6.建設流行 文化的な生活とは
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投稿者名:三郎 【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
賞金首イベントも第二弾来ましたが、ここらでもういちど彼らの
目撃情報を整理してみませんか?
何処で誰を見かけたのか。または交戦しました等バンバン書き込
んで下さい。
賞金首の職業や使用スキルなどの情報もお待ちしております。
また、賞金首のSSも随時募集いたします。
皆で賞金首を狩り尽くしましょう!
以下テンプレ
遭遇場所:
賞金首名:
交戦:した/しない
自戦力:
戦績:勝ち/負け
↓ 使用スキル他 賞金首のスペック等 ↓
討伐済み賞金首数 四人
夜露死九
Ark
イーチェス
サルボン
残り賞金首数 四十六人
投稿者名:エイメン Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>三郎
情報乞食乙!
何でおめーのためにお金になる情報出してやらにゃならんのだ?
投稿者名:TAO Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
スレタイにセンスの欠片も感じられないな。
それ以前にスレ主が情報出せてない時点で間違いなく地雷。
よって逝ってよしと言ってやろう。
投稿者名:すかっしゅ Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
賞金首の目撃情報はお金になるです。SS付ならなお良しです。
投稿者名:エッジ Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>すかっしゅ
実際のとこ情報は売れないだろ。不確かなもんに金払う意味が
無いわ。
むしろそれなら時給幾らかで特定の場所に張りこんでもらうとか、
そういった事しか出来なくね?
投稿者名:老師ちゃん Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
まじで賞金首ってどこにいるんだろうな。
話によればあいつら普通のプレイヤーと同じかそれ以上に
行動出来るって話だぞ。
討たれた四人は普通にタウンエリアに入って来て、
フィールドに出たところをリンチされたって話だが……
投稿者名:スピリタス Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>老師ちゃん
ああ、あれな。俺あの場に居たんだけど、例の人工知能の演技が
リアル過ぎて気分悪くなったんだよな。
いまだにあの時の助けてくれって叫び声が耳離れないんだよ……
投稿者名:ジンロ Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>スピリタス
あー、あれなぁ。俺も同じだわ。
ってか、俺としてはあの時リンチに加わってたやつらの、
なんていうか、嗜虐心に満ちたっていうの? あの顔の怖さねえよ。
そりゃゲームなんだって言えばそれまでだけど、あの命乞いを見て
笑って攻撃し続けられる神経が分からん。
投稿者名:Demo Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>ジンロ
偽善者乙。
公式がやってるイベントなんだから何の問題もねーよ。
つーかそういうの一匹狩るだけで最低でも五十万とかウマ過ぎだぜ。
ランクSは元有名プレイヤーのキャラだけあって狩るのは難しそう
だが、まあ人数集めて押し切れば余裕だろうぜ。
所詮人工知能だし。人間様には勝てねえよ。
投稿者名:ひまわり Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
そういえば、人工知能ってどれくらいなもんなんだろうね。
タウンに入ってフィールド出たところで狩られるってお粗末過ぎない?
投稿者名:Stolo Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
そういや俺が見かけたのは人目を避けてコソコソと物陰に隠れながら
移動してたな。
学習機能とかあるんじゃね?
討伐数が増えるに従って手強くなるとか。
投稿者名:愛藍 Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>Stolo
ありえるね。そうなると高ランクの賞金首は序盤が一番討ち取り
やすいってことになるんかな?
よっし、がんばっちゃうわよん。
投稿者名:Jack Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
ちょっと悔しかったので賞金首情報晒します。
遭遇場所:カルテナの森
賞金首名:『銀狼』鳳牙、『賢人』フェルド、
『巨星』アルタイル、『鉄壁』小燕
交戦:した
自戦力:聖騎士、騎士、拳王、剣聖、魔術師
戦績:負け
↓ 使用スキル他 賞金首のスペック等 ↓
相手の構成は上記名前順に『獣人』、『司祭』、『忍者』、『重戦士』
この内『獣人』がとんでもないスキルを持っている。名称は不明。
ダメージログを検証したところ、
AC五十の拳王に対して約八百ダメージ。
AC百十二の聖騎士に対して同じく八百近いダメージを入れられてる。
他の面々は『獣人』ほどずば抜けて危険なスキルを持ってはいないが、
きっちりパーティーを組んでの集団戦を展開してきた。
スレの上の方で人工知能の強さ云々が書かれているみたいだが、
少なくとも俺が交戦したこのパーティーはヤバイ。
ほとんどプレイヤーが操ってるのと変わらない戦術と技能で
応戦してくる。
あと、俺の錯覚かもしれないが、スキルではなくリアルな意味での
『挑発』もされた。一瞬、相手が人工知能だって事を忘れかけた。
出来ればリベンジを挑みたいが、ランクSとランクAには手を出さ
ない方が無難かもしれん。
以上。
投稿者名:TAO Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>Jack
八百ダメージ(笑)
投稿者名:エイメン Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>Jack
八百ダメフイタ(笑)
さすがにバグだろそれ。八百って装備品と魔法と料理で
全強化かけても届くか届かないか微妙なラインだぞ?
