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招待状

そうだわ。

魔法薬学科のローブは、学園指定の服だからこれで出席しよう。

帰ったら念の為、シリルに相談すれば間違いないわ。

いい事を思いついたと得意げになっていたけど、帰宅すると門番小屋は真っ暗だった。


「ただいま」

返事がない。寝てるのかしら?

「シリル?」

そういえば、薬の実験の途中で夏季大会になったから、実験の続きに戻ったんだわ。

「つまんない」

独り言を呟いてシャワーを浴び、眠りについた。


ゆっくりと目を覚まして、時計を見る。

もう10時だった。

シリルの部屋をノックするけれど返事がない。

もしかして学園に行ったのかしら?

ドレスの事を相談しようと思ったのに…。

とりあえず紅茶でも飲もう。

キッチンでお湯を沸かしながら昨日、ブライアン・アークライト侯爵令息から渡された手紙を開ける。


2枚の紙が入っていた。

パーティーが行われるパブの地図だわ。開始は18時ね。

もう一枚はなんだろう?

『今日の13時に学園の魔法薬研究棟の前に迎えにいく』

パーティーは18時からなのに、13時?

何かの準備のお手伝い要員かしら?

ブランチを食べて、身支度をする。

お手伝いの後、そのままパーティーが始まるなら、一番素敵だと思う服を着ればいいのよね?

ローブを脱ぐつもりはないけど、だからといってヨレヨレのドレスじゃ恥ずかしいもの。


キャロルに連れて行ってもらったお店で買ったドレスを着て、同じお店で買った靴を魔法鞄に入れた。

学園までは40分歩くから、ハイヒールでは足が痛くなってしまう。


最近始めたメイクはなかなか上達しないから、いつものように簡単なメイクで済ませる。

髪は、ハーフアップにして、遅れないように急がなくちゃ。

貴族を待たせるなんて、失礼極まりないわ。

一度、玄関を出てから忘れ物に気がつく。

ローブは必要。

学園の敷地内での待ち合わせだから、ローブを着ていないと部外者だと思われてしまう。


急いで歩いて魔法薬学科の棟の前に着いたのは13時少し前だったが、既にアークライト侯爵令息が待っていた。

夏季大会の時とは違い、眉毛より少し長い前髪を下ろしており、濃い金色の髪がコバルト色の瞳を際立たせている。


服装は、かっちりした魔法騎士学科の制服とは真逆の、ラフなシャツとジャケットだった。

もしかして、私に合わせてくれたのかしら?

そんなはずないか。

相手は平民である私だもの。

しかも、パーティーの準備をするのだから、部屋着でもいいくらいよ。

(部屋着でも、私よりも高価な服装なのは間違いない)


今日は仕事で学園に来ているわけではないのでカーテシーをする。

「ごきげんようアークライト侯爵令息様。お待たせして申し訳ありません」


「待たされてなんかないよ。騎士は10分前集合なんだ。それよりクリスティーナ、昨日の疲れが出ていないか?」

「お気遣い頂いてありがとうございます。あれくらい平気です。なんなら2日くらい寝なくても大丈夫ですから」

ニドルセント領にいた時、教科書の課題の中には、真夜中に行うものもあったので、昼間はダイナーで働いて、夜課題をこなした時もあった。


「女性は『美容のため』と言って夜遅くまで起きていないものだと思っていたよ」

「そうなんですか?美容を気にすると早く寝るんですね」

初めて聞く話に驚く。


「さすが、物知りでいらっしゃいますね」

感心していると苦笑いをされた。

「メイド達がそんな噂話をしていたから、てっきりそうだと思ったんだ」

美容より魔法の勉強の方が楽しいから考えた事がなかった。

それよりも、驚いている私を面白かっているのか、それとも美容意識が低い私を無知だと思っているのか、アークライト侯爵子息が笑っている。

その様子が、なんだか面白い。

こんな一面もあるのね。

ちょっと恥ずかしいけど、私も笑う。


歩きながら他愛もない話をして、着いたのは正門だった。

いつも西門から出入りしているので、正門は遠巻に見るだけだったのに。

高級な黒塗りの馬車が並んでいて恐れ多い。

横を通るだけでも緊張してしまうのに、一台の馬車の前に、御者が扉を開けて待っている。

「さあ、乗って」

どこに行くの?なんて聞ける雰囲気じゃない。

言われるがまま乗り込んだ。


革張りの椅子はフカフカで座り心地が全然違う。

今まで座ったことのある椅子という物の中で、一番座り心地がいい。

向かいにアークライト侯爵子息が座り、扉が閉まると、滑らかに動き出した。

馬車って、ガクッと揺れて、振動を感じながら移動する物じゃないの?

全く揺れなくて、建物の中にいるかのような感覚になる。

高級馬車って凄い。


「一昨日の夏季大会では、教授達はリアルタイムの映像を別室で見ているんだが、そこにはクサントスとデルピュネーは映っていなかったそうだ」

沈黙の後の話が、先日の夏季大会の事だった。

深刻そうな声で、何かを考えるような口ぶりだ。


「ただ、私が装着していた記録用魔道具には、はっきりと2体の姿が映っていた」

「公式の映像で、あの二体の姿が確認できないなんて、それ自体が驚きですね」

「確かにそうだ。それに、何故あそこに、クサントスとデルピュネーがいたのか問題になっている。夏季大会を行う場所は、事前に調査される。ビブスをつけていても重傷を負わされる危険生物がいない地域で行われるはずなんだよ」

「そうなんですね」


「あの2体に襲われればひとたまりもない。魔法付与されたビブスを着けるから、死ぬことはないが重傷は確実に負ったと問題になっているらしい」

「蛇毒草も、ですか?」

「そちらは魔法薬学科のほうでの課題だから、魔法騎士学科での議題にはならない。それよりも、うちの教授がクリスティーナの弓の腕前を褒めていたよ」

「お褒めいただき恐縮です」

「素早さ、狙いの定め方、どれを取っても一流の猟師のようだと」

ハナメイにいる時、定期的にうさぎを狩ったりしていた。教科書に出てくる野草を探しながら狩をしていたのは、猟師さんが買い取ってくれるからお小遣いになったからだ。


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