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こちら、駒桜高校将棋部  作者: 稲葉孝太郎
第29局 ぶかぷか夏合宿編(2014年8月7日木曜)
204/295

180手目 ふたりいる少女

 だーッ! なんで合宿の日に限って寝坊するのよッ!

 私は集合場所のバス停に向かい、全力疾走していた。

 鎌鼬駅から、大通りを徒歩10分。

 今こそ、元陸上部の脚力を見せるときッ! でやぁ!

 通行人を華麗に避けながら、私は突っ走る。

 前方に、女子高生の集団が見えてきた。

 時刻は7時57分。セーフ。

「おはよう」

 私はぎりぎり手前でブレーキをかけた。

 近くにいたヨッシーが振り返り、びっくりしたような顔をする。

「えぇ……」

 なんですか、その反応は?

 私が遅刻する方に賭けてたとか?

香子(きょうこ)ちゃんがふたりいる……」

 は?

 首を傾げた途端、奥からひとりの少女が現れた。

 ポニーテール、市立の制服……ふわッ!? 私がいるッ!?

「あなた、誰?」

 少女は、ぶっきらぼうに尋ねてきた。

「誰って……裏見(うらみ)香子(きょうこ)よ」

「裏見香子は私」

 そんなバカな話があってたまりますか。

「ちょっと、ふざけないで」

「ふざけてなんかないわ」

「じゃあ、私の誕生日と血液型と好きな食べ物を言ってみなさいよ」

「9月8日生まれ、O型、好きな食べ物は、駒桜せんべえの塩味」

 げ……合ってる……。

「これ、どうなってるんっスか?」

「Ich kann sie voneinander nicht unterscheiden...」

「私は何もしてないよ……クローンとか作ってないから……」

 まわりは区別がつかないらしい。

 わ、私のアイデンティティが……。

「ふえぇ、蝶々さんと遊んでたら、遅くなったのですぅ」

 反対側から、桐野(きりの)さんが歩いてきた。

 桐野さんは近くに来ると、笑顔のまま私たちの顔を見比べた。

 両手の親指と人差し指でわっかを作り、眼鏡みたいなポーズを取った。

「お花には、まるっとお見通しなのですぅ」

 マジで?

 桐野さんはニコニコしながら、私ではなく、もうひとりの少女を指した。

 ま、待って、私が本物……。

「こっちが偽物なのですぅ」

「ふむ、バレたか」

 少女は顔の皮を剥ぎ、制服を鮮やかに脱ぎ捨てた。

神崎(かんざき)(しのぶ)、見参」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「む、どうした? もしや、最初からバレていたのか?」

