第21話 王都炎上
王都の空を覆った炎の竜が、咆哮と共に火の雨を降らせた。
市場の建物が次々と燃え上がり、人々は悲鳴をあげながら逃げ惑う。
空に浮かぶ黄金の仮面の幻影が、冷酷な声を響かせた。
「腐敗を浄化せよ。悪役令嬢の次は、王都そのものだ」
*
「ユイ! リリア!」
俺は二人を庇いながら広場を走る。
炎の竜が吐き出す火炎弾が石畳を砕き、熱風が肌を焼いた。
「ここで退いたら、王都が滅ぶ!」ユイが叫ぶ。
彼女の瞳は恐怖を超え、決意に燃えていた。
「〈氷壁〉!」
立ち上がった氷の壁が炎を受け止め、蒸気が爆発のように広がる。
リリアも両手を組み、祈りを捧げる。
「〈聖光結界〉!」
人々を包み込む光の盾が広がり、逃げ遅れた子供たちを炎から守った。
群衆が口々に叫ぶ。
「悪役令嬢じゃない!」「彼女が王都を守ってる!」
人々の心が揺れ始めていた。
*
だが、黄金の仮面の幻影は嗤う。
「民衆の心など容易く操れる。だが炎は嘘をつかん」
竜の尾が振り下ろされ、広場全体が崩れ落ちる。
俺は剣を握り、飛び込んだ。
「ユイ! 合わせろ!」
「ええ!」
俺の剣にリリアの光が宿り、ユイの氷槍と共鳴する。
三人の魔力が重なり、青白い光刃となって竜へと突き進んだ。
「〈氷光斬〉!!」
刃が竜の胸を裂き、炎が炸裂した。
だが、竜は崩れず、黄金の仮面が冷ややかに言い放つ。
「見事だ。だが所詮は第一幕。抗うならば――もっと深い闇で試されよ」
その声と共に、幻影と竜は霧散した。
残されたのは炎に包まれた王都と、混乱の人々だけだった。
*
瓦礫の中で、ユイは拳を握りしめる。
「……あの仮面が本当の黒幕。次は必ず、正体を暴く」
リリアは涙を拭い、強く頷いた。
「王都全体を守るため、もう迷わない」
俺は二人を見て言った。
「ここからが本当の戦いだ。筋書きなんかに、絶対に負けない」
夜の王都は炎に包まれ、物語はさらに大きな舞台へと動き出していた。