀬さんvs大場さん、駒込先輩vs横溝さん、甘田先輩vs裏見さん、来島さんvsポーンさん、OK?」

 サーヤの発表に合わせて、みんな席を移動した。

 今日はこれで最後だし、気合いを入れて行きましょう。

香子(きょうこ)ちゃん、よろしくぅ」

 甘田(かんだ)さんは、いつものニヤニヤスマイルで着席。

 ここまで一回も勝てていない相手だ。

 棋力的には、勝ててもおかしくないはずなんだけど……相性の問題かしら?

「じゃ、振り駒させてもらうよぉん」

 甘田さんは歩を掻き集めて、ぽいと宙に放る。

 表が3枚。甘田さんの先手だ。

「対局準備が整っていないところはありますか?」

 返事なし。

「それでは、対局を始めてください」

「よろしくお願いします」

 私はチェスクロのボタンを押す。

 7六歩、3四歩、6六歩、8四歩、7八飛。


挿絵(By みてみん)


 ま、こうなるわよね。

 甘田さんは、三間飛車党。

 8五歩、7七角、6二銀、4八玉、4二玉、6八銀、3二玉。

「今回は、どういう趣向で来るのかな?」

 甘田さんはニヤつきながら5六歩。

 やっぱりコーヤン流だ。このへんが大場(おおば)さんと微妙に違う。

 3三角、5八金左、2二玉、3八銀、1二香。

「穴熊かぁ」

 待ってましたと言わんばかりの表情。

 3九玉、1一玉、4六歩、2二銀。

 普通に組ませてくれた。ただ、過去も穴熊に潜って負けている。油断できない。

 3六歩、5四歩、1六歩、4二角、5七銀。


挿絵(By みてみん)


 んー、どうなの?

 どっちも変則的な形になっちゃった印象。

 3二金、1五歩、5一金、3七桂、5三銀。

 3二金じゃなくて、3一金だったかな……でも5一金〜4一金右〜3一金寄とすれば、結局は同じこと。それに、上部が若干怖い。

「4五歩と突きたいけど……こっちが先かな」

 甘田さんは、4七金と囲いを優先した。

 次に4五歩は見えている。コーヤン流だから、4五歩〜4六銀という形が理想的なはず。だったら、ここは先に……。


挿絵(By みてみん)


 こう?

「自分から突かれに行くスタイル? ……あ、3三銀か」

 正解。

 4五歩〜3三銀引と、手順に固める作戦。

「だったら、すぐに4五歩は損かな……6五歩」

 以下、3三銀引、2六歩、4一金と進んだ。

 このまま4枚穴熊へレッツゴー!

「これはちょっと考えないとマズいね」

 甘田さんは長考に入った。

 私も続きを読む。

 第一候補は……よく分からない。普通に考えるなら、4五歩、3一金寄、4六銀と盛り上がって、5九角みたいな展開かな。この場合は、どこかで2八玉と上がりそう。でないと、流れ弾に当たる虞がある。あるいは、捻って2九玉。

 4六銀に対するこっちの応手は……7四歩? 4枚穴熊だと、あんまり手がないのよね。7四歩……5五歩?


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 同歩、同角は許せないから、5二飛、5八飛、7三桂……いや、先に7五歩だわ。同歩なら同角が王手。まさに流れ弾ってやつよ。だから先手は無視して5四歩、7六歩、8八角、8六歩……ん? あんまり冴えない? 同歩、8二飛と戻れない……5三歩成がある。

 だったら、7四歩、5五歩の仕掛けに速攻で7三桂は、どうかしら? 5四歩、6五桂、5九角、8六歩、同歩、同角、8八飛……続かないか……ん、待ってよ、そこで7五角の鬼手だと?

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 これ、先手が死んでない?

 3九玉の位置が悪過ぎる。

 私が顔を上げると、甘田さんは腕組みをして、体を前後に揺らしていた。

「……4六銀と出れないね」

 どうやら、同じ結論に達したようだ。

「いやぁ、参ったね」

 甘田さんはあぐらを掻いたまま、イヒヒと笑った。

 パンツ見えてますよ。

「じゃ、こうしてみようか」


挿絵(By みてみん)


 ふわッ!?