 驚いて声が出ないんだと思うんですけど。

「えへへぇ、お花に変装は通用しないのですぅ」

 それも意味が分からない。

「えーと……バスが来たみたいだよ……」

 ヨッシーは、こちらに向かって来るローカルバスを指差した。

 ほとんど人が乗っていないそれは、軋んだ音を立てて停車した。

「いざ、参らん」

 神崎さんは率先してバスに乗り、300円を支払った。

 私たちも次々と乗り込む。

「観光地だから、もっと混んでるかと思ったわ」

 サーヤに同意。

「そのための8時集合だからな。昼間は満員になる」

 ほほぉ、神崎さん、なかなかいい仕切りですね。

 地元のことだけはあるわ。

 私たちはわいわいやりながら、目的地の温泉へと向かった。

 300円だから、そんなに遠くない。

「次は、獄門温泉です」

 1年生グループの大富豪2回戦が終わったところで到着。

 降りる準備。

 バスがプシューっという音を立てて止まり、私たちはぞろぞろと降りた。

 旅館は、歩いて1分くらいのところにあった。ほとんど目の前。

 白壁の奥に松の木が並んだ、伝統的な佇まいだった。

「いいところじゃない」

 とサーヤ。

「れっきとした旅館って感じっスねぇ」

 ほんと。

 1泊2日で3000円が嘘みたい。

 コネかなんかで安くなってる気がしてきた。

「では、荷物を置こう」

 私たちは、玄関をくぐる。

 木の香りが漂い、壁には山水画や淡色の花の絵が掛けられていた。

「いらっしゃいませ」

 人の良さそうな女将さんが出てきて、神崎さんに挨拶した。

「此度は、よろしく頼む」

「いつもありがとうございます」

 ふむ……やっぱり知り合いか。

 合宿代については、触れないでおきましょう。

 神崎さんのことだから、何があるか分からない。

「桂の間をご用意しましたので、どうぞ」

「かたじけない」

 私たちは廊下を進んで、桂の間に通された。

 わお、これまた凄い。

 純和室で、床の間には立派な掛け軸と花が用意されていた。

「長机が必要なときは、隣の部屋からお出しください」

「うむ、それは拙者たちでやらせてもらう」

 女将さんが下がったところで、みんな鞄をまとめた。

 駒桜(こまざくら)藤花(ふじはな)、その他に分かれる。

「さて、海へゆくには早過ぎるゆえ、少し指すか」

 ですね。合宿なわけだし。

「1、2、3……12人いるのですぅ」

 偶数なら、ちょうどいいわ。

「じゃ、テーブルの準備」

 サーヤの指示にしたがい、私たちは長机を持ち込んだ。

 ひとつにつき2局かな。3つ必要。

 ざぶとんを敷いて終わり、と。

「で、組み合わせは?」

 歩美(あゆみ)先輩、やる気満々ですね。

「同じ学校の人と当たらない方が、いいんじゃないかな……?」

 ヨッシーの提案。

 それを受けて、サーヤはこくりと頷いた。

「そうね。藤花vs市立を2組、藤花vs市外を2組、市立vs市外を2組。これでいいんじゃない? 以降は、勝った人、負けた人の面子を見て決める感じで」

(すみ)ちゃんは、市外組扱いっスか?」

「そうしてちょうだい」

 私たちはそれぞれのグループに分かれて相談。

「先輩、どうしますか……?」

「グッパーでいいんじゃない?」

 さすが歩美先輩、適当ですね。

 ま、それでいっか。

「じゃあ、グッパーで。グーが藤花、パーが市外とやるのよ」

 グッパーで分かれましょ……お、一発で成功。

 私と歩美先輩がパー、飛瀬(とびせ)さんと来島(くるしま)さんがグー。

 ちょっと思惑が入ったかしら?

 歩美先輩は、単純に強い面子と指したそう。

 私は藤花と当たりまくってるから、ズラしたかった。

 他のところも組み合わせが決まった模様。

 サーヤがルーズリーフにまとめる。

「じゃ、発表するわよ。駒込先輩vs桐野さん、甘田先輩vs大場さん、私vs来島さん、横溝さんvs飛瀬さん、裏見さんvs神崎さん、吉備さんvsポーンさん、OK?」

 むむむ……覚悟はしてたけど、神崎さんとか。

「裏見殿とだな」

 神崎さんは、手近な座布団に腰を下ろした。

 私も反対側に回る。

「なるべく多く回したいので、15分30秒でお願いします」

 サーヤが仕切り役になっちゃった。

 副会長だし、いっか。

「振り駒は、裏見殿でいいぞ」

 では、お言葉に甘えて。

 私は手の中でカシャカシャ混ぜて、駒を宙に放った。

 歩が2枚……後手ね。

「裏見殿は、右利きだな」

 神崎さんは、私の右側にチェスクロを置いた。

「対局の準備が整っていないところはありますか?」

 返事なし。

「では、始めてください」

「よろしくお願いします」

 和室に挨拶が響いて、私はチェスクロのボタンを押した。

 7六歩、3四歩。

 普通の出だしだけど……。

「オールスターのときと同じで、よかろう」


挿絵(By みてみん)


 出た……3手目4八銀……。

 8四歩、5六歩、8五歩、5七銀。

 ここで8六歩は同歩、同飛、2二角成、同銀、7七角で止まるから、3二金。

 以下、7八金、8六歩、同歩、同飛、6九玉。


挿絵(By みてみん)


 かまいたち。

 昨年度のオールスター戦でぶつけられたのと、同じ戦法だ。

 マイナー過ぎて、よく分かんないのよね。8二飛。

 そもそも、飛車先を切らせるという発想が異端。

 8七歩、6二銀、6六歩、6四歩、5八金。

 先手は、かまいたちの一般的な構えになった。

 私は6三銀と繰り出す。

「お互いに早いな」

「経験済みだからね」

「対策してきたと見えるな。6七金右」

 4一玉、7七角、7四歩、8八銀。


挿絵(By みてみん)


