かいどく出来ない
となりの組の女の子に、ようちえんが終わったらうちに来ないか、とさそわれた。
何でも、ぼくに見てもらいたいものがあるそうだ。今日はママも、おしごとで帰りがおそくなるって言ってたっけ。
ぼくは、さそいに乗ることにした。
「ねえ、これ見て! やねうらで見つけたの。たからのありかを書いた本じゃないかな。それで、キミに見てほしいと思って」
なるほど。それでほとんど話したこともない、ぼくをさそったのか。
ぼくが本好きなことは、ようちえん中に知れわたっていることだし。
「じゃあ、かいどくしてみようか」
覚えたばかりのむずかしい言葉を使い、本をわたすよう言った。
それから手わたされた本を開いてみる。
……よめない。たぶん、がいこくの言葉だろう。思わず顔がひきつる。
「どう? キミならかいどく? 出来るかな?」
女の子はぼくの顔をのぞきこみ、きたいしてるような顔つきで聞いてきた。
こんな顔をされたら、ムリだよ、とは言いづらい。
──それに。
ぼくはちらり、と女の子をのぞき見る。
彼女はきらきらした目で、ぼくを見ていた。
こんな目で見られたら、がんばるしかない。本をめくる。女の子も本をのぞきこんできた。
……どきどきする。
これは、たからのありかを書いたかも知れない本に対するものなのか。
それとも、ぼくにくっついてる、女の子に対するものなのか。
ぼくには、かいどく出来なかった。




