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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

愛の劇場〜貴族編〜

婚約者に浮気された令嬢は初恋の男性と結婚する

作者: towa
掲載日:2025/10/26


「あの……メルビン?」

「ん?シンシアどうした?」


「メルビンは浮気をしているのですか?」

「は?」


 ここは学園の食堂である。シンシアのひと言で学生達で賑わう食堂が静まりかえる。


 浮気を問う女性はシンシア・ハートランド侯爵令嬢18歳であり、栗色の髪にグリーンの大きな瞳の可愛らしい女性だ。そして浮気を問われる男はシンシアの婚約者でメルビン・スペーディアン子爵令息である。彼は長めの黒髪を後ろで縛り女生徒からも人気のある令息である。


「いや……シンシア?誰がそんな事を言ったのだ?」

「誰?それは、そちらの女性ですわ」

 

 シンシアは婚約者のメルビンの隣で身体を寄せるように座る女性を見る。


「わ、私はそんな事を言ってません。シンシア様……これ以上、私を虐めないでください」

 手で顔を押さえてメルビンに擦り寄るダイアナ。


「シンシア、ダイアナが怖がっている。謝れ」


「何故?私の方が悲しく怖い思いをしましたわ。ダイアナ様と彼女の友人達は私を取り囲みメルビンと婚約を解消しろと言うし、教科書は噴水に投げられて……教科書だってタダではないのに。階段から突き落とされそうになったわ」


 シンシアは自分の言葉よりもダイアナの言葉を信じ自分に対し謝罪を求める事に疑問を抱く。


「ダイアナ?」

「違う、私はそんな事しない。メルビン様、私を信じてくれないの?」


 ダイアナは胸の前で手を組みメルビンを見つめている。普段なら何も言い返さないシンシアだったが今日は違った。


「シンシア、謝るんだ」

 深呼吸をしシンシアはメルビンを見つめる。そして、言い返すのだった。

「いやよ。謝罪するのはダイアナ様よ。メルビンは将来婿入り予定である婚約者の言葉が信じられないのかしら」


 状況を面白がっていた生徒たちは食堂内に響くシンシアの可愛らしい声でしっかり意見を主張する姿に驚くのだった。今日のシンシアは今までとは違う。なぜなら、昨日はシンシアの18歳の誕生日だった。婚約者のメルビンからはカードの1つも来なかった。代わりに大きな花束とカードを持って来たのは幼馴染だった。幼馴染と話し、自分も変わらないといけないと思ったのだった。


 シンシアはメルビンとダイアナが座るテーブルの前に立ったまま話す。


「メルビンは、私と婚約を解消したいのですか?私の誘いは断り、ダイアナ様と街で会うのは何故ですか?報告が入ってます」


「いや……シンシア。私は君の事が」

 メルビンはいつもと違うシンシアに驚いていた。確かに最近はダイアナと過ごしていた。シンシアは何も言わないし、言い返すと黙り込むために自分の好きなようにしていたが、シンシアの家への婿入りが解消となるのは問題だ。


「私の事をどう思っているのですか?」


「……好きだ。私の婚約者はシンシアだ」

 

 その言葉に鋭い視線を投げつけるのはダイアナだった。


「それなら、昨日、私からの誘いを断った理由は?」


 メルビンが答える前にダイアナが口を挟む。


「シンシア様、メルビン様は私のお願いを聞いてくれて、一緒に弟の誕生日の買い物に付き合ってくれたの」



「そ、そうだ、男の私でなければ気が付かない事もある」


 メルビンは息を吹き返したようにシンシアに告げる。


「メルビン?ダイアナ様の弟の誕生日プレゼント選びという用事は、私の誕生会を欠席する位、重要だったのですね」


 食堂は静まり返る。蒼い顔のメルビン。

「いや……シンシア……の誕生日プレゼントをダイアナと」


「私は婚約者が他の女性と選んだプレゼントはいりません。メルビンは私が他の男性と選んだプレゼントを喜ぶのですね」


 何も言えなくなったメルビンであった。



「メルビン、婚約を解消したいのですか?私にとってはメルビンの行動は浮気していると疑われるような行動です。ダイアナ様も同じです。婚約者がいる男性に身体を擦り寄せない方がいいですよ。浮気だと疑われる行動ですわ。それに安っぽい女にしか見えません。そんなに男性に擦り寄りたいのなら、私が婚約者候補を紹介しましょうか?それともメルビンがいいのですか?それなら互いの両親を交えて話し合いをしましょうか?」



