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帝国変換  作者: ありあけ
戦後編
33/42

第29話 中国戦争 その2

西暦1955年8月15日時点での大日本帝国海軍在籍艦。


空母・・・神龍型(神龍、白龍)、大鳳型2隻(大鳳、白鳳)、翔鶴型1隻(瑞鶴)、蒼龍型1隻(紅龍)、雲龍型7隻(雲龍、葛城、笠置、阿蘇、生駒、六甲、剣龍)。


戦艦・・・大和型2隻(大和、武蔵)、加賀型1隻(加賀)、長門型2隻(長門、陸奥)、金剛型3隻(金剛、比叡、榛名)、扶桑型1隻(山城)。


巡洋艦・・・富士型(富士、浅間)、穂高型(穂高、新高)、伊吹型4隻(伊吹、鞍馬、鈴谷、熊野)、高雄型4隻(高雄、愛宕、麻耶、鳥海)、妙高型1隻(羽黒)、利根型1隻(最上)、青葉型1隻(青葉)。


駆逐艦・・・朝潮型5隻(残りは建造中)、夕雲型20隻、陽炎型15隻、吹雪型19隻、秋月型9隻、竹型27隻。


潜水艦・・・伊400型潜水艦6隻、伊300型潜水艦25隻、伊200型潜水艦22隻。

西暦1961年 7月27日 ロシア ハバロフスク


 ハバロフスク。


 ロシア帝国の現在の首都であるが、今ここでは満州“占領”についての話し合いを続けていた。



「兵力30万人に更に後詰めの部隊が20万人の合計50万人、か。まあ、中国相手には問題ないだろうな」



 ロシア帝国宰相ロコンスキーはそう言った。



「と言いますと?」



 閣僚の1人がそう尋ねた。



「日本だよ。まさか参戦してくる事は無いだろうが、何か文句を言ってくる可能性もある。なんせ、50万人もの兵士だからな」



 ロコンスキー懸念は当たり前だった。


 むしろ、50万人もの兵を自国の近くに置いて、文句を言ってこなかったら、その方が可笑しい。



「もし仮に文句を言ってきたとしても、言い返しますよ。一応、友好国ですからね。多少の融通は効くでしょう」



「そうだろうな。・・・ところで、日本と言えば、昨日から何か騒がしいと聞いたが?」



 ロコンスキーは思い出したかのように言う。


 それに対して、1人の閣僚が答えた。



「何やら、オキナワという日本の一地域で日本自慢の戦艦が沈められたみたいですね。確か名前は“ムツ”と言いましたか」



 これは事実だった。


 先日、すなわち、7月26日。


 日本の戦艦『陸奥』が、沖縄県中城湾にて沈没していたのだ。


 この影響で、日本海軍は大騒ぎになっており、隣国のロシアでも陸奥撃沈の情報は簡単に手に入れられた。



「流石に撃沈の詳細は分かりませんでした。破壊工作なのか、それとも事故なのか・・・」



 流石にロシアの情報網でも、僅か1日では撃沈事件の詳細まで掴む事は出来なかった。


 もっとも、遠くないうちに知る事になるが。



「ふむ。仮に今回の事が事故ではなく、破壊工作・・・そうだな。例えば中国などが行っていた場合、日本はどう動くと思う?」



 ロコンスキーはそれが気掛かりだった。


 仮にこれが中国の仕業で撃沈された場合、日本が大陸に何かしらの報復を行う事は目に見えている。


