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帝国変換  作者: ありあけ
第二次世界大戦編
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第4話 激闘、ヨーロッパ戦線

松型駆逐艦


基準排水量1500トン


機関・・・ガスタービン。


最大速力30ノット。


巡航速力18ノット。


武装・・・7、6センチ連装高角砲3基6門。40ミリ連装機銃6基12門。20ミリ単装機銃10基10門。24連装対潜迫撃砲(ヘッジホッグ)4基96門。


戦時量産型駆逐艦。ブロック工法で簡易的に造られている為、この世界の日本の国力ならば5日に1隻のペースで量産出来る。他の駆逐艦のように機関のシフト配置もされているが、装甲ははっきり言って無いに等しく、駆逐艦の砲撃に耐えられるかどうかも怪しい。

西暦1938年 10月16日 ソ連・ロシア国境 


 ソ連とロシアの国境線は丁度マゴチャ・ロージナ間を境にして引かれている。


 両者は長年に渡ってにらみ合いを続けており、度々小規模な戦闘も起こしていた。


 だが、西暦1938年9月27日、世界大戦のどさくさに紛れる形で遂にソ連は行動を起こす事になった。


 しかし、



「なんなんだ!全く歯が立たないぞ!!」



 ソ連軍の侵攻は初めから躓く形となっていた。


 その要因は幾つかある。


 まず侵攻を察知されていた事。


 これは大軍を動かす上では仕方の無い事であったが、その知らせによりロシア軍側の防衛の準備を整えさせる結果となってしまった。


 そして、2つ目はラパッロ条約が無かった為、ドイツの技術が入ってくる事もなく、軍備が史実よりも断然送れていた事だ。


 特に戦車などは史実97式中戦車程の強さしかなく、Tー34など影も形も無かった。


 対してロシア軍側は日本の支援によって史実一式中戦車程の戦車を配備していた。


 圧倒的という程では無かったが、それでもロシア軍の方が強いという事だけは確かだった。


 その他の兵備も小火器から重火器まで、史実よりも遅れていた為、それなりに近代化して準備を行っていたロシア軍に勝てる筈もなく、侵攻は早々に頓挫。


 今のところ国境線付近で一進一退の状況ではあったが、徐々にソ連側は押され始めている。


 しかし、何故、ソ連とロシアでは国力に断然の差が有るのにソ連側が押されているか?


 その原因はこのシベリアという立地にあった。


 ソ連は領土は広いものの、主要な工業地帯はウラルやそれ以西にしかない。


 加えて、そこで完成したものを運ぶ為にはシベリア鉄道を介して送らなければならない。


 何故なら、わざわざ戦車や歩兵などをシベリア鉄道を使わずに送るのは多大な物資の浪費となってしまうからだ。


 そういうわけでソ連が極東で戦う為には補給の制限がかなり掛かっているのだ。


 史実の戦争終盤、ソ連が日ソ不可侵条約を破棄して満州に攻め行った時、それがあっさりと成功したのは関東軍が南方戦線への引き抜きで弱体化していたり、戦争終盤だった為にろくな抵抗の期間が無かったからにすぎない。


 その2つがちゃんと整えられていれば、ソ連軍もただではすまなかっただろう。


 しかし、そんなソ連に対してロシア側はここ20年近くの間に極東に工業地帯を築いており、そこから造られる兵器は位置関係からすぐに届く。


 つまり、はっきり言うと、ソ連が有利なのは兵員の数のみであり、物量、兵器の質、補給能力などは全てロシアに負けていたと言える。


 更に日本軍も義勇軍という形で参加していた為、ますますソ連軍が不利になっていくだけだった。















◇西暦1938年 10月29日 ソ連 モスクワ


 ソ連の首都、モスクワのグレムリンではソ連の指導者達が会談を開いていた。


 だが、その様相は一様にして重苦しいといった感じだ。


 それもその筈、彼らの頂点に立つヨゼフ・スターリンという男は自分に逆らうものや功績を挙げられなかった者を容赦なく粛清する男なのだ。


 ビビるのも無理はなかった。



「同志諸君、私は今、極めて不愉快だ。それは何故か分かるかな?」



 鉄の男、スターリンは閣僚達にそのように問い掛ける。


 すると、閣僚の1人が冷や汗を掻きながら答えた。



「同志スターリン、極東方面には増援を送り、じわじわと相手の消耗を強い、下すのが宜しいかと」



「・・・」



 スターリンはその閣僚を一瞥した。


 閣僚は蛇に睨まれたように固まってしまい、心なしか体全体がガタガタと震えていた。


 そんな閣僚からスターリンは目を離し、話し始める。



「諸君、我がソビエトが今を持って各国に正式な政府と認められていない理由が分かるかね?」



「「「・・・」」」



 閣僚達は何も言わなかった。


 誰もが分かりきっている事であったからだ。



「では、言おう。それはこのソビエトの前時代主義者の末裔であるロシア帝国の存在だ」



 史実では曲がりなりにも正式な政府と認められたソ連であったが、この世界ではロシア帝国の存在がある為か、未だ各国から正式な政府として認められておらず、現代で言うところの武装勢力のような扱いだった。


