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帝国変換  作者: ありあけ
第三次世界大戦編
23/42

第19話 米本土攻撃

翔鶴型航空母艦


基準排水量5万2000トン。


機関・・・ガスタービン。


最大速力34ノット。


搭載機100機。


武装・・・10センチ連装高角砲8基16門。40ミリ連装機銃20基40門。20ミリ連装機銃20基20門。


備考


日本海軍初のジェット戦闘機搭載用の大型空母。レーダー対空射撃システムなどの最新鋭装備も揃えられており、電子技術は高い。ちなみに甲板はジェット機発艦用に装甲化されている為、多少の爆弾であれば耐えられる。

西暦1946年 4月13日 深夜 サンディエゴ沖 伊401 


 伊401。


 伊400型潜水艦の2番艦であり、日本最大級の潜水艦でもある。


 史実では潜水空母として就役し、ウルシー奇襲に向かうところで終戦を迎えた艦でもある。


 そして、後の戦略原潜の模範となった艦とも言われている。


 だが、この世界の伊400型潜水艦は最初から戦略原潜として竣工していた。


 と言っても、厳密には原潜ではない。


 機関に通常のディーゼル推進を採用しているからである。


 だが、この艦のコンセプトは史実の戦略原潜と同じように相手国の懐に潜り込んでミサイルをぶっ放すというものになっている。


 もっとも、現時点で核ミサイルはない。


 潜水艦搭載用の核弾頭は未だ開発中だからだ。


 したがって、これらの潜水艦が搭載するのは炸薬量1トンの五式艦対地誘導噴進弾である。



「艦長。発射準備完了しました」 



「うむ。御苦労」



 部下からの報告に伊401の艦長、木梨鷹一中佐は頷いた。


 日本はソロモン・ニューギニア作戦の発動と同時に、伊400型潜水艦によるパナマ運河及び米本土への攻撃を目論んでいた。


 だが、日本潜水艦の通商破壊活動のせいで、アメリカ本土付近は米軍による哨戒が厳重となっている為、深夜に行わなければならなかった。



「全弾を発射次第、急速潜航。この場を離脱するぞ」



「はっ」



 かくして、伊401の攻撃により、サンディエゴは夜間襲撃を受ける事となった。


 そして、攻撃を受けたサンディエゴは大混乱に陥り、以後、西海岸の住民は終戦まで伊400型潜水艦の影に怯える事となる。














◇西暦1946年 4月28日 大日本帝国 帝都


 ソロモン・ニューギニア作戦の第一段階は成功した。


 日本軍はビアク島、ニューブリデン島、ニューアイルランド島の占領に成功し、ソロモン・ニューギニア方面の攻略に対する橋頭塁を築いた。


 が、アメリカ軍の反撃は早く既に占領したニューブリデン島はポートモレスピーから襲来する米軍爆撃機の爆撃に晒されていた。


 当然、日本軍も黙っていた訳ではなく、素早くラバウルを整備しつつ、戦闘機を進出させ、これに対処していた。


 戦闘は徐々に泥沼と化し始めていたのである。



「これに加えてインド洋からの空母の回航、か」



 春川は呟く。


 インド洋に居た空母4隻の内、2隻のエセックス級空母が太平洋に回航されたという情報は既に入っていた。


 更にこれに加えて太平洋のエセックス級空母1隻とエンタープライズを合わせれば4隻の空母となる。


 これらの空母はニューカレドニアのヌーメアにオーストラリアのシドニーに入港しているとの事であり、日本としてはこれらの空母の動向が気になるところであった。



「ところでニューギニア作戦ですが、本当に連合軍でやるんですか?」



 青木が尋ねる。


 実はニューギニア作戦、厳密に言えばニューギニア島上陸作戦は日本単独ではなく、東南アジア諸国の軍勢を含めた連合軍で行う予定だった。


 理由としては幾つかあるが、最終的にはこれに行き着く。


 それは軍事的な問題。


 島が連なっているだけのソロモン諸島と違い、ニューギニア島は世界で2番目に大きな島と呼ばれるだけあり、かなり広い。


 更に所々にジャングルが生い茂っており、マラリアなどの病気やクロコダイルなどの危険な生物も多い。


 史実では『地獄のニューギニア』とも呼ばれており、太平洋戦争の悲劇の1つとして語られている場所でもある。


 このような場所に日本軍を入れるのは、現状の戦線から考えて自殺行為であり、コストパフォーマンス的にも悪手だった。


 だが、ニューギニアを放置しておくと、東南アジアが危機に晒され、更にはパラオなどの戦線後方地帯も攻撃される可能性がある為、放置は論外だった。


 よって、東南アジア諸国との連合でニューギニアを占領する事にしたのだ。


 問題は送られる軍隊の質だったが、治安維持が出来るならば、それで良いとさえ転移メンバーは考えていた。


 帝国陸軍並みの練度や装備がない以上、戦闘まで期待するのは酷だと思っていたのだ。


 いささか酷い意見かもしれないが、これが現実である。



「それしか無いだろう。なんせ“頭数”が居ないんだから」



 頭数の不足。


 これは日本にとって実に頭の痛い問題であった。


 史実では開戦時、陸海合わせて270万人を誇っていた帝国軍だが、この世界ではどんなにかき集めても200万人が限界なのだ。


 理由としては経済問題が挙げられる。


 史実では技術者まで戦場に行かせたせいで、民需どころか軍需にも多大な悪影響を与えて、生産体制に大きな支障を残しているが、この世界ではそういう人間と戦場に行く人間は区別されているので、そのような事は殆ど無いと言っても良い。


