1.変則解析 どんどらの秘密
二重の衝撃から一夜明けて、鳳牙たちは早朝から慌しく活動を開始していた。
午後には御影の工房へ赴かなければならないため、それまでの間に出来得る限りの用意をしておくためだ。
それはもちろん道中に襲撃を受ける事も考慮した上での戦闘準備も含まれているが、多くの時間は情報の再収集と精査に費やされている。
マリアンナの紹介とはいえ、これから会う人物は完全に部外者である。鳳牙たちの伝えたい事を正確に伝えるためには、筋道を通した説明をしなければならない。そのためにも、伝えるべき事とそうでないものを明確に分け、簡潔にまとめておく必要があった。
幸い話し合いの場所が御影の工房という個人ホームであるため、一度入ってしまえば誰の手出しも受けることはない。だが時間は有限だ。短く済ませるに越したことはない。
「……掲示板の公式発表は最新の賞金首情報だけみたいですね。何か新しい追加要素はないみたいです」
「うーんと、有志のイベント関係スレッドにもこれといった情報なしかなー。『宴』に関する新規情報も特に見当たらなーい」
「ありがとう。そうなると、この説明はこれ以上しようがないか……。でも、これで信じてもらえるか……」
掲示板を閲覧していた鳳牙と小燕の報告を受けて、フェルドが机の上に広げた紙を前にうんうん唸っていた。
ウィンドウを閉じた鳳牙がフェルドの肩越しに文字の書き込まれた紙を覗き見ると、そこには午後の集会に向けての説明事項やら質問事項などがびっしりと羅列されているのが見て取れた。
「うへ。あたし目が滑る」
同じように横合いから紙を覗き込んだ小燕が、両手で目を覆ってのけぞった。
読みやすい丁寧な字で書いてはあるものの、確かにこの文量は慣れていない者には厳しいだろうなと鳳牙は思う。
今までに分かっている事を列挙するだけならばそう難しい事でもないが、当事者でなければ分かり辛い部分を信じてもらうには骨が折れる。
特にログアウトが出来ないという点と、現実世界における自分自身の所在が不明であるという部分がどうしようもない。鳳牙としても当事者でなければおいそれと信じる事など出来ない内容だ。
また、自分自身の所在以外にもそもそも自分が誰であるのかを説明する事自体が出来ないのだから本当にどうしようもない。賞金首たちは自分の本名も住所も覚えておらず、手がかりになりそうな事はほぼ全て規制を受けて第三者に伝える事は出来ないからだ。
以前に御影に調べてもらったアクセスポイント喫茶の所在が唯一話す事の出来たものだが、さすがにこれを手がかりと言うには諸々の情報が足りなさ過ぎる。
と、そんな事を考えているとホールの方で扉の開く音が聞こえて来た。それと同時に、
「戻ったで御座る」
「戻りばい」
アルタイルとステラの声も聞こえて来た。
「あ、お帰りなさい。どうでした?」
ホールへ顔を出した鳳牙は、ハルナの差し出しているドリンクで喉を潤している二人に声をかけた。
「うぬ。ハルナ殿、感謝するで御座る」
「ありがとね」
「lib。お役に立てて光栄です」
二人はそれぞれお礼と共に空になったグラスをハルナに返すと、
「どうしたもこうしたもないで御座るな」
「嫌ーな雰囲気になっとうとよ」
揃って顔をしかめた。
それだけで、鳳牙はこれから聞く話の内容がろくでもないものなのだという事を理解する。
そういう事であれば、フェルドの心労を増やす事にはなるが早い内に報告をしてもらった方がいいだろうと鳳牙は考え、二人を会議室へと誘導した。
そのついでに、ハルナには人数分の飲み物を用意して欲しいと頼んでおく。
「種類はなんになさいますか?」
「さっぱりしたのでお願いするよ」
「lib。後ほどお持ちいたします」
一礼して去っていくハルナの背中をわずかに見送って、鳳牙は先に向かったアルタイルとステラを追う。とはいってもそこまで広い建物でもないので、鳳牙が会議室に戻った頃には全員席についていた。鳳牙も急いで空いている席に座る。
