第25話 ハワイ陥落
雲龍型航空母艦
基準排水量1万5200トン。
機関・・・ガスタービン。
最大速力34ノット。
搭載機54機。
武装・・・10センチ連装高角砲4基8門。40ミリ連装機銃8基16門。20ミリ単装機銃20基20門。
備考
改瑞鳳型航空母艦。史実の雲龍型よりも小さいが、量産に向いた作りとなっている。
西暦1947年 2月8日 深夜 ハワイ・オアフ島沖 第7艦隊 旗艦『瑞鶴』 艦橋
新設された第7艦隊の旗艦『瑞鶴』の艦橋で、夕季はハワイ・オアフ島の方角を見つめていた。
(そろそろミッドウェーから発進した攻撃隊がハワイを攻撃している頃だな)
夕季は手元の腕時計を見ながらそう思った。
ハワイ侵攻に先立ち、夕季率いる第7艦隊はハワイを攻撃する為、北の方角からハワイに接近していた。
そして、作戦では同士討ちにならないように、ミッドウェーから発進した攻撃隊の攻撃が知らされた直後に、第7艦隊からも攻撃隊を発進させる予定であった。
時間差で同士討ちを防ぎ、尚且つ敵に休む暇を与えないという二段構えの策である。
(まあ、ハワイにはろくな艦艇は残っていないだろうがな)
夕季はそう思っていたが、実際にその通りだった。
ハワイの真珠湾には空母が修理中(本来は西海岸で修理だったが、トロツキーの蜂起によって脱出の為に無理矢理ハワイに持ってこられた)のアメリカ級1隻とエセックス級空母が2隻、西海岸から避難してきたエセックス級空母2隻(うち、エセックス級1隻は途中で工事を切り上げられた為、完全には完成されていない)しか居らず、戦艦はドッグに入っている艦こそアイオワ級1隻しか居なかったが、動ける戦艦はアイオワ級が1隻と旧式戦艦が2隻しか居なかった。
そして、これが全て無くなった場合、太平洋艦隊は文字通り消滅を意味する事となる。
なんせ、主力艦の全てがこの真珠湾に居る状況なのだから。
(一網打尽のチャンスではあるが、そう簡単には行かないよな)
実は先程、一機の哨戒機がこちらにやって来た為、第7艦隊の艦載機が撃墜していたが、当然の事ながら哨戒機を撃墜してしまった以上、この艦隊の存在がバレるのも時間の問題だ。
ミッドウェーの攻撃もこの第7艦隊の攻撃も、必然的に強襲となるだろう。
もしかしたら、今頃異変を察して、動ける艦は真珠湾を脱出しようとしているかもしれない。
(まあ、どっち道手遅れだが)
既にミッドウェーの攻撃隊は攻撃に入る。
その数、50機以上。
ハワイのアメリカ軍も反撃に入るだろうが、現代ならいざ知らず、この時代の装備では幾ら夜戦装備を整えても、夜間に全てを撃墜するのは不可能だ。
夕季がそう考えていると、通信兵から報告が入る。
「司令官、ミッドウェーのハワイ攻撃隊より入電。『我、攻撃を開始ス』」
「よし。攻撃隊、発艦!!」
「はっ」
通信兵の言葉を聞いた夕季の命令により、瑞鶴を始めとした第7艦隊の全空母は攻撃隊を発艦させた。
そして、これはハワイ攻略戦に第7艦隊が参戦した瞬間でもあった。
◇西暦1947年 2月24日 アメリカ合衆国 ハワイ
「急げ!急げ!!」
「日本軍はすぐにやって来るぞ!!」
2月9日に起きたハワイ沖海戦にて、アメリカは敗北した。
その前日の2月8日に、ミッドウェーから飛び立ったハワイ攻撃隊の一部はハワイ航空隊の防空網を潜り抜けると、ドッグに向かって爆撃を開始した。
これにより、ドッグに居た艦艇は破壊され、完全に吹っ飛ぶ事は無かったものの、ドッグそのものと艦艇を合わせると、修理に半年から1年は掛かりそうな状況になってしまった。
更に第7艦隊の攻撃によりオアフ島に存在する滑走路の殆どが大破して米航空隊は大打撃を受けた。
そして、その翌日になんとか脱出した艦艇は第7艦隊と交戦したものの、やはりほぼ戦力になっていない状態が祟ったのか、ほぼ一方的に打ちのめされていた。
しかし、それでも第7艦隊の空母天城を撃沈し、雲龍を中破させたものの、戦果はそこで打ち止めだった。
エセックス級空母は2隻とも撃沈され、戦艦も旧式戦艦2隻が沈没した。
更にアイオワ級1隻も中破してしまい、第7艦隊に付随していた戦艦部隊が止めを差しに行ったが、これは失策だった。
確かにアイオワ級戦艦に止めを差して撃沈したものの、赤城が大破してしまい、一矢報いられる形となってしまったからだ。
更に丁度タイミング悪くハワイから発進した米航空隊の残存機による攻撃が始まり、第7艦隊は応戦したものの、大破していた赤城に攻撃が集中し、赤城は沈没してしまった。
