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剣の新生2


 早人は自室に戻り、起きていたジーフェに背中に隠れられながら、キアターに兵士が来た理由を聞かれる。

 キアターへの報酬と迷界解放を祝ってのパレードだと答えると、キアターは驚いた様子なく頷く。それへの参加も深く考える様子なく頷いた。

 ジーフェはどうなのか早人は振り返って見ると、興味のある様子すら見せていなかった。


 二日後、早人は元森の迷界への道を走っていた。

 闘人の衣も使って、かなりの速度を出しており、人通りがそれなりにあれば迷惑になっていただろう。今は迷界がなくなったと広く知られていないため、この道を行く者は少ない。危険度が減ったと広まれば、また行商人などが行き来を始めるはずだ。

 空腹や渇きを覚えて止まることはあるものの、疲れから止まることはなかった。常人を遙かに超える体のすごさがここに証明されている。

 夜は木の上で眠り、翌日も走る。迷界には昼前には着くだろう。

 そう考え走る早人の視線のかなり先に、魔物の巨体が映る。

 見た目はゴリラだ。黒っぽい朱色の体毛、額に二本の角が生えているという違いはあるが。およそだが五メートル近い巨躯に、筋肉もしっかりとついている。冒険者たちはあれを大鬼猿と呼ぶ。

 それが二体いて、挟まれるように馬に乗った者が三人いる。

 三人は武器を構えてはいるが、怯えた馬の制御もあって上手く戦えているとはいいがたい。


(助けた方がいいか?)


 近づいていきつつ、そうしようと判断して早人は使い捨て用に買った木刀を背中からとる。

 ぐっと地面を強く踏みしめて、速度をさらに増す。

 地面に足跡を深く残して接近し、こちらに気づきかけた一頭の首筋を真横に断つ。そのまま通り過ぎ、振り向いてすぐに上空に飛び、もう一頭の頭上から頭蓋よ砕けろとばかりに木刀を叩きつけた。

 木刀の折れる音は、頭部からの激痛に悲鳴を上げる大鬼猿の悲鳴でかき消される。

 一頭は倒れ伏してわずかに動くのみで、もう一頭は血を流し戦意をなくして去っていく。

 残った木刀を捨て、それらから目を離して早人は三人に視線を向ける。

 突然のことに三人は呆然としている。


「ピンチに見えたから助けたんだけどよかった?」


 声をかけたことで三人は我に返り、一人の男を守るように男女が武器を手に前にでる。

 警戒しているのだとわかった早人は、長居は無用かと大鬼猿の角だけとって去ろうと考え視線を外す。


「武器をしまえお前たち。恩人に失礼だろう」


 そんな声を聞きながら、早人は角を力任せに抜く。

 価値がありそうな部分を回収した早人は、そのまま三人を見ずに立ち去ろうとする。

 その背に男女に守られた男が声をかける。


「待ってくれ。礼を失したのは謝る。このとおりだ」


 早人が振り返ると馬上で男が頭を下げていた。

 それに男女は苦い表情をしている。男にそんなことをさせてしまったこと、見知らぬ相手にそうすることに対してだ。

 そんな様子を見て早人は、男はどこかいいところの人間で、男女は護衛なんだろうかと考える。


「怒ってないんで別に謝らなくていいですよ。その二人が関わってほしくなさそうだったんで、さっさと去るつもりだけだったし」


 武器をしまったとはいえ、柄から手は離していない男女をちらりと見て言う。

 男女は嫌みかと受け取ったが、早人は思ったことそのまま口に出しただけでそのつもりはなかった。


「二人ともそこまで警戒しなくていいだろ」

「ですが、あの強さは警戒せざるを得ません。私たち三人をあっというまに殺せる強さです」

「我らでは時間稼ぎもままならないでしょう」

「強すぎてすまんね」


 場が和むかと早人はちゃかすように返すものの、男女は警戒したままだった。


「二人は少し下がってろ。警戒するにしても、そんなありありと表に出したら相手に不快感与えるだけだろ」

「警戒するなとは言わないんだな」


 早人が言い、男は笑みを浮かべる。


「俺としてもその強さには警戒心は抱くさ。まあ、それはそっちも同じだろうが。いきなり強い警戒心を向けてくる二人に守られる形の男。それを不審に思わずはいられないだろう?」

「多少は。でもさっさと離れれば二度と会うこともないだろ」

「この出会いをこれだけにするのは俺はもったいなく思えるんだが」

「俺は特に興味はない。用事をすませる方が優先。じゃあそういうことで」


 去ろうとする早人に男はさらに声をかける。


「そうは言わずに……そうだ。報酬払うから護衛をしてくれないか? この先の迷界に行くんだ」


 自分たちがいるのに護衛を雇おうとする男に、男女はプライドが刺激されたように少し反応する。


「護衛はその二人がいるし、今の迷界ならその二人で十分だろうに」

「迷界が静かになっていることを知っているのか?」

「鎮めるのを手伝ったし」


 その返しに男のみならず、男女も驚いた表情を見せた。

 男は首を振り、すぐに口を開く。


「……いや迷界を解放した者たちは王都で休んでいるはずだ」

「パレードまで時間があるし、迷界の主に用事もあったから会いに行く途中」

「用事?」

「それを言う必要はないだろうに。でも隠すことでもないか。剣の修理をしてくれている。それを受け取りに行くんだ。そっちこそ迷界になんの用事なんだ?」

「俺たちは解放されたと聞いたから一度様子を見ようと」


 解放されたことを知れたということは、この男たちは貴族か王命でも受けて調査にきた騎士なのかと早人は思う。


「それで行き先は一緒だからどうだ?」


 ここまでくれば急がずとも到着時間はそう大きく違いはない。

 早人はどうしようかと考え、ちらりと男の護衛たちを見る。警戒され続けるのもめんどくさいと考えた。

 男女は複雑そうな表情ではあるものの、武器から手を離していた。

 その様子から早人は積極的に話しかけなければ大丈夫だろうと頷くことにした。


「まあ。いいよ」

「そうかそうか。短い間だけどよろしくな!」


 馬から下りて、早人の肩をパンパン叩く。


「俺の名前はムーン。お前は?」

「早人。冒険者」

「ハヤトな! 行こうぜ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 「警戒され続けるのもめんどくさいと考えた。」 そして、同行することに決めたようですが、そのまま分かれたら警戒され続けることはありません。 考え方、変わってますね。
[一言] 護衛が正体不明の強者を警戒するのは当たり前のことだけど、敵意をぶつけられる方は不快ですね。 この場合の正解は、不干渉で別行動。 護衛の主に謝罪されても別れるのが正解ですね。 あとで絶対に面倒…
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