 ダイアナは赤い顔でシンシアを睨みつけていた。


「メルビン、私と一緒に昼食をとってくれますよね。それともダイアナ様と一緒にいることを望みますか?」


「…………シンシアすまなかった。君と昼食を頂くよ」


 シンシアとメルビンはダイアナから距離を置いて座る。ダイアナの元には数人の令息が近寄り彼女を慰めている。



「メルビン、彼女の周りを見てください。令息たちは彼女の護衛騎士や執事の様ね。そして、その周囲を見て」

「…………」


 悲しむダイアナの近くに群がる令息たち。その行動を見定めるように令息たちの婚約者は見ているのであった。メルビンは自分もそのうちの1人であったと思い知る。そしてシンシアにも見定めていられたのかと思うと少し腹が立つのであった。


「そう、彼らの婚約者よ。皆様、両親に相談しているのかしら。ダイアナ様も誰が1人に絞ればいいのに……」


「そ……そうだな。仮に……もし私が他に……」


「ダイアナ様に限らず、他の女性を側に置きたいと思っているの?それを私に許せと言うなら婚約は解消しますわ。だってメルビンは婿入りする立場なのよ。私の許可なく愛人を持ったり浮気するなど言語道断よ。婚約者を大切に出来ない男を婿として迎える結婚に意味はあるかしら?その男が婿入りすることで家の為になるならまだしも……私も彼女達だって婚約者や夫には大切にされたいし愛されたいのよ。私達想い合っての婚約ではないわ、父親同士が友人だから、ただそれだけよ」


 その言葉にダイアナの周囲にいた婿入り予定の男子生徒はダイアナと距離をとった。そして令嬢たちはシンシアの言動に大きく頷くのだった。


「しかし、婿入りしたとしても妻の言いなりでしかない。婿入りした男性だって肩身が狭いのだ癒しを求めても……」


 

 メルビンもシンシアに言い返す。ダイアナの側にいる男子生徒はメルビンを見る。まるで、もっと言ってやれと言わんばかりに。


「癒しを妻以外の女性に求めるのですか?他の女性はわかりませんが私は、メルビンが他の女性に癒しや真実の愛を求めるのなら婚約を考え直したいわ」



「私はシンシアだけだ……」


 その後のメルビンはシンシアと過ごす時間を作っていた。メルビン自身にとっては婿入りが白紙に戻ることは避けたい。また、シンシアと過ごす時間も悪くないと思い始めていたのだった。


 半年後、シンシアの卒業まで2か月となった。授業が終わった放課後。


 学園の食堂に隣接するカフェは放課後の友人たちとの時間、また関係者なら立ち入りが許可されている為に家族と過ごす学生もいるのだった。

 

 シンシアは1人の男性とのんびり紅茶とケーキを楽しんでいた。

「シンシア?美味しい?私のも食べるか?」

「悩ましいわね。少しだけ……」

 

 男性はケーキのイチゴをフォークに差し生クリームをたっぷりと絡ませる。

「シンシアはイチゴが好きだったよね」

「昔からずっと大好きよ」


 クリームたっぷりのイチゴをシンシアの口の前へと近づける。

「ほら、美味しそうなイチゴだな」

「……」


 パクリとイチゴを頬張るシンシア。

「美味しいわ」


 そこに現れたのはメルビンとダイアナであった。メルビンは最初こそシンシアとの時間を大切にしていたが、ひと月も過ぎれば再びダイアナを側に置いていたのだった。


「シンシア。君は僕と婚約していながら浮気しているか?」


「ん?メルビン様、私は浮気などしていませんよ。ご両親から何も聞いていないの?ダイアナ様と過ごす事が最優先で忙しかったのかしら」


「ダイアナと?私は……」

「浮気しましたよね」

 

