時計塔殺人事件 ヘアピン2
人だかりを抜けると、男性が大きな時計の下敷きになっていた。被害者は小田星二。関東時計塔オーナーの弟だ。
『な、なんで、こんなことに。』
隣で泣いているのはオーナーの小田賢一。
『どう思う?木扉くん。』
『う…うぇ。』
僕は気持ち悪くなって吐きそうになる。死体を見たので至極当然の反応だろう。
『だ…大丈夫か?』
『…大丈夫じゃないです』
『そ、そうだよな。変なこと聞いてすまない。』
『はぁはぁ…』
息を整えて言葉を絞り出す。
『恐らく大きな時計が落ちてきて圧迫されてしまったと思います。』
『そうだな。俺もそう思う。圧迫死…事故だな!』
なんだろう。このモヤモヤした感じは。
吐き気がするが、そうでは無い。なんだか、そう決めつけるには尚早な気がする。
『そう決まれば、まずは目撃者の証言を聞こう!』
おじさんと一緒に目撃者に会いに行った。第1発見者の上山創一郎。近くのレストランで料理長をしている。
『おや…昨日の?』
『あなた警察だったんですか。』
『いかにも。詳しく聞かせてください。』
『毎朝ルーティーンで、レストランの開店前にジョギングしているんですよ。今日もジョギングをしていたら急に大時計が落下して、あの人が潰されていました。』
次に近くを通りかかった女性に話を聞く。
『あら?お嬢ちゃんまた会ったわね。』
昨日、頭を撫でてきた美人だ。
『はい!運命ですな!』
お前じゃない。おじさん、何言ってるんだろう。僕は女性に尋ねる。
『ところで、お姉さんは何していたんですか?』
『ベンチで一休みしていたら急に時計塔から大時計が降ってきたの。怖いわ…』
『なるほど。私は本庁の警部です。お名前とご職業も教えてくれませんか?』
おじさんナンパのようなノリで切り込む。
『あなた警察の人だったのね。黒内龍奈。時計屋よ。最新の時計も売っているの。良かったら見に来てね。』
龍奈って強そうな名前だなと思った。最後に被害者の兄の賢一の元へ向かった。
『ひっく…ひっく…』
『朝何があったんですか?』
『起きたら、家中探しても弟がいないので、どこかに出かけたのだろうと思っていたら、外が騒がしくてこうなっていました。』
『最近、星二さんに変わった様子はありませんでしたか?』
『わからないです。いつもと変わらない様子でした。』
弟を亡くした悲しみで涙がじわっと溢れた顔を隠しながら天を仰ぐ。
一通り目撃者たちの話は聞き終わった。僕はふと、大時計と死体に目を向ける。なんとも言いきれない違和感がある。目を凝らすと細い線状のものがあった。糸がキラキラ光っている。僕はしゃがみ、糸を拾って確信して言い放つ。
『霧雨警部これは事故じゃありません。他殺です。』