 そうなると、ロシアの行動にも影響が出る可能性があった。



「報復には出るでしょう。しかし、満州方面に介入してくる可能性は低いかと」



「根拠は?」



「これまでの日本の行動を分析するに、日本は大陸奥深くに足を踏み入れる事を嫌う習性に有ります。その事を考えると、沿岸部を占領しての海上封鎖に留まるでしょう」



 実際、そんな事をやられたら、中華民国は致命的な打撃を受ける。


 なんせ、東の出入り口を塞がれれば、西は反中のチベットやウイグル、南は親日の東南アジア、北はロシアと完全に周囲を囲まれるからだ。


 そうなったら、中国は鎖国も同然となり、経済レベルは更に後退するだろう。



「つまり、我々の行動には支障が無いと?」



「はい、その通りになります」



「ふむ。まあ、今の段階では事故か事件かも分からんし、今暫くは様子を見よう」



 かくして、ロシアの方針は決定した。















◇西暦1961年 8月5日 大日本帝国 帝都


 陸奥撃沈によって騒がしかった日本国内であったが、日が経つと徐々に落ち着きを見せ始めた。


 そして、陸奥撃沈について調査を進めようとしていた矢先に、中華民国からある発表があった。


 曰く、『我が中華民国の勇敢なる戦士は、日本の戦艦陸奥を撃沈した!!』という内容だ。


 破壊工作が行われた事は既に分かっていたが、それを調査しようとした矢先に、まさかやった方から宣伝に来るとは思わず、日本は再び混乱に陥っていた。


 そして、それは転移メンバーも例外では無かった。



「中華民国は何を考えているんだ?」



「さあ」



 転移メンバーにも、流石に中国が何を考えているかは分からなかった。


 日本人からしてみれば、こんなところで自分を犯人だと名乗ったところで、何の得にもならないからである。


 だが、どういう理由が有るにせよ、陸奥を撃沈したのが自分達だと言っている以上、報復は行わなければならない。



「まずは陸奥の賠償と巻き添えを食った被害者への補償の要求だな。これは2、3回行って、無視した場合・・・」



「大陸への侵攻ですか?」



「そうだ。・・・まあ、とは言っても、沿岸部への侵攻だがな」



 曲がりなりにも史実の日中戦争という例がある以上、大陸奥深くへの侵攻は避けたかった。


 もっとも、場合によっては奥深くに侵攻する事も避けられないかもしれなかったが、避けたいのは確かである。



「しかし、中国の沿岸部は無駄に広いですからね。これらを上手く占領など出来ますか?」



 青木が疑問を言う。


 そう、実を言うと、そこも問題だった。


 地図を見れば分かるが、中国の沿岸部はかなり広いのだ。


 これだけの広さの領土を占領するとなると、日本にとってもそれなりの負担となる。


 それも場合によっては長期間保持しなければならないのだから、尚更だった。



「そこはやるしか無いだろう。それに長期戦になれば先に根を上げるのは向こうだ」



 前述したように、中国は周りを親日や反中国家で囲まれている。


 そして、唯一の出口と言って良い沿岸部を日本に押さえられた場合、中国は経済面で多大な打撃を受ける事になる。


 