 ここで分かるのは軍需にしろ民需にしろ、人材が必要不可欠だという事だ。


 だからこそ、この世界ではそういう人間と戦場に行く人間は区別されている。


 が、逆に言えば戦場に行く人間が少ないとも言える為に、史実よりも最前線に投入できる兵員の数に限界が来てしまうのだ。


 もっとも、これは全体を考えれば仕方ないとも言える。


 兵隊だけ居ても、兵器や弾を造る人間が居なければ意味が無いのだから。



「・・・そうですが、やはり心配ですね」

 


 ここで青木の言う心配とは、東南アジア連合軍の将兵の命の心配ではない。


 連合軍の将兵のモラルの心配なのだ。


 東南アジア諸国の連合軍を戦列に加えると言っても、基本的に先陣を切るのは日本軍であり、戦うのも殆どは日本軍だ。


 そんな状態で東南アジア連合軍の将兵の命の心配をしてもどうしようもないとは言え、青木の言う事は平成日本の人間が聞いたらかなりシビアに聞こえる。


 が、それは平成日本人の価値観であり、この場にいる転移メンバーの価値観ではない。


 いや、価値観“だった”と言うべきだろうか?


 なんせ、転移メンバーは“元”平成日本人なのだから。


 彼ら転移メンバーにとって、東南アジア連合軍の将兵の命はどうでも良いとまではいかないとは言え、はっきり言えば日本人より優先される命ではない。


 これは現代の日米関係でも言える。


 今は日米安保条約を結んではいるが、アメリカはいざとなったらこれを破棄するだろう。


 当然だ。


 同盟国民より、自国民を優先するのは、どの国も同じなのだから。


 話を戻すと、兵士のモラルの問題だが、これについては派遣する国々の軍隊を信じるしかない。


 

「まあ、いささか泥縄的な部分が有るのは否めないが、当面はこれで問題ないだろう」



 そう、“当面”は問題ないのだ。


 仮に未来に問題が残るとしても、“今”がなんとかならなければ未来など語る事の出来よう筈もない。


 かくして、転移メンバーはニューギニア攻略作戦の発動を宣言する。















◇西暦1946年 5月3日 オーストラリア キャンベラ


 カーティンは現状に大いに危機感を抱いていた。


 ポートモレスピーとラバウルの日本軍との戦いは今現在も続いていたが、アメリカ軍側の損害が段々と大きくなってきたのである。


 それも当然だった。


 今回の場合、アメリカ軍はラバウルを攻める側であり、日本軍はラバウルを守る側だ。


 しかし、それは言い換えると、日本軍は防空に専念するだけでよく、逆にアメリカ軍はポートモレスピーから遙々ラバウルまで行って空襲して帰ってこなくてはならない為、必然的に後者の方が負担が大きく、損害も大きいのだ。


