これにて幕引き
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投稿者名:あくせる Re:【激動】賞金首目撃情報交換スレッドその4【激震】
おいおいAA社でデータクラッシュ事故が起きたって
ニュースになってるんだが、今ゲームに接続してる俺ら
大丈夫なのかこれ。
投稿者名:TAO Re:【激動】賞金首目撃情報交換スレッドその4【激震】
書き込んでる暇があったらログアウトしろと。
というわけで俺はずらかるぜ。
投稿者名:あくせる Re:【激動】賞金首目撃情報交換スレッドその4【激震】
そ、そりゃないぜTAO~。
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投稿者名:HAO‐MIKOTO 【公式】イベント終了【告知】
この度はCMOをプレイしてくださり真にありがとうございます。
皆様変わらぬCMOライフを送っていらっしゃいますでしょうか?
さて本題になりますが、この度ついに、とうとう最後の賞金首が
討伐されました。
都合三ヶ月に及ぶ長めのイベントでは御座いましたが、これにて
めでたく終了となります。
一攫千金に成功した方。強い相手との痺れる戦いを経験出来た方。
その他ご参加いただきました全ての皆様に厚く御礼申し上げます。
今後も様々なイベントを企画していこうと思いますので、皆様ど
うぞよろしくお願いいたします。
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投稿者名:三郎 【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
皆様お疲れ様でした。
データクラッシュ事故でAA社が打撃を受けた際は
CMOも大丈夫なのかと思いましたが、どうにかこちらは
大丈夫なようでほっとしています。
さて、今回でバウンティハントイベントは終了という事ですが、
最後に皆さまからのコメントを残していただきたく、
スレッド名は踏襲したままで最後のスレ立てをさせて頂きました。
皆様奮って今回のイベントに関する雑談を行って下さい。
三郎でした。m(_ _)m
投稿者名:てりぶー Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
華麗にゲッター再来ぜ。
>>三郎
最後までスレ立ておつかれー。
いやー、なんか感慨深いな。結局あんまり賞金首に当たらんかったけど。
いろんなドラマがあって楽しかったな。
投稿者名:あくせる Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>三郎
おつかれさま。
一回だけでもてりぶーさんに勝てたのが喜びだったよ。
あ、ちょっとひんぬーの人連れてくる。
投稿者名:TAO Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>三郎
長い間ご苦労様でした。
さて、それじゃあ私もきょぬーを呼んでくるとしようか。
投稿者名:たすく Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
二人ともいってらー。
きょぬーとひんぬーっていえば、
特殊クエスト絡みで何か言ってたような……
投稿者名:ともちん Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
うち参上!
特クエなー。結局うちらは行けんかったなー。
投稿者名:ひまわり Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>ともちん
そうだねー。
アドラ城の塔で誰か一人でも討伐出来てれば参加出来たのにね。
やっぱり惜しかったなぁ。
投稿者名:ジェイス Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>ともちん、ひまわり
そうだな。
しかしまあ、あの狭い階段で豪震脚を撃たれたら避けようもなかった。
謎といえば袋小路からどこへ消えたかだが、結局分からずじまいだな。
投稿者名:TAO Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>ジェイス
そういえばイベント始まってからいくつかバグ報告みたいなものも出てたな。
やはりイベントのせいだったんだろうか。
投稿者名:Stolo Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
む。そうか。イベントは終了したのか。
投稿者名:火事場猫 Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
特クエのモブ強すぎワロタ。
……ワロタ。
投稿者名:あくせる Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>火事場猫
開始五分と持たずに全滅だっけ?
ひんぬーの人もそんな事言ってたね。
投稿者名:Fake Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>あくせる
あれは明らかに設定ミスな強さだろ。
うちの壁役が二連撃で溶けたぞ。どこぞの一撃必殺スキルでもあるまいに。
投稿者名:火事場猫 Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>Fake
そうは言うが一応あれはあれで面白かったけどな。
逆無双ってやつ?