 先手の狙いは、明らか。

 角を引いて7七桂〜7九玉〜8九玉の菊水矢倉だ。

 ここまでは予習済み……だけど、その続きがよく分からない。

 かまいたちなんて指してる人が少ないなら、研究対象にしてもしょうがないし、他の先輩に訊いても「知らない」で片付けられてしまった。

 ここは、対応力の見せ所ね。

 とりま7三桂と跳ねて、5九角、4二銀、2六歩、9四歩。

 んー、今いち方針が定まらない。右四間っぽく指したけど、自信がない。

 9六歩、1四歩、7九玉。

 1筋は突き返さないか……。

 5四銀、7七桂。ここで小考。

 6二飛の右四間は、ちょっと冴えないかな。6五歩、同歩、同桂、同桂、同銀、6六歩で完全に止まっちゃう。そこが菊水矢倉の長所。

 先手は飛車先交換からの7五歩〜7四歩が残ってるか……8四飛。


挿絵(By みてみん)


「ほぉ、先に受けたか」

「ちょっとこっちからは攻め手が……」

「こちらもすぐには手出しできぬがな。ひとまず8九玉だ」

 6二金、2五歩、3三角、1六歩、3一玉、3六歩。

 また小考。

 いいかげんに攻めたい……でも、どこから……?

 やるなら……4五銀とか?


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 かなり強引だけど、3六歩をかすめ取れれば、局面は動くわ。

 当然の3八飛に……あれ? また手がない?

 有効に動かせる駒もなさそう……。

 私はちょっと困った。

 喉が渇いてくる。

 お茶淹れとけば良かったなあ。準備不足。

「ちょっとお茶淹れていい?」

「よいぞ」

 私はポットのところに移動して、お湯を確認した。

 うん、ちゃんと用意されてるわね。

 古い旅館だからか、粉末じゃなくてちゃんとした茶葉だった。

 急須に入れて……あ、待ってると持ち時間が減っちゃう。

 私はそのまま席に戻った。

「再開だな」

 神崎さんは、チェスクロを動かし始めた。

「あ、止めてくれてたんだ。ありがと」

「公式戦ではないからな」

 なかなか親切ね。

 で、問題はこの局面なんだけど……3八飛なら4四角と守るしかなさそう。

 このとき、先手は2八飛と戻れない。3六銀があるから。

 おそらく、4六歩、5四銀とバックさせて、それから2八飛、3三角。


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)


 この進行が本命かな。

 4六銀と出られなくすれば、いきなり先攻されることはないわ。

 以下、8一飛と引いて様子見。

 うまく行けば千日手模様になるかもしれない。

「4五銀で」

 この1手で消費時間1分。残りは、私が7分、神崎さんが13分。

 神崎さんは、ほとんど考えていない。

「なかなか面白い手だな。3八飛と寄る」

「4四角」

「……千日手狙いか」

 お早いご理解で。

 以下、4六歩、5四銀、2八飛、3三角と進んだ。

 ここまでは読み通り。

 4八角、8一飛、2六角、4四角。

 角交換は、こちらが有利ですよ?

「引く」

 3七角。私も3三角と戻る。

 2六角、4四角、3七角、3三角。

 ほらほら、千日手になるんじゃないの、これ?

「千日手は好かん。打開するぞ」

 神崎さんはそう言って、横一閃に飛車を寄った。


挿絵(By みてみん)


 4八飛……これは局面が動きそう。

 狙いは4五歩。それは許せないから……8五桂と先に攻める?

 同桂、同飛、4五歩……4五同飛のぶつけ。同飛、同銀、8一飛なら、一旦2二玉と逃げて、9一飛成、3九飛、7九桂(or香)、2九飛成。これは入玉までありそう。

 問題は、8二飛と金に当てられた場合。対応は、いろいろ考えられる。例えば6一金と静かに引いて、8一飛成に5一金、9一龍、3九飛の反撃。これは手順に堅めて良しかも。飛車の合わせも考えられるけど、それは龍を撤退されたときに損かな。6一金、8一飛成、7一飛、8六龍と逃げられたとき、こっちは何していいのか分かんない。3六銀は6四角と飛び出されちゃうし。

 全体的に見て、飛車を打たれても耐えてるわね……じゃあ、この順で。

 私は8五桂と跳ねた。

「斬り合いか、望むところ」

 同桂、同飛、4五歩、同飛ッ!