フェルドがそれぞれ席に着いたことを確認すると、
「それじゃあ、報告を聞こうか」
アルタイルとステラに調査の報告を求めた。
二人は一度顔を見合わせたが、口を開いたのはアルタイルの方だった。
「では拙者が報告するで御座る。状況は正直なところかなり面倒に御座るな」
アルタイルがごそごそと懐を漁ると、革紐で結ばれて丸くなった紙を取り出してきた。彼はその紐を解いて広げた紙をテーブルの中央に置き、
「今現在確認出来る他のギルドの名称と、相関関係をまとめたものに御座る」
そう説明を加えた。
全員がずいと身を乗り出してアルタイルの広げた紙を注視する。
書かれたギルド名は全部で十五。掲示板で一般プレイヤーにも浸透しているものが『真理の探究者』も含め七つであるため、残りの八つはあまり外での活動をしていないか、活動する際にはリネームカードを使って名前を隠しでもしているのだろう。
「これらのギルドのうち、あまり名前を聞かない六つのギルドはすでに『宴』の傘下に落ちているで御座る」
「六つ!?」
「そんなにか!?」
「うぇっ!?」
驚きの声を上げたのは鳳牙とフェルドと小燕だ。ステラは調査の過程ですでに知っていたらしく、難しい顔のまま沈黙している。
「うぬ。賞金首個々の人数で計上すれば二十三名で御座る。『宴』の現在の人数が二十一名に御座る故、傘下を含め総勢四十四名の化け物ギルドになっているで御座るよ」
「四十四人ってお前、残存賞金首の過半数超えてるぞ!」
普段からして冷静なフェルドがまたも大きな声を上げている。いや、鳳牙にしてみれば声を出せるだけまだましというものだった。何せ鳳牙自身はただ驚くばかりで第一声の後はまったく声を出せないでいるのだから。
ハルナを通してすでに確認を取っているが、ギルドの関係も一度決定すると変更が効かない。つまり、一度傘下に入ったギルドは消滅するまで傘下を脱せないのだ。
特例として、親元のギルドが消滅した場合のみ連鎖消滅する事なく自由を手に出来るという事だが、これは大した慰めにはならない。
「うぬ。拙者も驚いたで御座るよ。御影殿の推測通り、どんどらはあの後すぐに動いたようで御座るな。拙者らのところには来なかったで御座るが、おおよそ全てのギルドに対して服従を迫ったように御座る」
「あの時の公開処刑の威力は相当だったって事か……」
ため息混じりのフェルドの言葉に、鳳牙は再び昨日の光景を脳裏で再生させる。一方的な生殺与奪権の存在はとんでもない恐怖だ。その恐怖に屈する者が多く出るのは仕方がない事と言える。
だが、鳳牙はここで一つの疑問が浮かんだ。アルタイルの言葉ではほぼ全てのギルドに対して行われたという服従勧告だが、それに応じたのが六ギルド。そもそも勧告されていないのが一ギルド。これにどんどら自身を加えて八ギルドだ。
アルタイルの報告にあるのは十五のギルドなので、七つのギルドはどんどらの勧告を蹴ったという事である。蹴ったというのに無事というのはどういうことなのだろうか。
鳳牙の見たところ、あのどんどらという男は自分に従わない者を許容出来るような人格者ではない。邪魔となれば容赦なく殺す。そちらが本性のはずだ。
であれば、どんどらにとって配下に加わらない存在を生かしておく意味などないはずだ。ただでさえタウンエリアでの戦闘、殺害を行える謎の能力を有しているのである。それを使わない理由がないはずだった。
「アルタイルさん。どんどらの勧告を蹴ったギルドって、何もされてないんですか?」
「うぬ? ……拙者の聞き及んだ限りでは特に何もないで御座るな。どんどらも脅しが効かないと判断した時点でさっさと引いたようで御座る」
アルタイルも何かしらの引っ掛かりを覚えているのだろう。太い首を傾げつつの返答だった。
「えっと、それじゃあもう一つなんですけど――」