 一瞬メルビンは言葉を失った。

「何を言っている。シンシアこそ、その男は何だ、仲良く寄り添ってケーキを食べさせてもらって。シンシアこそ浮気だ」



「ぷっ、あははははは」

 シンシアと同席している男性は笑い出す。その笑い声にカフェ内の注目が集まる。


「し、失礼な男だ。お前はシンシアの何だ」



「失礼、私はフレッド。シンシアの婚約者だよ。君とシンシアは婚約を解消している……いや破棄されたよ。そちらの女性と関係を持っているね」


「婚約破棄?……シンシア?俺は聞いていない」


 青褪めるメルビン。しかし彼には思い当たる節があった。


「メルビン様は裏切ったわ。全部フレッドが調べてくれたのよ。それにメルビンが私を婚約者だと思っているのなら何故ダイアナ様と一緒にいるの?」


「メルビンは、私に急に来た婚約の相談に乗っていてくれたのよ」


 ダイアナはシンシアに説明をする。しかし、ダイアナはシンシアの隣にいる男性が気になっていた。淡い金髪にブルーの瞳の優しそうな男性、自分達よりも年上でスーツを着こなす大人の男性にダイアナは目を奪われていた。



「あら?この前まではメルビン様と呼んでいたのに、呼び捨てにするくらいの仲なのね。メルビン様はダイアナ様の相談の為に何故2人でクローバーホテルに2晩泊まるのですか?なんの相談を夜通ししていたの?」


「何故、それを……」


 メルビンは思い返す。


 先月、メルビンはダイアナとクローバーホテルに泊まり、ダイアナと関係を持った。メルビンにとってはダイアナの初めての相手として選ばれ、素晴らしい時を二人で過ごしたのだった。それを期に今ではシンシアに隠れ学園内でも口づけを交わし、時には誰もいない教室や街に出ては何度も身体をを重ねる関係へとなっていたのだった。


 甘い思い出に浸るメルビンをよそにフレッドは話し出すのだった。

「クローバーホテルはね、私の経営するホテルだよ」

 

 フレッドの言葉にカフェ内は騒めく。王都でも値段の割に優雅なひと時を味わえると人気のホテルである。そのクローバーホテルの経営者がフレッドであった。


 その言葉にメルビンは現実へと戻される。顔を蒼くし、ダイアナはクローバホテルの経営者と聞き目を輝かせるのであった。


「君は予約と宿泊の際にシンシアの名前を使ったね。シンシアと僕は幼馴染だ。シンシアの誕生会にも来なかった君だけどシンシアと君が上手くいっていると思っていたんだよ」


 宿泊の予約日に、フレッドはシンシアに声を掛けようとフロントで待っていたが来たのはメルビンとシンシアではなく違う女性であった為、すぐに当初用意していた部屋を変え、急ぎシンシアの実家に連絡したのだった。ルームサービスの際もフレッドが運ぶと二人は行為の後なのかガウン姿で仲睦まじくしていたのだった。そしてシーツの交換を望んだのだった。

 

 本当はあの場でメルビンを殴ってやりたいと思ったフレッド。思い返しただけで気分が悪くなる。メルビンは浮気をバラされたことに腹を立てたのか言い返す。


「経営者のお前が個人情報を漏らすだなんて規則違反だ」


 

「はぁ……君はシンシアを何だと思っている?君の名前で予約と支払いをしていたなら違ったよ。シンシアの名前で予約し支払いも籍を入れていないシンシアに請求し浮気相手と過ごす君を理解できない。元々シンシアの考案したホテルだ。シンシアとは共同経営者のようなものだよ。共同経営者の婿候補の不貞を許すわけにはいかない」


「…………」

「まぁ、部屋は安い部屋にしておいたから君の小遣いでも可能だよ。彼女の初めてをもらう場として充分な素晴らしいホテルだったろ」


 カフェは騒めく、メルビンとダイアナの関係ではなく、メルビンが婚約者の名前を使い、そして支払いまでさせようとした事に軽蔑の眼差しでメルビンとダイアナを見るのであった。



