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帝国変換  作者: ありあけ
第三次世界大戦編
24/42

第20話 ソロモン諸島の攻防

四式艦上戦闘機『疾風』


最大速力720キロ。


航続距離2400キロ。


武装・・・20ミリ機銃4門。


備考


日本海軍最後のレシプロ戦闘機として開発された。この戦闘機は隼鷹型クラスの通常空母や小型空母などへの搭載用として開発されている。

西暦1946年 6月20日 大日本帝国 帝都


 アメリカ軍が遂に動き出した。


 その報告を受けた日本では転移メンバーが会合を開いていた。



「ガダルカナル島、ですか」



 それはこれより2日前の6月18日にアメリカ軍が上陸した地点であった。


 アメリカ軍はニューブリデン島奪還に先立ち、ソロモン諸島に拠点を造るべく、ソロモン諸島南方にあるガダルカナルに目を付けたのだ。


 既にルンガには飛行場が造られており、その沖合いには空母が何隻か居座っているとの情報もある。



「これでラバウルに挟み撃ちにされましたね」



 青木が言う。


 今回のガダルカナル侵攻によって米軍はガダルカナル・ポートモレスピーからラバウルを叩く事が出来るようになっていた。


 それを考えれば、青木の言っている事は間違ってはいない。



「だが、挟み撃ちされたのは向こうも同じだがな」



 今度は有村が言った。


 ニューギニア北西は既に日本軍を含む東南アジア連合の支配下となっている。


 故に、ここからポートモレスピーを叩く事で可能である。


 つまり、ポートモレスピーはニューギニア北西とラバウルから挟み撃ちにされているのだ。


 それを考えれば、条件は五分五分といったところだった。



「問題はガダルカナル島に居座る敵空母だな」



 夕季が言う。


 実際、ガダルカナル島付近に居座る敵空母は脅威以外の何物でも無かった。


 此方も空母を使って対抗したいところだが、生憎とそれは難しかった。


 第3艦隊はニューギニア作戦を行った為に、弾切れを起こしており、一度補給と再編成の為に本土に戻らなければならず、現在パラオを経由して本土に帰還中である。


 そして、第2艦隊は第3艦隊の穴埋めとして、現在も続いているニューギニア北部攻略作戦を行わなければならず、ソロモン諸島への派遣は不可能。


 残るはトラック駐留の第4艦隊だが、旗艦である空母白鳳を含めて、全艦がまだ戦闘に耐えられる練度に達していない。


 それでも無理をすれば出撃させられるが、戦果を挙げて帰ってこられるかどうかは微妙なところだ。



「かと言ってラバウルの航空隊だけでなんとか出来る筈もないしなぁ」



 ラバウルは今の時点で2方面に戦線を抱えている。


 この上に更に空母部隊を相手にさせるのは、どう考えても酷だ。


 数日後にトラックから増援を出すつもりだが、その程度でなんとか出来るならば苦労しない。



「一度、夜襲を仕掛けてみてはどうです?」



 岡辺が夜襲を提案する。


 だが、それには1つ問題があった。



「いや、それは無理だろ。相手も夜戦対策はそろそろ取ってくるだろうし」



 開戦以来、日本軍が行っている空母決戦の殆どが夜襲である。


 そして、幾ら米軍でもここまで連続で夜襲をされたら、何かしらの手を打ってくるのは目に見えている。



「しかし、このままではソロモン諸島を北上されてラバウルは陥落しますよ?」



 米軍はガダルカナル島を占領した。


 という事は、ソロモン諸島を北上する可能性が高いという事だ。


 わざわざ何の意味もなしに1つの島を占領する程、アメリカは暇ではない。



「・・・やはり一度夜襲をさせてみるか?米軍の力量も計れるし」



「う~ん」



 夕季は迷った。


 一応、その任務に相応しい部隊は存在する。


 それは第8艦隊。


 巡洋艦を基幹とする艦隊で、本来はラバウルを母港とすべく編成されたが、米軍のラバウル空襲が激しい為に、一時トラックで待機していた。



「・・・分かった。一度やらせてみよう」



 かくして、ガダルカナル夜襲は決定された。















◇西暦1946年 7月1日 アメリカ合衆国 ハワイ


 ミッドウェーを占領された後も、アメリカ太平洋艦隊の司令部はハワイに存在した。


