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どうやって沢山の人に薬を配るのか考える

薬の不足は心配しなくて良くなった。

次は、どうやって飲ませるかだけど…うーんと下を向いて考えていると周りが騒がしくなった。

何かしら?

顔を上げて周りを見て、思わず声が出てしまった。


赤チームの魔法薬研究室の女子学生達が、ワインバーグ伯爵令息に声をかけられて、一箇所に集まっている。

その周りを魔法騎士学科の学生5名ほどが囲んでいるのだが、みんな嬉しそうだ。

一体何が始まるのかしら?と思ったら、騎士学科の学生が魔法薬学科の女子学生に水薬を飲ませている。

イケメンに囲まれておだてられたら、確かに飲んじゃうかもしれないわね。

なるほど。

自分の魅力を心得ている男性の振る舞いには抗えないもの。


残りの魔法騎士学科の学生達はというと、魔法薬学科の男子学生達を取り囲んでいた。

こちらは、体育会系の学生に取り囲まれた筋肉のない頭脳派集団で、蛇に睨まれたカエルのようになっている。

「なぜ飲まない?」

「怪しい薬かもしれないじゃないか!」

アークライト侯爵令息が手を焼いている。

「話し合いは面倒だ」

イライラが声に出ている。


「いつものようにやりますか?」

「そうしてくれ」

アークライト侯爵令息が返事をすると、1人の学生が「取り調べ拘束!」と魔法を放つ。

すると、魔法薬学科の男子学生が動けなくなったようだ。


「なにをする!」

拘束された1人が叫ぶが、口も動かせないようで変な話し方だ。

全員少し口が開いている。

「盗賊なんかに出会ったら、こうやって拘束するんだよ。口を動かせるようにすると、舌を噛み切って死ぬかもしれないし、口を完全に閉じて拘束すると話せないだろう?」

そう言って、魔法薬の入った鍋に手をかざして、霧状にすると、全員に吹きかけた。

魔法薬の霧は口に入って無理やり飲ませた後、掌や手の甲を撫でるようにして消えて行った。


なるほど。

強硬手段だけど飲ませたというか、口に無理やり入れたというべきか、とりあえず飲んでもらうことが出来たし、水ぶくれの箇所に塗るというか付けたというか、とりあえず治療することもできた。


さすがだわ。

こんな手があるのね。

思いつかなかったけど、霧状の薬で会場を包んでしまえばなんとかなるんじゃないかしら?

「他のチームもこれで治療できるわね」

シリルに話しかける。

「それは難しいよ。他チームの学生を無理やり拘束することはできないよ。だって、それぞれのチームには魔法騎士学科の学生がいるじゃないか。何事かと阻止されるよ」

「本当だわ。確かにこの方法は無理ね」

「あの…馬鹿らしい方法だけど、みんなの口を開かせればいいのよね?」

「そうだね」


「草むらから見える薬草にヒントがあるんじゃないかしら!」

さっきから、気になる薬草が視界に入っていたので、軍手をして草むらに向かって走り出す。

「ちょっ!ちょっと待ってよ。どこ行くの?」

「すぐ戻るから」

草むらに辿り着き、入り口に生えている膝丈の草を一生懸命に刈る。

追いかけてきたシリルが、「何してるの?」と聞いた。


「これって『あくび草』なの。これを燃やした煙を吸ってしまうとね、あくびが止まらなくなるの。だから、焚き火に使ってはダメって言われてるんだけど、今はみんなにあくびをさせたいから」

「なるほど。だから刈ってるのか。手伝うよ?」

「触らないで!それも弱いけど毒があるから」

シリルの薬草採取用の手袋は、蛇毒草を触ったから使えないし、素手も危険だわ。

「さっき、魔法騎士学科の人から、毒のある魔物を触る時の革手袋を借りたから大丈夫だよ」

2人で刈り取っていると、アークライト侯爵令息がやってきた。


「何してるんだ?」

「この草を燃やすとね、あくびが出るから。全員にあくびをさせて、薬を飲んでもらおうと思って」

「なるほど。面白いな。この葉っぱの白い草を刈ればいいんだな?」

「そうよ」

「じゃあ任せてくれ。今、見えている位置のものしか刈れないけど。危ないから草むらの外に出て欲しい」

私とシリルは作業をやめて、離れた場所に移動した。

アークライト侯爵令息は草むらの中心に立ち、動きを止めた。

意志の強いコバルト色の瞳と、綺麗な金髪。そして無駄のない肉体が映画のスターというよりも、美しい野生動物のようで思わず見惚れてしまう。


息を呑んで見ていると、鞘から長い剣を抜き回転しながら剣を上から下に振った。

あくび草だけが切れて、私の足元に積み上がる。

騎士の細やかな剣捌きって本当にすごい。

「毒草だから手を触れないようにしながら運ぶわ」

首に巻いたスカーフを取った。

4つに折りたたんでいたけれど、広げると3メートルの正方形になる。

それの上に乗せて引きずって行き、広場の中央にたどり着いた。

「今からこの草を燃やすけど、すごい煙が出て、しばらくするとあくびと涙が止まらなくなるの。だから、顔を覆ってね」

「煙が出たしたら、空中から撒き散らすよ」

アークライト侯爵令息が頭上から煙を拡散してくれるなら、すぐに会場に煙が充満するわね。


「スカーフに包んだまま燃やして上空まで持ち上げた方が簡単よね」

「スカーフが燃えてしまうじゃないか」

「大丈夫。これも魔道具だから」


あくび草はすぐに火がつくから、その前にキャロルに頼んだ薬が出来上がっていないと困る。

ワインバーグ伯爵令息は、紫チームのキャロル達の様子を見に行ってくれた。


「紫チーム、そろそろ薬が出来る頃かしら?」

「チームリーダーが作ってるんだから、大丈夫だよ。キャロル・ランドール男爵令嬢は、クリスティーナの友達でしょ?信用しないとね」

「そうね!」

他チームには座り込んでいる学生もいる。

「そろそろ本当に時間がなくなってきたわ」


気持ちばかりが焦るが、キャロルが手を振っているのが見えた。

紫チームのリーダーであるブリアナ・ハリーズ伯爵令嬢と、紫のビブスをつけた魔法騎士学科の学生と3人で大釜を運んでくる。

すごく沢山薬を作ってくれたのね。

これで全員に行き渡るわ。


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