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第七章

「………何だ。」


「ロウさん、老けましたね。」


「誰のせいだよ………。」


「すみません。」






チサが気にしたので、魔物のトバを王都に行かせるのでなく、コダとロウ、カイル、トモが来てくれた。ジーノの一存で使用しているシンシアティ家の別荘は、正式に父アイナが許可して作戦本部となった。


アイナ・マドカ夫妻も、一度来てくれた。マドカはノアに会った途端、涙が止まらなかった。ノアには生きててくれてありがとうと言い、トバには守ってくれてありがとうと頭を下げた。


「問題が解決したら、キリルさんとアミアも会えるのよね。早く、会わしてあげたい。」


マドカは、ノアのための身の回りの品々と、皆のために食料など、たくさん差し入れしてくれた。


コダも、ノアとの出会いを非常に喜んだ。しかしもう高齢のため、話し合いには参加するが、実際の仕事はロウたちに任された。


ジーノの予言通り、チサはロウにがっつり怒られた。そして、ノア発見の手柄を褒めてもらった。結局そうやってチサを甘やかすんだと、ジーノは不満そうだったが。


ロウはノアに、ランドセルも返してやった。


「さあ、では調査開始だ。」


ロウ、カイル、トモ、サーラ、ジーノたちが、今度はガガドについて、特に奴の背後に何があるかないかを、徹底的に調べ上げる。各地の協力者にも情報提供を依頼、チサがその情報を選別、分析する。ノアは、一生懸命チサを手伝った。トバは、戦いの時には力を発揮できるよう、鍛錬しだした。


手が空いたら、グロサムとランもやって来た。ランはノアがユキノに似ていると感激、夫婦で助けようとしてくれる。


そして、早速ランは気づいてしまった。サーラが、ノアを意識していると。ノアを見るサーラの目が優しい。


サーラは20才、ノアより8つ上だ。ノアはあまり人と接して来なかったので、人付き合いが上手くなく、ジーノのようにがさつでうるさい男より、サーラのように優しく誠実なタイプが良いようだ。


ジーノはチサに憎まれ口ばかりだが、こちらも意識しているとわかりやすい。しかし、肝心のチサに伝わっているかどうか怪しい。チサは魔物のトバに、非常に心を砕いている。チサなら、ヒューマンタイプの彼に寄り添う、そんな選択もあり得るかもしれない。


悩ましい、問題だ。






綿密な調査の結果、ガガドの背後に、特に脅威と思えるものは見当たらなかった。それでガガドとその取り巻きを、一網打尽にする作戦を立てた。


作戦と言ってもシンプルだ。数多い取り巻きを、王国の魔法使いたちで駆逐していく。大将のガガドは、トバの手でねじ伏せる。その後、ノアがどのように生きるか判断できるように、ノアにはできるだけ魔物戦のありのままを見せてやることになった。


「ノアは、私がフォローします。」


チサは申し出たが、ロウはその役目をサーラに委ねた。サーラならどんな時でもノアを守り通せると、トバも納得した。


そしてガガドに宛てて、メッセージを送った。2人で話しがしたいと。返事は、あっさりと奴らのホームへの招待状だった。西のホリヤ山脈、その原生林の森にトバひとりで来るようにとのこと。


奴らは多数、ひとりで行かせれるはずはないが、まず様子見で、ロウがステルス魔法で隠れてついて行く。合図があれば、全員一斉に空間移動魔法で駆けつける段取りだ。


「父さん………。」


ノアは、不安だった。父は優しい、故に悪い奴らに殺られてしまうのではないか。サーラが、ノアの頭をそっとなでてやる。すると、不思議に安心できた。他に何人いようとも、頼りにできるのはいとこのサーラだと、ノアは思った。


