5.陽光燦々 始まりは朝食から
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投稿者名:HAO‐MIKOTO 【公式】賞金首情報更新【告知】
この度はCMOをプレイしてくださり真にありがとうございます。
ついに夏季休暇も終わってしまいましたね。
皆様、一夏の思い出は出来ましたでしょうか?
夏休みより始まったバウンティハントイベントは着々と攻略が
進んでいるようです。
なんと、前回の更新では動きのなかったランクSの牙城がついに
崩されました!
今回はランクS一名とランクA一名を含む十二人の賞金首が討伐
されたようです。
皆さんがんばってますね。討伐者の方はおめでとうございます。
高位ランク賞金首を倒した経験のある方はご存知かと思いますが、
賞金首のドロップ品を回収した場合に見た事のない
アイテムを所持している事があります。
これらのアイテムは試験的先行実装のアイテムになりますので、
獲得された方は一足先にその性能や効力をお試し下さい。
今回の試験運用を加味して後日のアップデートでの導入を検討
したいと考えています。
興味のある方は賞金以外にも狙ってみて下さいね。
それでは早速以下より賞金首情報をお届けいたします。
すでに討たれた賞金首には『討伐完了』と明記されています。
討伐状況は随時更新していきますので、ご確認下さい。
投稿者名:HAO‐MIKOTO ランクS 賞金 一千万 ゴールド
『賢人』 フェルド
『鉄拳』 竜虎 ※討伐完了
『銀狼』 鳳牙
『迅雷』 ハヤブサ
『天崩』 どんどら
『遠見』 Senri
『極砲』 ディード
『神威』 きよたま
投稿者名:HAO‐MIKOTO ランクA 賞金 五百万 ゴールド
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投稿者名:三郎 【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
公式の告知に加えて前スレもいっぱいいっぱいなので再び立てます。
ついにランクSの一人、『鉄拳』の竜虎が討伐されたようです。
どなたか討伐の経緯について知っている方がいれば詳細を書き込ん
で頂けると嬉しいです(><)
前置きはこのくらいで、いつものように賞金首の情報を交換し合い
ましょう。
賞金首たちのスクショは外部の掲示板
『賞金首の指名手配書保管庫』
に掲載してますので、誰が誰なのかはそちらで確認してください。
今現在で六十名ほどの指名手配書が完成しております。
賞金首たちがギルドを結成しています。
ギルマスタグを付けている賞金首を倒せば所属賞金首たちの全賞金
を一度に手に入れる事が出来るという事なので、タグ付きは最優先
で撃破を狙いましょう。
他に、賞金首が結成したギルドに参加することで限定エリアや限定
ダンジョンに挑戦出来るかもしれないという公式発表もあります。
相変わらずこの情報に関してはまったくと言っていいほどに情報が
ありません。
心当たりのある方は是非書き込んでください。
確認されている賞金首ギルド
所属人数が五名以上(複数パーティー可)と思われるギルド
『秘密の花園』
『陽だまりの猫』
『聖帝十字軍』
『宴』
所属人数が五名(単一パーティー)以下と思われるギルド
『蒼穹旅団』
『真理の探究者』
ギルマス単独行動のみ(一人ギルド?)が確認されてるギルド
『山麓の庵』
以下テンプレ
賞金首に関しての目撃情報など
遭遇場所:
賞金首名:
交戦:した/しない
自戦力:
戦績:勝ち/負け
↓ 使用スキル他 賞金首のスペック等 ↓
討伐済み賞金首数 二十三人
内訳
ランクS 一/八
ランクA 二/十二
ランクB 三/十六
ランクC 三/二十
ランクD 五/二十
ランクE 八/二十四
残り賞金首数 七十七人
投稿者名:てりぶー Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>三郎
スレ立ておつかれー。
そして再び二番目ゲット。
賞金首ギルド名に関して二件追加頼む。
規模不明(スマンorz
『黄昏クウェイクス』
『SnowDrop』
投稿者名:あくせる Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>てりぶー
くっそまた負けた。早いって。
まあそれはともかく今週は来たなぁ。
ランクSとランクAを含めた十二人だもんなぁ。
俺も賞金欲しいぜちくしょう。
>>三郎
おくれたけどおつおつ。
投稿者名:TAO Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>三郎
もうスレッド名については何も言わん。
初期の頃は変な事言ってすまなんだ。よく続けてくれたよ。
>>てりぶー
それって最近になって『宴』と一緒に動いてるギルドだろ?
他にも二・三別のギルドタグ付けてるのがいるらしいが、
ギルド単位でも連携しだしたのか?
