166手目 攻めて守って、大逆転将棋2
「よし、俺たちが行くぞ」
そう威勢良く言い放ったのは、箕辺くんだった。
「えぇ……勝てるかなぁ……」
葛城くんは、あんまり乗り気でない様子。
「どうせ強制参加だ。当たって砕けろ」
ま、それは言えてるわよね。
後ろが有利ってわけでもないし。
「アハハ、そうだね。でもその前に、やらなきゃいけないことがあるよ」
捨神くんの台詞に、箕辺くんたちは、きょとんとなった。
「作戦会議か?」
「もっと重要なことだよ」
「重要なこと? 何だ?」
「こういう勝負は、紳士的にやらないとね」
捨神くんの口から出ると、すごく違和感がある。
「何をどうするんだ?」
「とりあえず、ゲームマスターに話をつけようか。みなさん、またあとで」
……………………
……………………
…………………
………………
15分後。
箕辺くんたちは、控え室から戻ってきた。
「どうなってるんだ、捨神……」
肉球のついたこぶしを握り、箕辺くんはぷるぷると震えた。
犬の口のところから、顔が出ている。恥ずかしそう。
「猫ちゃんだよ、ニャーオ」
葛城くんは爪を立てて、両腕を振り上げた。
「僕もペンギン好きなんだよね」
捨神くんは、ペンギンの羽をぱたぱたと動かす。
「何で着ぐるみなんだッ! 動きにくいだろッ!」
「相手だけ動きにくいと、不公平だろう?」
「そ、それはそうだが……」
箕辺くんは、言いくるめられてしまった。
《着ぐるみに着ぐるみで対抗する捨神くん、マジ紳士……》
カンナエアさんもうっとり。
「ほえぇ、3人ともカワイイですぅ」
敵を愛でる桐野さん。
「ふむ、自らハンデを捨てるとは、殊勝な心がけだ」
神崎さんは、妙に感心していた。
「さてと……誰が誰と当たる?」
捨神くんは、仲間のふたりに尋ねた。
「捨神が一番期待できるんだ、捨神から決めてくれ」
箕辺くんに丸投げされて、捨神くんは桐野さんたちを順繰りに見た。
「忍者さんは10秒将棋が得意みたいだし、ちょっと相手にしたくないかな」
「ふっ、怖じ気づいたか」
捨神くんは、神崎さんの挑発を無視した。
「桐野さんからは、人として触れちゃいけないオーラを感じるんだよね」
「ふえぇ……こいつにだけは言われたくないですぅ……」
「というわけで、ペンギンちゃんと戦うよ」
「かかってきなさい」
吉備さんは、やる気満々だ。
「たっちゃんは、どうする?」
「んー、俺が忍者にするか」
「ボクたちはオマケだからね。つっくんに託すよ」
3人は、それぞれ配置についた。
《では、じゃんけんをお願いします》
じゃんけんぽん。
箕辺、神崎、それから……。
「アハハ、あいこしか出ないね」
「お互いにパーですからね」
あのさぁ……。
《そこだけ振り駒してください……先手引いた方が選択で……》
年長の吉備さんが振って、表が2枚。
「捨神くんが決めてください」
「うーん……吉備さんって、守備型な気がするんだよね……」
2局で棋風を見切った?
「敗勢側で」
捨神くんは、吉備さんに攻めさせる順を選んだ。
《では、敗勢側に1分間、局面が表示されます……》
《吉備vs捨神戦は注目ですね。ギャラリーも見れないんですか?》
《じゃあ、特別に……》
観客席の床から、スクリーンが飛び出した。
【先手:吉備丸子(勝勢) 後手:捨神九十九(敗勢)】
えぇ……。
「これは投了図か?」
三宅先輩は、目を白黒させている。
「いくら先手が桂1枚だからって、穴熊と裸玉はないだろ……」
と菅原先輩。
「とりあえず3三玉と逃げるか?」
冴島先輩は、初手を提案した。
「それは罠くさいぞ。4五桂、4四玉、2二龍が詰めろだ」
菅原先輩は、異論を呈した。
3三龍、5四玉、5三龍までね。7七の桂馬が、よく利いている。
「これだけ駒あれば受かるだろ。3四金とか」
「それは2三銀不成が、金当たりの詰めろになるぞ」
やいのやいのやってるうちに、1分が経過した。
《はーい、そこまで……対局開始》
開幕。
「初手は、これだよね」
捨神くんは、3四玉と逃げた。
「攻め駒が少ないですね……2二龍」
吉備さんは、桂馬を補充する。
「これは詰めろじゃないから……」
捨神くんは、ギリギリまで考える。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
そこに角ぅ!?
