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帝国変換  作者: ありあけ
第三次世界大戦編
26/42

第22話 中部太平洋の戦い

五式艦上戦闘機『蒼風』


最大速力950キロ。


航続距離1600キロ。


武装・・・20ミリ機銃2丁。空対空ミサイル2基。


備考 


日本海軍の最新鋭戦闘機。

西暦1946年 8月29日 アメリカ合衆国 ハワイ



「なんという事を・・・」



 ニミッツはその報告を聞いて、青筋を立てながら必死に怒りを心の内に留めた。


 そして、ニミッツが怒っているのは現在の第二次太平洋戦争で現場指揮官がとんでもないへまをしたから・・・ではない。


 それは西海岸諸州への連邦軍による制圧と戒厳令の発動だった。


 そして、反戦活動の禁止。


 これの意味するところは、厭戦気分が無視できない範囲で拡大した為、政府は力ずくで抑え込む事を決めたという事だ。


 だが、これには様々な問題がある。


 まず西海岸出身の将兵の動揺。


 当然だろう。


 いかに政府が詭弁を言おうが、彼ら西海岸出身の将兵から見れば、故郷が政府に弾圧を受けているように見えるのだから。


 彼らは家族、恋人、友人を西海岸に残してまでこの戦場に出てきた。


 それなのに、肝心の政府から故郷が弾圧を受けているような状況では、士気が下がるのも必然であった。


 そして、2つ目に他州からの抗議が上げられる。


 これも当然だろう。


 政府が州を軍を使って弾圧する。


 こんな事が罷り通ってしまえば、今後自分達も同じような目に遭うかもしれない。


 既成事実化する前にどうにかしようとするのは、ある意味当然の行為であった。



「しかし、大統領は何を考えているのだ?」



 こんな事をしてしまえば、反発が起きる事は想定される。


 それが分からない程の無能が、アメリカ大統領という役職に着ける筈が無いのだ。


 ニミッツは知らなかったが、確かに反発はウィルキーも想定していた。


 だが、それ以上に対日戦を続けたいという意思が強かった。


 何故ここまで対日戦に執着するのか?


 それはこの戦いを制した者が世界の覇権を握ると考えていたからだ。


 すなわち、史実のように“|パックス・アメリカン《アメリカの下での世界平和》”か、それとも転移メンバーには未知の領域である“パックス・ジャポニカ(日本の下での世界平和)”か?


 それが問われている。


 そう、ウィルキーは考えたのだ。


 その考察は正しい。


 実際、今のナンバー1の国は間違いなくアメリカであり、日本はナンバー2、あるいはナンバー3という地位だが、ナンバー1であるアメリカをたんどくで引き摺り下ろせば一気にナンバー1の国へとのしあがる可能性は高く、必然的に“パックス・ジャポニカ(日本の下での世界平和)”となる可能性も十分にある。