「メルビン様……その後のメルビン様とダイアナ様の行動は調べてましたの。その結果、先週ですが婚約は破棄しました。そしてダイアナ様の婚約も白紙になりましたので安心してメルビン様との愛を育んでください」


「え?私の婚約も白紙に?」


 ダイアナは驚く。そして、メルビンにも婚約者がいなくなった事でメルビンと堂々と過ごせると思い顔がほころぶダイアナであった。


「そうよ、ダイアナ様の婚約者候補は私の隣にいるフレッドだったの。2人の関係を聞いて私達は身を引いたの、彼は婚約破棄した私でも問題ないと婚約してくれたのよ。フレッドには申し訳ない事をしたわ」


「シンシア、違うよ。私は昔からシンシアを望んでいた。互いに後継者だったから結婚は出来なかった。しかしね、姉が後継者となってくれる事になり私は後継者ではなくなった。うちの家族もシンシアと私が結婚することに大賛成だよ。今後は私が婿入りしてシンシアを支えて愛していくから結婚前から浮気をするメルビン君は必要なくなった」


「あの……あなたが婚約者候補?」



 驚くダイアナ。まさか自分に王都で有名なホテルの経営者で見目のいい男が自分の婚約者候補となっていたとは思っていなかった。


「そうだね。君は婚約者候補には興味がなかったようだね。一応君の家には打診していたよ。まぁシンシアの婚約者と浮気してくれて助かったよ。おかげでシンシアと結婚出来る事になった」


 ダイアナは婚約者候補の釣書には目もくれずに暖炉で燃やしてしまっていた事を後悔した。


「一応、婚約者候補だったから君の事も調べた、まぁ……その前に私の前で堂々と婚約者のいる男と浮気していたがね。それに他の令息とも懇意にしているね。メルビン君で性に目覚めたのかな?」


 ダイアナは必死に言い訳を考えていた。

「あの、違うの」

 胸の前で手を組み涙目で訴えるダイアナ。しかしフレッドには通じるわけがない。


「何してんの?可愛くないよ。シンシアにされたら、どんな願いも叶えてあげたくなるけどね」

 

 フレッドに、はっきりと言われ急に恥ずかしくなるダイアナであった。



「それにね。シンシアとメルビンが結婚しても君との婚約は白紙になっていたよ。私も身持ちの悪い女性との結婚は無理だ。とんでもない女性を紹介したシンシアにはたっぷりとお仕置きが必要なようだ。覚悟してシンシア」


「フレッド……目が怖いわ。メルビンと関係を持つ前ならダイアナ様は綺麗だしいいかなと思っていたのよ。メルビンとダイアナ様はきちんと両親からの忠告と報告を聞かなくてはダメよ」


