表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/29

第17話 王都評議会、断罪の幕開け

 王都の議事堂――。

 荘厳な大理石の柱に囲まれた広間は、すでに群衆のざわめきで満ちていた。

 王族、貴族、そして市井から招かれた代表まで。誰もが息を潜め、この瞬間を待っている。


 壇上に立つのは、黒曜石の指輪をはめたセイル男爵。

 彼の口元には勝者の笑みが刻まれていた。

「これより、侯爵令嬢ユイ・グランディアの罪を問う!」


 その言葉と同時に、会場の視線が一斉にユイへ突き刺さる。

 「やはり悪女か」「断罪を」「国の恥だ」――群衆の声が波となって押し寄せた。



 俺は一歩、ユイの隣へ出た。

「落ち着け。これは筋書き通りの舞台だ。俺たちが壊す」

 ユイは唇を震わせながらも、頷いた。

「……ええ。もう逃げない」


 その瞳には、前夜に見せた涙ではなく、確かな光が宿っていた。



 セイルが帳簿を掲げた。

「見よ! これこそ侯爵家の不正の証だ!」

 観衆がざわめき、評議員が頷く。


「違います!」

 リリアが前へ進み出て、聖女の光を掌に宿す。

「その帳簿には魔力の痕跡がある! 偽造の証です!」


 だがセイルは笑った。

「ほう、聖女までもが侯爵家の娘に操られたか!」

 彼の声が魔術と混じり、観衆の心を惑わせていく。



 その瞬間、俺は懐から“破片”を掲げた。

 舞踏会で拾った黒曜石の指輪の欠片。

「これが証拠だ! 暴走を仕組んだのはセイル男爵だ!」


 だが――。

 床に魔法陣が浮かび上がった。

 「断罪劇を終わらせるつもりか? ならばここで完成させよう!」

 セイルの叫びと共に、議事堂全体が揺れた。


 魔法陣から次々と黒い影が立ち上がる。

 群衆の悲鳴。逃げ惑う人々。

 評議会の場は、一瞬にして戦場と化した。



「ユイ!」

「大丈夫。私も戦う!」

 ユイの手が光に包まれ、氷槍が次々と生み出される。

 リリアが祈りを捧げ、俺の剣に聖光が宿る。


 三人の力が重なった瞬間、広間の空気が変わった。

 観衆は息を呑み、断罪を待つはずだった令嬢の姿に目を奪われる。

 ――悪役令嬢ではなく、王国を救う戦士の姿に。



 セイル男爵が指輪を高く掲げる。

「抗え! 筋書きからは逃れられん!」

「なら、その筋書きごと――俺たちで叩き壊す!」

 俺は叫び、光に輝く剣を振り上げた。


 断罪劇の最終幕が、ついに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