 その為、国際的な立場も悪く、国際連盟にすら加入できていなかった。



「そして、機会は今しかない。だからこそ、我らは早急に前時代主義者達を滅ぼさねばならん」



 確かにロシア帝国が潰されれば、実質的に各国はソ連の存在を認めざるを得ないだろう。


 そう考えると、スターリンの言っている事も間違いではない。


 だが、ロシア帝国を潰すというのは実際にはかなり難しい。


 まず日本はソ連がお隣さんになる事は絶対に認めないだろうし、満州や朝鮮に利権を持つ英米もそれに同調するだろう。


 つまり、仮にロシア帝国を潰そうとしたとしても日米英三大海軍国から総スッカンを喰らう可能性が高く、結局はソ連に対する反発を招くだけなのだ。


 だが、これは平時の場合だ。


 今の段階ではロシア帝国が潰されれば認めざるを得ないというのもまた事実だった。


 何故なら、日本とイギリスは既にドイツ相手に戦争をしているのだから。


 ここでソ連まで敵に回した場合、負ける事は無いだろうが、勝つ可能性も限りなく低くなる事は確かだった。


 だからこそ、日本は義勇軍派遣に留め、ソ連・ロシア戦争への本格的参戦を拒んでいるのだ。



「帝国主義者どもが勝手に争っている間に、我らは前時代主義者を滅ぼす。これが我々に課せられた使命だ」



 スターリンはそう断言しつつ会議を終始、掌握していた。


 閣僚達はスターリンの言葉に反論できない。


 特に異論は無かったし、下手に反論しようものならば粛清されかねない。


 そして、この会議の場で極東への更なる増援が決定された。


 かくして、ソ連・ロシア戦争の拡大が決まったのである。















◇西暦1938年 11月13日 空母『洋龍』 艦橋


 夕季は艦橋職員と共に訓練の様子を見ていたのだが、危なっかしい様子に内心冷や汗を流していた。



「やはり、新入り搭乗員が多いせいか、見てて危なっかしいですな」



「・・・そうだな」



 『洋龍』副長、山岡知文中佐がそう言うと、夕季は思わず頷いた。


 それも無理はない。


 先程から見せられる光景は空母から飛び立つ時、機体が海に落ちそうになる光景や着艦に失敗して駆逐艦によってトンボ釣りをされている光景なのだから。


 仕方の無い事ではあった。


 元々、紅龍や洋龍に居た搭乗員は現在、軒並み母艦パイロットの養成に着いており、代わりにやって来たのは殆ど新入りの搭乗員だったのだから。 


 ちなみにその練度がどれだけ酷いかと言うと、史実日本で例えれば良くてマリアナ沖海戦時のパイロット、悪ければエンガノ岬沖海戦時のパイロット並みだった。


 勿論、猛訓練はしていたが、それで育ったパイロットも殆どが新鋭である瑞鳳型空母の方に配属されてしまい、二航戦は半ば練習部隊のようになっていたのだ。



(まあ、仕方あるまい。我々が動くわけには行かないのだからな)



 夕季の考えている通り、今、二航戦が欧州方面に行ってしまうと本土には正規空母が1隻も残らなくなってしまい、万が一アメリカと開戦になった場合、何も出来ずに敗北してしまう可能性が高い。


