罪と、嘘とを
「判決。被告を──」
そう告げられたのは、いつのことだったか。
私が刑務所に収監されてから、何年も経った。
それこそ何年も、何年も。
朝起きて点呼、食事、刑務作業や運動、合間に昼食、そして作業が終了して夕食、余暇、そして就寝。
日によって作業の違いなどはあれども、基本的にはこの繰り返しだ。
ただただ、退屈な毎日が過ぎてゆくだけ。
そんな日々の中では、科された刑罰や、何年の刑だったかなんて、とっくに忘れてしまった。
けれども一つだけ、心待ちにしていることはある。
それは月に一度、彼が面会に来てくれる日のことだ。
「久しぶり、元気?」
彼との会話は、いつもそうやって始まる。
アクリル板ごし、しかも職員の立ち合いの元では、話せることなんて、限られている。
けれど、私は嬉しくて仕方ない。
だって、あなたを愛してるんだもの。
だから、罪を重ねた。
経営が立ち行かなくなってた、あなたの会社を、あなたを守るために。
その度にあなたは、ありがとう愛してるよ、と笑顔で応えてくれた。
その言葉だけで良かった。
だから裁判のとき、あなたが自分の会社ことを口にせず、私をかばってくれなくても、構わなかった。
「じゃあ、またね。愛してるよ」
私は笑って、笑顔で応える。
例えば出所したとして、あなたに何かあれば、私はまた罪を重ねるだろう。
そして、あなたも重ねる。
愛してるよ、という嘘を。
これからも私達は、お互い罪と、嘘を重ねて生きてゆくんだ。