他にも戦艦加賀が小破、山城が中破して、第7艦隊はそれなりの損害を受けた。
しかし、遂にアメリカ太平洋艦隊は壊滅し、遂に日本は太平洋の制海権を握る事となったのである。
そして、2月18日、日本陸軍2個師団(1万6500人)がハワイへと上陸した。
対して、迎え撃つのは米陸軍3個師団(2万4500人)と最近編成されたばかりの海兵隊1個師団(1万1000人)。
よって、上陸当初こそ米軍は日本軍に対して優位を保てていたものの、第7艦隊の航空支援によって思うように動けず、上陸した日本軍を海岸に釘付けにしたものの、それが限界だった。
更に、23日に日本軍が更に3個師団(2万8000人)を上陸させると、状況は一変し、日本軍優位となった。
そして、太平洋艦隊司令部のあるこのホノルルは、もうすぐ日本軍の手に落ちようとしていたのである。
「機密文書は?」
「全て破棄しました!!」
ニミッツが部下に尋ねると、その部下はそう答えた。
「よし。脱出する。各員にも伝えろ」
「イエス・サー」
部下はそう言って、ニミッツの命令を伝える為に駆け出した。
そして、この2日後、ホノルルは日本軍によって完全に占領される事となる。
◇西暦1947年 3月11日 大日本帝国 帝都
夕季がハワイに行っていた為、転移メンバーの会合は4人で行われていた。
「ハワイが遂に落ちましたか」
これより3日前の3月8日。
ハワイ・オアフ島は遂に陥落した。
他の島についてはまだだったが、ハワイ諸島の軍事基地の中枢が落ちた以上、陥落も時間の問題だと目されている。
転移メンバーが話し合っていたのは次期作戦についてだった。
「やはり、アラスカか?」
春川が発言する。
そう、アラスカも候補地の1つだった。
ソロモン・ニューギニア作戦が終了し、オーストラリアとの講和によって南東方面作戦の縮小が行われ、第4艦隊は既に本土に戻っていた。
更にハワイ作戦がほぼ終了し、太平洋艦隊が消滅した今、畳み掛ける意味でもアラスカを攻略するべきとの考えが転移メンバーの中に有った。
セイロン島奪回という手もあるが、未だコロンボには敵の有力な艦隊が居座っており、此方の攻略はリスクが高い。
「それしか無いでしょう。せめて弾道弾が使い物になれば話は別なんですが・・・」
青木が言う。
そう、アラスカを攻略するのは戦略的な意味合いもあったが、弾道弾が使えないという事も大きかった。
試製五式弾道弾は射程が1000キロ以上に達していたが、ハワイから撃ったとしてもハワイ・西海岸間は3800キロもあるので、届かない。
最近出来た改良型を投入しても、やはり射程距離が2000キロにも満たない為、届かず、転移メンバーはアメリカに対する戦略弾道弾運用を半ば断念していた。
既に制式採用されても可笑しくないレベルであるのに、未だに試製五式弾道弾及び試製五式弾道弾改が“試製”に留まっているのもそれが原因である。
「しかし、アラスカをまたやるとなると、相当な兵力が必要だな」
「いえ、そうでもないようですよ」
有村の言葉に青木は被せるように言った。
「どういう事だ?」
「どうやら、米軍は本土の内乱を早々に沈める為にアラスカから部隊を本土に回しているようです。そのせいで、アラスカの防備は貧弱になっているようです」
これは事実だった。
日本軍撤退後、当然アメリカは日本軍が奪回に来ることも想定して、この地に大規模な守備隊を置いていた訳だったが、本国で起きた内乱により、それどころでは無くなっていた。
よって、アメリカは徐々にアラスカから撤退しつつあったのだ。
更に人口も減っていた。
日本軍が初めて上陸した時には、アラスカの人口は7万人程であったが、今では5万人程になっていた。
これはアラスカという地が日米戦での最前線に位置する関係上、仕方のない事であったが、これは日本軍から見ればチャンスでしかない。
なんせ、住民が減っているという事は占領した際、統治する手間が少しでも省けるのだから。
「問題は兵力や攻め時ですが、後者に関してはこれから春になる為、問題ないと思われます。前者については少しきついですね」
岡辺がそう言う。
そう、問題は兵力だった。
日本の戦線は史実の大日本帝国より拡大している為、それを維持する兵力もかなりのものだ。
そして、アラスカは人口が日本の平均的な一都市よりも少ないとは言え、日本の4倍以上の面積を持っているので、それなりの兵力を連れていく必要がある。
それだけの兵力をどうやって調達するのか?
