幸せの旅館殺人事件 ヘアピン1
この物語は後に天使の金字塔と呼ばれる名探偵の物語である。先日、学校の帰りに同級生の久保蒼香ちゃんと雪雲菜結ちゃんに旅行に誘われた。なんでも幸せが訪れることで有名な旅館らしい。明日は3人で女子旅を楽しむぞ。そう誓ったクリスマスイブの前日。これから起こる惨劇を知らずにいた。
今日は駅で待ち合わせ。2人とも既に着いていた。
『お待たせ!工保ちゃん。雪雲ちゃん。』
『扉木ちゃんおはよう。』
『おはよう扉木ちゃん!』
笑顔で颯爽と新幹線に乗り込んだ。
『これから行く旅館はどういうところなの?』
『幸せになれるらしいよ。』
『噂だと座敷わらしがいるんだって。』
『座敷わらし?凄い!』
ガールズトークを楽しんで、駅を降りて積もった雪景色を楽しみ、山道を歩き目的の旅館まで着いた。
『推理小説沢山持ってきたよ。読む?』
『読みたい。天気が晴れても雪が溶けないんだね。』
『着いたー!あれ?誰か立ってるよ。』
『支配人の山埼です。お客様、小学生3名様ですね。お部屋は2階の四の間になります。』
山埼さんに案内され、僕たちは客室に入った。
雪雲ちゃんはお布団にダイブしていた。
『やっとくつろげるよー!』
『雪雲ちゃんお行儀が悪いよ』
工保ちゃんが間髪入れずに注意した。
僕は窓から外を眺めていた。
『扉木ちゃん、どうしたの?』
『外を見てみたくて。』
『いいねー!行こうか!』
外から見ると旅館は4階建て。雪を下ろす形状なのか屋根が斜めにくっついている。その周囲は雪が積もっている。
『ううっ寒いね。』
『そうだね』
その後は座敷わらしが出るという1階の一の間を見に行った。そこは床は畳で、人形や玩具などが置いてあった。和室だ。
『子ども部屋みたいだね。』
『うん。僕たちも子どもだけどね。』
『案内図があるよ!』
1階は食堂と座敷わらしが出る一の間。
2階と3階は客室。4階は物置のようだ。
『扉木ちゃん難しい漢字読めるの?』
『うん。推理小説読んでいるからね。少しなら読めるよ。』
『凄いね。あっ、もうこんな時間お部屋に戻ろう。』
四の間に戻りディナーはバイキングだった。みんなでお腹いっぱい食べ、お風呂に入った。
『今日は良い一日になったね』
『いい思い出作れてよかった!』
就寝しようとしたその時だった。
『わああああっっ!!』
館内に男の大きな悲鳴が聞こえた。
『何?今の!?』
『上!上に行こう!』
『待って扉木ちゃん!』
僕は一目散に階段を駆け上る。五の間の前には50代くらいの男が口を空けて真っ白な顔で呆然と立っていた。ドアは空いている。視線はドアの向こうだ。部屋を覗き込むとそこには倒れている男女が居た。