無花果
「ねぇ 誰か、これ(無花果)読める?」
「何?見せて。 あぁ、これね。えぇーと果物だよ」
「いちじくだよ!」
「えぇー読めないよ、何故これがいちじくなのさ!」
「無花果のデザートか、楽しみだね」
「ねぇ、どうして この漢字で無花果と読むの?良く読めたね!」
「家にあるんだ・・無花果畑がさ」
「凄いじゃん!」
「無花果なんて買うもんじゃないよ!食べたきゃ・・・」
私の家の周りには無花果畑が広がっていて、もう長い間この景色は変わっていません。
父は、祖父から無花果農家を継いで「儲からない」と言いながら無花果を大切にしている。
無花果の実は、夏の一旬の果物でスーパーに何時も在る物ではない。
友達はデザートを食べて、「美味しいじゃん!可愛い色してるじゃん」と、言っていたが・・・・・・
私は無花果が大嫌いだ!
梅とか桃も可愛い、梨でも、柿でも、祖父は、どうして無花果を植えたのだろう?
春が来ると、家の周りが一面、花になる光景をいつも空想していた。
無花果は、字の通り 花が咲かない。冬になると、葉もなくなり枝も掃い落とされる。
これが怖い!
学校帰りの夕方にかけて、家にたどり着くまでの間 無花果の木は ウネウネ、ゴツゴツしてまるで妖怪のように見えた!
小さな時から、この無花果畑を通る時はよそ見をしない !
短大生になった今でも、変わらない。
「ねぇー、でもさー無花果てさー・・・いちじく浣腸だよね!」
「・・・・・・」