『詩人の旅』
『詩人の旅』
詩人は逞しくなくてはならない
詩になるのを待つ 風景に出会うために
自らの足で 旅歩かねばならない
ある時は 病や試練を 背負わねばならない
立ち上がろうとする 貴方を理解するために
天井を見つめ この身の小ささを知らねばならない
たくさんの人に 出会わなくてはならない
無遠慮に踏み入るのではなく
その笑顔に許され 迎え入れてもらわねばならない
人の役に立たなくてはならない
その場に尽くし 求められることで
自らの存在を確かめなくてはならない
恋に溺れなくてはならない
自らの詩に出会うために
誰もが知る その感情を知らねばならない
形として残さねばならない
人が見逃す 一瞬の霊感を
手繰り寄せ 掴み取らねばならない
他者の表現に 圧倒されなくてはならない
いつか覚えた驚きを
自らの手で 伝えてゆかねばならない
孤独を知り 孤独で完結してはならない
その手の中だけに 仕舞い込まず
自らの存在を 知らせねばならない
よろこびを伝えなくてはならない
人として生き 覚えたこと全てに
感謝を伝えなくてはならない
たくさんのことを 学ばねばならない
その手が掴み得る可能性を
自ら閉ざしてはならない
童心を忘れてはならない
驚きと 未知に溢れたあの日々を
歌心を忘れてはならない
年を取ることを 恐れてはならない
必要なものは 遅れて揃ってゆくもの
熟練の手から こぼれる粒を得ねばならない
我が子に旅をさせねばならない
温めることも 手を離れることも 惜しまずに
誰かの元へ羽ばたくよう 送り届けねばならない