月が綺麗ですね、よりも
月が綺麗ですね、を愛してます、と訳したのは誰だったか。
しかもその月は満月だったか、三日月だったか。
どれも覚えていない。
もう少し、真面目に部活に打ち込んでおくんだった。
せっかく彼女と同じ文学部に入って、今もこうやって、夜道を一緒に帰っているというのに。
僕はちらり、と隣を歩く彼女の様子を覗き見る。
彼女は月どころかこちらを一見もせず、自分の足元だけに視線を落とし、歩き続けていた。
……何を考えているんだろう。
部活の時間が終わっても、本を読み続ける彼女と一緒に居たくて、本を読む振りをしていた。そしたら顧問がやって来て、もう遅いから帰るように言われ、ついでに駅まで送って行くようにと言い付かった。
僕としてはラッキーなことこの上ないが、……迷惑だったろうか。
そんなことを考えていると、彼女がふと、呟いた。
「……月が綺麗ですね。って、愛してるっていう意味だって知ってる?」
思わず、彼女を真正面から見てしまった。
すると彼女も顔を上げ、僕を見ていた。
どきどきする。まるで心を見透かされているようだ。
そんなことを考えていると、でもね、と言って彼女はくすりと笑った。
「私は……嫌だな。そんな、回りくどい言葉。好意があるんだったら、はっきり言って欲しいよ」
彼女は僕を見つめ、そう言い切った。
「ぼ、僕は──」
必死の思いで、言葉を紡ぐ。
ちゃんと声に出せてるか、……伝えきれているか。
──どれもわからない。
ただ、そんな僕たちの姿を、三日月だけが見つめていた。




