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新しい友達

雨が降って外でランチができない日の事。

キャロルに連れて行ってもらった初めてのカフェテリアは人で溢れかえっていて入れず、倉庫でランチをする事になった。

「オシャレでも、美味しいわけでもないカフェラテなのに、いつもいっぱいよね」

キャロルはぼやくように言う。

「クリスティーナのお気に入りのお店ってある?」

「ないわ。全くお店を知らないの。王都の地理がわからないから、お休みの日は色々な所に行ってみてるけど、田舎と違って迷路みたいで全く覚えられないわ」

下宿先の近くのバザールの中を歩くだけでも迷子になりかけた。


「ねえ、お気に入りのカフェがあるんだけど、今度一緒に行かない?」

「行きたいわ!でも、あまり服を持っていなくて…。他所行きの服がないの。どこでお買い物をしたらいいかわからないから」

ずっと悩んでいたけど、誰に相談したらいいのかわからなかった。

「そうなの?それなら、おすすめのお店に案内するわ。その代わり、クリスティーナが使っている基礎化粧品、どこのメーカーのか教えてよ。ノーメイクなのに、肌が綺麗よね」

キャロルがじっと見てくる。

「肌が綺麗だなんて。田舎じゃ化粧品とか売ってないから、自分で作っていたのよ」

田舎のダイナーで働いていた時聞いていたラジオで、『手作り化粧水の作り方』とか、『手作り洗顔料の作り方』が流れていたので、それを作って使い続けている。


「作り方を教えるわ」

「本当に?でも、私たち雑用係は、研究室の機材は使えないわ。どうしよう」

「お鍋でも作れるのよ?でも私、下宿していて、そこには誰も招待できないの」

シリルのところに住まわせてもらっている事は絶対に言ってはいけない。これも下宿の契約に入っている。

「じゃあ、ウチに来て教えてよ。必要な物ある?」

薬草などを伝えて、お買い物の日を決めた。


次の日曜日、集合場所は学園前だった。

まだ王都の地理がわからないので、キャロルが迎えに来てくれることになったのだ。

髪はハーフアップにして、服は蚤の市で買ったミント色のシャツワンピースにして、革製のベルトを巻く。

いつものように肩掛けには魔法鞄を入れた。


学園の公園前入り口で待っていると、キャロルがやってきた。

アイスブルーの髪をきっちりと編み込んでいる姿しか見たことがなかったけど、下ろしている姿も可愛い。

肩より少し長い髪の毛先は内側にカールさせていて、チョコレート色の瞳を囲むように引いたアイラインがすごく大人っぽい。


「おはよう、クリスティーナ。可愛らしいワンピースだけど、それはちょっと子供っぽいわ。夕焼けのように真っ赤な艶々のその髪に、謎の木製の髪留めもダメ。今日はクリスティーナを大改造するわね」

「この髪留めは、自分で作ったのよ。木を彫ったんだから」

「モチーフは何?」

「馬よ」

「どう見ても、葉っぱのオバケ」

キャロルはクスッと笑った後、咳払いをして顔を取り繕う。

それから辻馬車を止めた。

辻馬車は、街中を流しで走っており、空車を見つけると手を上げて止めるものだそうだ。

促されて乗り込むと、キャロルが御者に「ミラーソング通りまで」と言った。

指定した場所までの料金を払えば乗せてくれるそうだ。

「乗り合い馬車よりは高いけど、あっちは混んでるでしょ?だから、たまに辻馬車に乗るの」

「すごい!やっぱり都会だわ。乗り合い馬車も辻馬車も田舎には無いもの」

「クリスティーナの田舎はどこ?」

「ニドルセント領の辺境伯領に近いところ」

「辺境伯領の近くということは雪が降るのね。王都では雪がちらつく日はあるけど、積もらないわ。チラチラと降る雪は綺麗よね」

「降っている様子は綺麗だけど、吹雪くと大変だし、家から出るために道路の雪を退かすのも大変なの。田舎だからね」

「あら、貴族は田舎の領地を持っている人が大半なのだから、みんな田舎者よ」

「フフフ、面白い」

「ウチは、新興貴族なの。私が7歳の時、父の作った魔法布が大当たりしてね、10歳の時、父が男爵になったの。それまでは王都の工場群の側の労働者街に住んでたのよ。新興貴族なんてそんなものよ」

話している間に、ミラーソング通りについた。


案内されたのは、可愛らしい洋服店だった。

「ここはね、ラプラプさんという人が洋服をリメイクして販売しているの。だから全部一点モノよ」

可愛いスカートや、ワンピースがいっぱいある。

キャロルに相談しながら買う服を決めていく。

そのほかにも、靴や鞄なども購入することにしたが、スカート丈を調整してもらうため、引き取りは来週になった。

丈直しの料金を合わせても、蚤の市で買ったドレスの2着分の値段にしかならない。

デザインもいいし、生地もいいのに、すごくお手頃だ。

今はお給料があるし、前みたいにケチケチと買わなくてもいい。


お金を払って次に向かったのは、化粧品屋さんだった。

「工場地域に住んでいた頃、近所のお姉ちゃん達みんなが使っていた化粧品なのよ。パッケージが可愛いし、何よりお手頃でしょ?だから私はいつもここの化粧品なのよ」

可愛らしいパッケージに入ったファンデーションや口紅を選んでいく。

「本当に可愛い!」

「でしょ?パッケージ見ているだけでも幸せな気分になるよね」

キャロルにアドバイスをしてもらいながら選んでいく。使い方のわからないメイク用品をどうやって使うのか、綺麗にメイクするのはどうしたらいいかキャロルは丁寧に教えてくれた。

口紅の種類の多さに驚きつつ、メイク道具一式を買った。

「明日から頑張ってメイクするわ」

「クリスティーナは元々が美人の顔立ちだから、メイクが上手くなれば見違えるような美人になるわよ」

その後も、雑貨屋さんや、アクセサリー屋さんを覗いていく。

可愛らしい髪留めや、フェイクパールのイヤリングを買って、いろいろなお店を眺めた。


「お腹空いたね。お気に入りのカフェに行きましょう?ブルーベリーパイが絶品なのよ」

石畳の歩道を歩いてカフェに向かう途中、ミラーソング通りと、一際大きな通りが交差する場所があった。

「この大通りの先は、貴族達御用達の高級セレクトショップか立ち並ぶのよ。ここは、通りの終点だから、庶民でも背伸びすれば入れるお店が並んでるけど、あんな高級店ばかり行っていたらすぐ破産よ」

キャロルは笑いながら通りの奥を見る。

遠くに高級チョコレートショップや、高級茶葉店など、あからさまに看板からして違うお店が見えた。


「交差点のところのカフェだけは、違うのよ?ここは庶民でも頑張ったら手が届くお店なの。貴族も庶民も来られるお店だけど、残念ながらドレスコードがあるわ」

「見た目はすごく高級そうよ?なのに庶民でも手が届く値段なの?」

「そうなの。だから、デートに使うにはもってこいのお店ね。意外と来ている貴族は多いんじゃないかしら?」

賑わう店内は、オシャレな服の人ばかりだ。

ドレスコードを守れば庶民でも入れるって、今ここに庶民はどれくらいの人数がいるのかな?

そんなことを考えていると、キャロルが「あっ」と言った。

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