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帝国変換  作者: ありあけ
第二次世界大戦編
18/42

第14話 独立運動

零式艦上電子偵察機『彩雲』


最大速力604キロ。


航続距離4000キロ。


武装・・・無し。


備考


機体にレーダーや逆探を積んで敵を先に発見するというのが、この機のコンセプト。武装は無いが、艦上機の中では一番電子装備が整っている。

西暦1940年 8月28日 大日本帝国 帝都


 イギリス内乱を聞いて、一番焦ったのは何処の国か?


 それは転移メンバー達が居る大日本帝国だった。



「不味い事になりましたね」



 青木が言う。


 日本はイギリスから大量の戦略物資を買っている。


 だが、今回、本国が内乱に陥った事で英連邦諸国に動揺が走っている。


 東南アジアでは日本の対米戦での活躍と本国の混乱を聞いて独立運動が活発化していた。


 だが、特に痛かったのがオーストラリアだ。


 日本はオーストラリアから大量の鉱物を買い込んでいる。


 しかし、元々白豪主義的な思想を持つオーストラリアでは徐々にだが対日輸出を渋り始めていたのである。


 もっとも、日本軍の南進を招くと考えているからか、禁止にこそしていなかったが。


 鉱物については国内からもある程度は産出されているが、それでは日本の国力を全開にするには足りないのだ。 


 そして、食料も問題だ。


 幸いにして転移メンバーが推し進めた食料自給率の向上と7700万人(史実では7300万人)という平成日本よりは少ない人口により、節約すればなんとか賄えるが、あまりこの状況が続くのは良い傾向とは言えない。


 更に国家の安全保障面でも問題が起きていた。



「中華民国も動き出しているようですよ。満州・朝鮮国境に軍を集め始めています」



 既に在中米軍は敗れ、在中アメリカ資産は中華民国によって接収されていた。


 そして、今回の英国の混乱を知り、中華民国はどさくさに紛れて朝鮮の占領を行おうとしていた。


 だが、これは日本にとっても面白くない話だ。


 鉱物を輸入していたのは、なにもオーストラリアだけではない。


 日本はイギリスが朝鮮半島の北から採取していた資源も輸入していた為、これを奪われるとかなり厄介な事になる。



「鉱物についてベトナムからも輸入している為、今すぐにどうこうと言う話では無いですが・・・」



 自由フランス勢力下にあるベトナムでは、なんとか鉱物を輸入する事が出来ていたが、ここも安心出来なかった。


 何故なら、自由フランス政府はイギリス本国の内乱に巻き込まれた状態の為、それが知られればホーチミンによる独立活動が活発化する事が予測されているからだ。


 更にこれに呼応するように、インドネシアでも独立運動が活発化し始めてきた為、今後は石油はオハ油田にしか頼らざるを得なくなるかもしれなかった。


 八方塞がり。


 史実では独立運動を利用した日本がこの世界では独立運動で苦しめられるというなんとも皮肉な結果が生まれていたのである。



「だが、時間がない事も確かだ。なんとかアラスカ侵攻を成功させないと」



「しかし、これ以上早めるのは無理だぞ?現状でさえ、かなり早めている状態なのに」



 アラスカ攻略は10月に予定されていたが、これでも日本側にとっては充分に急いでいた。


 これ以上早めると、準備が不充分になってしまう為、とてもではないが容認は出来なかった。



「・・・これまであった余裕が全て吹き飛んでしまったな」



 有村の言う通り、勝ち続けの日本はある程度の余裕があった。


 だが、イギリス内乱と同時にその余裕が一気に吹き飛んでしまった事に戸惑いを隠せなかった。



「我々がイギリスに頼りすぎた。その“つけ”でしょう」



 岡辺の言った通り、転移メンバーは大陸方面に介入して国力の消費を恐れるあまり、資源問題は主にイギリスに頼りきっていた。


 今回、そのつけが一気に噴出してしまったのだ。



「まあ今考えても仕方ない。それより資源だ。何処からか自前で調達する必要がある」



「と言っても、どうする?まさか、この騒動のどさくさに紛れて南進をする訳じゃないだろう?」



「・・・」



 夕季は沈黙した。


 最悪の場合、それも視野に入れていたからだ。


 当たり前だろう。


 資源が無ければ戦争すら出来ないのだから。



「まあ、今すぐどうこうと言う訳では有りませんので、今のうちに少しずつ資源の貯蓄をしておきましょう。それならばもう少し持つ筈です」



「しかし、戦争となればあっという間に消費してしまうぞ?はっきり言って無意味だ」


 

