完璧になりたいそこのあなたへ
初投稿処女作です。なろうっぽくは無いですね。はい。年齢制限に関してですが、個人的な考えとしてR15は小説にいらないと思うんですよね。小説でグロってなんですか?エロは分かるんですけど。どうやったってグロくはならないでしょう
よく夢を見る。毎回同じ夢だ。内容は、死ぬ直前。俺は必ず後悔している。あれをしておけばよかった、こうしておけばよかった。もっと、濃い人生を生きていれば、と。俺は枕を濡らしながら目を覚ます。そして、その時がまだ遠いことに安堵する。
「朝だよ。起きて」
「ああ、起きてるよ」
「ご飯、出来てるから」
「すぐ行くよ」
何の変哲もない。いつもの朝だ。奥さんである悠李はこうやって起こしに来てくれる。俺は朝の歯磨きを行い二階の寝室から一階のリビングへと向かう。
「おはよう」
「やっと来たの?笑。もう少し冷めちゃってるよ」
「ああ、そうか。少し位いいよ」
冷めた味噌汁に卵焼き。名前の分からない魚の煮つけ。早朝としてはそれなりに豪華な気がする。
「雄磨はもう学校に行ったのか?」
「もう三十分前には出てったよ」
「そうか。学生は大変だな」
「あなたはもう少し急ぎなさい」
「大丈夫。まだ間に合うさ」
この会話、もう何度目だろう。こいつは飽きないのだろうか。俺はもう、お前という存在にも冷めているというのに。
【今朝、○○公園付近にて、9名が死亡してるのが確認されました。いずれも遺体の損傷が激しく、ハッキリとした死因は分かっていないとのことです。】
「○○公園って、近くじゃん。やばくない?」
「ああ、そうだな。雄磨が心配だな」
嘘だ。心配なんて微塵もしていない。それなりに生きてきて分かってる。どうせ俺には縁のないことだ。そのうちその心配も風化する。
「会社。行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「ねえ、最近行ってきますのキスしてくれないよね?」
「そうか?」
「うん。少し寂しいよ」
「悪い。今度するよ。今は急いでるから」
「うん…」
いい歳して何て要求するんだこいつは。俺に冷めてないのか?片思いとは虚しいもんだな
駅までは歩いてそれなりに時間がかかる。車を使えばいい話なんだが、歩くのが楽しいんだ。毎回新しい発見が出来るような気がして。だから多少無理してでも歩いて向かう。
ふと、看板が目に留まる。ネオンで飾ってるちょっと古めかしい看板だ。二文字デカデカと【pw】と書いてある。正直センスを疑う。
「2010年の街中でもこんなのを見かけるとはな……」
無性に入ってみたくなった。見たことのない看板だったし、俺はネオン管が好きなんだ。歩くのを見越して余裕を持って家を出てきているから、少しの寄り道位大丈夫。
「失礼しまーす」
「いらっしゃい」
綺麗なお姉さんだ。正直奥さんの4倍は綺麗だ。
「何のお店なんですか?」
「お客様を完璧にするお店です」
「完璧?」
「そう。完璧。お客様が何か一つ、足りないと思われることを仰って下さい」
何だ。よくある占いとか風水とかオーラみたいな、胡散臭い概念を押し付ける店か。そういうのを信じれるほど情熱的じゃないんだ。ただまあ、ムカつくから無理なこと言ってからかってみよう。
「足りないものをくれるんですか?」
「ええ。そうです。察しが良いですね」
「じゃあ、時間で」
「時間?」
「そうです。時間。僕には時間が足りない。永遠が欲しいんですよ」
「なるほど。分かりました。では、永遠を差し上げますよ」
そういってお姉さんはおもむろに何処からか人形を取り出した
「この人形に強く願ってください。心からの願いで無いと叶いませんよ」
なるほど。そういうパターンか。人の願いが叶わなかったら、心から望んでない、で済む話だもんな。ありきたりな手法だし、あまり賢いとは言えないな。
「ちなみに、料金は?」
「無料ですよ。あくまで慈善事業なので」
こんなんが慈善ね…。まあいい。俺が永遠を欲しいのは紛れもない事実だ。たとえこれで叶わなくても
その思いは変わることはない。手を合わせて祈る。その作業は一応やろう。
「本当に心から願っておられたのですね。叶いましたよ」
「そうですかい。ではありがとうございました」
「はい。またのご来店をお待ちしております」
嘘だな。何も変わってないだろこれ。でも、少しは希望を抱いてる自分がいる
「あんた避けろ!」
「?」
ドンッ 鈍い音が響く。
「キャー!」
「誰か引かれたぞ!」
「救急車と警察呼べ!」
「何メートル吹き飛ばされたんだ?生きてないだろあれ…」
「ッ…」
耳鳴りがする…全身が波打っているようだ…
「どうなってんだ…これ…」
車の位置からして、軽く家二軒分は吹き飛ばされたはずだ。普通は死ぬ。しかし生きてる。それどころか、傷跡が消えていく…。痛みは早い段階から消えていた。
「あんた…生きてるのか…?」
「嘘だろ…奇跡だ…」
不味い気がする。ここに留まっていては駄目だ。とりあえず、場所を移動しよう。