んなもん使われたら誰も勝てねーじゃん。
投稿者名:エッジ Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>Jack
拳王と聖騎士でダメ変わらないって事は、それ下手すると
防御無視だろ?
さすがにランクSは格が違った!
投稿者名:火事場猫 Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>Jack
なあ、ランクS二人とランクA二人って事は、賞金合計三千万だよな?
ビ ッ グ マ ネ ー 掴みそこないご苦労様です(爆笑)
投稿者名:桂冠 Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
いやそれ以前に誰か二つ名持ちが四人でパーティー組んでるってところ
に突っ込めよ。どういう事なの?
投稿者名:あくせる Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
人工知能やべーな。そっか、賞金首も徒党を組むのか。
そうなるとソロで賞金独り占めは厳しいかもしれないな。
最低でも五人フルパーティー、もしくは二パーティ以上か?
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投稿者名:てりぶー Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
なあ、↑でJack氏の戦闘レポが報告されてから、やたらと賞金首が
出没する様になったと思わないか?
さっきタウンエリア出た直後に不意打ち喰らって殺されたんだけど……
投稿者名:ともちん Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>てりぶー
あ、他にもそう思てる人おるんか。
ウチも昨日フラミー海岸で襲われたわ。
装備のしょぼかったりするビギナーがようき狙われとるらしいで。
ウチそん時拾うたカス武器もっとったんやけど、メインで応戦したら
逃げよったわ。
投稿者名:クルクル Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>ともちん
人工知能が初心者狩りしてるってことか?
それマジだったらイベントとしてどうなんだろうな。
これって『狩り』イベントなわけだろ? なんで俺らが狩られてんの?
投稿者名:Fake Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>てりぶー
人工知能にこっちの手段真似されてんじゃん。
>>ともちん クルクル
って事はやっぱり学習機能付きかね。
しかしほんとに人工知能なのか? だとしたらすげえよな。
投稿者名:ともちん Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
>>クルクル Fake
ウチに聞かれても困るわ。
そろそろ第三弾来よるし、そこで何か分かるんちゃうん?
投稿者名:Foo Re:【お金】賞金首目撃情報交換スレッドその1【ゲット】
素材収集中の生産職とかも襲われるらしいぞ。
生産職は知り合いに護衛頼んだ方がいいかもな。
なんかマジでお尋ね者になってるあたりがリアルだな。賞金首。
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御影の工房を訪れてから、さらに四日が過ぎた。
その間に、『異端者の最果て』ではちょっとした変化が起こっている。
いくつかの露店と酒場くらいしか建物オブジェクトの存在していなかった中心街に、最近になって急速に中規模の建物が建ち始めるようになったのだ。
それはただの建物ではなく、いわゆる『ギルドホーム』と呼ばれる建物だ。つまるところ、賞金首たちがギルドを結成し始めたのである。
最初にギルドを作ったのは一部の女性プレイヤーたちだった。
日が経てば何かと慣れてくるもので、あるプレイヤーが思いきってギルド結成を試したのである。
その時までほとんどの人が半ば忘れていたのだが、ギルドを結成する時に無料でギルドホームの建設アイテムを渡され、好きな場所に建設出来るという説明を受けたらしい。
それまで何をするにも青空という状況で落ち着かなかった事もあり、このギルドホーム建設は女性プレイヤーの嬌声と、一部男性プレイヤーの舌打ちを持って受け入れられた。
