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向かうは森の迷界9


「ちょうだいと言われても」


 くーくーとお腹を鳴らしながらこてんと首を傾げての頼みに、困ったように早人は周囲を見る。食欲の込められた目で見られるのは初めてで正直怖い。

 ジョーシュが助けになるかどうかわからないが口を出す。


「キアターの嬢ちゃん、食べたら永遠にその分が減るのか? その場合はお前さんの一時的な満足で早人の力を奪い去るってことだ。認めるわけにはいかねえよ」

「魔法や闘技を使ったのと同じ。休憩をとったら回復していく」

「ふむ、じゃあ次だ。ここは危険な場所で、余計な消耗は避けるべきだ。それでも食べなければならないのか?」


 ジョーシュの言い分が正しいのは納得できたようで、残念そうにしながら首を横に振った。

 食べられることはないとわかり、早人はほっと息を吐いた。

 だがキアターが続けた言葉に表情がひきつる


「じゃあ外で食べるのならいい?」

「それを止めることはできねえな」


 さっさと用事を終わらせようと気合いを入れ出すキアター。

 落ち着いていた早人が慌て出す。


「ちょっ!? 問題を先延ばしにしただけじゃないですか!」

「これくらいしかできなくてすまねえ」

「また変なのが近寄ってきたんですけど!」

「そういう運命なんじゃないかねぇ」


 ジョーシュはしみじみと言う。

 そんな運命嫌ですよと答えた早人に同情の視線が集まった。


「あんたら奥に行くのは止めないんだな?」


 ジョーシュの再度の問いかけに男たちは頷いた。今も病で苦しみ木の実を必要としている者を死なせるわけにはいかないのだ。

 そうかと小さく頷いたジョーシュは早人たちに顔を向ける。


「こいつらについていって大樹の状況を探るのもありだと思う。お前たちの意見を聞きたい」

「解析の魔法という私たちにない手段があるのは利点ですね。私は行くに一票です」


 タータが言い、ラレントが同意した。

 渋る様子を見せたのはパージアだ。


「大樹までいくと根っこが相当に多く激しい動きをすると思う。それに対応できるのか、そこが私の不安」

「他人任せだが、そいつがいればどうにかできそうだが」

 

 男が早人を指差す。

 ジョーシュとしてはこの意見に反論はないのだが、別の疑問がある。


「たしかにさっきの戦闘を見ればそう思うかもしれないが、強人の衣が大樹の生えている場所まで続くのかわからんぞ」

「もう一回使えるよ。さすがに魔力がすっからかんになるけど」

「ならいけるか?」

「俺一人だけに根っこの対応任せませんよね? さすがにそれは無茶だって言いますよ」

「任せるわけないだろう。俺も強人の衣を使えるし、ラレントたちもぞれぞれ闘人の衣とか使える。大樹のところでおしみなく戦力を注ぎ込めば最低でも現状把握はできると思ったんだ」


 ジョーシュの返事を聞いた早人は反対意見を出さず、行くことに賛成する。

 反対したパージアは危なくなったら退くことを念押しして、行くことに頷いた。


「ありがとう。俺の名前はシュバス。キアターは既に言ったから紹介する必要はないな? あの二人はセーダとアーナ」


 紹介された二人は優雅に一礼する。洗練されたそれにジョーシュは貴族かそれに近い人間だろうなと考えた。

 ジョーシュも仲間を紹介して、大樹の下へと出発しようと声をかけた。

 早人の隣にはうっとりとした表情のキアターが歩く。キアターは隣を歩くだけで心なしか魔力がほんの少しずつ回復しているようにも思えていた。

 そんなキアターに隣を歩かれる早人は気が散って、警戒どころではないのだが、それについて注意をする仲間はいなかった。

 一時間ほど根や魔物を撃退して進み、ゴールである大樹が木々の向こうに見えてきた。


「ここから解析の魔法は使えるか?」


 シュバスの問いかけにキアターは首を横に振った。

 もう少し近くにということで、大樹まで約百メートルというところに来たとき一行を遮るように大量の根が現れる。

 ジョーシュ達はそれの排除を始め、早人は解析の魔法を使うキアターの護衛としてそばで木刀を振るう。

 キアターは霊液結晶と呼ばれるものを入れていた小瓶をポケットから取り出す。ふたを開けて口の中に入れてどろりとしたそれを噛み砕く。そして唾液と混ざったそれを指につけて瞼に塗る。


「私の眼は全てを見通す。隠されしもの我が目の前に現れよ!」


 キアターの視界が一瞬青く染まって、木々や根の向こうにある大樹を見る。

 大樹は早人や以前の調査隊が見たように、紫色の血管のようなものが幹に付着していた。その血管のあちこちにコブがある。

 その血管の正体や急所を見ていくが見当たらない。さらに詳しく見るため目に力を込めると、なにかがギョロリとキアターを見た感覚があり、魔法の効果がそれ以上先に進まなくなる。生物的ななにかが魔法に抵抗しているのだ。


「困った」

「なにが?」


 キアターの呟きに、根を斬り裂きながら早人が反応する。


「力及ばず解析が上手くいかない。大樹か大樹に寄生しているなにかかわからないけど、魔法に抵抗してくる」

「その抵抗を破る方法は?」

「力の補給してのごり押し」

「つまり?」


 答えを予想しつつ早人は尋ねる。


「いただきます?」


 自身から力を奪うことだと当たってほしくない予想が当たる。


「やっぱりそうなるのかー。それをすれば魔法はきっちりと仕事するのか?」

「現状拮抗状態だから、高い確率で肯定」

「……補給の仕方は」

「あなたの指を口に含む」


 それを想像したのかキアターはよだれをたらしそうなとろけた表情になる。


「そ、それくらいなら。ジョーシュさん!」


 早人はジョーシュたちに聞こえるように、キアターから聞いたことを話す。


「やりますかっそれとも退きますかっ」


 ほんの少しだけ悩んだジョーシュはゴーサインを出す。ここに来たからには情報は持ち帰りたいのだ。


「……じゃあ、はい」


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