今のアルタイルの返答を受けて、鳳牙は一つの推論を導き出していた。もしもその推論が正しかった場合、どんどらの勧告を受け入れてしまったギルドは見事に術中にはまってしまったと言えるだろう。
また、その通りならばどんどらが強引にでもすばやく行動に出た理由にも説明が付く。
その推論とは――
「――『宴』のメンバー、それと傘下に入ったギルドメンバー以外の賞金首がどんどらに攻撃されたって話はありますか?」
「ぬ? ……そういえばまるで聞かんで御座るな。脅しの時も広場の時と同じく『宴』のギルドメンバーが数名殺されたようで御座る。しかし、勧告を受けたギルドのメンバーが攻撃されたという話は聞かんで御座るな」
――やっぱりか。
記憶を探りながらのアルタイルの言葉に、鳳牙は自分の推論が正しい事を確信する。その考えが顔に出ていたのか、
「鳳牙。何か分かったみたいな顔しているけど、どうしたんだい?」
怪訝そうな表情になったフェルドが言葉を投げてきた。
いつもの彼ならば今のやり取りで何かに気が付きそうなものだが、今は午後の件にも多くの思考を割いているためにまだ気が付いていないようだった。
それならばと、鳳牙は今さっき確信を得た推論を言葉で述べる事にする。
「どんどらの他者への攻撃なんですけど、あれって仲間限定なんじゃないですか?」
「仲間限定?」
鳳牙の言葉に、フェルドが首を傾げつつ問い返してきた。
「ああ、仲間というよりはギルドメンバーって言った方がいいですかね。それで、もしかしたら俺たちに知らされてないギルドマスターの特殊権限でもあるんじゃないかなって思うんですよ。まだ確認取ってませんけど」
この場にハルナがいればすぐにでも確認を取るところだが、生憎と不在である。
「……なるほど。昨日の問い合わせでも何かしら隠されている事があるのは明白だったし、そういう事ならどんどらの誘いを断ったギルドが何もされていない事に説明は付くか」
フェルドがややうつむいて鳳牙の言葉を吟味し始めた。こうなると少し時間がかかるために鳳牙としては手持ちぶたさになってしまうのだが、ここで突然会議室の扉がノックされた。そして、
「失礼します。飲み物をお持ちいたしました」
ちょうどいいタイミングでハルナが人数分の飲み物を持って会議室に入ってきた。
「ハルナ」
「lib。なんでしょうか? 鳳牙様」
「異端者の最果てにおけるギルドマスターには、通常のギルドマスターとは異なる権限が存在するかどうかを確認してくれないか?」
「lib。お受けした内容で問い合わせを行います。しばらくお待ち下さい」
言って、ハルナは全員に飲み物を配っていく。昨日の問い合わせではまるで問い合わせ中は他の作業が出来なくなるかのような印象だったが、実は片手間で出来る程度の作業であったらしい。
ハルナが全員に飲み物を配り終え、一拍ほど置いてから、
「回答がありました。音声にてお伝えします。『ありません』。以上です」
鳳牙へ向けての報告を終え、彼女は深々と一礼をした。
「へ?」
しかし報告を受けた鳳牙は思わず変な声を出してしまう。
「あれ? 無い……?」
ハルナの報告は鳳牙の予想を裏切るものだった。鳳牙の考えではギルドマスターにだけ使える特殊権限を行使する事でギルドメンバーへの攻撃が出来るというものだったのだが、どうにも何かを間違ったらしい。
さて何を間違ったのかと鳳牙は思考を巡らせようとして、
「いや、待てよ。そうだ。鳳牙の考え方は間違ってない。どんどらはギルドマスター権限を使ったんだ」
突然、フェルドが何かに気が付いたようにぽんと手を打った。次いで、
「ハルナさん。今度はそう、異端者の最果てにおけるギルドマスターであっても、通常のギルドマスターと同じ権限を制限なく行使出来るかどうかを聞いてみてくれるかい?」
フェルドがハルナになにやら妙な問い合わせを依頼した。鳳牙と違い、通常のギルドマスターが出来る事が問題なく出来るのかどうかを聞いたようだが、それについてはすでに一度説明があったはずだ。