「ガガド、何処にいる?私だ、トバだ。約束通り来たぞ。」


指定の場所に行き、トバがそう言うやいなや、戦闘ははじまった。






突然、四方八方からトバ目がけて、魔物たちが襲いかかって来た。当然ロウも合図する、すると、空間移動魔法で魔法使いが瞬時に数人現れた。


魔力が巨大なサーラは、ノアを防御しながら平然と攻撃魔法を繰り出し、相手をなぎ倒す。他のものもそれぞれ、得意な魔法がある。ジーノは父譲りの炎攻撃、チサだって光のようなムチで敵をかわして行く。


相変わらずの統率のなさ、いくら数がいても、有能な魔法使いたちになす術なし。あっという間に半数が叩かれた。しかし残りは、より厄介な奴ら。戦闘の中、魔法使いたちは2~3人ずつにバラけていった。


「おい、大丈夫か!?」


目の前の敵を蹴散らし、一息つくと、サーラとノア、ジーノとチサの4人になっていた。先頭を行くトバ、ロウたちに追いつくべく、先を急ぐ。


「ノア、怪我はない?」


「うん、サーラさんがずっと守ってくれてるから。」


サーラとノアは自然に手をつなぎ、一度も離れてない。おかげで怪我一つない。


チサは少し出血している。なのに。


「チサ、お前のムチと俺の炎がぶつかったぞ。気をつけろ、と言うか、離れろ。」


………また、そんなきつい言い方を………。サーラは内心、ため息をつく。


長い付き合いだ、サーラにはジーノの心がかなり読める。本心では、サーラがノアを守るように、チサを守ってやりたい。でも、チサも1人の魔法使い、守られるために来ていない。ならばせめて、実力が発揮できたほうが良い。魔法がぶつかり合うということは、威力が相殺されかねない。特に炎はムチを焼きかねない。


だから、離れろ。


できるだけ、安全でいてくれ。


………不器用なやつ。


案の定、チサが落ち込み、離れたので遅れはじめた。


その時。


暗転。


サーラとジーノはほぼ同時に気づいた。


「闇魔法!?」


2人とも、そしてノアも、光魔法で防御でき、闇魔法は即座に払われた。


しかし。


「おい、チサがいないぞ!」


光魔法が使えないのに、離れてたチセは、闇の中、姿を消した。






闇魔法の使える、ヒューマンタイプがいた。つい最近、ガガドの仲間に加わっていた。こいつの放った闇魔法が、チサに予想外のダメージを与えており、さらわれていた。


学生の頃、アミアを狙った陰謀に巻き込まれ、闇魔法を一度くらったことがあった。その時は身体にアザができたが、もちろん治療を受けていた。今回の攻撃に、前回蓄積されたダメージが重なり、内臓が損傷、大量の吐血をし、意識がなくなった。


そんなチサを見下ろす、魔物たち。


ヌコルル島襲撃の際、トバを助けた女がいると、情報共有されていた。一番は娘がいいが、この女でもいい、人質として狙われていた。


「なんだ、死にそうじゃないか。これでは、人質にならんぞ。」


「では、切り刻んで、無残な死体にしてさらしてやろう。トバが、戦意喪失するだろうさ。」


そして、鋭い爪が光る………。






「チサ!何処だー!?」


ジーノはとっさにチサをつかもうとして、叶わなかった。それはそうだ、離れろと言ったのだ。


自分だけ、防御してしまった。チサを、守れなかった。気が狂いそうだ。


そして前方に、トモともう一人が、黄色いバードタイプの使い魔を介抱しているのに出会った。


(チサの使い魔か………!?)


プーは、虫の息だった。目や耳から出血している。


使い魔は、主人の状態を反映する。ノア以外の魔法使い全てが、それの意味することを知っていた。


「プー、プー!どうしたの!?」


何も知らず、叫ぶノア。


すると何と、プーがカッと目を開いた。そして、ジーノをじっと見つめ、すがりついて来た。


「プー!………連れて行ってくれるのか?」


それは、プーにとってはトドメを刺されるに等しい。しかしブーは、頷いた。チサの元に、飛ぶ!


そして、渾身の力で、プーは飛んだ。ただひとり、ジーノを連れて。

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