 戦争というのは物資を湯水の如く消費する。


 春川の言っている通り、少しの備蓄だけでははっきり言って無意味だ。



「まあ、備蓄の件は兎も角、植民地問題については1つ案が有るんですがね」



「「「「!?」」」」



 青木の言葉に他の転移メンバーは目を剥いた。


 そして、青木はゆっくりと説明を始める。



「まず植民地については一先ず放っておきます」



「放っておく?」



「はい。そして、この独立闘争にて宗主国が勝てば現状維持。独立派が勝てば、その国家の承認と支援と引き換えに此方に資源を輸出して貰います。向こうも列強の承認は欲しいでしょうから」



 事実だった。


 仮に独立したとしても、列強の承認が無ければ経済が行き詰まるのは目に見えている。


 そして、その先にあるのは住民の不満による暴動、政争、内乱だ。


 独立派としても、それは避けたい筈だ。


 なので、国家の承認と支援を得られるとなれば、この話に乗ってくるだろう。


 問題は独立闘争にて戦いが長引かないかどうかだ。


 どちらが勝つにしても、独立闘争が長引けば、結果的にその分日本に資源を輸出して貰えることは無くなる。


 だが、その事も青木は考えていた。



「独立闘争が長引いた場合、適当なところで介入すれば良いでしょう。なんなら、殴りあっていて弱った両者を殴り倒してその植民地を手に入れる、という選択肢も有るんですから」



 見も蓋もない意見だったが、これも一理ある。


 というより、現状では手段など選んでいられない。


 戦争の相手はあのアメリカなのだ。



「しかし、半島はどうする?あちらには中華民国軍が迫っているみたいだが・・・」



「『山城』を送って牽制しましょう。それで向こうも此方が本気だと分かるでしょう」



 山城はフィリピン攻略作戦に参加した後、一度本土に帰還していたが、現状では遊んでいる兵力の内に入っている為、半島に送る事は容易だ。


 しかし、転移メンバーは青木の説明に驚いていた。


 なんせ、やろうとしている事があまりにも腹黒いからだ。


 だが、反対はしない。


 手段を選んでいられる余裕など無いのだから。



「では、気が進まないがそうしよう。もう、後が無いからな」



 春川の言葉に転移メンバーは沈黙しながらも、ゆっくりと頷いた。














◇西暦1940年 9月15日 アメリカ合衆国 ワシントンD・C


 悲壮な覚悟を決めていた転移メンバー達であったが、それと対峙するアメリカもイギリスの内乱に頭を悩ませていた。



「ハル。在英アメリカ資産の回収は不可能かね?」



 ルーズベルトはハル国務長官に在英アメリカ資産の回収が不可能かどうかを尋ねる。


 だが、答えは非情だった。



「無理ですね。イギリスの内乱は益々激化しており、このままでは資産の回収どころか、邦人の救助すら困難です」



 ハル国務長官の言っている通り、イギリスの内乱は激化の一途を辿っており、下手に手を出せば火傷をする事は必然(実際、イギリス本土に上陸したドイツ軍は占領地の統治などに手こずっていた)だった。


 その為、邦人の救出など殆ど不可能だった。



「それより、大統領。2ヶ月後の選挙の事ですが・・・」



 ハル国務長官が2ヶ月後に迫った大統領選挙についての話題をふった。


 史実ではこの選挙でルーズベルトは3選目を果たしていたが、現状では日本にボコボコにやられているお蔭で支持率が下がっており、3選目は果たせるかどうかは微妙なところだった。


 ルーズベルトは負けてはいないと公言していたが、戦火が徐々にアメリカ本土に近付いている現状では、幾らルーズベルトが気前の良い事を言っても、負けているとしか思えなかったのだ。