それ故に鳳牙は知らされていない何かがないのかという問い合わせを行ったのだから。
「lib。問い合わせを行います。…………、回答あり。『可能』。以上です」
「やっぱり。だからどんどらはギルドメンバーを殺す事が出来る。……いや、殺す事しか出来ないと言った方がいいのかもしれないな」
口元に手を当てるフェルドが、あからさまに眉をひそめた。
どうやら何かに気が付いたらしいという事は鳳牙にも分かるが、その中身が分からない。
「ねえねえフェル兄。一人で納得してないで何の事か教えてー」
「うちも気になるばい。フェルドさん。説明して欲しいばい」
女性陣がぶーぶーと文句混じりに説明を求めると、はっと顔を上げたフェルドがごめんごめんと軽く頭をかきつつ、
「考えてみれば至極単純な事だよ。本来は通常のギルドマスターであってもごく普通に行使している権限なんだ。ギルドの縛りで勝手に出来ないと思い込んでただけだったんだよ。それが異端者の最果てという特殊エリア、というか僕ら賞金首に課せられた各種の条件が重なる事でこんな事になるんだ」
そこまで言ってフェルドは静かに眼鏡の位置を直した。
だが、鳳牙を含めその場にいる者たちにはフェルドの言っている事の半分も理解出来ていない。それはギルドマスターの権限についてさして明るくないというのが最大の要因だ。
「まあ、こればっかりはギルドマスター経験者か通常のギルドに長くいないとめったに見る機会はないかもしれないか」
やや苦笑いをしながらそういったフェルドだったが、次の瞬間には急にまじめな顔になって、
「一言で言えば、強制脱退。『キック』とも言われている除籍権限だよ」
聞き覚えのある名称を口にした。
強制脱退。特定のグループから本人の意思に関係なく強制的に閉め出す行為である。これはギルドに限らずパーティーにおいてもリーダー権限として存在する。キックには解雇という意味も含まれるので、こちらの言葉が使われる事が多い。
しかし通常のキックはただ単にパーティーから外す、ギルドを脱退させるというだけのもので、誰かを攻撃するようなものではない。
そうなると、どんどらの行為をキックだというフェルドの言葉には首を傾げざるを得ないというのが鳳牙の考えだ。
それがフェルドにも分かっているのだろう。彼はすぐさま、
「僕らは一度入ったギルドからは死なない限り抜ける事は出来ないよね? でも、これは言い換えれば死ねば抜けられるという事なんだ。そして、殺せば抜けさせる事も出来る。そのギルドマスター権限を行使した結果が、あの処刑なんだと思う」
鳳牙の疑問を解消する説明をしてのけた。
先ほどのフェルドの質問は、自由意志による脱退が出来ない賞金首たちをギルドマスター権限で脱退させる事が可能なのかどうかを確かめていたというわけだ。
わざわざ『制限なく』という語句を加えていたのは、権限行使に手順が必要なのかどうか探る意味もあったに違いない。
そして確認の結果は『制限なく権限を行使出来る』という現実だ。
つまり、今まさにどんどらは四十三人の賞金首たちの生殺与奪権を手に入れたということになる。加えて、何かしら特殊な能力で味方を攻撃していたわけではないとなれば、ギルドメンバーからの反抗は不可能に近い。
どんどらはキックという死と直結する恐怖で『宴』のメンバーと傘下のギルド全てを掌握してしまったというわけだ。
「それと死に方が普通と違うのは、多分除籍後の後処理が関わってるんだと思う」
「後処理、ですか?」
鳳牙のオウム返しにフェルドが無言で頷き、
「ギルドメンバーは除籍されても少しの間名簿に名前が残り続けるんだ。システム的には間違いなく除籍されてるんだけどね」
そんな説明をしてきた。今回が初めてギルドへの所属になる鳳牙にはまったく未知の領域の知識である。