「うッ……好手っぽい……」
吉備さんは青くなった。
《ニャンと、1一龍は、3二角で銀を取られてしまいますね》
猫山さんの解説が始まった。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
吉備さんは、4五桂の詰めろをかけた。
捨神くんは9秒使って、6六角と打つ。
「4四銀も、あったんじゃねぇか? 角は5五桂で止まるぞ?」
菅原先輩の予想通り、吉備さんは5五桂と打った。
詰めろが復活している。
「4四銀」
「3一龍と入ります」
吉備さんは、龍を深く入った。4三銀不成狙いかしら。
《4三銀不成、2四玉、3四龍は、後手まずいですねぇ》
猫山さんの解説。
「……3三金」
「駒の利きに駒を……しかも金……」
吉備さんは少し迷って、同桂成とした。
同銀、4五金、2四玉、3六歩、同歩。
《4七金とか、ありそうですねぇ》
猫山さん、またまた正解。4七金。
「敗勢側を持つのはキツいね……3四香」
これまたよく分からない手だ。
誤摩化しにきている。
「手が見えない……」
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
ま、まさかの端攻め。
「そこは盲点だったな……」
捨神くんはへらへら笑いを止めて、真剣に読んでいる。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
そして、3七桂と放り込んだ。
「い、1五歩がデジタルに間に合ってない……」
さあ、吉備さん、どうする。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!
「1一龍ッ!」
「2九桂成」
「同金ッ!」
以下、3七桂のおかわりに、吉備さんは1五歩と取り込んだ。
1四龍までの詰めろだ。
2九桂成、同銀。
「……同飛成」
飛車を切った。
《詰まないと、白髪少年の負けです》
これ、詰む?
「足りてるかな……3八金」
捨神くんは、金捨てから入った。
吉備さんはノータイムで同玉。
「3七銀」
「あッ……」
吉備さんは、あごを落とした。
《いやぁ、香車が利いてますねぇ》
同銀、同歩成、同金、4八角成。
「で、デジタルに詰んでる……負けました」
吉備さんは、こてんとひっくり返った。
2九玉、2八銀、同玉、3七馬、1七玉、1六金、同玉、2六金、同歩、同馬まで。
ぴったりの詰みだ。
「アハハ、ありがとうございました」
《おっと、ほいじゃまか、初黒星です……》
《際どい勝負でしたね。6六角のところで4四銀は、3一龍、1三角、4二龍で、4三龍を狙うか、あるいは1一龍と香車を拾って、2二金、1三龍、同金、3一角。これが意外とうるさいです》
全部かいくぐったのは、凄いわね。さすが個人戦優勝者。
「3七桂が詰めろだとは思いませんでした。3四香の時点で気付いてましたか?」
ふたりはギャラリーそっちのけで、感想戦を始めた。
「アハハ、それはないですよ。受けるので精一杯でしたから」
「ふむ……少々、攻めに集中し過ぎましたか。3三金と打たれたところでは、3三香を読んでいたのです。それなら、4二龍で勝ちだと思っていました」
あ、それで金を打ったんだ。香車なら死んでるわ。
「3三金に、銀を逃げられたら、困ってたと思うんですよね……2一銀不成、4八と、3三桂成、同銀、4五金、2四玉、3二銀成とか……」
捨神くんは、相手の勝ち筋を指摘した。
「なるほど、一考の価値ありですね」
《猫山さん、もう一局くらい解説を……》
《そうですねぇ……忍者さんの将棋にしておきますか》
《了解……》
箕辺vs神崎戦が、モニターに映された。
【先手:箕辺辰吉(敗勢) 後手:神崎忍(勝勢)】
《本譜は、5三飛成、8七歩成、同金、8六歩、同銀左、同金、同金、8七歩、同金、同角成、同玉、7五角の王手龍……》
《以下、8六歩、5三角、5四角、4三歩……》
《先手、そこそこ頑張ってますね。8七歩には9八へ逃げるかと思いました》
《次の手は4四歩……》
ん? 4四歩?