 まあ、それ以外にも理由はあったが、どういう理由にしても二航戦が欧州に遠征に出るわけには行かなかったのだ。


 しかし、かといって有力な部隊である二航戦を完全に遊ばせる訳にもいかない。


 したがって、二航戦は今のように練習部隊にならざるを得ず、こうした訓練の日々を過ごすしか無かった。



「・・・そう言えば、北の方ではまた戦いが激しくなっているそうですが、我々に出番は有りますかな?」



 山岡は北で起こっているロシアとソ連の戦争の事を話す。


 この時期、1度は押していたロシア軍だったが、ソ連軍が更なる増援を出してきた為、再び一進一退の攻防が続いていた。 


 もっとも、ソ連軍の方が被害が圧倒的に多かったが。



「それは無いだろう。ロシアがよっぽど追い詰められでもしない限りは」



 夕季の言った通り、ソ連・ロシア戦争は内陸部で起きている戦争だ。


 よって、第二航空戦隊の活躍の可能性はロシア側がよっぽど追い詰められでもしない限りは無いと言っても良い。


 艦載機を陸に揚げれば話は別だろうが、史実でも分かる通り、艦載機部隊は空母に載っていてこそ真価を発揮する。


 なので、夕季はそんな母艦パイロット達を陸に揚げるつもりは更々無かった。


 それに空軍からしてみても、自分達の役目を奪うような行為は容認しないだろう。



「あと2年もすれば隼鷹型が竣工する。そうなったら、我々も欧州に出るかもしれないな」



 実際、隼鷹型が竣工すれば、第二航空戦隊は『本土に残っている唯一の正規空母部隊』という枷が外れるので、欧州方面に行く可能性は必然的に高くなる。



「2年、ですか。長いですね」



「・・・」



 夕季はそれに答えず、再び訓練の方に目を移した。














◇西暦1938年 11月24日 地中海 第一航空戦隊 旗艦『蒼龍』


 北海やその他の大西洋各地の海域で連合軍の船とドイツ軍の潜水艦が激闘を繰り広げていた頃、第一航空戦隊は地中海に居た。



「塚原少将、電報が入りました」



「読め」



「はっ。『発、連合軍司令部。宛、地中海連合艦隊。『ジャッジメント』作戦を発動せよ』」



「うむ」



 通信兵からの報告に第一航空戦隊司令官塚原二十三少将は一人頷いた。


 ちなみに『ジャッジメント』作戦とは、史実の1940年にイギリス海軍が行ったイタリア軍港タラントの奇襲攻撃である。


 この世界でも同様の作戦内容と名前がされており、第一航空戦隊はそのタラント空襲を行うべく北上していた。



「しかし、夜間攻撃とは、些か難しいですな」



 幕僚の1人がそう言うと、塚原はこう言った。



「確かに難しいだろう。だが、昼であれば敵の哨戒機に察知される可能性が高い。イタリア人が寝惚けている時がチャンスなのだ」



 塚原はそう言ったものの、実のところこの作戦には連合軍の焦りも感じられていた。


 西暦1938年現在のアフリカ戦線は概ね史実通りの展開を見せていた。


 ドイツは依然としてノルウェー攻略を諦めておらず、4月半ばに損害を受けていたドッグの修理を急速に行い、Uボートの再整備を急速に始めていた。


 これにより、海上封鎖を行っていた連合軍に圧力が掛けられ始めていた。


 まずイギリスの戦艦はロイヤル・ソブリンとロドニーが沈没、レパルスが大破していた。


 更に空母に至ってはわざわざ東洋艦隊から引っ張ってきたハーミーズが撃沈されていた。


 その他の巡洋艦と駆逐艦にも多大な被害が出ていて、海上封鎖はかなり窮屈になりつつあった。


 そして、第一次遣欧艦隊は主力艦こそなんとか無事であったが、空母『祥鳳』、巡洋艦『筑摩』以下駆逐艦7隻が沈んでしまっていた。


 勿論、Uボート部隊も反撃を受けていて、かなりの数のUボートが血祭りに挙げられていた。


 また、こういった戦闘艦を集中的に狙っている為、海上輸送に関してはそれほど被害を受けておらず、英連邦諸国からの英本土への輸送もスムーズに進んでいた。


 お蔭でイギリスは息を吹き返し始め、時折、ドイツ本土への爆撃も行っている始末だった。


 大西洋ではそんな戦いになっていた頃、8月に地中海でも動きがあった。


 クレタ島沖にて、日英艦隊とイタリア艦隊が衝突したのだ。


 これは後にクレタ島沖海戦と呼ばれるようになるが、戦果と損害だけを表すとこんな感じになる。


・損害


日本・・・戦艦『土佐』中破。巡洋艦『利根』中破。駆逐艦3隻沈没、2隻大破。


イギリス・・・戦艦『リヴェンジ』中破。駆逐艦5隻沈没。


イタリア・・・戦艦『コンテ・デ・カブール』沈没、『ジュリオ・チェーザレ』沈没。巡洋艦2隻沈没。駆逐艦10隻沈没。


 以上のように海戦そのものは日英艦隊の勝利に終わったが、アレキサンドリアに停泊していた時、イタリアの特殊潜行艇の攻撃を受け、日本は戦艦『土佐』が大破、着底。


 巡洋艦『利根』が船体を真っ二つに折られて沈没。


 これにて第一巡洋戦隊は全滅した。 


 イギリス戦艦は『クイーン・エリザベス』が大破、着底していた。


 結果的に双方大被害を受ける事になり、クレタ沖海戦は実質イーブンという形になっていた。


 そして、今日、残ったイタリア戦艦2隻が停泊するタラントを夜間襲撃する為、ジャッジメント作戦が発動されようとしていた。



「よし!攻撃隊、発艦始め!!」



 かくして、タラントは第一航空戦隊の空襲を受ける事になる。


 この空襲によってイタリアの残存戦艦である『カイオ・ドゥイリオ』、『アンドレア・ドーリア』は撃沈され、枢軸軍の戦艦は0となるのである。


 そして、この空襲は後に世界に航空主兵主義の正しさを証明する兆候と呼ばれるようになるのであった。

96式艦上戦闘機


最大速力560キロ。


航続距離2000キロ。


武装・・・20ミリ機銃2門。12、7ミリ機銃2門。


備考


史実の零戦52型に近い機体(と言うより、それを元に設計を立てた)。航続距離は多少短くなっているが、その分、防御力が多少なりとも上がっている。

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