 だが、ハワイは今や最前線。


 実際、ミッドウェーからの空襲も何度か受けている。


 それ故に、一時はサンディエゴまで避難させるという案が出されたのだが、それは当の太平洋艦隊司令部によって却下された。


 理由は、最前線を統括する司令部が逃げ出しては、前線で戦う兵士たちの士気が落ちるからだ。


 そのハワイ・ホノルルの司令部で、太平洋艦隊司令長官のニミッツ大将は先日、南太平洋から届けられた報告書を読んでいた。



「ふむ。日本軍の戦況は一進一退だな」



 日本軍はニューギニア攻略作戦では快進撃を続けていて、既に西はソロンから東はマダンまで占領下に置いており、ラエの陥落も時間の問題だった。


 だが、一方でソロモン方面では全く戦線が動いておらず、それどころか米軍がニュージョージア島まで進出しつつある為、全体の戦況を鑑みれば、一進一退と言っても良かった。



「そして、日本軍の夜襲を一度とは言え防いだ、この事実は大きいな」



 ニミッツはその報告を重要視していた。


 6月22日、日本軍は第8艦隊の所属艦である第5巡洋戦隊(羽黒、三隈)、竹型駆逐艦8隻を以て夜襲を仕掛けた。


 そして、先制攻撃を仕掛ける為に99式艦対艦誘導噴進弾を発射したのだが、この頃になるといい加減に米軍でもミサイル対策はされており、米軍は99式艦対艦誘導噴進弾が見えた途端に多数のアルミ箔、すなわちチャフをばら蒔いた。


 その結果、十数発が囮に引っ掛かり、海の藻屑となったが、その程度で対艦ミサイルを完全に防げるならば21世紀でも対艦ミサイルなど配備されていない。


 逸れなかった99式艦対艦誘導噴進弾はその殆どが巡洋艦や駆逐艦に命中、巡洋艦は2隻が沈没、駆逐艦に至っては8隻が沈没した。


 更に流れ弾が偶然近くを航行していたアイオワ級1隻とエンタープライズに命中、アイオワ級1隻は小破、エンタープライズは当たり所が悪く、艦載機の弾薬庫の近くに偶然に99式艦対艦誘導噴進弾が命中し、大炎上。


 数時間後に沈没した。


 史実では日本軍を終戦まで苦しめ、ビッグE、不沈空母などと誉れ高かった正規空母はこうして呆気なく散ったのである。


 そして、前衛艦隊を片付けた第8艦隊司令は更なる戦果を求めて前進したが、これが不味かった。


 小破したアイオワ級1隻と生き残った護衛艦艇からの反撃を受けたからである。


 結果、更に駆逐艦4隻を沈めるのと代償に巡洋艦三隈が沈没し、羽黒が中破した。


 他に竹型駆逐艦3隻が沈没し、第8艦隊は敗走する事となった。


 翌朝、空母部隊が第8艦隊を追撃しようとしたが、近海まで進出してきていた日本海軍第4艦隊の艦載機に邪魔をされ、第8艦隊は撤退に成功した。


 そして、第4艦隊もそのまま空母部隊との戦闘を避けて撤退した。


 この一連の流れは後にソロモン沖海戦と呼ばれる事になるが、戦術的にはどっからどう見ても日本軍の勝ちである。


 だが、この結果が米軍に与えたものは大きい。


 特に対艦ミサイルの無力化。


 今まで米軍は日本軍の対艦ミサイルに対して殆ど無力であったが、今回の戦いでは十数発を逸らす事に成功していた。


 これの意味するところは、『対艦ミサイルは逸らす事が可能』という事実である。


 これにアメリカは大いに自信を着け始めていた。


 もっとも、転移メンバーからしてみれば、そろそろアメリカも対艦ミサイルへの対抗策を確立する頃、と見なしていたので、然程驚くべき事では無かったが。



「だが、これは問題だな」



 ニミッツの持った書類にはこう書いてあった。


 『ギルバート・マーシャル諸島攻略作戦』、と。


 ちなみにギルバート諸島は元々はイギリスの領土だったが、大英帝国崩壊後、日本との協定によりアメリカが保有していた。


 だが、開戦後にアメリカ側はこの地の保有は不可能と判断して早々に撤退している。


 そして、2月13日にギルバート諸島は日本軍によって占領されていた。


 なお、ギルバート諸島の西南西に存在するナウル島も、2月14日に同じく日本軍により占領されている。


 アメリカ軍の目標はギルバート諸島とマーシャル諸島の同時占領である。


 投入兵力は修理が終わったアメリカ級空母2隻とエセックス級空母2隻、アイオワ級戦艦1隻、旧式戦艦6隻(内2隻は真珠湾で沈んでいたのを引き揚げた)を中核とした艦隊である。