挿絵(By みてみん)


「無論、同飛だ」

「同銀」

「6四角」

 ぐッ……角出の方か……。

 3九飛の打ち下ろし……は、7九桂、2九飛成、9一角成で、1九の香車が拾えない。次に8一飛と下ろされると困る。

 もう少し綾をつけないと……6五歩、同歩、6六歩とか?


挿絵(By みてみん)


 (※図は香子ちゃんの脳内イメージです。)

 

 同金は5九飛、同銀は5六銀、同金、5九飛。

 どちらも王手金or銀取りが掛かる上に、残りの金銀が浮つく。

 だから本命は6六歩、6八金引、5六銀、同銀、5九飛。王手銀取りが掛かるけど、金は浮いてないから、さっきの2パターンよりマシ。

 私はチェスクロを確認した。残り3分。

 これ以上は考えられないわね。いざ、突撃ッ! 6五歩ッ!

「捻った攻めだな」

 同歩、6六歩、6八金引、5六銀、同銀、5九飛、7九桂、5六飛成。

 銀交換+龍ができた。

「8一飛」

 ぐぅ、とはいえ、反動も厳しい。

 2二玉と逃げまして……。

「9一飛成……ではないな、7一飛成」


挿絵(By みてみん)


 え? 香車を取らない?

 5二金で……あッ! 4一銀の割り打ちッ!

 しまった……9一角成と9一飛成の2択しか読んでなかった……。

 しかも前者を本命視してたから、読みから外れてる。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 こうなったら、金を見捨てるしかない。

 8四桂。

「さすがに怯まぬか……8五銀」

 銀打ち? 手堅いように見えるけど……6五龍。

 これが銀当たりよ。

「6二龍だ」

「8五龍」

「5四歩」

 くぅーッ、龍の守りを逸らすための撒き餌だったか。

 ここで30秒将棋に突入。私は5一銀打と受けた。

 8二龍、6五龍、5三歩成。

 角を見捨てた……6四龍、4二と、同銀、8四龍。

 なるほど、2枚換えってわけね。

 ここでどうするか。

 6七銀の打ち込みは、同桂で大したことない。

 もう一枚必要……。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 

挿絵(By みてみん)


 ひとまず、角を放して打つわ。

「なかなか厳しいな。5七金打と受ける」

 よし、これは手駒を使わせてナイス。

 私は7八角成と叩き切って、同金に5六歩と叩いた。

「それは第一感足りていない。同金」

 足りてるか足りてないか、勝負ッ!

 6九銀ッ!

 6八歩、6七歩成、同歩、7八銀成、同玉、6八金。

「なるほど、その手があったか……同玉」

 銀の紐がなくなって、私は8八角成と突っ込んだ。

「7七角と合わせる」

 チッ、さすがに馬のままではいさせてくれないか。

 同馬、同玉、5九角。

 

挿絵(By みてみん)

 

 追撃、追撃ぃ。

「6八銀」

「8八銀」

「……同玉」

「6八角成」

「7八金」

 ん……微妙に手がない……。

 同馬はさすがに続かないだろうし……。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!

 私は5九馬と、一手緩めた。

「反撃開始……と言いたいところだが、自陣を整備する。6八銀だ」


挿絵(By みてみん)


 むむむ……ここで受けるか……。

 当たり前と言えば当たり前だけど……6九馬。

 8六角あうち、6一龍。

「ようやく反撃だな」

 神崎さんは、2四歩と突いた。

 同歩、2五歩。

 これは手抜いて……も、こっちに指す手がない。同歩。

 当然のごとく、2四歩と垂らされる。参った。

 次に2三銀、同金、同歩成、同玉、4二角成で崩壊してしまう。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! 3三銀打ッ!

 4六桂、3六馬、7四龍、6四歩、同角、3五馬。

 これ、意外と紛れて来たんじゃない?

「拠点は渡せんな……2三銀」

 同金、同歩成、同玉、4二角成、同銀。

「4五金打だ」


挿絵(By みてみん)


 同馬、同金は、3筋が受からない……4四金。

 3五金、同金(同歩は4五角で終了)、3六歩。

 えーい、6四金ッ!

「すさまじい止め方だな。感心する」

 神崎さんは、7三龍と入った。

 私は4七銀と打ち、3五歩、5六銀成。

「そろそろ終わりにするか……4五金」

 終わらせないッ! 2四金ッ!