 4八銀? ……1秒も読んでない。

 けど、意図は分かる。4五銀と出れないなら、引いて使えってことだ。

 さっきまでの流れ弾の筋は消えている。

 でもでも、これは3一金寄でいいんじゃないかしら?

 私は念入りに読む。なんか罠がありそう。3一金寄……7五歩? 同角、3三角成……は4八角成が王手だから無問題ね。再度7五同角……2五桂? 2四銀、2二角成、同金上、7五飛は、こっちの銀損。なるほど、この筋があるのか。

 ということは、3一玉の前に7四歩? ……5五歩が気になるわね。同歩、同角はダメだから、5二飛、5八飛と寄って、8六歩、同歩、5五歩、同飛、同飛、同角。これは……先手の方がいいかしら? 7九飛、9一角成、8九飛成、7一飛が金当たり。以下、3一金寄に8一飛成は、こっちの角が使いにくい。遡って5五飛のときに5四歩と収めて、5八飛、3一金寄と固めたいかも。

 私は悩んだ。あらかじめ3一金寄と固めるか、7四歩を優先するか。

 どちらの局面にも、あまり飛び込みたくない。

「……」

「えへへぇ、今日はカニさんと遊んだのですぅ」

「だからカニカニ銀なんですか?」

丸子(まるこ)ちゃん、名推理ですぅ」

「不利になっているのが、かなりショックです……」

 そこ、静かに。

 私は、持ち時間が7分を切ったところで、7四歩と突いた。

 甘田さんはうんうん頷いてから、5五歩と開戦した。

 5二飛、5八飛、8六歩、5四歩。


挿絵(By みてみん)


 うッ……読みと違う……まさかここを手抜くなんて……。

 私は背筋を伸ばして、深呼吸する。

 こういうときこそ、冷静にならなくっちゃね。うん。

 8七歩成に……6六角と逃げる気か。ただ、これは5五歩の止めが効かない? 同飛なら7八とと入れる。同角なら5四飛、9一角成、5八飛成、同金、7九飛が王手桂馬取り。9一角成のところで3三角成と突っ込むのは、5八飛成、2二馬、同金、5八金、7九飛、5九歩、8九飛成……ん? こっちが悪い? また4一の金が浮いてる。

 どうやら、攻め合いはマズいらしい。となると、受け……5五歩、同角、5四飛、3三角成には、素直に同角と取って、5四飛、9九角成かしら? 7一飛、3一金寄、8一飛成、7八と……いやぁ、これも冴えない。

 私は、前の読みと後の読みを比較した。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 前者の方が粘れるかも。3三角〜9九角成が入れば、相当いい勝負。

 私は8七歩成とした。

「6六角だよぉん」

 5五歩。

「4五桂」


挿絵(By みてみん)


 えッ……また読んでない手……。

 私は前のめりになる。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 5四飛、3三桂成、同角で、何が悪いの?

 ……あ、4五銀か。しまった、これを軽視してたわ。

 5二飛、3四銀、5一角、5五飛、同飛、同角、7三角……あれ? これって、さっき私が読んでたときよりも、かなりマシなような……。

 5五同角と突っ込まれた方が、困ったと思う。読み抜けてる?

 私はもう一度同じ筋を読んで、ほぼ変化がないという結論に至った。

「……5四飛で」

 以下、3三桂成、同角、4五銀、5二飛、3四銀、5一角、5五飛、同飛、同角、7三角と進んだ。読み筋通り。

「同角成」

 同桂ッ!

「8一飛」


挿絵(By みてみん)


 総交換。正確には、銀桂交換だ。

 とりま、3一金寄と逃げまして……む、4五角か。

 大ピンチに見えるけど、そうでもない。甘田さんも難しそうな顔している。

 ここの対応はズバリ……4四歩ッ!

「んー、やっぱ引っかからないよねぇ……5四角」

 5三飛ッ!

「あちゃー、角が死んじゃった」

 甘田さんは3二角成と切って、同金に5四歩と叩いてきた。

 これは取らざるを得ない。同飛。

「ガジガジいくよ」


挿絵(By みてみん)


 さすがにこれは無視できない。3二金とされると、必至寸前。3一金。

「参ったな……手が続かないや……」

 5五歩のときに、同角とした方が良かったんじゃないですか、先輩?

