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噓つきの王様  作者: 恵理奈孝彦
2/8

アイス

ゆうな これって、わたしへのあてつけ?

まこと は? なに言ってるの?

ゆうな わざわざうそつきの女を出すって、あてつけとしか思えない!

まこと え、なんで? 心当たりでもあるの?

ゆうな そんなものあるわけないでしょ!

まこと 後ろめたいことがないのなら、自分のことを言ってるなんて思うわけないと思うんだけど。

ゆうな まことが周囲(まわり)の子に、わたしのことを嘘つきだって言ってることは知ってる!

まこと ゆうなは、友達に愚痴を言ったことはないわけ? それとも友達が一人もいないの!

ゆうな まことが言った「愚痴」が、わたしの耳にまで入ってくるのはどうしてなんだろうね! まことが友達だって思ってるコは、本当に友達なのかな!

あかり やめて二人とも! わたしが喘息持ちなのは知ってるでしょ! 強いストレスを感じると、発作がでちゅうんだ!

ゆうな まこと (あかりに)ごめん!


    まこと、すわる。


あかり こっちこそごめん。発作がでちゃうと、薬を飲まないとどうにもならなくなるんだ。特に冬の、低気圧が来てる時はヤバいんだよ。


    ゆうな、カバンをごそごそしてブラックサンダーを二個取り出す。


ゆうな あかり、友チョコ! バレンタインだもんね!


    ゆうな、あかりだけにブラックサンダーを渡す。


あかり あ…、ありがと。


    まこと、立ち上がって上手に退場。ゆうな、それを目で追う。


ゆうな あれえ、まことにも上げようと思ったのに。自分がもらえないと思って席を外したのかな。たしかに、自分だけもらえないと、バツがわるいもんね。

あかり うん…。

ゆうな チョコレート、食べてね。

あかり うん…。


    あかり、チョコレートに手を出せない。


ゆうな 「ゆうなは友達に愚痴を言ったことはないわけ?」って、あるにきまってるじゃん。

あかり そうだよね。

ゆうな 特に、衿名先生の愚痴は。

あかり そうだよね。よく、聞いた。

ゆうな あのヒト、わたしらの誰よりも筆力がないね。

あかり うん、わたしもそう思う。

ゆうな それでいて部誌に「おれの作品も載せろ」って、何を考えてるんだか。

あかり この前の部誌の「灼熱のなんとか」っていう小説。なろう小説みたいだけど、なんで異世界に自衛隊がいるのか、さっぱりわからなかった!

ゆうな あのヒトが文芸部の顧問をやってるのは、自分の小説を部誌に載せたいからだけだよね。

あかり ほんとに、「いるだけ顧問」なんだから。

ゆうな 部活にも顔出さないし。

あかり 来ても、「部室の掃除をしろ」しか言わないし。

ゆうな あいつ、文芸の指導ができないから、掃除とか戸締りとか、そんなことしか言えないんだよ…。こんな風に先生の愚痴なら言うけど、部活の同級生の愚痴なんか言ったことなんかないよ!

あかり 友達ではないの?

まこと 友達って!


    まこと、上手から走って登場。


まこと 走って購買まで行ってきた! もう、閉店ギリギリ!


    まこと、あかりにだけカップアイスを渡す。


まこと はい、友アイス!

あかり あ、ありがと…。

まこと 早く食べてね! 溶けちゃうから!

ゆうな この寒いのに。

まこと 暖房効いてるでしょ! (あかりに)溶けないうちに食べてね!


    あかり、気まずそうに、カップアイスを食べ始める。早く終わらせたいのか、必死に口に運ぶ。


ゆうな チョコレートも、溶けないうちに食べてね!

まこと チョコレートよりも、アイスの方が溶けやすいよ!

あかり ああっ、こんなところにアイスのトッピングが!


    あかり、チョコレートを口に運ぶ。


まこと 良かったね、ゆうな。ゆうなのあげたチョコレートはわたしのあげたアイスのトッピングなんだって!

ゆうな 何が友アイスだ。バレンタインの主役は、チョコレートに決まってる!

    (あかりに)チョコレートが、あかりのショートストーリーみたいに、ドロドロに溶けたりしないうちに、食べてね!

まこと (ゆうなに)どこがあかりのショートストーリーみたいなの! ゴディバどころか、ブラッックサンダーじゃない!

ゆうな まことだって、ピエール・マルコリーニなんかじゃなくて、購買の「爽」アイスでしょ!

まこと ブラックサンダーの五倍の値段した。だいたいなんなの、墳チョコレートって。なんだか汚らしい!

あかり うっ、頭が痛くなってきた。

ゆうな 大丈夫? アイスなんか、一気に食べるから…。

まこと 一気に食べて頭が痛くなるのは、アイスじゃなくてかき氷だ!


    あかり、荷物を持って立ち上がる。


あかり じゃあ、二人ともありがとうね。ごちそうさま! 体調悪いから帰るね!


    あかり、荷物を持って走る。


ゆうな・まこと あかり!


    暗転。



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