《同角に何かあるんですか?》
猫山さんも、ちょっと疑問に思ったようだ。
「すまん……4二銀打しか読んでなかった」
箕辺くん、正直者。
《以下、同角、6三角成、6五桂、3四歩、7七桂成、同桂、7六銀……》
詰んでるっぽい。
《同玉、7五飛、8七玉、7七飛成、9八玉、8八龍までですね》
《本譜は7五飛の時点で投了……》
箕辺くん、残念。
「俺はいったい、どう指せばよかったんだ?」
「敗勢側を持っているのだ。拙者が正しく指せば、拙者の勝ちに決まっている」
神崎さんは、身もふたもない言い方をした。
ま、事実なんだけどね。最善を尽くしても勝てないから敗勢なわけだし。
《81Boysには、50ポイントが進呈されます……次の挑戦者は?》
観客席で、目配せが始まる。
「そろそろ、僕らが行こうか」
千駄前会長は、そう言って席を立った。
「先輩がペンギン担当ですか?」
辻くんが尋ねた。
「そうするしかないだろうね。他に穴が見つからないし」
「ねえねえ、あたしたちもコスプレしようよ」
甘田さんの提案を無視して、千駄さんと辻くんは階段を降りた。
「ちぇ、マジメくんふたりのチームは、つまんないなぁ」
甘田さんも、慌ててあとをついて行く。
《並びは……?》
「甘田、辻、僕で」
「え? あたしが不思議ちゃんとなの?」
千駄さんは、黙って頷き返した。
「変人同士なら、勝てるかもしれねぇなあ」
と冴島先輩。
《じゃんけんをお願いします》
じゃんけんぽん。
甘田、神崎、千駄の勝ち。
「あたしが勝勢で」
「拙者も勝勢側だ」
「敗勢で」
千駄さんは、敗勢側を選んだ。
明らかにさっきの対局を意識している。
《では、考慮時間スタート……》
《千駄vs吉備のところを、見せてくれませんか?》
私たちの前にも、千駄さんの局面が現れた。
【先手:吉備丸子(勝勢) 後手:千駄光成(敗勢)】
ん……これは難しいわね。
「分かりやすい敗勢じゃないな」
菅原先輩に同意。
これは、どっちの形勢がいいかと訊かれても、即答できないパターンだ。
とりあえず、5三同金とはせずに、2六歩でしょうけど……。
《はーい、そこまで……対局開始》
「よろしくお願いします」
千駄さんは、ノータイムで2六歩と取り込んだ。
「双方受けの利く展開。悪くはありません。同銀」
2七歩、同玉、4九馬、5二と、2五歩、同銀、2九飛、2八銀。
《マズいですね。千駄くんが、攻めさせられてますよ》
吉備さんは受けに回っている。
当初の目論みが外れた形だ。
「しまったな……2六香」
「同玉」
「3八馬で、下駄を預けようか」
「先手、適当な受けがないだろ」
菅原先輩の言う通り、先手は受けがなさそう。
吉備さんは、ペンギンの羽を駒台に置く。
2七金とか?
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
《あ、これはいい手ですよ》
「受けない……? 詰むのか?」
千駄さんは、眼鏡越しに盤上を睨んだ。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
1三玉。ここ以外は簡単に詰む。
《2三金は足りないように見えますね……》
司会のカンナエアさんも、読みを入れた。
《2三金は、おそらく詰まないですねぇ。でも……》
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
銀捨てッ!?