まあなんだ。あえて言うなら、
おっきいだけのモブに蹂躙されるだけだと萎えるが、あのモブ通常サイズだ
ったしな。凶悪な範囲スキルでぼっこぼこにされるでもなく、どうにかいっ
ぱいいっぱいで頑張ればもしかしたらと思わないでもない。
いちげきひっさつもないし、ちゃんと遠距離から動きを止めつつも前・後衛
はきっちり役割分担して攻めればよかったんだと思うわけさ。
正直なところ初見であれは厳しい。でも攻略できなくはなさそうだな。
ぎせいしゃゼロは無理だろうがな。
ってところだ。オーケー?
投稿者名:Stolo Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>火事場猫
最後までお前ってやつはよう……
投稿者名:Fake Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>火事場猫
そのおっぱいに捧げる情熱だけは評価に値する。
しかしやはり世はひんぬーであるべきだ。
投稿者名:エッジ Re:【【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
……なあ、ここってイベントに関する雑談の場所だよな?
何この流れ?
これで見納めか。
投稿者名:桂冠 Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>エッジ
煽……。
ふむ、これもこれにてお終いか。
しかしまあ、本当にちゃんと終わったのかこのイベント。
一挙三十人討伐からわずか一週間で残りも討伐されるってのも
変な話だよな。
投稿者名:老師ちゃん Re:【終了】賞金首目撃情報交換スレッドその5【宣言】
>>桂冠
確かにちょっと急だったよね。
でもまあ三ヵ月も続いたイベントだし、運営もそろそろ……ね。
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あれから数か月が過ぎた。
謎のデータクラッシュによって甚大な被害を受けたAA社は、株価の暴落によって一時期は経営が危ぶまれるまでに信用その他が失墜した。しかし、その後に発表した新たな技術で盛り返す事に成功し、再び日本のトップ企業への返り咲きを狙っている。
「Administration Character。通称アドキャラですか。完全にコピー品ですね」
ディスプレイに表示させた記事を流し読みして、総司は席を立ってぐいと体をのばした。空になったカップを手に取り、そのままコーヒーメイカーにセットしに行く。
ちらりと時計を確認すると、時刻はちょうど一三時を過ぎたところだった。途端、ぐうと腹の虫が鳴る。
そういえば昼ご飯を食べていなかったなと総司がお腹をさすると、
「所長。なにか出前をお取りいたしますか?」
彼しかいないはずの室内の中から女性の声が聞こえてきた。
姿なき何者かの声を聞きいて、しかし総司は焦るでも驚くでもなく、すでに聞き慣れた騒音発生装置でもある三台の大型コンピューターへと視線を向けた。
そのコンピューターの近くに新たに設置したデスクには大型ディスプレイが乗っており、そこには闇色の髪と瞳を持ったメイド服姿の少女が映し出されている。
「そうですね。時期に彼も来るでしょうから、二人分何か頼んでくれるかな」
「分かりました。それでは何か温かい物をお取りいたします」
「よろしく」
ひらひらとディスプレイの少女に手を振って、総司は新たに注いだコーヒーを手に自分のデスクへ戻った。
しばらく経ってから、デスクの上に置いておいた携帯から着信メロディが鳴り始めたので、総司はゆっくりとした動作で電話に出る。メロディからかけてきたのが誰なのかはすでに分かっているため、
「今開けるよ」
相手に何も言わせずに総司はデスクの裏に隠されたスイッチを押した。すると出入り口の扉の方でガチャリと鍵が操作された音がして、すぐに扉の開かれる音が続いた。
