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第20話 真の黒幕

 王都の夜。

 セイル男爵が消えた後も、街は不気味な沈黙に包まれていた。

 まるで次の幕が開くのを待つ観客のように。



 その頃、王宮の地下。

 闇の回廊を進む影が一つ。

 長衣をまとい、黄金の仮面で顔を覆った人物が、静かに玉座の前に歩み寄る。


「セイルは失敗しました」

 跪く者の報告に、仮面の人物は小さく笑った。

「構わぬ。あれは“前座”にすぎない」


 声は低く、だが背筋を凍らせる威厳を帯びていた。

「本当の断罪劇は、これから始まる。舞台は王都全体ではない――王国そのものだ」



 翌朝。

 俺たちは王都の市場を歩いていた。

 人々は昨日の騒ぎを忘れたかのように賑わっている。

 だがその会話の端々に、不穏な噂が混じっていた。


「王族の中に裏切り者がいるらしい」

「次に狙われるのは“王国評議会”だって……」


 ユイは眉をひそめた。

「……セイル男爵の背後には、もっと大きな存在がいる」

 リリアも頷く。

「そうですね。昨夜、あの闇の残滓に“別の魔力”を感じました。セイルのものではない、もっと深い……古代のような」


 俺は拳を握りしめた。

「じゃあ、あいつらの狙いは――」


 そのとき。

 市場の広場に、突如として巨大な魔法陣が浮かび上がった。

 人々の悲鳴。逃げ惑う群衆。

 空間を割るように現れたのは、黄金の仮面をかぶった者の幻影だった。


「民よ、聞け」

 低く響く声が王都全体を震わせる。

「偽りの侯爵令嬢は断罪された。次は王族だ。腐敗を正すため、王都を“裁きの炎”で浄化する」


 広場は一瞬で恐怖に支配された。

 ユイが俺を振り返る。

「真司……これが、“真の黒幕”……!」


 仮面の人物は手を掲げ、炎の竜を呼び出した。

 それは王都の空を覆うほど巨大で、見る者すべてを絶望させる存在。


「さあ――断罪の第二幕を始めよう」


 その声が響いた瞬間、王都の空が赤黒く染まった。

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