「シンシア?私は傷ついたんだよ。ほらやって」

 ニヤリと笑うフレッド。



「フレッド……ごめんね。許して」


 シンシアは恥ずかしそうに胸の前で手を組みフレッドを見つめるのだった。頭を抱えるフレッド。


「思った以上に破壊力が凄い……シンシア、それは他の男の前ではダメだ。私の前だけにしてくれ」


「大丈夫よ。思ってた以上に恥ずかしいわ。いつもやってたダイアナ様はとても強い心を持っていたのね」


 カフェ内に響く失笑で赤い顔をするダイアナ。シンシアとフレッドは気にせず席を立つ。


「では、お幸せに」


 学園を出て馬車に乗り込もうとしていたその時。


「シンシア様」

「あら?貴方達は……」


「あの先程、カフェで聞こえて。シンシアの婚約者様がダイアナ様は他にも懇意にしている令息がいると」


「シンシアのお友達?」

「そ……そうよ……」

 クラスメイトなだけで、あまり交流のなかった令嬢達。


「ふふっ、シンシアは優しいね。シンシアとこれからは仲良くしてもらえるかな?」


「都合がいいかと思われるでしょうが……シンシア様、お友達になりましょう」

「フレッド……聞いた?私に……私にお友達が」


「すまないね。この通りシンシアは昔から友達作りが下手でね。婚約者の名前を教えてくれるかな」


 数人の令嬢に資料を渡す。

「シンシア様、この件が片付いたらカフェにいきますわよ」


「はい、ありがとうございます」

「その時は、私のホテルのカフェを使って。シンシアのお友達なら席を用意するから」


 驚く令嬢たち。


「あのホテルの?予約でも半年待ちよ。シンシア……ありがとう。今までもシンシア様を誘いたいと思っていたのにごめんね。明日からは一緒に昼食も食べるわよ」


「ありがとう皆さま。フレッド……ありがとう」


 そう言いながらハラハラと涙を流すシンシアであった。フレッドはシンシアを抱きしめる。


「僕の婚約者は昔から泣き虫なのも変わらないね。令嬢達は気をつけて帰ってね。シンシアは帰りに僕の所に寄ってから帰ろうね」


「皆様、さよなら」


 2人は馬車に揺られフレッドの屋敷へと向かう。

「ねぇ……フレッド」


「ん?」

 フレッドはシンシアを抱き抱え座る。

「フレッド、私と婚約してくれてありがとう。初恋が叶うと思っていなかったから、とても嬉しい」

 

 驚くフレッド。

「シンシア?私が初恋なのか?」


「そうよ、言ってなかった?こんなに優しくて格好いい王子様が近くにいたら誰でも恋をするわ」


 赤い顔でフレッドの胸に顔を埋めるシンシアであった。

「そうか、私の初恋も叶ったな。私は昔からシンシアだけが好きだったよ。今度一緒にホテルへ泊まりに行こう。シンシアだけの部屋がある」


「私だけ?」

「あぁ、シンシアの為だけに作った部屋だ。私が経営者でいるうちは誰にも使用させることのない部屋となるはずだったが大切なお姫様を迎える事ができる。あの時の君の願いが詰まった部屋だよ」


「お姫様のお部屋?」

「そうだよ、天蓋付きの可愛いベッドだろ、夜景が見えるバルコニーと広いお風呂、可愛いスリッパ、家具に食器も可愛い物を揃えた。あとは……」


「ブランコ」

「大人2人でも問題なく乗れる。その前にシンシアの両親のお泊りの許可を貰わないとな」


 フレッドに抱きつくシンシア。

「私の王子様。私と結婚してくれませんか?」


「勿論だよ、シンシア。私の永遠のお姫様。絶対に幸せにするからお婿さんにしてね」


「はい、こちこそよろしくお願いします。大好きよフレッド」


「私も大好きだよ」


 馬車の中で仲良く手を繋ぎフレッドの屋敷に向かうのだった。到着するとシンシアを抱き上げお姫様抱きをしたままフレッドの部屋へと直行するのであった。


「フレッド?おじ様とおば様に挨拶してない」

「いいの、私からのお仕置きが先」


 急ぎ自分の部屋へとシンシアを連れ込むのであった。




 もうすぐ卒業式だ。卒業を目の前にして1人の令嬢は学園を去る。ダイアナである。メルビンの他にも婚約者のいる令息達とも身体の関係がある事がわかり令息達の婚約者から婚約破棄に対する慰謝料の請求がダイアナの実家に届けられる。


 ダイアナの一家は爵位を返上し持っていた物を全て売り、平民となった。ダイアナはメルビンと結婚した。ダイアナは娼館で働き借金を返済している。メルビンは商家の営む輸入雑貨屋で働いている。



 ダイアナの働く娼館に1人の男が現れる。


「やぁ、ダイアナだったかな?」

「あんたはシンシアの……あんたも私を抱きに来たの?」

「冗談言わないでくれ、気持ち悪い」


 入り口に立ち中には入らない男はシンシアの夫のフレッドだ。

「何しに来たのよ」

「夫のメルビンは、今日も浮気相手の所かな?」


「……メルビンは浮気を?」

 ギロリとフレッドを睨むダイアナ。


「一度浮気した男だ。誠実な男ではなかったようだね。彼も顔は悪くない、勤め先の娘さんといい仲だよ。その娘さんは君達の同級生だよ。学生時代では婚約者とは上手くいっていなかった。君と関係を持った事を幸いと婚約を解消したんだよ。彼女はメルビンの事を好きだったようだし。彼の就職も彼女のひと声があったからだ」