 ただ、転移メンバーに、進んでこの世界を“パックス・ジャポニカ(日本の下での世界平和)”にしたいかと問えば、全員が全員“NO”と答えるだろう。


 彼らも史実の第二次世界大戦後にアメリカが辿った苦労などは知っているのだから。


 だが、そんな考えなどウィルキーが知るよしもない。


 そして、そんなウィルキーの考えもニミッツが知る筈も無かった。



「はぁ。早速不安になってきたな。これで本当に1ヶ月後に迫ったマーシャル・ギルバート攻略が成功するのか?」



 ニミッツは不安に思うが、それも当たり前だった。


 作戦開始まで残り3週間。


 ただでさえ成功率の低い作戦を行うのに、ここに来て作戦前からの国内情勢の不安定。


 むしろ、問題に思わないとしたらそちらの方がどうかしてるだろう。



「更にソロモン方面でも我が軍は不利になり始めている」



 16日前の南太平洋海戦以来、米軍は南太平洋で活用する全ての空母を失った為、作戦が極端に窮屈になっていた。


 そして、日本軍は3日前の26日に米軍占領下にあるニュージョージア島に上陸し、米軍と激闘を繰り広げていた。


 だが、トラックで補給と整備を終えてソロモン方面に再び進出してきた日本海軍第4艦隊の援護によって、米軍は苦戦を強いられていた。


 それはつまり、ニュージョージア島の陥落は時間の問題だという事である。



「なんとか助けてやりたいが・・・」



 ニミッツはそう思ったが、これは言うまでもなく不可能である。


 現状、アメリカ軍はインド洋と中部太平洋に空母を配備しているが、前者は兎も角、後者は中部太平洋侵攻の為にも戦力を割く事は無理だ。


 前者もインド洋という広大な海域に派遣している関係上、戦力上の穴は空けられない為、割くのは無理だった。


 それはそうだろう。


 インド洋から戦力を引き抜いた挙げ句、戦力の少なくなったのを好機として、インド洋に日本軍が侵攻してくれば本末転倒だ。


 これらの関係上、南太平洋の米軍は空母抜きで戦わなければならない。


 まあ、それが可能かどうかは現状のソロモン戦線が物語っていたが。



「頼むぞ。持ちこたえてくれ」



 ニミッツはそう願っていた。


 だが、事態はニミッツの想いを嘲笑うかのように、日本軍有利に展開していくのである。
















◇西暦1946年 9月13日 オーストラリア キャンベラ



「もう駄目だ・・・」



 カーティンは絶望していた。


 今月3日にニュージョージア島が陥落し、その2日後にはニューギニアのブナが陥落していた。


 これの意味するところは、ソロモン方面では日米の戦いの舞台が中部ソロモンから南部ソロモンへと移り、ニューギニア方面に至ってはポートモレスピーに王手を掛けられ、更に一部とは言え、オーストラリア本土が最前線となったのである。


 無論、アメリカとオーストラリアとて黙ってみていた訳ではない。


 オーストラリアの軍需工場を増強して前線にどんどん兵器を送ったり、沿岸監視員(コーストウォッチャー)などを活用して日本軍の前線部隊の情報を伝えたりしていた。


 実際、これに日本軍は出血を強いられており、特に後者は史実通りに日本軍を苦しめまくっていた。


 転移メンバーもこれを知っていて出来るだけの対策は取っていたが、それでも完全に取り除く事は出来なかった。


 何故なら、史実の沿岸監視員(コーストウォッチャー)がソロモン諸島のどの島に基地を置いていて、何処に潜伏していたのかという情報は、転移メンバーの誰も知らないからだ。


 故に、転移メンバーは強引にソロモン攻略を進める事を決めた。


 アメリカが既に戦時体制に移行している以上、あまりソロモン攻略に時間は掛けられないからだ。


 その結果、日本軍の損害は地味に多い形となってしまったが、概ねソロモンの攻略は進んでいた。


 そして、カーティンからして見れば、そんな日本軍の苦闘など知る筈がない。


 彼に見えるのは、日本軍がオーストラリア本土に近付き始めているという現実のみである。



「今のうちに日本と講和をするか?」



 カーティンはそう考えた。


 勿論、この段階で講和をする事は、かなり厳しい条件を日本から突きつけられるという事は分かっていたが、オーストラリアが火の海に変わるよりは良い。


 確かに悪くない選択ではある。


 だが、問題は相手にその気が無い場合である。


 転移メンバーが一番恐れるのは、オーストラリアに裏切られる事。


 逆に言えば、裏切らない、あるいは裏切られても問題ないのであれば、講和に応じるという事でもあったが、前者は分からないし、後者は今のところ達成されていない。


 よって、転移メンバーが講和に応じる可能性は低かった。


 まあ、そんな事はカーティンには知るよしも無かったが。



「兎も角、打診してみよう。アメリカについては・・・まあ、どうにかするしかないか」



 カーティンはそう言いながら、電話を取って外務大臣を呼んだ。

















◇西暦1946年 9月22日 ギルバート諸島西方 第5艦隊 旗艦『瑞鶴』



「ふぅ。危なかったが・・・どうにか勝ったか」



 夕季は安堵していた。


 遡る事、4日前の9月18日。


 ギルバート諸島及びマーシャル諸島から飛び立った哨戒機がそれぞれ向かってくる艦隊を捕捉したのだ。 


 そして、ブナ攻略を終わらせ、トラックに駐留していた第5艦隊は、ギルバート諸島に侵攻してくるアメリカ艦隊(アメリカ級空母1隻、エセックス級空母1隻、旧式戦艦4隻が基幹)を迎撃する為に出撃した。