「おはようございます。久那島所長」
そうして現れたのは、総司から見ればまだ子供と言って差し支えのない少年だった。年齢的にはそろそろ一八を数えるので社会的にはいっぱしに見る者もいるが、いまだ学生である以上は子供と言って間違いではないだろうと総司は考えている。
短く整えた黒髪は清潔感があり、本人曰くまだ前のレベルまでには戻っていないという事だったが、制服に隠れた身体は同年代の少年に比べればがっしりした印象がある。
「おはよう圭介君。その様子だと、学校が終わってから直行してきたようですね。さっきハル君に出前を取ってもらいましたから、仕事はそれを食べてからにしましょう。とりあえずはまあ、着替えてきなさい」
「分かりました。ありがとうございます」
圭介は総司にしっかり頭を下げてお礼を言うと、別室へ足を向けながらしっかりディスプレイに映るハルに小さく手を振り、ハルもまた嬉しそうに手を振りかえしていた。
なんというか、自分で雇ったとはいえこうも毎日目の前でいちゃいちゃされるのは何とも言えない気持ちになる。さすがに事に及んでいる様子はないが、たまに仕事以外でもこっそりと事務所のバーチャルリアリティ機器を使用しているところを見ると、まあ何かしらはしているのだろう。
微笑ましいものではあるので何も言わないが、いわゆる保護者的な観点からいずれ釘を刺しておいた方がいいかもしれないとは思っていた。
「所長? どうかなさいましたか?」
「え? ああ、いや。相変わらず君たちは仲が良いなと思いましてね」
総司がさらりと指摘すると、メイド少女はさっと顔を赤くしてうつむいてしまった。
何度見ても、ただの人間にしか見えない感情のこもった反応だった。そんな存在が、なぜか今は総司の保護下にいる。
――主に三条夫妻にはめられたとも言えますがね。
人に言う時は紆余曲折で片づけるが、実際には三条夫妻から依頼を受けたようなものだ。
あのイベントでAA社がデータクラッシュ事故を起こした時、逃れたハルは当初は圭介が収容された病院のネットワーク内に潜んでいた。
彼が退院したあとはしばらく彼の家にいたようだが、一般家庭に彼女のような存在を匿えるスペースはなく、彼が重光に相談した事をきっかけに美代経由で総司の下へ話が舞い込んできたのだ。
明らかな面倒事だったのだが、重光の脅しと美代の泣き落としに根負けし、引き受ける事にした。圭介の家と総司の事務所がさほど離れていないというのも要因の一つではあり、学校の場所に至ってはさらに近かったりする。
「あ、そういえば所長。最近話題になってるアドキャラって知ってますか?」
「うん?」
制服からスーツ姿になった圭介が戻ってきた。彼は自分専用のマグカップをコーヒーメイカーにセットしつつ、
「あれってハルのデータとかを元に作ってるんですかね?」
そんな質問をしてくる。それは先ほど総司も考えた事だった。
「まあ、たぶんそうでしょうね。デジタル面での生活をサポートする人工知能。容姿その他は自由自在にカスタマイズ出来て、二四時間体制でのメンテナンス業務とかも任せられるみたいですから」
「ですよね。もしかしたらその内、ハルが自由に動き回っても大丈夫なようになるかもしれませんよね」
「それに関しては別に今だって大丈夫ですよ。そのために本物の戸籍とIDを取得しているんですから。彼女は現実の世界に身体が存在しないだけで、書類上はれっきとした人間ですよ」
「……けど、やっぱり少し不安です」
ズズズとコーヒーをすする圭介が、その言葉通りに不安げな表情でディスプレイのハルを見た。
確かに彼女の境遇を考えれば、事が露見した瞬間にまたモルモット生活に逆戻りする羽目になるだろう。研究者ではない総司ですら彼女という存在に人並みならぬ興味を覚えたのだから。
「確かに彼女という存在は特殊ですが、あまりびくびくし過ぎると余計に怪しまれますからね。堂々としているほうが案外分からないものですよ」