そうして『異端者の最果て』で初めてのギルドホーム建設となったのだが、実のところこれには特典が付加されていた。
そしてこの特典が、今のギルドホーム建設ラッシュの原因でもある。
◇
「お風呂とトイレ作れるの!?」
素っ頓狂な声が響き渡り、その声が届いた誰もが動きを止めた。
場所は『異端者の最果て』中心街。新築のギルドホーム前だ。
その時、建てられたばかりのギルドホームを見ようと、興味本位でかなりの人数がその場に集まっていた。
ギルドホームの所有者は新設ギルド『秘密の花園』。そのギルドマスターを勤めるのは、ハヤブサという名前の女『武者』だった。
彼女は先ほどまでギルドメンバーと一緒にギルドホームの完成を待っていて、鳳牙とフェルドもたまたまその場に居合わせ、集まっていた野次馬たちと一緒にしげしげとギルドホームの出来上がる様を眺めていた。
時間が過ぎてギルドホームが完成すると、ハヤブサがすっと前に出て集まった野次馬たちをぐるりと見回した。
ポニーテールにまとめた黒髪を颯爽となびかせ、その身に動き易さ重視の、しかし見ればそれと分かる真紅の改造日本鎧を装備している。
顔立ちは美人と言って間違いない。目元の泣きぼくろもその艶やかさを際立たせ、男であればついつい目が行ってしまう胸元は母性に溢れていた。
「さって、これであたしらには寝床が出来たってわけだ。んん~? そこな男共、もうあたしらの可愛い寝姿は見れないからね。でもま、娯楽もないこの世界だ。ギルドメンバーは許さないけど、あたしをオカズにするのは許してやろう」
ふふんと鼻で笑いつつ、ハヤブサがその豊満な胸をやや強調させるような仕草を取り、ペロリと赤い舌を覗かせる。
「「「ウオオオオッ!」」」
野次馬の男たちから熱狂的な歓声が上がり、『秘密の花園』に属していない女性からは冷めた視線が飛んで、ギルドメンバーは慌てて自分たちのマスターの行為を止める。
そんな騒がしい状況の中、『秘密の花園』のメンバー達はウキウキと新築のギルドホームへ入って行き、ほんの数十秒を経て素っ頓狂な声が上がったのである。
そのまた数秒後には焦り顔のハヤブサがギルドホームから飛び出してきて、
「誰か撃退マーク二十個持ってる人いない!?」
半ば悲鳴のような声を上げたのだった。
野次馬たちはそれぞれにざわざわとしながら顔を見合わせているが、どうやら持っている者はいないようである。
「フェルドさん。俺たちがこの前手に入れたの幾つでしたっけ?」
鳳牙は隣のフェルドに確認の問いを投げた。
カルテナの森で襲撃者を撃退した鳳牙たちは、異端者の最果てに戻ってきてから初めて持ち物ボックスに星型のアイコンが増えている事に気が付いた。慌てていたせいで持ち物をきっちり確認しなかったせいだ。
そういえばと劇場でのミコトの説明を思い出し、例にとメイドコールをして――何故かまたHAR‐七が来た――アイテム交換を試したのである。
しかし交換可能な物が特にこれといって必要性を感じるものでもなかったため、完全に放置していたのだ。
「えっと、幾つだったかな。確か鳳牙から十四個で小燕から九個、アルタイルから五個だったと思うから、二十八個じゃない――」
「二十八!?」
そんなに大きくもなかったフェルドの言葉に反応して、ハヤブサがものすごい形相で鳳牙たちを見たかと思うと、次の瞬間には間合いを詰められて彼女の姿は目の前に達してた。
「うおっ!」
「うわっ!」
驚いた鳳牙とフェルドはとっさに間合いを取ろうとするが、
「逃げんなって」
一瞬早くハヤブサの腕が首に回されて引き寄せられてしまったために離脱は叶わなかった。代わりに、鳳牙もフェルドもそれぞれ左頬と右頬にとても柔らかいものを押し付けられる。
「え……う、と……」
「あ、ちょ、当たってる当たってる!」
鳳牙は瞬間的に真っ赤になり、フェルドは冷静に突っ込みを入れた。
「当ててんのよ」
そんな二人にはお構い無しに、ハヤブサはぐいぐいと鳳牙とフェルドの顔を自分の胸に押し付け続ける。
「なあ、撃退マーク持ってんでしょ? 頼むから二十個譲って。もしも譲ってくれたら一回だけ使わせてやるからさ」
「つ、使うって何をだってそれはいいから放してく――げっ! 鳳牙! そっちに行くな戻って来い!」
「う……え…………はっ」
茹蛸のように真っ赤になって朦朧としていた鳳牙はフェルドの声で意識を覚醒させ、
「……むにゅむにゅ……柔らかい……」
すぐさまトリップの世界に舞い戻った。
「鳳牙ーっ!」
フェルドの悲鳴が周囲に響き渡る。
