勇者
それは夢のような現実のような、、、
「、、、さい。目覚めなさい、、、」
遠くでささやくようにその声は聞こえる。やさしく包みこむような女性の声。
おかーさんこんな声してたっけ?起きる時間なら目覚まし鳴るっしょ?第一こんな起こし方しないよなぁ、、。
なんて瞳を閉じながらヒコは考えていた。瞳をあける事それはいつもと変わらない朝を迎えるものと思っていたヒコに大きな衝撃を与えるのであった。「おい、おまえらいい加減起きやがれ!」
さっきの声の持ち主の一転した声色に夢ごこちも醒めヒコはぱっと目覚める。
なっなにここ?どこ?えっなんで!?
状況が飲み込めずキョトンとするしかなかった。
ヒコの目には四角い白い広い部屋が広がり、昨夜ジヤージを着てベッドに寝たはずなのに何一つ身につけたものはなくただ一枚の白いシーツだけが無造作に体にかかっているだけなのだ。思わずぱっと起き上がる。
「きぇぇえぇっー!!」
とっさにおたけびを発し更に後退りし、壁に背中が当たりしかしまた元の位置へ戻らざるを得ない状況である。
「もっと女らしい悲鳴あげられないの?」
と、男は言う。そう、思わずぱっと起き上がった瞬間白いシーツの反対側には若く、髪の毛の茶色い眉毛の細く整った男が横に寝そべり上半身裸でこちらをみていたのだ。とっさにシーツをつかみ後退するも男の陰部が露になるのをみるととっさに元いた位置へ戻らざるを得なかったのだ。
「あっあの、あっすいません。」
顔を赤らめうつむきながらヒコは言った。すると男はにやにやしながら
「何にたいしての謝罪?」
と返す。
あたしが動いたせいであなたのちんこあらわにしてすいませんって言わせる気!?この男なんなの?
沈黙が二人を包む。例えなにか聞いたところでこの男はまともに返事しないだろうとヒコは感じたからだ。「目覚めましたね勇者たち。あなたたちは選ばれた人間です。さあ旅立ちなさい。そして旅の本当の意味をみつけなさい。では私はあなたがたの旅を見守っていますよ。」
「なんなの?」
ヒコは言う。
「俺は起きたらこんな格好でしかも何処ですか?って自問自答しちったよ。」
男は言う。
あれっ?なんかイメージ違うのかなこの人?
「でもよこの状況じゃ身動きとれねーしな。」
とたんに白い煙に覆われたかと思うとヒコは白いシャツにサスペンダーのついた深い緑色の単パンに茶色のブーツへ、男はタンクトップに軍パンビーチサンダルへ、そして二人とも同じ形の指輪がたのネックレスをした格好へ変身するのだった。
「すごいねこの世界。」
「うっうん。」
どちらともなく言うと白い部屋の一角へ扉が現われそとの風景が見えだしている。
「いっとく?」
「うん。」
そういうと二人はどこの世界ともわからない場所へ一歩を踏み出し始めた。
長く続く一本道を二人はただひたすら歩く。四方八方見回すがただただ大草原が広がるばかり。
「名前なんつーの?」
男がぶっきらぼうに言う。
「ひろこ。みんなはヒコって言ってるよ。あんたは?っーか自己紹介しとく?」
「俺は綾。年は17で高校は県立中央。んーサッカーしてたけど辞めた。んー聞きたいこと何でも聞いてくれた方が楽だな。」
「あたしも17。県南高校。あたしは帰宅部かな。県立中央ってあの坂の上にある頭いいとこ?あっでも他の県にも同じ名前のとこあるよね。」
「んーたぶんヒコの知ってるとこかもね。、、ヒコって髪の毛長いね。何年のばしてるの?」
なーんてたわいのない事話ながら何日も何日も二人は歩きつづけた。彼女はまだ知らない。彼女がなぜこの世界にいるのか。
それは数時間前の出来事。俺は事故にあう。そしてだれも居ない世界で大好きだった彼女そう髪の長い南高のヒコと過ごしたいとねがうんだ。そして現在。
「綾って好きな人いるの?」
どうして彼女がこの世界にいるのか俺自身わからない。分かっているのはこれから彼女を俺のものにするまでの時間はたっぷりあるって事。 「俺いつも見てた子がいるんだ、、。」