 マーシャル方面のアメリカ艦隊(アメリカ級空母1隻、エセックス級空母1隻、アイオワ級戦艦1隻、旧式戦艦2隻が基幹)には、横須賀から緊急出撃した第3艦隊が対処するらしい。


 一方、米軍は9月20日にギルバート諸島の中心、タラワ島とマキン島に上陸を開始した。


 タラワ島はどうにか米軍を撃退していたが、マキン島は上陸阻止に失敗してしまい、第5艦隊が到着する頃には、早くも陥落寸前となっていた。


 しかし、前日の9月21日に第5艦隊が到着し、アメリカ艦隊と海戦となった。


 これは後にギルバート沖海戦と呼ばれるようになるが、アメリカ艦隊は結果的に不意を突かれてしまった。


 何故かと言えば、アメリカ艦隊が西から飛んできた偵察機(電星)をナウルから飛んできた機体と勘違いしてしまい、第5艦隊の接近に気づかなかったからだ。


 そして、気づいた頃にはもう手遅れになっていた。


 第5艦隊の瑞鶴と葛城から発進した第一次攻撃隊は、アメリカ級空母1隻を小破、エセックス級空母1隻が大破。


 他にも艦隊に付随していた旧式戦艦が2隻大破し、巡洋艦が2隻沈没、駆逐艦が4隻沈没していた。


 しかし、小破したアメリカ級空母からの反撃が遅ればせながらも始まり、瑞鶴が小破、吹雪型駆逐艦が1隻大破していた。


 そして、第5艦隊から発進した第二次攻撃隊の攻撃により、アメリカ級空母は遂に大破炎上、更に旧式戦艦が1隻沈没していた。


 この攻撃でアメリカ艦隊の稼働空母は0。


 更に、とどめと言わんばかりに、第5艦隊から第三次攻撃隊が発進し、アメリカ級空母1隻は遂に沈没。


 そして、旧式戦艦が更に1隻撃沈された。


 しかし、エセックス級空母1隻はギリギリのところで離脱に成功していた。


 本来なら、このエセックス級空母も撃沈できた筈だが、戦場に長居出来ない上、輸送船団撃滅という任務もある事から、夕季が追撃を却下したのだ。



「よし。敵輸送船団及び上陸部隊を撃滅する。第四次攻撃隊は直ちに発進しろ」



 夕季はそう命令した。


 作戦は順調、後はマーシャル方面の敵艦隊に気を付ければいい。

 

 夕季はそう思っていた。


 しかし、この数日後、日本海軍を震撼させるとんでもない事が起こるなど、この時は知るよしも無かった。



 