「あらま。こっちのもふもふ君はずいぶんと初心だね。……やだ、苛めたい」
「止めてくれ。というか、いい加減解放してくれ。鳳牙は壊れたけど、僕はこの程度でどうともならないよ?」
「……ふふん。そうみたいだね。むっつりっぽい眼鏡してるわりに、なんとも張り合いのない」
やれやれといった感じで、ハヤブサが万歳するように手を挙げ、鳳牙とフェルドを解放すした。
フェルドはややたたらを踏んだものの体勢を立て直したが、鳳牙はそのままぼけーっとへたり込んでしまっている。
「……さて、いきなりでまいったけど、もう一度用件を聞こうか」
とりあえず鳳牙を放置する事にしたのか、フェルドがずれた眼鏡を直し、きらりと輝かせながらハヤブサに向き直った。
「さっき言った通りだよ。撃退マークを二十個、譲って欲しいのさ」
「それは何のためにだい? さっき貴女が叫んだ事とどう関係が?」
「そのまんまさ。ギルドホームに設定した専属メイドにホームに対して出来る事を聞いたら、お金以外に撃退マークを納品する事で拡張出来る機能もあるって言われた」
「……その中に風呂とトイレがあったと?」
フェルドの言葉に、ハヤブサが無言で頷いた。
途端、周囲がざわつき始める。特に女性プレイヤーが顕著だった。
「風呂もトイレも十個ずつ必要なんだ。だから二十個必要ってわけ」
「なるほど。撃退マークにはそういう使い方もあるのか。何が何でもバウンティハントイベントに参加させたいって事かな」
強力な武具が手に入るという事意外にも、生活をする上で需要の高いものを手に入れられるとなれば重い腰を上げる者も多いだろう。
今後、撃退マークの価値が急上昇するのは確実だ。
「まあ、譲ってあげるのはやぶさかじゃないけど、僕らとしてもそういう利用価値のある物をおいそれと無償で提供は出来ない。僕らの持ってるマークは命の危険を犯して手に入れたものだからね」
それが分かっているからこそフェルドは頭をフル回転させ、この場で最良の選択は何かを考えているようだ。
「何か対価が欲しいって事かい? ふふん。まあ当然だろうね。けど、悪いが何も出せるものはないよ。装備品はこれっきりだし、金はあんまり価値が無いだろう?」
ハヤブサの言う事は正しい。賞金首たちの中に熟練度の高い生産職がいないという現状、現存の武具は賞金首たちの生命線だ。また、プレイヤー露店を利用出来ない状況ではゴールドの価値はほぼ無い。日用品を買い揃える程度であれば、エリア内のモブを狩ってドロップ品を露店売却すれば事足りる。
フェルドもそれは理解している。故に、何を望めばいいかを思案して――
「さっき、一回だけって言いましたよね?」
そんな声がして、フェルドとハヤブサは同時に声の発生元、鳳牙へと顔を向けた。
鳳牙はよろよろと立ち上がり、やや頬を紅潮させたままハヤブサを見る。
「ああ。提供してくれたらホームにあんたたちを招待して、作ったお風呂とかを使わせてあげてもいい」
「……一回では対価としては不十分です。俺たちにも女の子の仲間がいます。だからこちらの条件は、俺たちがホームを持って同じように施設を拡張出来るまで無制限で施設の利用を許可して欲しい、です」
じっと、鳳牙はハヤブサを見続ける。フェルドは鳳牙が話している最中に何かを言おうとしていたが、結局何も言わずに肩をすくめて溜息を吐き出していた。
そのまま数秒間の時が流れ、
「……ふふん。君はなかなか見所のある男だ。いいよ。その対価、受けようじゃないか。そういった理由なら、皆も納得してくれるだろうさ」
ハヤブサが鼻を鳴らし、交渉が成立する。
「というわけです。すいませんフェルドさん。勝手に決めちゃって」
「いや、いいよ。鳳牙の対価は僕の考えていたものよりずっといいものだ。小燕も喜ぶだろうし、まあ、正直僕もそろそろ冷たい水浴びじゃなくて温かい湯船に浸かりたいと思っていたんだ」
パンパンと鳳牙の肩を叩きながら、フェルドが柔らかな笑みを作った。
彼はそのままハヤブサとトレードを行い、撃退マークを受け取った彼女はすぐさまギルドホームへ取って返した。
ギルドホームを建設すれば野宿をする必要はない。その事実をその場に集まっていた全ての人が理解した時、全員が一斉に行動を開始した。すぐさまメイドコールを行う者や仲間と連絡を取る者など一気に騒がしくなる。
こうして、ゲームに囚われたプレイヤーたちの間でギルドホーム建設ラッシュが始まったのである。
◇
「それで、あたしたちはいつホーム作るのー?」
車座に地面に座り込み、露店で買った料理アイテムで夕食をとりながら小燕がそんな事を言い出した。