「ですよねぇ。何度考え直してもそうなるんですが、そうなると尚更中国が何を考えているかさっぱり分かりませんね」



 改めて考えると、あまりにも日本有利な展開。


 むしろ、逆に中国の勝てる要素が全く見当たらない程だ。


 何か策が有るのか?と勘繰っても可笑しくは無かった。



「もしかすると、アメリカに何か動きがあるかもしれませんね」



 岡辺がアメリカの陰謀説を主張した。


 それは一理ある理屈だった。


 アメリカは先の第三次世界大戦以来の傷を完全に癒しきってはいなかった。


 いや、それどころか、史実の戦前日本の如く、極端な軍備拡張に乗り出しており、日本の警戒を強める事になっていた。



「マッカーサーの遺産は大きかったですからね」



 青木がそう言った。


 マッカーサーの遺産。


 それは第三次世界大戦の終結後に行われた西暦1948年のアメリカ大統領選挙から始まった。


 史実ではトルーマンが2選目を果たした選挙であったが、この世界ではマッカーサーが出馬し、なんと当選してしまったのだ。


 それ以来、マッカーサーは巧みな演説で各国への友好を表面する傍らに、軍事強化を訴えていた。


 これを聞けば、大概の人間、特に外国の人間はその矛盾に気づくだろう。


 友好を唱えるなら、何故それと正反対の方針である軍拡に邁進するのか、と。


 だが、アメリカ国民にとってはこれは意外にも受けた。


 と言うより、彼らアメリカ国民は戦争で徐々に自分達の国が衰退していくのを目の当たりにして、ある危機感を抱いていたのだ。


 このままでは自分達の正義はおろか、いずれ生活まで失ってしまうのではないか、と。


 一般的にそういった危機感を持つ人間は力に頼る事が多く、その力とはやはり軍事力だ。


 よって、アメリカ国民が軍拡を唱えるマッカーサーの言葉に魅了されたのも当然と言えば当然と言えた。


 更に追い風のようにアメリカの軍需産業もこの流れに乗った。


 しかし、対称的にアメリカの民需産業は肩身の狭い思いをしており、中には日本やドイツの誘致を受けて会社を海外に引っ越す例もポツポツとだが、出始めていた。


 その結果、アメリカ国民の生活は更に苦しくなっていた。


 そして、政府はその不満を誤魔化す為に更に軍拡に傾倒していた。


 すなわち、アメリカは『軍拡をする→民需産業が海外に移転する→国民の生活が苦しくなる→軍拡をする』という負のスパイラルに陥っていたのである。


 そして、そんなスパイラルがマッカーサーの代以降も続き、今に至っていた。



「なるほど。確かにあり得るかもしれないな。だが、アメリカとは限らないだろう」



「ドイツ、か」



 そう、ドイツもまた、可能性のある国の1つだった。


 ドイツは既にヒトラーが表舞台から去ってはいたが、ナチスはいまだに健在だった。


 流石に民族浄化こそ、占領地での統治に影響するのでやってはいなかったが、やはりナチスの独裁という点ではなんら変わりは無かった。



「しかし、ナチスは青息吐息の状態ですよ?正直、今でも生き長らえているのはあくまで冷戦の影響とアメリカの企業を誘致する事で、民生面が上手く行っているからに過ぎません」



 岡辺の言っている事は事実だった。


 長期政権となっているナチスだったが、流石に独裁という状況には徐々に市民の間に不満が広がり始めていた。


 やはり、資本主義の中で独裁政権という体制を長期間続けるというのは無理が有りすぎたのだ。


 更にヒトラーのようなカリスマ性のある指導者が居なくなったというのも大きかった。


 カリスマ性のある指導者が居なくなった事で、同じナチス党内でも内部分裂が起き掛けていたのだ。


 それでもナチスが崩壊しないのは、やはり冷戦の影響とアメリカからの企業誘致によって民生面が上手く行き、ドイツ国民の生活が多少なりとも安定しているから、という理由に過ぎなかった。


 だが、このまま行けば、この3つに別れた冷戦の環境下で、一番真っ先に崩壊しかねなかった。



「しかし、苦しいが故の中国市場進出。そして、その過程での中華民国への手助けという線は確かに有りそうだな。・・・史実日本も同じような事をやったし」


 

 そう、史実で日本が大陸に進出したのは主に経済的に苦しくなっていたから、という理由が大きかった。


 いや、経済的に行き詰まっていた、という言い方が正しいだろう。


 なんせ、昭和恐慌や世界恐慌によって大企業が幅を効かせており、中小企業が成長しづらい環境となってしまい、結果的に経済的な苦境に陥る者が多くなってしまったのだから。


 それを打開する為の満州事変であり、大陸進出だったのだ。


 まあ、その結果、日本が疲弊したのは確かだろう。


 なんせ、満州事変や大陸進出については後の歴史家で評価が別れているとは言え、結果的にそれによって日本の国力は吸い取られてしまったのだから。



「となると、史実のキューバ危機のようなものが中国で起こりかねないという事か?何の冗談だよ」



 春川が吐き捨てるように言った。


 確かに中国と日本の距離は近く、キューバ危機擬きが起こってもなんら不思議ではなかった。


 となると、早めに中国との戦いに決着を着ける必要がある。



「中国と言えば、香港の部隊はどうします?」



 岡辺が思い出したかのように聞いた。


 香港は第一次太平洋戦争終結の際に、日本のものになった権益であったが、今のところ中華民国との交渉の窓口としてしか機能していなかった。


 しかし、事実上、日本と中国の貿易窓口となっていたので、それなりの規模の経済都市にはなっていたが、守備隊は本当に最低限のものしか置いておらず、1個中隊(200人)だけであった。