「…………」


「言いたいのはそれだけだよ」


 フレッドはダイアナの前から去る。



 ダイアナは仕事が終わり家に戻る。

「ねぇ、メルビン?貴方……浮気しているの?」


 リビングで寛ぐメルビンの前に立つダイアナ。

 一瞬メルビンの身体がビクリとしたのをダイアナは見逃さなかった。

「貴方は私を愛していないの?私の初めてはあなたに捧げたのよ」


「君のせいで……シンシアとの結婚がなくなって。彼女は……俺の癒しだ。彼女のおかげで……。君は色んな男と寝ている」

「仕方ないじゃない、慰謝料の支払いの為じゃない」

「娼館じゃなくても良かった、その服だって買ってもらったのだろう?バックも……靴も」


 メルビンはダイアナを愛していた。食堂でも内職でも細やかな給金でも良かったがダイアナは今だに贅沢を望んでいた。そして男達にチヤホヤされる事を。メルビンは耐えた、しかし職場には、学園時代から自分を慕う女性。その女性からの好意が彼の心をダイアナからジワジワと引き剥がしたのだった。


「もう耐えられない。ダイアナ、離縁してほしい」

「嫌よ、認めない。メルビンは私の……私のなの」


 ダイアナはキッチンに向かい包丁を取りメルビンに向ける。


「ダイアナ、待て……やめろ」

「メルビン……私を愛していないの?」


 狂気に満ちた顔で包丁をメルビンに向けるダイアナ。


「愛してる……君を愛している。離縁はしない」

 必死に伝えるメルビン。ジリジリと近くダイアナ。

 ダイアナは立ち止まる。そしてニヤリと笑う。


「…………前もそうだった。あの日もメルビンは婚約者のシンシアを愛してるといい。それなのに私を抱いたわ……今度は私?許さない、信じないわ」


「うわっ。やめろ。やめ……」

 メルビンは逃げようとするもテーブルに躓き転倒する。

「メルビン愛してるわ。他の女を抱く為のモノは必要ない」


 メルビンの顔を蹴り上げるダイアナ。


「ぐっ……ダ……ダイアナ。やめるんだ、今日は……今日は一緒に寝よう。な?君を愛したいんだ。やめてくれ……頼むよ……おい、やめろ。ズボンを下げるな……何する気だ?」


「もう、いらないでしょ、私のなのに」


 大きな叫び声が響く、近所の人間は不審に思い自警団を呼ぶのであった。


 ダイアナは、逮捕される事になり、メルビンは重症を負うが命は助かった。しかし失ったのだ、彼の……男にとっては大切なモノを……病室で目を覚まし自分の姿を見たメルビンはそのまま再び気を失った。


 メルビンと懇意にしていた女はメルビンの子を妊娠していた。顔のいいメルビンの子さえいれば彼女は良かった。メルビンの元を訪れ彼の姿を知った彼女は病室を後にした。そして後から彼の元に見舞金だけが届いたのだった。





「ふふっ、今日こそ王子様は迎えに来たのかしら」

「バカな事を言うな。お前と面識のない王子が迎えに来るはずがないだろ。ほら飯だ」


 

 牢屋の隙間から食事が与えられる。


「おかしいわね、私はお姫様なのに……」


 1人牢屋で歌いながら何もない壁を見ながら、手櫛で髪を整える。ダイアナは未だ現れない王子を薄暗い部屋で1人待つのであった。

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― 新着の感想 ―
メルビン、好きになってくれた娘さんとは、顔だけタネだけ愛されてたのか。 なんか不憫よね。
わぁ‥‥‥ ジャンルはホラーだったのかな? ((´・ω・`;))ブルブル・・・。 途中まで見事なざまぁでスッキリ ほんわかして良かったのに( ̄▽ ̄;)笑 ホラーは苦手デスがとても良いお話 でした( *…
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