あいにく俺は『宴』に襲われた事ないんで知らんのだが。
投稿者名:Demo Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
『宴』マジうぜーよ修正しろ。集団で轢き逃げばっかじゃん。
他のギルドでそんな話聞かねーのに何でこのギルドだけこう
いう事すんの?
人工知能マジいらねー。
投稿者名:愛藍 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>Demo
荒れてるねー。まあ、『宴』ウザイってのには賛成かな。
楽しむためにやってるのにアレはないよね。
その内誰かが賞金首に対して同じ事始めるんじゃない?
賞金の取り分が激減するから今まではやってなかったけど。
投稿者名:ひまわり Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>愛藍
あー、それありそう。
私もこないだの時『宴』に轢かれたんだよね。
テンション駄々下がりだった。
まあそれがきっかけであの時のメンバーでちょくちょく色んな
ところへ行くようになったから、イベント的には悪くないかも
だけど。
投稿者名:ともちん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
呼ばれた気がしたんで参上やでー。
投稿者名:ジェイス Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
同じく。
投稿者名:ひまわり Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>ともちん、ジェイス
ちょ、ま、うぇ――
投稿者名:ともちん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>ひまわり
まあまあ過去の事はさらりと流して火山の蜥蜴さんの皮剥ぎに
でもいこかー。
おっと、これ以上はスレッドに迷惑やね。【ささやき】送るわ。
ジェイスはさっさと他の二人呼んどかんかいな。
投稿者名:ジェイス Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>ともちん
仰せのままに。
投稿者名:火事場猫 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
仲良き事は美しき事かな。
……ふむ。我々もまた手を取り合う道を模索するべきなのかも
しれんな。
思想の違いは軋轢を生むが、軋轢なき世界に意味はあるのか?
そう、今こそつまらない小競り合いではなく議論・討論という
話し合いのテーブルに着くべき時ではないのだろうか。
さあ返事をしてくれ。我が永遠の好敵手、『ひんぬー同盟』の
構成員たちよ!
投稿者名:Stolo Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>火事場猫
だからなんでこのスレッドでおっぱい談議を始めたがるんだ。
『きょぬー主義』の皆に迷惑がかかるだろ。
投稿者名:Fake Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>火事場猫、Stolo
仲間割れか? これだから余分な脂肪を崇拝する輩は駄目なんだ。
我ら持たざるものを信仰する『ひんぬー同盟』こそ至高。
お前たちと議論も討論も出来るはずがないだろう。
投稿者名:火事場猫 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>Fake
そんな事はない! 何故ならきょぬーもひんぬーも等しく、
愛でるためのおっぱいだからだ!
我らはおっぱいを愛でたい。根底にあるのはただそれだけだ。
その上に個々人の趣味至高が存在する。その垣根を取り去れば
我らは対等に話し合えるはずだ!
投稿者名:Fake Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>火事場猫
等しく、愛でるためのおっぱい……だと?
ぐ、くそっ。だ、騙されんぞ! そのような世迷言――
投稿者名:火事場猫 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>Fake
自分に素直になれ。お前と私は同志なんだ。兄弟なんだ。
さあ、めくるめくおっぱいの世界を存分に語ろうではないか。
投稿者名:エッジ Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
……なあ、ここって賞金首の情報交換する場所だよな?
何、この流れ?
ちょっとマンネリか?
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>エッジ
煽――ってない……だと?
まあ最初の様式美みたいなもんだろうよ。
というか俺の突っ込みももはや定番になってるような気が
して怖いんだが。
そうそう。まったく話しが変わるんだが、俺の知り合いが
カルテナの森で賞金首と戦り合ったらしいんだが、
なんか妙な結果になったらしいんだよな。
投稿者名:エッジ Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
妙な結果ってなんぞ? 興味アリアリですよ。
投稿者名:たすく Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
ああ、それって何日か前にちょっとの間だけ詳細のスレッド
立ったけど、すぐに立てた人が削除しちゃった奴でしょ?
誰もバックアップとってなかったから色んな憶測飛んでた
けど、立て主の知り合いなのか。
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>たすく
うん。
情報サイトでカルテナの森が高額賞金首出没の穴場エリア
だってかかれてたのは知ってる?
あそこに工房構えてた知る人ぞ知る武具職人が何かしら
関与してるって噂もあったかな。
でまあその噂を信じてしつこくトリエルで張り込んでた
らしいんだが、ついに網にかかったんだとさ。
投稿者名:ふぉんふぉん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
カルテナの森の個人工房って言うと、あの偏屈爺さんか。
あの人って気に入った相手にしか販売してくれないんだよな。
しかも本職『武者』なのに職業表記『匠』なんだぜ?