「そりゃあ。居留民共々引き揚げるしかないだろう。こうなった以上、あそこも危ないんだからな」



 夕季はそう言って居留民を引き揚げる事を提案する。


 史実と今回の歴史を見るに、反日感情が高まっている中国に日本人の居留民をそのままにしておくのは危険だと考えたからだ。



「そうでしょうね。まあ、幸いと言って良いべきか、居留民は殆ど居ませんから、引き揚げも1日で済む事ですね」



 香港は確かにそれなりの経済都市ではあったが、日本人が多いかと言えばそうでは無かった。


 どちらかと言えば中国人の労働者などが多く、日本人の数は少なかった。


 これは本土に労働力が必要だったのと、中国人労働者の方が賃金が安く雇えた事から、自然にこうなったのだ。



「じゃあ、居留民引き揚げと中国への警告はこれで決定で良いか?」



「「「「異議無し」」」」



 かくして、転移メンバーの方針は決定した。















◇西暦1961年 8月25日 中国 北京



「これはどういう事だ!!」



 蒋介石は閣僚会議の場で怒鳴り散らしていた。


 2週間程前の8月10日。


 準備の整った中華民国軍は遂に満州に攻め込んだ。


 しかし、その翌日にはロシアが送った援軍が満州入りし、既に第一陣が中華民国軍と交戦に入っていた。


 更に時を合わせるかのように、日本も中華民国の沿岸部へと向けて侵攻を開始していた。


 日本陸軍の水陸機動部隊が海南島や大陸沿岸部各都市へと侵攻し、更に日本が撤退した事で中華民国が無血占領した香港の奪回も行われており、既に香港は日本の手に落ちていた。



「日本の侵攻を許すとは・・・海軍は何をしていた!!」



 蒋介石はそう怒鳴るが、海軍長官は恐縮そうに答える。



「か、閣下。既に海軍の潜水艦部隊は先のムツ撃沈の際に破壊工作の陽動として活動し、全滅。水上艦艇も日本が侵攻してきてから僅か3日で壊滅致しました。更に補充の目処も立っておらず、海軍は事実上、消滅しています」



 事実だった。


 中華民国海軍の潜水艦部隊は先のムツ撃沈事件の際に、ほぼ全ての潜水艦が日本の哨戒機などによって撃沈されており、潜水艦部隊は日本が侵攻してくる前に壊滅的打撃を受けていた。


 もっとも、ムツ撃沈の役目は果たせたので、そういう意味では中華民国の戦略的勝利だろうが。


 そして、水上艦艇に至っては更に悲惨だった。


 レーダーを積んでいる艦艇というのはほんの僅かであり、残りの艦艇はレーダーすら積んでおらず、いまだに目測射撃なのが現状だった。


 その為、ジェット機が主流の日本軍機に勝てる筈もなく、中華民国海軍はあっさりと崩壊し、全滅していた。



「全滅したのは分かっておる!本当に海軍は役立たずだな!!」



「・・・」



 海軍長官はそれを聞いて不快に思ったが、言葉は返さなかった。


 実際、何の役にも立たずに崩壊したのは確かだからだ。



「ええい!陸軍長官、君からはどうかね!!まさか日本とロシアに勝てないとでも!!」



 蒋介石は今度は陸軍長官に当たり散らした。



「・・・恐れながら、閣下。日本は人海戦術にて如何様にも出来ますが、ロシアに対しては問題が残ります」



 これも事実だった。


 確かに日本軍が占領したのは沿岸部の一部だし、奪回は可能と見込まれてはいたが、ロシアに関しては事情が違う。


 此方は既に数十万もの軍勢が次々と満州に入っている為、追い払うのは最早不可能に近かった。



「つまり、陸軍も役立たずという事かね!!」



 蒋介石は激怒していた。


 彼のやった軍事行動が何もかも上手く行っていないからだ。


 もっとも、普通に考えればすぐに上手くいかないと分かる行動ではあったのだが、蒋介石は20年前と違い、冷静な思考能力を既に失っていた。


 かくして、中華民国が何の対策も取れないまま、中国戦争は早くも終盤に向かって進んでいた。

西暦1961年8月15日時点での大日本帝国海軍在籍艦。


空母・・・神鳳型(神鳳、海鳳)、神龍型(神龍、白龍)、大鳳型2隻(大鳳、白鳳)、翔鶴型1隻(瑞鶴)、蒼龍型1隻(紅龍)、雲龍型7隻(雲龍、葛城、笠置、阿蘇、生駒、六甲、剣龍)。


戦艦・・・大和型2隻(大和、武蔵)、加賀型1隻(加賀)、長門型1隻(長門)、金剛型3隻(金剛、比叡、榛名)、扶桑型1隻(山城)。


巡洋艦・・・衣笠型(衣笠、古鷹)富士型(富士、浅間)、穂高型(穂高、新高)、伊吹型4隻(伊吹、鞍馬、鈴谷、熊野)、高雄型4隻(高雄、愛宕、麻耶、鳥海)、妙高型1隻(羽黒)。


駆逐艦・・・白露型7隻(残りは建造中)、朝潮型10隻、夕雲型20隻、陽炎型15隻、吹雪型19隻、秋月型9隻、竹型12隻。


潜水艦・・・伊500型潜水艦1隻、伊400型潜水艦6隻、伊100型潜水艦3隻、伊300型潜水艦32隻(改含む)、伊200型潜水艦10隻。

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