「……3四歩」

 じっと歩突き……詰めろじゃない……。

 いや、3三歩成、同銀、4三龍で終わる。

 6三金は、同龍、同龍、3三金の寄り。

 私は3二歩と打った。

「これで仕舞いだな」


挿絵(By みてみん)


 ……同歩と取れない。

 4六成銀、同金、2八角、3五銀。

 入玉の望みが絶たれてしまった。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

「……負けました」

「ありがとうございました」

 いやぁ……これは完敗……。

「どこから悪かった?」

「5六角以下、無理攻めではないのか? 特に困った局面はなかったぞ」

 マジですか。ちょっとショック。

「7一飛成が見えなくて……金寄れないのが誤算だったかも」

「あそこで香車を拾う必要はないからな。打つ場所が見当たらぬ」

 んー、そっか。

 駒得するもんだと思ってたけど、先入観だったかなあ。

 対抗型の感覚で指しちゃったかも。

「ひとつ気になったのだが、4四金の前に3三角はどうだったのだ?」

「どこ?」

「拙者が最初に4五金と打った局面だ」

 というと……。


【参考図】

挿絵(By みてみん)


 こうか。

「これならば、4四角に同歩と取れた」

 確かに、龍の横利きは、角がガードしてくれるのね。

 3三角、5五歩は必然だから、こっちの方が良かったかも。

「だいたい対局終わった?」

 サーヤの声に、みんなは振り返った。

「……終わったみたいね。じゃあ、10分休憩」

 ふぅ、ここで一息……ん、何か忘れてるような……。

 あッ! お茶淹れっぱなしだったッ!

 私は慌てて急須に駆け寄り、湯呑みに中身を注いだ。

 う……この濃緑色は……。

 ごくり……にがぁい……。

場所:2014年度夏合宿

先手:神崎 忍

後手:裏見 香子

戦型:先手かまいたち


▲7六歩 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲5六歩 △8五歩

▲5七銀 △3二金 ▲7八金 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛

▲6九玉 △8二飛 ▲8七歩 △6二銀 ▲6六歩 △6四歩

▲5八金 △6三銀 ▲6七金右 △4一玉 ▲7七角 △7四歩

▲8八銀 △7三桂 ▲5九角 △4二銀 ▲2六歩 △9四歩

▲9六歩 △1四歩 ▲7九玉 △5四銀 ▲7七桂 △8四飛

▲8九玉 △6二金 ▲2五歩 △3三角 ▲1六歩 △3一玉

▲3六歩 △4五銀 ▲3八飛 △4四角 ▲4六歩 △5四銀

▲2八飛 △3三角 ▲4八角 △8一飛 ▲2六角 △4四角

▲3七角 △3三角 ▲2六角 △4四角 ▲3七角 △3三角

▲4八飛 △8五桂 ▲同 桂 △同 飛 ▲4五歩 △同 飛

▲同 飛 △同 銀 ▲6四角 △6五歩 ▲同 歩 △6六歩

▲6八金引 △5六銀 ▲同 銀 △5九飛 ▲7九桂 △5六飛成

▲8一飛 △2二玉 ▲7一飛成 △8四桂 ▲8五銀 △6五龍

▲6二龍 △8五龍 ▲5四歩 △5一銀打 ▲8二龍 △6五龍

▲5三歩成 △6四龍 ▲4二と △同 銀 ▲8四龍 △5六角

▲5七金打 △7八角成 ▲同 金 △5六歩 ▲同 金 △6九銀

▲6八歩 △6七歩成 ▲同 歩 △7八銀成 ▲同 玉 △6八金

▲同 玉 △8八角成 ▲7七角 △同 馬 ▲同 玉 △5九角

▲6八銀 △8八銀 ▲同 玉 △6八角成 ▲7八金 △5九馬

▲6八銀 △6九馬 ▲8六角 △6一龍 ▲2四歩 △同 歩

▲2五歩 △同 歩 ▲2四歩 △3三銀打 ▲4六桂 △3六馬

▲7四龍 △6四歩 ▲同 角 △3五馬 ▲2三銀 △同 金

▲同歩成 △同 玉 ▲4二角成 △同 銀 ▲4五金打 △4四金

▲3五金 △同 金 ▲3六歩 △6四金 ▲7三龍 △4七銀

▲3五歩 △5六銀成 ▲4五金 △2四金 ▲3四歩 △3二歩

▲4四角 △4六成銀 ▲同 金 △2八角 ▲3五銀


まで161手で神崎の勝ち

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