「名簿はギルドマスターが手動で修正する事も出来るけど、十分くらいで自動更新されるから大概はそのままにされる。だから、あの剣士が妙な死に方をしたのは多分名簿に名前が残っていたからで、どんどらが蹴る事で消えたように見えたのはあいつがそう仕向けただけなんだと思う」
そこで一度言葉を切ったフェルドは、続く言葉をどこか吐き捨てるような感じで述べる
「自分のギルド人員を犠牲にしてパフォーマンスをするなんて、数だけをそろえていた『宴』だからこそ思いつける方法だよ」
ギリッとフェルドが奥歯を噛み締める音が鳳牙の耳に届いた。
怒りを感じているのはフェルドだけではなく、腕を組んで目を閉じているアルタイルからもゆらゆらと熱いものが立ち昇っているようだったし、小燕やステラにしてもかわいらしい顔を歪めて憤慨している。
そして鳳牙はといえば、先ほどから強く手を握り込み過ぎて爪で自分を傷つけてしまっていた。ゆっくりと手を開けば、掌にくっきりと爪跡が残ってしまっている。
自然回復の効果ですぐに消えてしまうものだが、滲み出る血の赤がとても鮮烈だった。
「お手を」
「あ……」
すっと横合いから白手袋が伸びてきたかと思うと、傷の付いた鳳牙を手を掴み、引き寄せた。
行為の主はハルナだった。彼女はどこから取り出したのか白い包帯を口にくわえており、それを手にとってくるくると鳳牙の傷口に巻き始める。
いつもの無表情だが、今はそれが真剣なように見えて鳳牙は思わず心臓をどきりとさせる。
無感情のようでいて、時折ハルナが感情を表しているような気がする事があり、鳳牙はそういう時にどうしても思わず相手に見入ってしまう。
ハルナの行動は的確で、鳳牙が呆けている間に治療は完了してしまった。
「あ、ありがとう」
「lib。どういたしまして」
無表情のまま一礼すると、ハルナは低位置になりつつある部屋の隅へ行ってしまった。わずかばかりの温もりを、鳳牙の手に残したまま。
思わず鳳牙は自分に巻かれた包帯を眺めていたのだが、
「ふーん」
「うぬ」
「ほーほー」
「なーん」
突然聞こえて来た四者四様の声にビクリとなって、
「……なんですか? 皆して」
全員のわずかに細まった視線を訝しみながらも尋ねてみた。
「いやー」
「うぬ」
「べーつー」
「にー」
どことなく面白そうな声で連係プレーを披露されるが、鳳牙にはまったく意味が分からない。
「いやー。僕って結構重い話ししてたはずなんだけどなー」
「うぬ。今はもう霧散したで御座る」
「でもでも、重いまんまっては嫌だしさー」
「そうばい。不可抗力ばってん、これでよかよ」
「えっと……? さっきから皆一体――」
一人だけ蚊帳の外に置かれた感じになっている鳳牙が一体どういうことなのかと問いただそうとして、
「あ、ちょっと待って」
見事にフェルドの手で制されてしまった。
彼は鳳牙を手で制したまましばらく黙り込んだかと思うと、
「ハヤブサさんから。連れて行くメンバーを紹介したいから一度こっちに来るって」
そんな事を言ってきた。どうやら【ささやき】が入っていたらしい。
「僕らを含めて八人だから、パーティーは四・四だね。分け方はハヤブサさんたちが来てから決めよう」
確定しているメンバーは鳳牙、フェルド、アルタイル、小燕、ステラ、ハヤブサの六名と今から来るという二名である。
御影は異端者の最果てにいる時と鳳牙たちとパーティーを組んでいる時以外はギルドタグが表示されない一般プレイヤーであるため、パーティーには加わらないで先導してくれる手はずになっている。
戦闘になったら対処は基本的に賞金首たちの仕事だ。
二パーティーの連携も含め、職業によってきっちり構成を考える必要がある。
「さて、まあすぐに来るとは思うけど、それまでにやれるとこまでやっておこうか」
言って、フェルドがハルナの持ってきた飲み物をあおった。それに釣られて、他の皆も飲み物に口をつける。
鳳牙もまた一息にグラスをあおり、さわやかな柑橘系の香りを楽しんだ。