「ああ、そういえば尾行とか張り込みでも自然体でいろって言われましたっけ。バレないようになんて考えてる人ほど周囲から浮いて怪しく見えるんでしたよね?」
「その通りです。それに彼女もそう簡単に尻尾を掴ませるような事はしませんしね。先日もとある依頼で企業にハッ――」
「っ、所長!」
「おっと失礼」
ハルに大声で制され、総司は口を閉じた。しかし間に合わなかったようで、
「……ハル。お前まさかまた――」
「し、知らないよ。私何も知らないよ。どこかの企業にハッキングなんてシテナイヨ」
ぎろりと圭介に睨まれたハルが、思わず吹き出しそうになるほどに目を泳がせてこてこての言い訳ボケをかまし、
「あ、そろそろ定時メンテで見回りの時間だからちょっと席を外すね」
「あ、こら待て!」
しまいには圭介の制止を無視してディスプレイから姿を消してしまった。こういう時はデジタル体だと好き放題に逃げられて便利である。
「所長! またハルにハッキングさせたんですか!?」
デジタル側に逃げられてしまったので、アナログ側に矛先を向けた圭介が総司のデスクに勢いよく両手を叩きつけてきた。しかし総司はそれに驚きも焦りもせず、
「ええ。止めてもよかったですけど彼女が自分で取ってきた仕事でしたし、難易度の割に報酬が良かったんですよ。戸籍とID取得費用はまだ全額は返済されてませんから、その返済に充てたかったんでしょうね」
淡々と事実を伝えた。
「っ……」
総司は圭介がこの事実を突きつけられると何も言えなくなる事を知っている。別に意地悪のつもりはないが、少年らしい潔癖さはいささか眩しいのだ。
――嫌いではありませんがね。
まあなんというか、総司としてはこれもまた大人になるための訓練――という事にしてある。
「……分かりました。それで、今日は俺に出来る事は何かあるんですか?」
少しだけむすっとしている圭介を見て、総司はわずかばかりの笑みを浮かべた。
誰かのために本気になっている人間は成長が早い。ハルはともかく彼の事も押し付けられたときはどうなる事かと思ったが、なかなかどうして見どころはあった。
「そうですね。まあとりあえずは――」
呼び鈴が鳴り、総司のパソコンに隠しカメラの映像が映し出された。どうやら昼食が届いたらしい。
「腹ごしらえ、ですかね」
総司は財布から取り出した一万円札を圭介に渡す。
渡された圭介はまだ少し不服そうだったが、
「安心してください。ちゃんと君に手伝ってもらいたい案件があります。その出来高次第では、ハルの借金返済も早まるでしょう」
「っ。分かりました。ひとまず昼御飯ですよね」
総司の言葉にころりと機嫌を直して応対に向かった。そんな若々しい背中を見送り、総司はキーボードを操作してもう一人の様子を確認する。
逃げ出しただけかと思ったが、本当に機能チェックをしている辺りが生真面目な娘だった。彼女が住み着いてからデジタル関係の調子がすこぶる良いのだが、おそらくはこういったこまめなシステムチェックのおかげなのだろう。
そんな彼女の勤勉な仕事ぶりからみて、おそらくはあと一年もすれば借金などなくなるだろう。その後でどうするかは彼ら次第だ。
むろん、その後も留まりたいという事であれば総司としてはやぶさかではない。むしろ圭介に関しては自分の手で育ててみたいとさえ思っている。
だが選ぶのはやはり二人だ。小耳にはさんだあの日の出来事の際、痛みを学びつつも自分たちで未来を選択した時のように。総司に出来る事はその選択肢を広げてやったり、ちゃんと選択出来るようにしてやる事だけだ。
だから、彼は事務所の窓から見える空と太陽を見上げて願う。
人一倍障害が多くなるであろう二人の未来が、人一倍幸福な想いに溢れているものであるようにと。
4月30日の活動報告にて一部疑問点解消の補足説明をしております。
ご興味のある方はお手数ですがそちらの方をご覧いただければと思います。