その上『銘入り』の武具作ってんの。
投稿者名:老師ちゃん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>ふぉんふぉん
初期が生産職じゃないのに匠にまで持ってったの?
しかも銘入り作製とかなにそれすごい。
よく職業恩恵なしで生産職やれるよね。
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
とまあそんな職人がどうも賞金首と通じてるらしいって話
だったから、斥候警戒して森でログアウトして待ち伏せを
したんだと。
で、見事に罠にかかったまではいいんだけど押し切れずに
逆転負け。
それでも最後に残った一人が賞金首を倒したって話なん
だけど、倒す直前にパーティー抜けられて賞金持ち逃げ
されたってオチらしい。
投稿者名:TAO Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
うわそいつ最悪だな。でも名前とかは分かっているんだろ?
抗議でも何でもすればいいんじゃないのか?
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>TAO
それがまるで見つからないらしいんだよ。
直接指定で【ささやき】かけようとしても拒否されている
わけでもないのに繋がらないんだってさ。
ちなみにこれ以上は俺も聞いてないから詳細不明。
投稿者名:TAO Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
そりゃ謎だな。
しかし、妙と言えば確かに妙だが、割とよくありそうな事
じゃないか?
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>TAO
これだけならね。けど、その賞金持ち逃げ犯が倒した
賞金首っていうのが『巨星』らしいんだよね。
投稿者名:TAO Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
は?
投稿者名:ふぉんふぉん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
マジ?
投稿者名:たすく Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
ええっ!?
投稿者名:老師ちゃん Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
嘘でしょ?
投稿者名:エッジ Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
>>桂冠
んんん?
投稿者名:桂冠 Re:【秋が】賞金首目撃情報交換スレッドその3【来る】
つまりはそういう事。
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御影の工房でマリアンナとBBという怪しげなハッカーに出会ってから、三日が過ぎた。
すっかり自室になってしまっているギルドホームの一部屋の中、鳳牙は欠伸をしながらベッドの上でぐいっと身体を伸ばす。
最初の内こそ尻尾を押し潰さぬようにうつ伏せでしか寝れない事に違和感を覚えていたが、今はもう完全に慣れてしまっていた。
寝癖でぼさぼさになった髪をぐしゃぐしゃとかき回し、再びこみ上げてきた欠伸に大きな口を開けつつ、鳳牙は部屋を出る。ぱたぱたと尻尾を振りながら、ややぼけーっとした状態で一階に増設された浴場へ向かった。
撃退マーク節約のため、このギルドホームには浴場にしか洗面所が設置されていないのである。そのため、
「あ、鳳兄おはよー」
朝はメンバーの誰かと洗面所で出くわす事が多い。ちょうど顔を洗ったばかりと見える小燕は、タオルでごしごしと水気をふき取っていた。
「……んー」
鳳牙は眠気を訴える目を擦りながら実にてきとうな返事をする。
すると、そんな鳳牙の様子を見咎めた小燕が、
「鳳兄、昨日も夜更かししてたでしょ」
「……ふあ。んー……二時くらいまでしか、起きてなかったと思う」
母親の様な事を言う小燕に、鳳牙はいまだ覚醒しきらない意識のままで答えた。
「二時じゃ十分夜更かしだよ。ここんとこ毎日何をやってるの?」
「…………しゅぎょー」
「……修行?」
むにゃむにゃとした微妙な発音を何とか聞き取った小燕が、きょとんとした顔で首を傾げている。それは鳳牙の言っている事の意味が分からなかったためだ。
鳳牙はそんな小燕には構わずにバシャバシャとひんやりした水で顔を洗い、ぼやけていた意識を急速に覚醒させて行く。
「修行って、鳳兄それ以上熟練値とか伸ばせたっけ? あ、はいこれ使って」
