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どうか一瞬でも
あたらよ、という言葉がある。
『可惜夜』と書くらしい。
明けてしまうのが惜しい夜、という意味だそうだ。
だったら、と僕は行為を終え、恥ずかしそうな顔でベッドに横たわる彼女を見つめる。
彼女は僕に少しだけ笑みを浮かべ、僕の手を握ってきた。
ああ、そうだ。決して離したくない、君の笑顔とぬくもり。
それを感じられる、君との逢瀬の夜は、いつも『あたらよ』だ。
僕達が逢えるのは月に一度。彼女の夫の、出張の日だけだ。
君が僕とこうしているのは、愛なんかじゃない。
ただ、寂しさを埋めるためだけだ。
そんなことはわかっている。だけど一つくらい、願ったっていいじゃないか。
僕は再び彼女を組み伏せ、唇を重ねながら思う。
どうか一瞬でも永く、この『あたらよ』が、続きますように──……。