◇西暦1946年 9月26日 大日本帝国 帝都


 この日、帝都東京では転移メンバーによる会合が開かれていた。


 だが、その空気はまるでお通夜のようだった。



「・・・もう一度、言ってくれませんか?」



 口を開いたのは青木だった。



「・・・・・・『翔鶴』がマーシャル沖で撃沈された」



 そう、現在の日本海軍の主力空母の1つがマーシャル諸島沖で撃沈されたのだ。


 時は1日程遡り、9月25日。


 ギルバート諸島沖海戦から3日経ち、ハワイのアメリカ太平洋艦隊司令部は中部太平洋侵攻作戦の中止を決定した。


 その際、アメリカ軍はギルバート諸島の部隊が危機に瀕しているという状況は掴んでいたが、特に何の手立ても打たなかった。


 と言うより、既にギルバート諸島の部隊の救援は諦めていた。


 マーシャル諸島の部隊の撤退の捨て石にされたからである。


 日本海軍の艦隊がギルバートに張り付いている隙にマーシャル諸島の部隊を撤退させる。


 これがアメリカ太平洋艦隊司令部の基本的なスタンスとなっていた。


 しかし、撤退を決めたは良いものの、事はそう簡単に運ばなかった。


 そもそもマーシャル諸島に上陸していた部隊は、今現在もマーシャル諸島の日本陸軍と交戦中であり、いきなり撤退と言われてもきびきびと出来る訳がなかった。


 それでも何とか日本軍の追撃をいなしつつ、撤退に移行したのだが、撤退そのものにも時間がそれなりに掛かる為、なかなか作業は進まない。


 そこで米軍は苦肉の策として、兵員を満載した輸送船から順番にハワイへと向かうという方針を取り始めたが、それでも完全な撤退には丸1日掛かる見込みだった。


 そうして米軍がモタモタしている間に、第3艦隊が到着した。


 そして、後にマーシャル沖海戦と呼ばれる海戦が起こり、米軍はアメリカ級空母を1隻大破、エセックス級空母1隻も同じく大破した。


 対して、日本軍の被害は空母『翔鶴』中破、吹雪型駆逐艦2隻沈没だった。


 その後、日本軍は中破した『翔鶴』を駆逐艦の護衛を着けて撤退させ、残った空母『雲龍』と『天城』で第二次攻撃隊を発進させようとしたが、そこで敵は思わぬ行動に出た。


 アイオワ級戦艦1隻と戦艦2隻を中核にした艦隊を第3艦隊に向かわせたのだ。


 その間に、空母部隊を撤退させようという算段だった。


 この作戦は見事に成功し、米軍はアイオワ級戦艦1隻と旧式戦艦2隻の沈没を代償に、空母を2隻とも撤退させる事に成功する。


 もっとも、その数時間後に偶然遭遇した日本軍潜水艦によってエセックス級空母の方は撃沈されてしまったが、アメリカ級空母の方は難を逃れる事が出来た。


 そして、今日の朝方、悲劇は起きた。


 なんと、翔鶴がマーシャル諸島西方で敵潜水艦の攻撃を受けて撃沈されてしまったのだ。


 翔鶴は横須賀よりも、近場であるトラック諸島のドッグに向かう為に進路をそちらへと向けていたのだが、これまた偶然その方角に居た米海軍の最新鋭潜水艦によって、魚雷を3本叩き込まれ、更に運の悪い事に、魚雷の直撃の衝撃でジェット燃料に引火してしまい、翔鶴に大火災が発生し、数時間後に総員退艦命令が出され、更にその1時間後にゆっくりと波間に没した。


 ちなみに、翔鶴撃沈の戦果を挙げた米潜水艦は駆逐艦の執拗な追撃を受けたものの、なんとか逃げ切っている。



「これは不味いですね」



 岡辺がそう言った。 

 

 確かに不味い。


 日本海軍の主力空母の1隻が沈没した以上、これからの作戦はこれまでよりも窮屈になってしまう。


 もっとも、米軍も顔を青ざめさせるのに十分な被害を負っていたのだが、やはり日本軍、特に転移メンバーから見れば、自分達の方が被害を負ったように見えてしまう。



「これはオーストラリアからの講和の打診、受けた方が良いでしょうか?」



 青木が他の転移メンバーを見回しながら聞く。


 既にオーストラリアからは講和の打診が行われていたが、転移メンバーは無視していた。


 もう少し叩いてから、と考えていたからである。


 しかし、こうなってしまっては講話も視野に入れなければならなくなった。



「そうだな。まあ、1週間以内には結論を出そう。・・・有栖川には悪いけどな」



 春川はそう言って、ここには居ない夕季に向かって謝った。


 未だ前線に居る夕季は、1週間以内に会合に参加する事は不可能だからだ。


 かくして、動揺しながらも転移メンバーは動き出した。

四式艦上攻撃機『流星』


最大速力604キロ。


航続距離2400キロ。


爆弾またはミサイル搭載量2トン。


武装・・・20ミリ機銃2丁。12、7ミリ機銃一丁。


備考


日本海軍の最新鋭攻撃機。レシプロ機ではあるが、史実のスカイレイダーを模範に造られている為、能力は高い。

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