「駒渡してもらおうか。2八玉」

 手渡し……6七角。

 5六歩、5一歩、9一飛成、3三歩。

 ガチガチの固め合いだ。

「引くしかないね」

 2五銀。これで余裕ができた。

 4五歩ッ!


挿絵(By みてみん)


 同歩なら6五桂が王手龍の準備で味よし。

「取らないよ」

 甘田さんは先に8二龍として、桂馬の確保を急いだ。

 ここで4六歩、同金、6五桂……いや、4六歩も取らないか。

 むしろ6五桂の単跳ね……それとも……。

 私は30秒ほど読んで、2四歩を選択した。

 当然の1六銀に6五桂だ。

「厳しくなってきたねぇ」

 ですね。私が優勢と見ました。

 甘田さんは3七銀左として、4六歩に備える。

 急所の6四角に、8七龍。

 

挿絵(By みてみん)


 ん? 自陣龍?

「……あッ」

「角が死んでるね」

 ぐぅ……4九角成。

 同銀、4六歩、同金、同角。

 うらうら、龍さえいなけりゃ穴熊は安泰なのよ。

 同銀、5六飛、3七角。

 私はもう一発4五歩と叩いた。

「3二香」


挿絵(By みてみん)


 さあ、ここからの寄せ合いが重要。

 私は気合いを入れ直す。

 無視して3一香成を許すのは、さすがに無理。だから一旦4一金と逃げて、4二歩とさせてから攻勢が第一感。手順は……4六飛? 同角、同歩、4一歩成。これが一手スキ。だから詰めろ詰めろで迫れば勝ち。詰めろは……私は湯呑みを傾けながら、一心に読んだ。

 ……まさかの3九銀、同玉、5七角、同龍、同桂不成が詰めろ?


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 3一と、4九桂成、同玉は4八銀以下、簡単な詰み。取らないで2八玉は、3七金と捨てて、同玉、4七飛、2八玉、3九銀、1八玉、2八金まで。2八玉のところで2九玉は、3九飛、1八玉、3八飛成、2八銀、2九銀、1七玉、2八龍、同玉、3八金、1七玉、2八銀、2七玉、3七金打まで。2八銀合を角合に変えても同じだし、飛合なら同龍、同玉、3七金以下、最初に2八玉と逃げたバージョンへ合流。

 5七桂不成は詰めろね。問題は、受けられたときだわ。5七桂不成……4八銀打? ここで詰めろが続かないと私の負け……詰めろ……詰めろ……4七飛とか?


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 3一となら、4九桂成、同玉、4八飛成、同玉からの並べ詰み。4七同銀は、同歩成がまた詰めろのはず。4七歩成、3一と、4九桂成、2九玉、3九成桂、1八玉……ん? 詰まない? ……いや、3九成桂じゃなくて3八金と打てばいいのか。1八玉の一手に2九銀、1七玉、2八銀、2七玉、3七と。

 ふむふむ、どうやら4七飛は詰めろみたいね。念のため、4八金の受けも読みましょう。4八金、4七飛、同金、同歩成、3一と、4九桂成、2九玉、3八金、1八玉……1七金、同玉、2八銀、1八玉、1七金。オッケー。

 私はチェスクロを確認する。

 残り時間は、私が47秒、甘田さんが2分。

 私は4一金と寄った。

「ま、一種のテクニックだよね」

 甘田さんも予想済みだったらしく、ノータイムで4二歩。

 そこで私は4六飛と切った。

「うへぇ、切るの?」

 どうやら、違う手を読んでいたようだ。チャンス。

「ああして、こうして……」

 甘田さんは、空中で指差し確認。

「そっか……そういうことか……」

 ピッ。甘田さんの持ち時間が1分を切った。

「いや、参ったね」

 甘田さんは動きを止めて、じっと盤面に見入る。

 ピッ。30秒将棋に突入。

「……」

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 同角。

 私は同歩と取って、4一歩成に3九銀、同玉、5七角と王手する。

 その間に、私も30秒将棋へ突入。

「うーん……」

 甘田さんは29秒まで悩んで、同龍。

 私は同桂不成と突っ込む。

「これさすがに詰めろだよね……」

 詰めろです。

 3一ととしてくれると、ありがたい。

「読みきれないけど、受けとこ」

 甘田さんは4八金とガードした。

 もらったッ! 4七飛ッ!

