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第21話 王都炎上

 王都の空を覆った炎の竜が、咆哮と共に火の雨を降らせた。

 市場の建物が次々と燃え上がり、人々は悲鳴をあげながら逃げ惑う。

 空に浮かぶ黄金の仮面の幻影が、冷酷な声を響かせた。


「腐敗を浄化せよ。悪役令嬢の次は、王都そのものだ」



「ユイ! リリア!」

 俺は二人を庇いながら広場を走る。

 炎の竜が吐き出す火炎弾が石畳を砕き、熱風が肌を焼いた。


「ここで退いたら、王都が滅ぶ!」ユイが叫ぶ。

 彼女の瞳は恐怖を超え、決意に燃えていた。

「〈氷壁〉!」

 立ち上がった氷の壁が炎を受け止め、蒸気が爆発のように広がる。


 リリアも両手を組み、祈りを捧げる。

「〈聖光結界〉!」

 人々を包み込む光の盾が広がり、逃げ遅れた子供たちを炎から守った。


 群衆が口々に叫ぶ。

「悪役令嬢じゃない!」「彼女が王都を守ってる!」


 人々の心が揺れ始めていた。



 だが、黄金の仮面の幻影は嗤う。

「民衆の心など容易く操れる。だが炎は嘘をつかん」

 竜の尾が振り下ろされ、広場全体が崩れ落ちる。


 俺は剣を握り、飛び込んだ。

「ユイ! 合わせろ!」

「ええ!」


 俺の剣にリリアの光が宿り、ユイの氷槍と共鳴する。

 三人の魔力が重なり、青白い光刃となって竜へと突き進んだ。


「〈氷光斬〉!!」


 刃が竜の胸を裂き、炎が炸裂した。

 だが、竜は崩れず、黄金の仮面が冷ややかに言い放つ。

「見事だ。だが所詮は第一幕。抗うならば――もっと深い闇で試されよ」


 その声と共に、幻影と竜は霧散した。

 残されたのは炎に包まれた王都と、混乱の人々だけだった。



 瓦礫の中で、ユイは拳を握りしめる。

「……あの仮面が本当の黒幕。次は必ず、正体を暴く」

 リリアは涙を拭い、強く頷いた。

「王都全体を守るため、もう迷わない」


 俺は二人を見て言った。

「ここからが本当の戦いだ。筋書きなんかに、絶対に負けない」


 夜の王都は炎に包まれ、物語はさらに大きな舞台へと動き出していた。

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