 更に対抗馬であるウェンデル・L・ウィルキーは対日講和を公約としており、西海岸の州を中心に支持が高まっていた。



「選挙で勝つ為には、それまでに何かしらの功績を挙げなければならない、か」



 ルーズベルトはそう考えていたが、良い案が浮かばない。


 残ったヨークタウン級空母3隻の内、エンタープライズとホーネットはなんとか今月中に戦線復帰可能だが、ヨークタウンの戦線復帰には、あと1ヶ月は掛かる。


 最後の賭けとして、ルーズベルトはワスプと東海岸に残った戦艦8隻の内、4隻を太平洋に回航しているが、これも戦列に加える為にはあと1ヶ月は掛かる。


 つまり、あと2ヶ月で何かしらの功績を挙げるというのは至難の業なのだ。


 それをよく理解しているルーズベルトは苦慮する。



「・・・なにも思い付かんな。時間が無さすぎる」



 流石のルーズベルトもあまりの時間の無さに何も思い付かない様子だった。



「ハル。私の選挙の事はもういい。このアメリカ合衆国の国益になる事で、何か提案は無いか?」



 ルーズベルトは自分の選挙を諦めた。


 しかし、ルーズベルトは任期ギリギリまで大統領としての役目を果たそうとしていた。



「・・・提案なのですが、オーストラリアを揺さぶったら如何でしょうか?」



「オーストラリアを?」



「はい。現在、宗主国であるイギリスはあの状態である為、元々白豪主義的な思想を持つオーストラリアを揺さぶれば、此方に靡く可能性が有ります。そうすれば」



「我々は南から日本を突き上げる事が出来る、か」



 現在、イギリス本国の内乱を受けて、イギリスやオランダ、フランスなどの植民地では独立運動祭りが起こっている最中だ。


 オーストラリアやニュージーランド、カナダなど、それに該当しない国や地区も存在しているが、イギリス最大の植民地であるインドが、そして、イギリス本国があのような状況である以上、もはや大英帝国は崩壊したも同然であった。


 そうなると、元々白豪主義から日本に対して敵愾心を持っているオーストラリアはアメリカの工作を受ければそちらに靡く可能性が高かった。


 そして、そうなって困るのは日本だ。


 何故なら日本は現在、太平洋北部と中部に戦力を集中しており、南方には申し訳程度の戦力しか居ないからだ。


 もっとも、相手がオーストラリア海軍だけであれば、その申し訳程度の戦力でもなんとかなるのだが、相手は主にアメリカ海軍である。


 とてもではないが、耐えきれないだろう。


 そして、オーストラリアと戦端を開くとすれば、史実を鑑みるにニューギニア、ソロモン方面となる。


 その際の最前線基地になるであろうトラック諸島には、日本海軍と日本空軍の基地が有ったが、その規模は史実に比べると、物凄く小さなものだ。


 史実のような航空撃滅戦となれば、1ヶ月持つかどうか怪しかった。


 ただ、1つ問題があった。



「これは長期戦になってしまうな」



 そう、この計画案だと、どうしても長期戦になってしまうのだ。


 南から突き上げても日本はすぐに困るという事はない。


 なんせ、日本本土への最短ルートでさえ、トラック、マリアナ、小笠原と行かなければならないからだ。


 これはなかなか至難の業だろう。


 ましてや、日本に一方的にやられている現状を鑑みれば、日本本土に至る道はおそらく苦難の道となる。


 ルーズベルトが失脚した場合、当然大統領はウィルキーとなる為、こんな長期戦を容認するとは思えない。


 こんな事をするぐらいなら、講和をした方がマシだと主張するだろう。



「しかし、オーストラリアからの鉱石の対日輸出を止めさせるだけでも、日本にとっては痛手になる筈です。やって損は無いかと」



 そうなのだ。


 この点は転移メンバーも危惧していたが、これと言った対策が取れなかった。


 距離が遠いのに加えて、相手は白豪主義の思想を持っており、日本が何かしらの工作を行うのは何かと難しかった。



「そうだな。オーストラリアへの工作は私の任期中にやっておこう」



 ルーズベルトはそう決断した。


 かくして、アメリカも動き出した。














◇西暦1940年 10月2日 ソ連 某所


 ソ連は今や、崩壊寸前になっていた。


 戦災、飢餓、そして、スターリンの粛清。


 なにもかもが滅茶苦茶だった。


 だが、そんな中、ある行動を起こそうとソ連政府の高官の一部が集まっていた。



「では、2週間後で宜しいんですね?」



「ああ」



「しかし、奴等が我々を受け入れてくれますかね?」



 1人の男が尋ねる。



「・・・大丈夫だと祈るしかない。先方には話を通してある」



「ですが、もし用済みだと裏切られたら?」



「では、君はこの国と心中するかね?スターリンが政権を握っている限り、どのみち我々に未来はないぞ?」



 ソ連はもう内側がガタガタだった。


 独ソ戦以来、犠牲者は増し続けており、もはや2000万人を越える犠牲者が出ており、来年には3000万人を越える見込みだ。


 戦争を止めれば少しは治まるが、ヒトラーもスターリンもそんな事は容認する筈も無かった。



「・・・分かりました」



 男は頷いた。


 かくして、ソ連に居る男達も暗躍を始めた。

隼鷹型航空母艦


基準排水量2万7000トン。


機関・・・ガスタービン。


最大速力34ノット。


巡航速力18ノット。


艦載機90機。


武装・・・10センチ連装高角砲6基12門。40ミリ機銃10基20門。20ミリ単装機銃20基20門。

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