「ひえぇ」

 甘田さんは両手を後頭部に当てて、ゆらゆらと上半身を揺らす。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「こうッ!」


挿絵(By みてみん)


 ッ!?

「これで受かってなかったら降参」

 私は甘田さんの挑発を無視して読む。

 同飛成、同銀、4七飛の打ち直しは……さすがに詰めろじゃないっぽい。

 4九桂成、同金、同飛成、同玉、4八銀、同玉、4七金、同飛、同歩成……。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「3七金ッ!」

 私は金を打った。

 4九桂成からは詰まないと判断したのだ。

「同飛」

 同飛成、同金、4七金。

「2七金」


挿絵(By みてみん)


 私は青くなる。

 これは……パッと見、詰まない……。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「4九桂成ッ!」

「こっちもギリギリだね……2八玉」

 3八飛、1七玉、3七金。届いてちょうだい。

「……1八金」

 まだ受けるの? 何かあった?

 2七金は同銀で絶対に詰まないから……詰まないから……。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 3五桂……自分で指しといてなんだけど、これは……。

 同歩、3六銀、同金、同金。

「2八銀」


挿絵(By みてみん)


 うわぁ……3七飛成〜2六金の頓死筋が消えた……。

 私は4七歩成と手を渡し、3一とに同銀と取った。

 同香成に2二金。

「あぁ、そういうのもあるのか……」

 一瞬感心した甘田さんだったけど、すぐに顔色を変えた。

「あれ、でもそれって……」

 甘田さんは顎に手をあてて10秒読んだあと、桂馬を摘んだ。

 あ、終わった。


挿絵(By みてみん)


 ……詰んでるわね。

「負けました」

「ありがとうございました」

 甘田さんは手揉みをして、満面の笑みを浮かべた。

「最後、こっち勝ってた? ヒヤヒヤもんだったけど」

「……ちょっと分かんないです」

 冗談抜きで、どっちに転んでもおかしくなかったような……。

「3七金と寄ったとき、受ける必要ありましたか?」

「あるよん。放置で3一とは、2八銀、1八玉、1九銀成、同玉、1七香で詰むから」

 2八銀、1八玉……あ、そっか、詰んでるんだわ。

「っていうか、よく考えたら3六銀に同金って取る必要なかったよね、あたし」

 甘田さんは、その局面まで戻した。


挿絵(By みてみん)


「3一とと寄って、2七銀成、同銀、同金、同金で詰まないっしょ?」

 ……っぽいわね。

「そうですね。詰まないと思います」

「途中、3八飛じゃなくて、3八銀だったら?」

「どこですか?」

「4九桂成、2八玉に3八銀」

 私たちは、さらに局面を戻す。


挿絵(By みてみん)


 ここか……。

「詰めろになってない気がしますけど」

「そっかな?」

 甘田さんは、3一とと入った。

「まあ、初手は2七銀成だよね」

「同銀、3七金打ですか?」

「1七玉だと?」

「2七金、同玉、3七飛、1六玉、2七銀、1七玉、3八銀不成、1八玉、2七飛成。この順は詰みますね。2七金に1六玉も……」

 ん? 詰まない?

