セイレーン
まこと そうか…。
まこと、納得したように、スマホをポケットにしまう。
同時に上手から、ゆうな登場。バッグを持っているが、肩をかばっている
ゆうな あかり! カバンごともってきた…。
まこと、カバンを受け取る。ゆうな、肩に手を当てて椅子にへたりこむ。
あかり、返事をしない。
まこと、あかりの顔をぴたぴた叩く。
まこと あかり、薬はどこに入ってるの?
あかり、気が付く。
あかり、カバンのポケットを指さす。
まこと、カバンのポケットから薬を取り出し、ペットボトルの水とともにあかりに薬を飲ませる。
しばらくの間。
あかり ありがとう。落ち着いてきた…。
まこと 良かった。もう少ししたら、帰る?
あかり そうだね。ここにいてもしょうがないし。
ゆうな、椅子から滑り落ちる。
あかり どうしたの!
ゆうな 肩が…痛くてたまらない。何回もドアにぶつけたから…。
あかり まさか…、骨折…。
まこと えっ…。
あかり このゆうなの様子が、お父さんが肩の骨を折った時と、そっくりなんだよ!
まこと そんな…。あかり、骨折が治る薬とか…。
あかり あるわけないでしょ!
まこと そうだよねえ…。
ゆうな、痛みのあまり床の上を転げ回る。
まこと どうしよう…。わたしたちだけじゃどうにもならないし…。早く医者に診せないと…。
あかり …ねえ、あたしが喘息の発作を起こしたとき、救急車を呼んだ?
まこと 通報はしたよ。だけど渋滞がひどくて、いつになるかわからない…。
あかり 違うの。何か聞こえない?
風雪の音。
まこと 風がひどくなってきた…。やっぱりしばらくは無理なのかな…。
あかり 違うの。よく聞いて。
風雪の音。
まこと 風が…。
あかり 違う、これは…。
風雪の音のなか、かすかにサイレンの音。
あかり きた…。
まこと きた…。
風雪の音とともに、はっきりしたサイレンの音。
ふみかとゆかり、客席に向かって同時にガッツポーズ。
あかり・まこと キタァァァァァァァッ!
暗転
サイレンの音、ますます大きくなる。暗転の間、サイレンが鳴り続ける。