「読み切られたか……」
千駄さんは仕方なさそうに、同玉と取った。
1五歩、2四玉、2五飛。
あ、詰んでるわ。1三玉、1四歩、1二玉、1三金、同桂、同歩成まで。
千駄さんが見落とすわけもなく、2五飛の時点で投了した。
《1四銀に代えて2三金は、同銀、同香成、同玉、2四飛に、1三玉と逃げるのが好手で、2二銀、1二玉、2一銀不成、1三玉で詰みません》
「こういう局面が出るなら、勝勢側を選べば良かったよ」
と千駄さん。後の祭りね。
《もう一局解説を……》
《甘田vs桐野戦で》
【先手:甘田幸子(勝勢) 後手:桐野花(敗勢)】
一目、先手良しね。
《とりあえず、同金右ですか》
《本譜は、同金右、4一飛成、5九馬……》
タダ捨てに見えるけど、王手龍の筋。
取らずに7八玉あるいは7九玉かしら。
「これ、同玉と取れば良かったね。7八玉が悪手だったよ」
甘田さんは両手を頭に当てて、変なポーズを取った。
7八玉が悪手? なんで?
《7八玉は6九角、8八玉、6八馬が一手スキですね。放置は7六桂、9八玉、7七馬が詰めろです。先手が龍を切っても詰めろになります》
《本譜は6七玉と逃げて、5八角成、6六玉、6四桂まで、投了》
《ああ、詰んでますね。5八角成に7八玉と逃げても、6八馬寄、8八玉、7七馬、同桂、7六桂、9八玉、8八金までです》
うむむ、逃げるとダメなんだ。
「お花の勝負術が炸裂したのですぅ」
「ところで、お花ちゃん、彼氏とかいるの?」
「ふえぇ……その話はNGですぅ……」
甘田さん、セクハラ三昧。
《では、6回戦……出場チームは……?》
「そろそろ、オレらの出番だろ?」
冴島先輩が席を立った。
「ちびペンギンが攻め苦手なのは分かった。そこを突くか」
菅原先輩も、階段を下りていく。
「ふえぇ、丸子ちゃんが狙われているのですぅ」
「ふむ……丸子殿、どうする? 並び替えるか?」
「局面次第では勝てますし、このままでよいのでは?」
千駄さんに勝ってるからか、吉備さんは強気だった。
「勝勢で受けて勝つ、これこそ将棋の醍醐味ですよ」
友だちなくしますよ。
「三宅、冴島、俺の順でいいな?」
「ああ、いいぜ。忍者なんかに怯んでられっか」
《じゃんけんをお願いします》
じゃんけんぽん。
桐野、神崎、菅原の勝ち。
「この忍者、じゃんけん強ぇな。6連勝だろ?」
「強いもなにも、拙者は、筋肉の動きで出す手が見えるからな」
インチキでしょ、それッ!
《手番は、どうする……?》
桐野さんと神崎さんは勝勢側を、菅原先輩は敗勢側を選択した。
《局面把握、スタート……》
敗勢側が、考慮時間に入った。
《どこを解説しますか……?》
《徹底的にマークされてる吉備さんを観ましょう》
モニターに、盤面が映った。
【先手:吉備丸子(勝勢) 後手:菅原道真(敗勢)】
これは……。
「双方、受ける展開だな」
千駄さんは、自分の対局を思い出したのか、眉間に皺を寄せた。
こうなると、菅原先輩が有利とも言えない。
「ま、短時間将棋は得意だからね、菅原くん」
久世さんは、あんまり勝敗に頓着してないようだった。
またドリンクを飲んでいる。
《はーい、そこまで……対局開始》
初手は菅原先輩だ。
「9四角の逃げは、6三龍で完切れだ……9四角打」
ぶはッ! 凄い手が出た。
《1分考えただけのことはありますねぇ》
猫山さんも上機嫌。
「3一龍と、攻めながら逃げます」
「こっちも逃げるぜ」
菅原先輩は、7六角と上がった。
《次に6七香成が詰めろです。後手は詰みません》
「攻め合い……いいえ、受けです。8五銀」
「ぐッ、その手があったか」
菅原先輩は、6七香成と踏み込んだ。
7六銀、5八成香、同飛、7六角。
《先手玉は、5八角成からの詰めろです。ただ……》
ただ、何?
