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町でのあれこれ4

 魔法塾は、その名が示すように魔法を教える場所だ。

 魔法を実際に使ってみせて、それを真似させて、使えるようになるまで指導する。使えるようになると効果的な使い道も教えてくれる。

 講師にもそれぞれに得意なもの苦手なものがあるため、そこらへんの事前調査は必須だ。苦手なものを習った場合、手本をイメージに使うため魔法の効果が下がる。塾側もそこら辺はきちんと考えているので、生徒側の希望にあった講師を紹介する。


「魔法塾ですかぁ、行こうとは思ってたのでお金を貯めますか」

「一つの魔法習得にかかるお金ってどれくらいか知ってる?」

「威力や効果によってばらばらだと聞いてます。たとえばファイアシュートという小さな火の玉を飛ばす魔法は、五千テルスでした」

「一日の生活費くらいか。もう少し上の威力だと一万テルスが目安かな」

「闘人の衣ってどう使うのか手本を見せてほしいんだけど、いいです?」


 塾に行ってみるかと考えている早人にジーファルが頼んでくる。


「いいよ」


 こんな感じだと強人の衣を発動させる。


「これは闘人の衣の一段上。割合でいうと、闘人の衣が能力値の二割上乗せ。強人の衣が五割上乗せ。魔力消費は闘人が百、強人が百五十」

「うわっ消費が大きい」

「まあね、でも魔力を使って戦わないんだろう? それならほとんど使っても大丈夫だろ」

「将来的にはわからないけど、たしかに今のところは魔力は使わないですねー。使い方教えてください」

「あいよ」


 口頭で伝え、強化というものがどのような感覚が理解してもらうためポテンシャルアップをジーファルに使う。


「ポテンシャルアップ。これでかかった。動いてみたらわかると思う」


 頷いたジーファルは少し離れた位置で、剣を振ったり、跳ねたり、走ったりしだす。

 それを見ながらノララが口を開く。


「その魔法を教えてもらいたいのですけど」

「これ消費が大きいからどうかと思う。感覚的に魔力を百を超すくらい使ってる感じが。魔法使いには向かないだろ?」

「たしかにその消費はちょっと」

「魔法塾で聞けばもっと消費の抑えられた強化魔法を教えてくれるかもしれないぞ。俺のこれ自分で作ったから、扱いやすさという点では評価は低いだろうし」

「そうします。ですが自分で作って、ああして形なっているんですからすごいことだと思います。私も自分で作ろうとしたことがありますけど、発動すらしなかったし」

「作るのそんなに難しいかな。発動しなかったことはあるけど、試行錯誤すれば発動までもっていくのは難しくないと思うな」

「難しいですよ」


 これはノララの意見が正しい。

 早人はニュースやアニメやゲームで、自然現象や魔法が使われているところを実際に目にしている。それがイメージ化を助けているのだ。

 例えば、早人が鳥の形をした炎を作ろうとした場合、ゲームで動くところを見たことがありイメージしやすいため、わりと簡単に作ることができる。

 ほかにはニュースで火炎旋風や落雷を見たことがあるので、それらの魔法化に苦労しない。

 だがこの世界の者たちはそういったものを目にする機会が少なく、自力で魔法を作るのは困難なのだ。

 それらに加えて多い魔力量で発動をゴリ押しできるということも理由だろう。


「それならやっぱり俺に聞くより魔法塾で丁寧に習った方がいいな」


 そう言って早人はノララからジーファルに視線を向ける。

 じっくりと感覚を確かめるように素振りを続けていた。

 ジーファルに声をかけて近くに来てもらう。


「なんです?」

「いや頼まれたことはこれで終わったら俺はもう行くよって言いたかったんだ」

「ありがとうございました。闘人の衣は多分使えるようになると思う。最後にちょっと聞きたいんだけど」

「なに?」

「どうして木刀を使ってるのかなと」

「ああ、単純にお金がなかったんだ。だから安くて壊れてもいい木刀を使ってる」

「背中の剣は使えないんですか?」


 ノララが聞く。


「これひびが入っててね、使うと壊れる。修理しても俺にはまだまだ分不相応だろうし」


 言いながら少しだけ剣を抜いて見せる。その剣の状態を見て、二人は納得した様子になる。

 これ以上聞きたいことはないということなので、二人とわかれて早人は町に帰る。

 二人はもう少し狩りと採取をやって帰るということだった。


 処理場で二羽の鶴を渡して、書類をもらい、斡旋所で現金化する。

 斡旋所を出て、昨日も使っていた宿に入り、今度は三日分の宿賃を支払って荷物を置き、また宿を出る。

 向かう先は魔法塾だ。移動用の魔法がないか聞いてみるつもりだ。

 いらっしゃいませと声をかけてくる従業員に近づく。


「こんにちは、今日はどういった魔法を希望しますか?」

「旅の移動が速くなる魔法とかありますかね?」

「少々お待ちください……足の筋力をあげて走るという魔法と追い風を吹かせて徒歩での移動を楽にするという魔法がありますね」

「なるほどー」


 どちらかを習うかどうしようかと考えて、聞いてみたいことができたので尋ねる。


「自分で作った魔法を見せて、それの修正依頼とかそういうのはできるんですか?」

「んー講師たちに聞いてみないことにはわかりません。仕事が終わって皆に聞いてみますので、今日のところは回答できませんね」

「では明日また来てみます」

「わかりました」


 魔法塾から出た早人は宿に戻り、夕食の時間まで木刀を振って過ごした。

 夕食後、久々に風呂に入ろうと銭湯に向かう。これまでは桶に魔法でお湯を出して、体をふき、頭を洗っていた。

 銭湯の前で狩りから帰ってきたジーファルと会う。


「そっちも今から風呂?」

「うん。あっ闘人の衣使えるようになった」


 話しながら中に入る。


「そりゃよかった。ノララは一緒じゃないんだな? 夏場にコートは暑いだろうし、風呂入ってさっぱりしたかろうに」

「ノララは自分の家に風呂があるから」

「もしかして金持ちの子?」

「袋屋の子だよ」

「儲かってて風呂くらい家にありそうだな。将来は袋屋?」

「いや袋屋に必要な魔法が使えなかったらしい」

「へー」


 そんなことを話し、体を洗って、広い湯舟に浸かる。

 やっぱり風呂はいいと心底リラックスできた早人。

 ジーファルが上がったあとも浸かり続け、一時間以上を銭湯で過ごす。

 翌日、午前中に三匹の鶴を狩って、さっさとお金に代えた早人は昼食をすませて、魔法塾に入る。

 昨日と同じ受付がいて、声をかけてきた。


「返答をもらってますよ」

「ども。なんて言ってました?」

「作った魔法による、というものでした。講師の得意分野なら受け付けるということですね。ちなみにどういった魔法の修正をしようと思っていました?」

「昨日求めた魔法ですね。移動を速くするっていう」

「それなら大丈夫ですねー。ローランドさんという老齢の魔法使いが担当になります。料金は一万テルスはいかないと思いますよ。ちょうど担当生徒がいないので、ローランドさんのところに行きましょう」


 受付に連れられて、事務室に向かう。

 そこで白湯を飲んでいた六十才ほどの男に受付が声をかける。


「ローランドさん、昨日話した魔法の修正をしたいという人を連れてきましたよ」

「おおー、来たんか。そこのソファーで話そうかの」

「では私は受付に戻ります」


 一礼し受付は出ていく。

 ソファーに座った早人は自己紹介して、早速魔法について話し始める。


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