 そして、上陸兵力はマーシャルに1万人、ギルバートに5000人の計1万5000人。


 見て分かる通りだが、空母戦力の割りに上陸戦力が少ない。


 これはアチコチに陸上戦力を派遣しているのと、ウナラスカ島で多数の将兵が捕虜になってしまった為、これ以上の戦力は捻り出せなかった為である。


 しかし、この作戦は史実を参考にすると分かるが、日本軍が余程戦力を消耗しているといった状況でない限り、失敗する可能性が高い作戦である。


 何故なら、史実ではギルバート諸島の牙城であるタラワ島には約4000人の日本兵が居たし、マーシャル諸島にもそれなりの兵力が居た。


 そして、島での戦いは圧倒的な戦力差が無い限り、小さな領土の割りに長く掛かるし、物資もかなり消耗する。


 だが、この世界での米軍は史実ほど大量の物量も兵力も投入できる訳ではない。


 それでも日本軍が余程消耗していれば希望は有るのだが、生憎開戦からまだ半年と少ししか経っていない為、日本軍もまだまだ戦力が残っている状況である。


 つまり、日本からしてみれば、仮に日本海軍の対応が後手に回ったとしても、なんとかなる範囲なのだ。


 無論、これはアメリカ側も承知済みである。


 にも関わらず、こんな作戦を強行する理由は、やはり政治であった。


 西海岸は依然として日本軍潜水艦の攻撃を受けており、住民からは既に厭戦気分が広がり始めていた。


 と言うより、西海岸の住民は最初からこの戦争に乗り気では無かった。


 当然だろう。


 最前線から比較的近い以上、下手をすれば自分達も戦火に巻き込まれる可能性が有るのだから。


 だが、中部や東部など、比較的最前線から遠い人間は日本に敗れたままの状況を良しとしていなかったのだ。


 だからこそ開戦を支持していたのだが、西海岸の住民はそういった人間に凍えた視線を向けながらも戦況の推多を見守り、そして見事に懸念が現実になったのだ。


 厭戦気分が広がるのも当然と言えば当然と言えた。


 無論、政府もこういった西海岸の視線は察知しており、それを宥める為にも、速やかな日本軍拠点の占領が求められた。


 そういった事情でこの作戦は立てられたのである。



「まったく。政治的な事情を此方に求められても困るのだがな」



 ニミッツとしては様々な準備の為にも、少なくとも半年から1年という期間が欲しいと考えていた。


 当然だろう。


 現在、ソロモンにて激戦を続けている上に、日本軍の戦力もまだ残っている。


 そして、とどめに投入できる兵力も限られているでは、作戦が成功する確率は5割を切っている。


 これはアメリカが実際にシュミレーションをした事からも判明している。


 一応、この結果は大統領に届いてはいたが、作戦は撤回される事は無かった。


 最前線に居るニミッツは知らなかったが、実を言うと西海岸の厭戦気分以外にも政治的な問題が発生していたのだ。


 それは第一に中部や東部の住民の西海岸と同じような厭戦気分の広がり。


 開戦から半年と少し。


 たったこれだけの期間で既に16万人の死傷者(民間人含む。内、死者が7万5000人)が出たお陰で、西海岸以外の住民からも厭戦気分が広がり始めていたのだ。


 史実での太平洋戦争全般である3年8ヶ月という期間で戦死者が約11万人だった事を考えれば、その数字の大きさが伺えるだろう。


 ちなみに史実の対独戦での3年5ヶ月での戦死者は18万人だった。


 それを考えると、厭戦気分が広がり始めるのも当然と言えば当然と言えた。


 もっとも、日本軍が核兵器や燃料気化弾頭などの兵器を前線で使っていれば、被害はその程度では済まなかっただろうが。


 そして、第2に経済的問題。


 これは日本軍潜水艦による西海岸通商破壊によって西海岸のシーレーンは壊滅とは行かないまでも、大打撃を受けていた事が一番の原因だった。


 日本軍潜水艦が沈めた船の中には、当然の事ながら商船も存在していた。


 これにより、国民、特に西海岸での海運会社の被害が続出していた為、海運会社そのものが潰れる例も多く見られた。


 そして、こういう時に活躍するのが保険会社なのだが、此方も商船が次々と撃沈され、巨額の保険金を払わなくてはならない例が続出していた為に、これまた潰れる例が増えて、中には保険契約そのものを打ち切った所もあり、海運会社との揉め事を起こし始めていた。


 つまり、西海岸の経済は軍需は兎も角として、少なくとも民需については確実に悪化していたのである。


 そういった訳で、政府は軍に国民に対しての“サーカス”を望んでいたのだ。


 だが、そういった政治的事情を幸いというべきか、それとも不幸と言うべきか、ニミッツは知らなかった。


 知っていたら、激怒していただろう。



「まあいい。我々は最善を尽くすのみだ」



 ニミッツはそう考えて、参謀達を集めて作戦立案に掛かる事にした。

大鳳型航空母艦


基準排水量5万6000トン。


機関・・・ガスタービン。


最大速力33ノット。


搭載機100機。


武装・・・10センチ連装高角砲4基8門。40ミリ連装機銃10基20門。20ミリ単装機銃30基30門。


備考


搭載機こそ翔鶴型と同じだが、弾薬庫や燃料貯蔵庫の施設が大型化している為、作戦遂行能力が向上している。

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