解説が終わる前に、1二角が放たれた。
1四玉、1六香。
「ん? 詰むのか?」
菅原先輩は、吉備さんの持ち駒を確認する。
桂馬しかない。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!
菅原先輩は、2五玉と逃げた。
《1五銀合は、同香、同玉、1六銀、2六玉、2八飛までです》
現時点で、先手は5八角成、同玉、6八飛、4九玉、3八銀、同銀、4八金までの詰み。ここで詰まさないと、吉備さんの負けだ。
「デジタル詰みセンサー!」
「飛車寄り……げッ!」
菅原先輩は、持ち駒の銀を落とした。
「つ、詰んでんじゃねぇか……」
「イエス・ザッツ・ライト」
「……俺の負けだ」
終了ぉ。他の2人も負けて、クルセイダーズ全滅。
《投了図以下、2六銀、同飛、同玉、3八桂、2七玉、2八銀打までですね》
《金でも詰みに変わりなし……ちびまるこちゃん、強し……》
「その渾名は止めてください」
吉備さん、ちょっと怒ったかも。
《もう一局の解説は、どこにしますか……?》
《そうですねぇ……忍者さんのを観ますか》
「ご照覧あれ」
【先手:冴島円(敗勢) 後手:神崎忍(勝勢)】
《これまた難しいですねぇ》
《猫山さんなら、何を指します……?》
《金を逃げてる暇はなさそうなんですよねぇ……4二成桂ですか?》
《本譜もその進行です……2二玉、2四歩……》
取らないの?
《これ、取るとどうなるんですか……?》
カンナエアさんの話題提供。
《4二同玉は、5四桂がうるさいですね。王様が3二へ戻ると、6二龍、3三玉、4二龍、2四玉、4六馬で、角を抜かれます。3二玉に代えて3一玉には、2三龍が詰めろ逃れの詰めろかと》
《先手、詰みますか……?》
「だいたい詰むとしたものだ。2八と、同金、同角成とバラして、5八飛でな」
また勘ですか。
でも、ほんとに詰んでそう。
《これだけあれば、いくらでも詰みそうですね。合駒をしないのは無理ですし、3八桂合としても、2七歩、同玉、2六歩、同玉、2五歩、同玉と吊り上げて、1三桂、2六玉、2五歩、2七玉、2六銀、同桂、3八銀、3七玉、4七金、2八玉、2七金、1九玉、2八金打まで。並べ詰みです》
手数は掛かるけど、そこまで難しくないわね。
《吉備さんは攻めが苦手で受けが得意、という情報に、こだわり過ぎかもしれませんねぇ。勝勢側が受ける展開に持ち込めば、ハンデはなくなります。千駄くんも菅原くんも、素直に勝勢側で良かったんじゃないでしょうか》
それは、私も思う。
千駄さんは間違いなく勝ってたと思うし。
菅原先輩は、最後の詰みが見えてなかったから、ちょっと怪しいかな。
「これで14勝1敗ですぅ」
《さて、次の出場チームだけど……》
そこで、松平が立とうとした。
私は慌てて裾を掴む。
「ん? まだ行かないのか? 残り3チームだぞ?」
「ちょっと作戦があるから」
松平は首を傾げたけど、そのまま腰を下ろした。
そしてそのとき、後ろで声が聞こえた。
「そろそろ、私の出番かしら」
【局面出典】
○捨神九十九vs吉備丸子
内藤國雄vs大山康晴(第45期棋聖戦本戦2回戦)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=11108
○箕辺辰吉vs神崎忍
神田辰之助vs木村義雄(第01期名人決定大棋戦 後半第21局)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=16446
○吉備丸子vs千駄光成
久保利明vs郷田真隆(第70期順位戦A級6回戦)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=74436
○甘田幸子vs桐野花
升田幸三vs花村元司(第10期順位戦A級名人挑戦者決定戦 三番勝負第3局)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=17847
○吉備丸子vs菅原道真
米長邦雄vs塚田正夫(第22回NHK杯戦1回戦第4局)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=63239
○冴島円vs神崎忍
上田初美vs清水市代(第31期霧島酒造杯女流王将戦 三番勝負第2局)
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=68352