 また、日本軍が新鋭機をラバウルに配備し始め、五式空対空誘導噴進弾が最前線に登場し始めた事も、アメリカ軍の損害を増大させる一因ともなっていた。



「しかも、アメリカ軍からの情報では、日本軍のニューギニア本島上陸も近いとある。これでは・・・」



 もしニューギニア本島での戦闘でアメリカ軍とオーストラリア軍が敗北した場合、間違いなく日本軍はオーストラリア本土に上陸してくるだろう。


 少なくともカーティンはそう考えていた。


 しかし、転移メンバーからしてみれば、これは過大評価が過ぎるというものだろう。


 何故なら、確かにオーストラリアには鉱物資源などの物資が有るが、日本からしてみれば絶対にオーストラリアが必要、という訳でも無かったからである。


 むしろ、派遣する兵力の負担を考えれば、オーストラリア上陸はマイナスというものだろう。


 だが、こういった事情をカーティンが知るよしも無かった。



「問題はニューギニア方面だけではない。ソロモン方面もだ」



 そう、仮にニューギニアを抑えたとしても、ソロモン諸島が押さえられてしまえばアウトだ。


 何故なら、ここを完全に押さえられれば、オーストラリア攻略に現実性が出てきてしまう。


 そうでなくとも海上からオーストラリアを空襲する事が出来てしまうのだ。



「どうにかしなければ・・・」



 カーティンの苦悩は続く。
















◇西暦1946年 5月29日 アメリカ合衆国 ワシントンD・C


 苦悩をしているのは、何もカーティンだけではない。


 ウィルキーも同じだった。



「日本軍の西海岸攻撃はまだ治まらんのか!!」



 ウィルキーはアイゼンハワー国防長官に向かって怒鳴り散らしていた。


 当然だろう。


 4月13日の日本軍によるサンディエゴの夜間攻撃以来、西海岸は度々襲撃されており、西海岸の住民は眠れない夜を過ごしていたのだから。


 そして、パナマ運河にも攻撃は加えられたのだが、此方は上手く行かなかった。


 やはり衛星もない現状では、ピンポイントに門を狙う事は難しかったのだ。


 とは言え、それはアメリカにとって何の慰めにもならない。


 アメリカ本土が度々襲撃されている、という現実は変わらないのだから。



「そうは言われましても、夜間、しかも何処から撃っているのか分かりませんと・・・」



 アイゼンハワーはそう答えた。


 この言葉からも分かる通り、なんとアメリカ軍はこの期に及んでも、アメリカ本土を襲撃しているのが、潜水艦から発射されたものだと気付いていなかったのである。


 それもその筈で、史実ではアメリカ軍は伊400型潜水艦を鹵獲する事で、戦略原潜の構想を考え出したが、この世界では伊400型潜水艦は鹵獲されておらず、アメリカ軍もその存在を知らなかった。


 しかし、何故抑止力となりそうな兵器を転移メンバーは公表しなかったのか?


 その理由は簡単である。 


 核弾頭が無いからだ。


 平成日本の世界から来た為か、転移メンバーの頭には戦略原潜=核弾頭という固定観念が結び付いており、核弾頭が無い以上、大した抑止力とならない為、暫くは秘密兵器として運用するべきだと転移メンバーは考えたのだ。


 もっとも、そのような考えなど、アメリカは知るよしもない。


 しかし、アメリカ軍が伊400型潜水艦の正体を知る機会は何回かあった。


 日本軍の戦略原潜は現代のものとは違い、水中から弾道弾を発射するのではなく、一旦浮上してから弾道弾を発射するタイプであり、発見も比較的容易では有った為、これまでにも何回か哨戒機や哨戒艇に見付かり、本土襲撃を断念した事があった。


 だが、アメリカ軍は少しばかりこれを不審に思いながらも、結局、偶々日本軍潜水艦が浮上していたものと片付けてしまった。


 もっとも、ミサイルを発射した瞬間を見たのならばアメリカ軍も本土襲撃をしているのが潜水艦だと気付いていただろう。


 だが、日本軍にとっては幸運、アメリカ軍にとっては不運な事に、伊400型がアメリカ軍に発見されたのは、全てミサイルが発射される前であり、発見された後はすぐさま潜航した為、気付く事は出来なかったのだ。



「兎に角、このまま黙ってはおけん。原爆で日本本土を攻撃できないか?」



「流石にそれは・・・」



 アイゼンハワーは口ごもる。


 現在、日米は互いに核兵器を保有しながらも互いに使わないという奇妙な戦いを続けていたが、アメリカが先にそれを撃てば、日本も報復として此方に核兵器を放ってくる可能性が大だ。


 そうなれば、最終的にはアメリカが勝つだろうが、アメリカも大損害を受けて、下手をすればアメリカ合衆国が崩壊というところまで行くかもしれない。


 平成日本人が聞けば信じられないかもしれないが、これは夢物語ではない。


 アメリカという国は、“合衆国”の名で分かる通り、巨大な連邦制である。


 故に、日本のように国の言葉が必ずしも絶対という訳ではなく、州ごとに時と場合によっては国の命令を拒否できる仕組みになっているのである。


 つまり、仮にある州が核兵器による攻撃を受けて住民が被爆して、他の州に逃げようとした場合、その他の州は当然の事ながら放射能による汚染を恐れる為に、住民の侵入を防ごうとしてくるだろう。


 そうなると、アメリカの銃社会からして、最終的に銃を持っての撃ち合いとなる可能性が非常に高く、州軍もそれぞれの州民に味方して撃ち合いとなる。


 ここでアメリカの連邦政府が上手く抑えられれば良いが、もし失敗した場合、アメリカは内戦へと突入してしまう。


 アメリカという国はそういう危険性を孕んでいる国なのだ。


 もっとも、この時代では核兵器による危険性は現代ほど伝わっておらず、各州もそこまで厳しい対応はしないだろうが、それはそれで放射能が広範囲に拡散する可能性が高い為、被爆する人間が爆発的に増えてしまう。


 そして、そこに来て放射能という情報が知らされれば、パニックが大きくなり、先に言った内戦以上の内戦が起きてしまうだろう。


 つまり、核兵器の札を現時点で切る事はアメリカにとって危険なのだ。


 もっとも、アメリカ政府もそこまでの危機感は抱いていない為、ウィルキーがそう言うのも仕方ないと言えば仕方なかったが。



「・・・まあいい。一応、案の1つとして考えておいてくれたまえ」



「はい・・・」



 アイゼンハワーは渋々ながらもそう言って頷いた。

二式艦上戦闘機『紅風』


最大速力850キロ。


航続距離1200キロ。


武装・・・20ミリ機銃4門。


備考


日本海軍初のジェット戦闘機。最新鋭機である五式艦上戦闘機の一世代前の機体。

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