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短編小説どもの眠り場

無き声

作者: 那須茄子

 誰かが話しかける。

 その瞬間、私は空気が重たくなり、胸が凍りつくのを感じる。声がどこか遠くから迫ってくる。耳を刺す鈍い痛みを伴って。



 「なぜ?」と問う声が心の中で渦巻く。

 彼らはこれほどまでに話すことを欲するのだろう。私は一人で静かに生きていたいだけなのに。


 外界の喧騒が恐ろしく思えてしかたない。言葉が紡がれるたびに、その音は私の皮膚をざらつかせ、見えない影が背後に忍び寄るような感覚を抱かせる。

 挨拶さえ、私には凶器のように刺さる。その短い単語の中に、無数の意図や感情、そして期待が詰まっているから。


 殺されそうで怖い。

 私は望まれるようなものを返せない。絶対に無理だ、死んでしまう。私がなかなか応えられないでいると、決まって相手は怖い目つきになるのだ。


『……ねえ、聞いてる?』、この言葉がいつもの合図。

 

 それ以降私を人間としてではなく、物も言えない文字通りの無口と思って、幾人か寄って集り私を囲みだす。

 きっと私を殺す方法を彼らは話し合って、楽しんでる。ひそひそ話も私には聞こえる、だって本当は喋れるし耳もよく聞こえて、止まない。



 誰かが私に話しかける。

 その瞬間、私は空気が重たくなり、胸が凍りつくのを感じる。声がどこか遠くから迫ってくる。耳を刺す鈍い痛みを伴って。

 まるで絶叫みたいに、まるで断末魔みたいに。


 私はただやり返しただけ。私は悪くない。


 睨む他の誰かと誰かと誰かと誰かと誰かと――を、私はただただ見つめることしかできない。






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