粘着
まこと 待つしかないよ。いつになるかわからないけど。
まこと、寝ているあかりの上半身を抱く。
ゆうな、上手に移動。
まこと どうするつもり?
ゆうな、上手に向かって走る。一度退場。
ドーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
まこと なにやってるの!
ゆうな ここの鍵は、金具を柱にねじ止めして、南京錠がかけてあるだけだ。何回も体当たりすれば、ねじが外れる! ドアさえ開けば、あかりの教室はすぐそこだ!
ゆうな、助走をつけて下手に向かって走る。扉にぶつかる。
バーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
さらに、助走をつけて下手に向かって走る。扉にぶつかる。
バーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
まこと うるさい! あかりがこんな状態なのに、ドスドスやるな!
ゆうな あかりがこんな状態なのに、何もしないでなんかいられない!
ゆうな、助走をつけて上手に向かって走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
まこと いつまでやるつもりだ!
ゆうな 百回でも、二百回でも…。
ゆうな、助走をつけて上手に向かって走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
まこと あんた、いい加減に…。
ゆうな いい加減なことはしない。わたしは、執念深いんだよ!
ゆうな、助走をつけて上手に向かって走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうな、舞台中央にもどってくる。
まこと、あかりを丁寧に床に寝かせて立ち上がる。
まこと ふざけないでね。あんたなんかよりわたしの方が、ずっと執念深いんだよ!
ゆうな、助走をつけて上手に向かって走る。
まこと、ゆうなを追うようにして上手に走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうなとまこと、舞台中央にもどってくる。
ゆうなとまこと、同時に助走をつけて上手に走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうなとまこと、舞台中央にもどってくる。
ゆうな もう一回…。
まこと わかってる!
ゆうなとまこと、同時に助走をつけて上手に走る。一度退場。
バーンという効果音。
ゆうなとまこと、舞台上手端にもどる。
ゆうな、肩をかばうように手を置いている。
まこと、両手両足を床につける。
二人とも、体を上手に向けている。
ゆうな やった…。
まこと 行けぇ! あかりを守るんだ!
ゆうな わかってる!
まこと (叫ぶ)はしれぇぇぇっ!
ゆうな、勢いよく上手に退場。
まこと、あかりの所に行って上半身を抱く。
ジャケットの合わせを広げようとして、何かに気づく。
あかりのポケットからスマホを取り出す。
スマホを見て、首をかしげる。
しばらく見ている。
まこと そうか…。