 2六金、同玉、2五飛、1六玉、2七銀、1七玉、2八銀不成、1六玉。これはアウト。2六金に代えて2五銀も、2七玉、3七飛、1八玉で、ギリギリ詰まない。

「2七金に1六玉は詰まないですね」

「そっか、じゃあ本譜の方がいっか」

 私たちは、2七飛の受けの周辺を調べて、さらに5五歩、同角の順も調べた。

 しばらくして、手を叩く音が聞こえる。

「はーい、そこまで。そろそろお開きにしましょう」

 サーヤだった。

「まだ早くない?」

 と歩美(あゆみ)先輩。

 時計を見ると、9時を過ぎたばかりだ。

 確かに早い。

「本将棋ばかりじゃ飽きるから、ここいらでパーティーゲームしようよ」

 甘田さんの提案。

 この時点で悪い予感しかしない。

「パーティーゲームって何よ?」

 歩美先輩は、あまり乗り気でなさそう。

「ズバリ、罰ゲーム付きの必至・詰め将棋早解き選手権ッ!」

 えぇ、という声が、部屋の端から漏れた。

「絶対勝てないよぉ……」

 来島(くるしま)さんは、しょんぼり。

「大丈夫、大丈夫、罰ゲームは一人一回まで」

「一度罰ゲームを受けた者は、順位レースから外れるわけだな?」

 神崎(かんざき)さんはルールを確認した。

「そういうこと。椅子取りゲーム方式だよ」

 ふむ、椅子がどんどん少なくなるわけですね。

 下手すると、2番目に解いても罰ゲームがありうる。

「ま、将棋ができるなら何でもいいわ」

 さすがは歩美先輩。恐れ入ります。

「じゃ、テーブルを片付けて始めるよぉん」

場所:2014年度夏合宿

先手:甘田 幸子

後手:裏見 香子

戦型:先手コーヤン流三間飛車vs後手居飛車穴熊


▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩

▲7七角 △6二銀 ▲4八玉 △4二玉 ▲6八銀 △3二玉

▲5六歩 △3三角 ▲5八金左 △2二玉 ▲3八銀 △1二香

▲3九玉 △1一玉 ▲4六歩 △2二銀 ▲3六歩 △5四歩

▲1六歩 △4二角 ▲5七銀 △3二金 ▲1五歩 △5一金

▲3七桂 △5三銀 ▲4七金 △4四銀 ▲6五歩 △3三銀引

▲2六歩 △4一金 ▲4八銀 △7四歩 ▲5五歩 △5二飛

▲5八飛 △8六歩 ▲5四歩 △8七歩成 ▲6六角 △5五歩

▲4五桂 △5四飛 ▲3三桂成 △同 角 ▲4五銀 △5二飛

▲3四銀 △5一角 ▲5五飛 △同 飛 ▲同 角 △7三角

▲同角成 △同 桂 ▲8一飛 △3一金寄 ▲4五角 △4四歩

▲5四角 △5三飛 ▲3二角成 △同 金 ▲5四歩 △同 飛

▲4三金 △3一金 ▲2八玉 △6七角 ▲5六歩 △5一歩

▲9一飛成 △3三歩 ▲2五銀 △4五歩 ▲8二龍 △2四歩

▲1六銀 △6五桂 ▲3七銀左 △6四角 ▲8七龍 △4九角成

▲同 銀 △4六歩 ▲同 金 △同 角 ▲同 銀 △5六飛

▲3七角 △4五歩 ▲3二香 △4一金 ▲4二歩 △4六飛

▲同 角 △同 歩 ▲4一歩成 △3九銀 ▲同 玉 △5七角

▲同 龍 △同桂不成 ▲4八金 △4七飛 ▲2七飛 △3七金

▲同 飛 △同飛成 ▲同 金 △4七金 ▲2七金 △4九桂成

▲2八玉 △3八飛 ▲1七玉 △3七金 ▲1八金 △3五桂

▲同 歩 △3六銀 ▲同 金 △同 金 ▲2八銀 △4七歩成

▲3一と △同 銀 ▲同香成 △2二金 ▲2三桂


まで137手で甘田の勝ち


【合宿最終成績】

桐野  駒込○  大場○  吉備○

神崎  裏見○  飛瀬○  鞘谷○

吉備  ポーン○ 鞘谷○  桐野●

大場  甘田○  桐野●  飛瀬○

駒込  桐野●  ポーン○ 横溝○

甘田  大場●  来島○  裏見○

鞘谷  来島○  吉備●  神崎●

飛瀬  横溝○  神崎●  大場●

裏見  神崎●  横溝○  甘田●

ポーン 吉備●  駒込●  来島○

横溝  飛瀬●  裏見●  駒込●

来島  鞘谷●  甘田●  ポーン●

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