それが悩みどころだった。
「まあ、なんとかかき集めよう。こんなチャンスは2度と無いだろうからな」
アメリカ本土は内乱中、太平洋艦隊壊滅、ハワイ陥落。
確かに有村の言った通り、こんなチャンスは2度と無いだろう。
「では、次の進撃地点はアラスカという事で」
かくして、日本の次期作戦の地点は決定された。
◇西暦1947年 3月25日 アメリカ合衆国 ワシントンD・C
第二次南北戦争はアメリカ合衆国有利に進んでいた。
これは考えてみれば当然の話で、今も昔も工業地帯は主に北部に存在するのだ。
南部にもないわけでは無かったが、やはり北部には負けている。
その為、物量の点において、アメリカ連合国は不利となっており、更に言えば人材の不足も大きく影響していた。
これは急な独立であったという理由もあったが、やはり一番の原因は連邦軍の主な将官に、アメリカ連合国は正統な政府ではなく、日本で言えば賊軍であるという認識が大きかったからだった。
そして、このまま行けばあと数ヶ月で南部を討伐できたところだったのだが、ある報告によって事態は急変する。
「なに!?メキシコが北上しただと!!」
ウィルキーはアイゼンハワーからの報告を聞いて驚いていた。
メキシコは常日頃から反米派の勢力と親米派の勢力が入り雑じっている国であり、ある意味でアメリカの影響を一番受けている国である。
勿論、親米派の勢力であっても一筋縄ではない。
むしろ、アメリカが強い為に味方している、という者が殆どだ。
そして、逆に言えばそれはアメリカが弱ってしまえば、いつでも鞍替えする者が多いという事でもある。
今回起きたメキシコ軍の北上の意図はアメリカの混乱のどさくさに紛れて、南部の領土、特にテキサスを掠め取ってしまおうという意図だった。
ほぼ火事場泥棒ではあったのだが、メキシコからしてみればテキサスは元々自分達のものであり、それをアメリカが強引に取り上げた、という認識があったので、この奪還は正当な行為であったのだ。
「はい、既に南部では交戦となっているらしく、このままでは一部の領土が掠め取られるかもしれません」
「おのれ!!」
ウィルキーは腕を机に叩き付けた。
ウィルキー、いや、アメリカからしてみれば、メキシコ軍は雑魚同然であったのだが、今の状況下では少し話が違う。
北部有利とは言え、アメリカ合衆国も完全に無傷という訳ではなく、それなりの損害は負っていたのだ。
それに加えて、対日戦、カリフォルニアの監視など、とてもではないがメキシコの相手をしている余裕は無かった。
だが、メキシコを無視して南部を一部でも取られたとあらば、他国からアメリカは弱体化していると見られ、外交上、致命的な事態になる可能性が高い。
「急いで南部討伐と同時にメキシコ討伐の軍を編成してくれ」
「!大統領、それは無理です!!せめて、日本と講和してください!!それならば、苦労も少ない」
現状、アメリカが一番苦労しているのは、間違いなく対日戦だ。
既にハワイは陥落。
アメリカ本土上陸一歩手前という情勢では、多少譲歩してでも日本と講和しない限り、アメリカは致命的な打撃を受ける可能性がある。
これを聞いたウィルキーは、何か思うところがあったようで、暫し考えた。
「・・・場合によってはそれを考慮しなければならないかもしれんな。だが、当分はメキシコと南部だ。これをまずやらないと、交渉は足元を見られる」
このウィルキーの言っている事は正しい。
交渉というものは、相手の足元を見てやるものだし、それをカードにして自分達の利益を得るものだ。
だが、アメリカは現状、内乱の上に新たな国と戦争と来ている。
とてもではないが、これを片付けないと、日本との交渉の際に足元を見られてアメリカは多くのものを失うだろう。
が、それは政府の方針として正しいという事であって、現実を見据えた発言かどうかは別問題である。
論理的には苦労しているものから片付けるのが正しい為、まず多くのものを失ったとしても、対日戦をどうにかしてから残りを片付けるべきなのだが、ウィルキーはそれを分かっていなかった。
「・・・承知しました」
だが、それを分かっていても、アイゼンハワーに断る術はない。
ウィルキーは間違いなく、自分の上位者なのだから。
一式爆撃機
最大速力502キロ。
航続距離4500キロ。
爆弾搭載量3トン。
四式爆撃機の1つ前の機体。96式爆撃機の後継機となっている。