「いや、ステータス的な部分はこれ以上は伸びない。俺の鳳牙は上限値が上がらない限りはこれ以上このままで強くはならない。うん。ありがとう」
手渡されたタオルで水気を拭き取ると、鳳牙はコキコキと首を鳴らした。
「けど、『鳳牙』は強くならなくても『俺』はまだ強くなれる。御影さんと戦って、あの仮面の拳王と戦って、そう思った」
「鳳兄は強くならないけど鳳兄は強くなれる……?」
鳳牙の言葉の意味を取り違えた小燕が、とんち問題に頭をひねらせるようにむむむと可愛い眉をひそめている。朝から癒される光景だった。
「おはようございます」
「うおっ!」
突然背後から聞こえて来た声に驚いた鳳牙はピーンと獣耳と尻尾を硬く張らせてしまう。尻尾の銀毛は見事に逆立ち、通常の一.五倍くらいに膨れ上がっているように見えた。
「どうかなさいましたか?」
振り返った先には無表情のまま首を傾げているハルナがいた。差し出そうとしていた直前で両手が止まっているところを見るに、おそらく鳳牙の使用済みタオルを受け取りに来たのだろう。
新品のタオルは二回使うと見た目に関係なく汚れたタオルに変化して使用出来なくなるため、ハルナに預けて洗濯してもらう必要があった。もちろん料金は発生するのだが、ギルド倉庫には十分なゴールドを入れてあるので問題はない。
「ああ、いやちょっと不意打ちだったから驚いただけ」
「そうですか。それではタオルをお預かりいたします。朝食は会議室兼食堂に用意してありますので、どうぞお召し上がり下さい」
鳳牙からタオルを受け取ったハルナは、静かに一礼して洗面所の先にある風呂場へ消えて行った。
それを見送って、鳳牙は小燕と洗面所を後にする。
「ごっはん。ごっはん。今日は何かなー」
楽しそうな小燕の後ろを歩き、鳳牙はほどなくして朝食の用意されているという会議室兼食堂に足を踏み入れた。
純白のテーブルクロスの上に、香ばしい焼き立ての匂いを放つパンとジャムやフルーツが盛られた皿が並んでいる。
ジュースやヨーグルトも用意されているようで、実に色とりどりの朝食だった。
「あ、鳳牙さんに小燕ちゃん。おはようばい」
先に席についてパンをかじっていたステラが、やって来た鳳牙たちに挨拶をして来た。トレードマークの魔女帽子は十分に広いテーブルの上に置かれており、窓から差し込む陽光が彼女の透き通るような青い髪を照らし、キラキラと輝かせていた。
「おはよう」
「ステラ姉おはよー」
とててと小燕がステラに近付き、彼女の隣の席に腰を下ろした。ステラがすでに取り分けていたパンを渡してやると、彼女は大きな口を開けてもぐもぐと食事を開始する。
その様子をニコニコしながら眺めているステラは、時折小燕の口元に付く食べかすをかいがいしく取ってやっていた。
まるで姉妹のような光景に和まずにはいられない。
「いつまでもそんなところで立ってないで、鳳牙も座って朝食にしなよ」
横合いから声が聞こえ、鳳牙はその段になってようやくもう一人の先客の存在に気が付いた。
ずいぶんと和やかな光景に見とれていたらしいと気が付いて、鳳牙は苦笑いをしながらぽりぽりと頬をかいた。
「おはようございますフェルドさん。ずいぶん豪華な朝食ですね」
言いながら、鳳牙はフェルドの隣に腰を落ち着けた。そうして改めてテーブルの上に用意されている物を眺める。
全体的な量としてはおそらく全員でちょうどいい量ではあるのだが、目移りしてしまうほどにさまざまなものがあるため、やけに豪勢に感じるのである。
少なくとも昨日までの朝食とは明らかに一線を画している。妙だった。
「うん、おはよう。なんかたまには違った趣向でって事らしいよ。ハルナさん曰く」
「違った趣向……ですか」
鳳牙は身を乗り出してバスケットから丸いパンを取り上げ、何もつけずにぱくりとかじりついた。焼き立てのなんともいえない香ばしさが口の中に広がり、これだけで十分に美味しい。
「尻尾、振れてるよ」
「え?」
フェルドの苦笑混じりの指摘を受け、鳳牙は急いで自分の背後を見る。すると、確かにぱたぱたと尻尾が振られていた。完全に無意識の反応である。
「よっぽど美味しいって事だね。まあ、僕は先に食べて知ってたんだけど。今日は朝からなかなかにレアなものを見させてもらったよ」
ニマニマとしているフェルドの反応に気恥ずかしさからやや顔の熱を高めつつ、しかし鳳牙の手はパンを口に運ぶのを止めなかった。
掛け値なしに美味いので、言葉通り手が止まらないのである。
味に変化をつけたくなった頃にジャムやらフルーツやらを盛り付けて食べれば、まったく違った味わいに尻尾の振れも止まらなくなる。
そんなこんなで思う存分鳳牙が朝食を楽しみ尽くした頃、
「うぬ? 拙者が最後で御座るか。ちゃんと朝食は残っているで御座るか?」
黒装束に身を包んだアルタイルの大きな身体がのっそりと会議室兼食堂に入って来た。