『秘密の花園』のギルドホームで施設を借りるようになってから、彼女はしきりにそんな話をするようになっている。
「近々とは思ってるよ。でも、ギルド結成の縛りがあるから、出来れば御影さんと連絡が取れてからにしたいんだ」
うーがーと文句を言う小燕の頭をフェルドが撫でて、どうにかなだめようとする。
「うぬ。結成時に決めるギルドマスターの変更不可、及びギルドの途中脱退不可というのはなんとも妙な制限で御座るな」
「それと、ギルドマスターが討伐されると連鎖的にギルドメンバーも消滅するっていうのもずいぶんなルールですよね」
「ギルドマスターになると必然的に行動に制限がかかっちゃうからね。僕らの場合、それは致命的な足かせになる」
鳳牙たちは全員で行動してこそのパーティーである。欠ける事は元より、行動に制限を受けてしまっては集団戦が出来なくなってしまう。
「だからこそ御影さんと連絡を取りたい。そして出来れば――」
フェルドはそれ以上言葉を続けない。言わずとも、全員その先の言葉は理解していた。
一般プレイヤーの設立したギルドに賞金首が所属する事は可能である、というのは劇場でミコトによって説明がなされている。念のためとメイドコールでも確認を取ったが、またまた現れたHAR‐七が鉄面皮の如き無表情で『lib。可能です』というお墨付きを出していた。
そうなると実に勝手な話なのだが、御影以上にうってつけな知り合いを他には思い浮かばなかった。
「でも御影のじーちゃん音沙汰ないよね。どーしたのかな?」
「うーん。工房は残ってたから、ゲーム止めたって事はないと思うんだけど。工房の出入り設定も僕らは許可されたままだったしね」
「うぬ。今の現実世界は夏休みで御座る。旅行にでも行ってるかもしれんで御座るな」
「ですね。ともかくフェルドさんの書置きで場所は指定しましたし、後は日時さえ指定してもらえればいいんですけどね」
言いつつ、鳳牙は本日すでに十何度目かの掲示板確認を行うため、ウィンドウを開く準備をする。書置きを残してきた日から張り付くように確認しているのだが、御影からの連絡は見つかっていない。
今また開くのも話の流れ上の、惰性のようなものだった。そのため、スレッドに表記されたその名前が誰なのか理解するにたっぷり十秒の時間を費やした。
「…………来た……」
「ん? 何がだい? 鳳牙」
「御影さんからの連絡です!」
鳳牙が叫び、全員が一瞬黙り込む。そして、
「え? ほんとに? ……あ、あった」
「……うぬ! 確かに御影殿の名前で御座る!」
「おー。じーちゃんの書き込み初めて見た」
それぞれに掲示板を開いたようで、口々に発見の報告を出した。
「明日の未の刻、その場所にて待つ……だそうです」
先に開いていた鳳牙はスレッドに書かれた文字を読み上げた。簡潔明瞭、ただ一文のみである。
「未の刻って何時?」
小燕がちょこんと首を傾げる。あまり耳慣れない昔の言い回しのため、鳳牙もすぐには時刻が分からなかった。
「うぬ。未の刻とは午後一時から三時までの時間の事で御座る」
「ほえ? 二時間分もあるの?」
「うぬ。やや広めの時間設定で御座るが、何か理由があるので御座ろう。拙者らは午後一時から待機すればいいだけに御座る」
胡坐をかいたアルタイルが、ついでとばかりに干支とそれに対応する時間について小燕に講義を始めた。
そんな様子を見た鳳牙はフェルドに、
「アルタイルさんて歴史に詳しいんでしたっけ?」
「うん。伊達にああいう御座るキャラしてないよ。専攻ってわけじゃないんだけど、時代劇とかが好きなんだ」
「なるほど」
知り合いの今まで気がつかなかった一面を見て、鳳牙はちょっと楽しかった。
「さて、御影さんから連絡も来たし、明日はちょっとした勝負の日だね」
「そうですね。ひとまず連絡はくれたんですし、話は聞いてくれそうですが……」
言いつつも、鳳牙は最悪の展開についても考えておく。あの置手紙や残してきた火之迦具土神の魂にしても、イベントの一環だと受け取っていないとも限らない。
また、鳳牙たちが御影の工房を訪れたという事は一部のプレイヤーに知られている。その工房の持ち主が意味不明なスレッドを残している以上、明日の行動を見張られる可能性もあった。
そうなれば必然的に鳳牙たちとかち合うことになる。
――出来ればそうあっては欲しくないけどな……
ふと、鳳牙は空を見上げる。
偽物の空に浮かぶ偽物の雲の向こう側で、作られた満月が惚れ惚れするほどの美しさで光を放っていた。